統計不正 国の信用危うくするな(2019年1月26日中日新聞)

2019-01-26 09:31:35 | 桜ヶ丘9条の会
統計不正 国の信用危うくするな 

2019/1/26 中日新聞
 もはや国際社会で信用を失墜させかねない不祥事だ。国の基幹五十六統計の四割で問題が見つかった。厚生労働省にとどまらぬ政府全体の信頼を揺るがす事態と、安倍晋三政権は認識すべきだ。

 「極めて遺憾」。菅義偉官房長官は基幹統計の点検で二十二統計に問題があったことを受け陳謝したが、それで済む事態ではない。

 政府の公的統計は社会のさまざまな場面で使われている。

 特に、経済統計の数値は外国為替や株式といった市場に直接影響する。市場参加者は統計が正しいことを前提に売買の判断をする。しかし、それが虚偽だった場合、深刻な影響が出る。それは国際社会にも及ぶ。

 二〇〇九年十月、ギリシャの政権が交代した。その際、国内総生産(GDP)比で5%程度と公表されていた財政赤字が、実は倍以上あることが報道などで発覚した。これが市場に伝わった直後から資金が国外に流出。ギリシャ国債や株価が暴落し、その影響は世界中に広がった。

 事例は異なるが、公的な数字の不正は重大な疑念の種になる。だが、日本政府の危機感は低い。

 二十四日の国会閉会中審査で、毎月勤労統計不正の関係職員聴取の一部を同じ厚労省の職員が行っていたことが分かった。調査を実施した特別監察委員会の直接聴取は幹部のみだった。

 身内の調査ではないか。政府への不信感を上塗りした。公的統計の重要性を認識しているとは思えない対応である。根本匠厚労相は監察委の再聴取を表明したが、国会で批判されてのことだ。

 統計を軽く見ていると思われる実態はまだある。

 統計を担当する政府職員は〇六年には五千人を超えていたが、十年で二千人を切った。厚労省は三百三十一人から約百人減った。

 監察委の報告書も、統計部門が「省内からあまり注目を浴びることもなく」監視を受けてこなかったのではないかと指摘した。

 だが、低成長時代の政策決定には統計の精度はより重要になっている。こうした社会変化を理解していないのではないか。

 問題の裏に官僚機構の劣化がありそれを政治が放置しているのなら、その根は深いと言わざるを得ない。総務省の監視機能強化や外部監査の導入などチェックを行う仕組みが必要だ。専門職員の育成も課題になる。

 政府は事態の深刻さを認め再発防止に取り組むべきだ。


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