えらいこっちゃ、大阪 G20サミット、28日開幕 (2019年6月27日 中日新聞)

2019-06-27 08:43:50 | 桜ヶ丘9条の会
えらいこっちゃ、大阪 G20サミット、28日開幕 
2019/6/27 中日新聞

 28、29日に迫った20カ国・地域首脳会議(G20サミット)。開催地の大阪には47都道府県から3万2000人の警察官が集まり、過去最大級の規模で要人らの警護に当たる。その様子は「戒厳令下か」と思うほど。既に市民生活への影響も出ている。おもろく、人懐っこいイメージの大阪の人たち。歓迎ムードの中に、時折うんざりした表情も見せる。
 大阪市が埋め立てた人工島・咲洲(さきしま)。サミットの会場となる展示場「インテックス大阪」(住之江区)の周辺では本番三日前の二十五日、既に厳重な警備が始まっていた。
 会場へつながる全ての道路で一般車両を通さないようにし、近くの駅では警察官が「身分証か通行証の提示を」と呼び掛ける。沿岸では海上保安庁の巡視艇が目を光らせる。
 咲洲には大規模な団地もあり、約二万四千人が暮らす。住民は散歩や買い物へ行くたびに、警察官に呼び止められる。
 「きのう(二十四日)からほんまに厳しくなったわ。こんなん初めてやわ」。身分証明のためにパスポートのコピーを持参してウオーキングしていた近くの森下佐恵美さん(70)は話す。
 記者も駅から徒歩五分ほどの会場に着くまでに、四度、身分証の提示を求められた。
 「過去の洞爺湖や伊勢志摩サミットと異なり、人口密集地での開催。安全と住民の負担軽減の兼ね合いが難しい」。警察庁幹部は警備の苦労を口にする。初の日本開催となるG20サミットは、警備する側にとっても手探りのようだ。
 「すみません、確認したらやはり通れるようです」。検問所の警察官が、自転車に乗って走り去ろうとする滝川友香里さん(38)に駆け寄った。滝川さんは長女(5つ)を幼稚園に送り届け、同じ道を近くの自宅へ戻る際に警察官に制止されたばかりだった。
 「さっきは通行できたのに。おまわりさんによって言うことが違うんですよ。通れる道を尋ねても、『自分は分からないから大阪の警察官に聞いてほしい』と言われるし」と困惑顔だ。一カ月前に派遣されたという警視庁の警察官は「指示が明確でない。正直だいぶグレーゾーンで(警備を)やってます」とぼやいた。

◆歓迎の声も

 不便を強いられても、住民から聞こえるのは不満ばかりではない。
 会場周辺の警備が始まったのは五月。近くに住む中村美智子さん(67)は「最初は怖い感じもしたけど、おまわりさんたち、毎日すれ違うたびに大きな声であいさつしてくれるねん。こないだの仙台の子は、ごみ拾いまでしてくれてたな」と歓迎する。
 開催前日の二十七日からは市民生活への影響がさらに広がる。阪神高速の十路線が三十日まで、早朝から深夜にわたり封鎖され、市中心部の一般道も規制される。大渋滞が予想され、大阪府警は「交通量五割削減」という前代未聞の目標を掲げる。

◆公立校休校

 影響は歓楽街にも及ぶ。西成区の「飛田新地」では、飛田新地料理組合に加盟する百五十九の全料亭が二十八、二十九日に休業する。一斉休業は一九八九年の昭和天皇の「大喪の礼」以来。組合は「営業していて万が一、事故があってはいけないと考えた」と説明している。
 市立の幼稚園、小中高校と府立の全学校は二十七、二十八日を臨時の休みにする。
 会議の前後は多くの路線バスが運休。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなど観光施設では手荷物検査をする。臨時に休む施設もある。コインロッカーは既に使用停止になっている。
 一方、地元の首長たちはどこか浮かれムード。吉村洋文府知事は十九日の記者会見で「大阪の食材、すばらしいもののPRに活用する。海外メディアも含め三万人が来る」。松井一郎大阪市長も二十日の会見で「大阪や関西の食の魅力、技術力、万博のPRをする」と意気込む。
 阪南大の桜田照雄教授(経営財務論)は二人の狙いを「大阪には世界的会議を開けるほどの力があるとアピールしたいのだろう」。
 咲洲と同じ臨海部の夢洲(ゆめしま)では二〇二五年、国際博覧会(大阪・関西万博)が開かれる。カジノを含む統合型リゾート(IR)の整備構想もある。「今回の警備で住民に不便を与え、国際的会議を開くのにふさわしい所がないから、広域に影響が及んだと印象付ける。そして(警備上隔離できる)夢洲にIRが必要だという論にすり替えるのでは」と桜田教授は指摘する。
 (皆川剛、中沢佳子)

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