政策活動費、5党は税金原資否定 識者「透明性確保を」(2021年8月31日中日新聞)

2021-09-01 10:17:39 | 桜ヶ丘9条の会

政策活動費、5党は税金原資否定 識者「透明性確保を」

2021年8月31日 中日新聞
 政党から政治家が受け取り、使い道の報告がいらない「政策活動費」や「組織活動費」。党として党勢拡大や政策立案に使う資金とされるが、支出している各党は税金を原資とする政党交付金(政党助成金)を受け取っている。適正に処理しているという説明に、専門家からは疑問の声も上がっている。
 政党の収入には献金や党費などの「政治資金」があるほか、共産党以外の各党は国から「政党交付金」も受け取っている。
 この交付金が政策活動費などに使われている可能性について、自民党は「公表されている使途等報告書の記載の通りで、政党助成金から政策活動費を支出していない」と説明。「支出が不透明」とする質問に「事実と異なる」と反論している。日本維新の会も「政党助成金からの支出でないことは使途報告書により明らか」などとしている。
 これに対し、政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之(ひろし)教授(憲法)は「形式的に政党交付金からは出ていないが、帳簿上分けているだけだ。納税者から見れば、お金に色がついていない以上、税金も含まれる党収入から支出されていることに変わりはない。使途が不明である状態は政治資金の透明化を求める法の趣旨に反しており、ルールを作って改めるべきだ」と訴える。
 一方、立憲民主党は今回集計した二〇一九年分の政治資金収支報告書には政策活動費などの支出がなかったが、昨年九月に旧国民民主党と合流してからは「支出がある」と認めた。「政治と金の問題の基本は、支出の規制ではなく公開性の確保。政治活動の自由を踏まえつつ議論を深めたい」とする。
 政策活動費などを支出していない公明党は「議員個人への支出は行っていない。政治団体への支出という形で透明性を確保するべきだ」と説明。共産党も支出がなく「資金管理団体の収支報告書に記載し、公開することで政治家個人の政治資金収支が明らかになる」としている。 (木原育子)
■政策活動費などを巡る各党の見解 (◇は2019年に支出のあった5党)
 ◇自民 わが党の「政策活動費」は、党に代わって党勢拡大や政策立案、調査研究を行うために、従来より党役職者の職責に応じて支出しているものであり、政治資金規正法および関係法令に則(のっと)って適正に処理しています。その詳細につきましては、総務省で公表されている党本部の収支報告書の記載のとおりであります。
 なお、法律上求められている収支報告書の記載事項以上の内容につきましては、同法が配慮する政治活動の自由に鑑み、従来より回答は差し控えさせていただいております。
 また、国民の税金が原資となっている政党助成金からの支出は、総務省で公表されている使途等報告書の記載のとおりであり、政党助成金から政策活動費を支出しておりませんので、質問文中の「党本部の収入には多額の政党助成金が含まれています。その支出が不透明との指摘もできる」「党本部の収入には多額の政党助成金が含まれています…その資金を受け取る以上、その使途も明らかにするべきだ」との指摘は、事実と異なった指摘であることを申し添えます。
 立憲民主党や国民民主党、社会民主党などの野党の収支報告書にも、調査委託費や政策活動費、組織活動費の名目で同様の支出が見受けられますので、不偏不党を心がけておられる貴社は、当然、公平・公正な報道をされるものと信じております。
 ◇社民 政治資金収支報告書で「組織活動費」と記載してあるものは、国会議員の政策立案や立法活動、党活動等を支援するための活動費として位置づけ交付しているものです。
 現行制度上、政治家個人に政党から支出された場合はその先の使途について報告を求められていないと承知しております。
 社民党全国連合としては政治資金収支報告書に記載し、各議員において法律に則って適正に支出されていると考えております。収支報告書への掲載についての取り決めは、特にございません。
 政治資金の支出については政治活動の自由を保障しつつ、有権者の信頼にもとることのないよう、適切に行うよう求めておりますが、党全国連合として支出毎(ごと)の確認は行っておりません。
 党所属国会議員に不公平が生じないように、全国連合予算の範囲内で決定しています。支出額は全国連合常任幹事会で決定し、財政責任者会議にはかったうえで、全国大会もしくは全国代表者会議で決定しております。
 「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われる」べきとの政治資金規正法に基づき、政治資金を適正に処理し公開することは必要です。政党から政治家個人に支出された場合、その先の使途について報告が求められない現行制度は、政治資金規正法の趣旨に照らして十分とはいえず、必要な制度改正やルール作りが求められていると考えます。
 ◇国民 当該支出は、党勢拡大のための組織活動費であって寄付ではなく、政治資金規正法にのっとり適正に処理しています。法律上求められる事項は、収支報告書に適正に記載しています。
 ◇維新 日本維新の会は、東京の本部を頂点とするピラミッド型の既存政党とは本質的に異なり、政党本部を大阪におく地方分権型政党としてスタートしました。政党活動全体の中で党所属国会議員の活動は大変重要であり他の支部とは活動の性質が異なる部分があります。そのため、その組織の重要性や全国規模の活動等に鑑みて、当初の日本維新の会発足時より本党の支部として国会議員団を設立しました。
 国会議員団に関わる政策活動については国会議員団が支出の適否を判断するべきものであるため、国会議員団から支出しています。日本維新の会国会議員団の政策立案・実現等に資するためです。
 政治資金の取扱いについては、政治資金規正法に則り適切に処理するとともに適正に報告しております。ご指摘の取扱いについては、何ら規正法に規定も考え方もないものと認識しております。
 政党助成金からの支出でないことは政党交付金使途報告書により明らかです。
 我が党は、「身を切る改革」の一環として企業団体献金禁止法案等を党独自の議員立法として国会へ提出しておりますが、他党の賛同が得られず未(いま)だ成立には至っておりません。「政治とカネ」の問題の温床となりやすい企業団体献金の禁止を含む政治資金規正法の在り方及び公職選挙法の在り方等広範な議論をすることが必要と考えます。
 ◇れいわ 山本代表に支出した組織対策費は、全てれいわ新選組の組織対策に使っておりますので、個人の政治活動に関する寄付ではございません。つきまして資金管理団体の収支報告書には記載しておりません。
 れいわ新選組が街頭演説及び集会等で全国を回る際に、細かい消耗品や交通費の領収書が大量に発生し、管理が煩雑になります。年間5000枚前後の領収書管理を1〜2人で行っていることもあり、経理部の負担軽減のために、苦肉の策として山本代表が管理のもと、組織対策費から上記費用の支払いを行っています。
 また、山本代表に支出した組織対策費は、政党交付金ではなく、すべて党の雑収入もしくは、支援者の皆様から頂いた寄付金を原資としておりますので、政治資金規正法に基づき収支報告書にて計上・報告をしております。
 政党交付金の使い道は政党助成法に基づき、「政党交付金使途等報告書」にて報告することになっていますので、交付金を元に支出したものは全てそちらにて報告しております。
 ただ、業務負担軽減のためとはいえ、支援者の皆様よりご寄付いただいた政治資金を組織活動費というわかりづらい形で、支出することは、今後改善する必要があると考えております。
 立民 旧立憲民主党においては支出していないが、現立憲民主党においては若干の支出がある。
 組織活動費を交付した党役職者の活動を信頼して行われている慣例と承知している。
 旧立憲民主党においては、会計の透明性を重視して支出を避けていたが、現在は必要に応じて対応している。
 政治活動費が肥大化することは好ましくなく、可能な限り最終支出先を開示すべきであると考えるが、法改正によって禁止するかどうかについては今後検討していきたい。
 政治と金の問題の基本は、支出の規制ではなく、公開性の確保にあると考える。政治活動の自由を踏まえつつ、党内議論を深めていきたい。
 公明 支出の透明性を確保するため、議員個人への支出は行っておりません。
 議員個人ではなく、政治団体への支出という形で透明性を確保すべきと考えます。
 政治資金規正法改正の必要性については、よく検討する必要があると考えます。なお改正にあたっては、国民の理解を伴う形で、論点を整理し、議論を深めた上で与野党の幅広い合意を形成する必要があると考えます。
 共産 日本共産党の国会議員は、政党の一員として政治活動をやっており、そのための収入・支出は、すべて政党の政治資金収支に含まれている。そこから離れた議員個人としての政治活動もなく、議員個人の政治資金収支もない。このため、日本共産党から国会議員一人ひとりへの政治資金の支出というのも、必要ない。
 政治資金規正法第19条は、公職の候補者はその者のための政治資金の拠出を受けるべき一つの政治団体(資金管理団体)を指定することを定めている。国会議員が政党から資金の拠出を受ける場合、その議員は「資金管理団体」を指定し、その収支報告書を毎年提出する。そこには、議員が拠出を受けた政治資金とその支出の明細を記載しなければならない。したがって、「資金管理団体」の収支報告書が公開されることによって、政治家個人の政治資金収支が明らかになる。
 お尋ねのように、議員が政党から受けた資金を何に使ったのかわからないという事態があるのなら、この法律どおりにやっていないということになる。