年金の改革 現役世代の不安解消を
2020年6月22日 中日新聞
パートなどの非正規雇用で働く人への厚生年金の適用が拡大される。年金制度改革関連法が先の通常国会で成立した。働く現役世代の将来不安を解消するため、制度改革の手を緩めるべきでない。
少子高齢化が進む中、年金制度の見直しは喫緊の課題である。
より多くの人の年金受給を増やす関連法が、新型コロナウイルスの感染拡大への対応が迫られる中でも審議が先送りされず、成立したのは当然だろう。
関連法の柱はパートなど非正規雇用で働く人たちが厚生年金に加入できるようにする適用拡大である。
労働時間が短く一定以下だったり、一定の従業員規模に満たない企業で働く非正規雇用の人は、職場の厚生年金に加入できず、自分で国民年金に入るしかない。
厚生年金に加入できるようになれば、国民年金より保険料負担は減り、将来受け取る年金額は充実する。その上、年金制度の支え手を増やすことにもなる。
関連法により、適用される企業の従業員規模が見直され、約六十五万人が新たに加入できる。
しかし、見直しは限定的だ。雇用されて働く人は本来、雇用形態や職場の規模に関係なく厚生年金に加入できるのが筋だろう。さらに適用拡大を進める必要がある。
適用が広がらない要因の一つに新たに保険料負担が生じる中小企業の反対が挙げられる。厚生年金の保険料は労使折半。加入する従業員が増えればその分、企業の保険料負担は増えるからだ。
政府には、中小企業の経営者らにも粘り強く理解を求め、実現への環境整備を進める責任がある。
少子高齢化で受け取る年金額の目減りは今後、避けられない。国民年金は厚生年金より目減り幅が大きくなる。加入期間を四十年から四十五年に延ばし、年金額の底上げを図る見直し案は関連法には含まれなかった。今後の課題だ。
コロナ禍により年金など社会保障制度も影響を受ける。失業すれば保険料を払えなくなり、減収でも払う保険料が下がる。それでは将来、受け取る年金額も減りかねない。
雇用確保は、働く人々の日々の生活だけでなく、将来の安心を支えるためにも重要な問題だ。政府は雇用安定を最優先にあらゆる対策を打つべきだ。
経営環境も、厳しさを増している。企業が負担する保険料の納付猶予などにも柔軟に対応したい。
「老後の安心」の実現は現役世代の不安解消にもつながる。年金制度は不断の見直しが必要だ。