敵基地攻撃能力 専守防衛を外れぬよう (2020年6月26日 東京新聞)

2020-06-26 09:58:41 | 桜ヶ丘9条の会
敵基地攻撃能力 専守防衛を外れぬよう (2020年6月26日 東京新聞)
 
 政府が安全保障戦略の見直しに向けた議論を始めた。敵のミサイル発射拠点を破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を認めるか否かが焦点となるが、戦後日本の専守防衛政策からの逸脱は許されない。
 安保戦略の見直しは、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」配備計画の撤回に伴うものだ。計画撤回で生じる弾道ミサイル防衛の「空白」をどう埋めるのかが検討課題とされる中、浮上しているのが、「敵基地攻撃能力の保有」への転換である。
 弾道ミサイルなどの脅威から国民を守ることは、政府に託された使命であることに異論はない。脅威に対処することは当然だ。
 しかし、専守防衛は戦後日本の国家戦略でもある。他国に脅威を与える軍事大国にはならないという平和国家の歩みこそが、国際社会で高い評価と尊敬を得てきたことは、安倍内閣が策定した「国家安全保障戦略」も認めている
 敵基地攻撃能力の保有は、平和国家の歩みに反し、専守防衛政策を逸脱するのではないか。
 確かに歴代内閣は、日本がミサイル攻撃を受けた場合、発射基地への攻撃は「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」と、憲法九条が認める自衛の範囲内としてきた。
 ただ、敵の基地を攻撃できる防衛装備の保有を認めてきたわけではない。政府見解は「平生から他国を攻撃する、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つことは憲法の趣旨ではない」としてきた。
 敵基地攻撃能力の保有は自民党が三年前、安倍内閣に提言したことがある。採用には至らなかったが、安倍晋三首相はもともと自衛隊の打撃力強化に前のめりだ。
 軍事的に合理性を欠くと指摘されてきた地上イージスの断念に乗じて、憲法を逸脱するような敵基地攻撃能力の保有に転じるようなことが許されるのだろうか。
 そもそも自衛隊は専守防衛の装備体系を有し、敵基地攻撃能力を新たに持つには、長距離巡航ミサイル、ステルス戦闘機の取得や、敵基地の場所を把握する情報収集態勢の強化など防衛費の膨張が避けられない。攻撃力を米軍に委ねてきた日米安保体制にも変質を迫ることにもなるだろう。