中日春秋

2019-06-17 17:13:44 | 桜ヶ丘9条の会
中日春秋 
2019/6/17 中日新聞
 米推理作家のヴァン・ダインが一九二八年、探偵小説を創作する上での二十のルールを書いている

▼「その一」は、<登場する探偵と読者には、同じ機会(情報)が与えられなければならぬ。謎解きのヒントは分かりやすく記述されなければならぬ>。探偵小説が知的なゲームである以上、読者にフェアなルールを作りたかったらしい

▼ルール「その四」。昨日の朝刊記事を読んで浮かんできた。<探偵自身、あるいは捜査員の一人が犯人だったという展開はあってはならぬ。それは見え透いたトリックである>-。京都府警は高齢男性から現金千百八十万円を詐取したとして交番勤務の巡査長を逮捕した。あまり聞いたことのない、現職警察官による詐欺事件である

▼ニセ電話詐欺の対策などを通じ、この高齢男性が高額の現金を持っていることを知った巡査長が「現金を預かって保管する」と言葉巧みにだまし取ったとみられている

高齢者を詐欺の魔の手から守るべき警察官自身が魔の手を使うとは開いた口がふさがらぬ。探偵小説の方はともかく現実社会では決して「あってはならぬ展開」である

▼もちろん、悪い了見を持った警察官は少ないと信じるが、この一件の影響は大きい。オレオレと息子を名乗る人間はもちろんのこと今後は相談に耳を傾ける本物の警察官さえ、警戒しなければならぬのか。情けない時代である。