ひだまりクリニック~産んだ後にも母親学級~

杉並区で小児科医がひらいている母子で集えるクラスです。

ひだまりクリニックが考える母乳育児支援について

2015-09-02 23:45:53 | 初めての方へ ひだまりクリニックのご案内

母乳のことは、乳児健診では大きなテーマです。

私自身、いろんな母乳育児を経験して、いろんな問題があり、悩みもしたし痛みもあったし、辛さも喜びも幸せも、

そして、多くのことを自分の子どもから学びました。

患者さんたちからも、多くの困難の相談があり、

解決できたものもそうでないものもありました、納得してもらえるように努力をしたけれど・・・

おっぱいは、とてもプライベートなことです。そして、その悩みには、簡単な解決がない場合も多いです。

というか、最初がそうでなかったらと思うことが多いのが現実です。

病院によってのケアはとても違うし、当然母乳率も大きくちがっています。

もっと早く、アドバイスできていたら、変わってたかも、これほど悩まなかったかも、ということもあります。

小児科医である私は、後になってみるので、残念な気持も何度も味わいました。

でも、自分のできる範囲を考えると、そこまで手をだす余裕はない、ごめんなさいという気持ちを抱えてました。

ひだまりクリニックを開業してからも、似たようなスタンスでした。

自分でできる範囲でのベストをしようと思ってやってきてはいました。

おっぱいのことでプレッシャーをかけるのが怖かったのだと思います。

逃げ腰でした。

なぜなら、傷付けることを極端に恐れたからです。

自分の言葉で傷つけてしまう恐れは、おっぱいのことでは、とても多いと感じてました。

私の場合、おっぱいが一人目とそれ以後の子では全く違うのです。

一人目は未熟な母親でした。

おっぱいがせっかく良く出たのに、子どもは大好きだったのですが、束縛されているという気持ちがぬぐえなかった。

自分の問題である(仕事を中途半端に中断して子育てになってしまったこと)のに、

この子のために仕事ができなくなった、復帰もいつになるかと暗くなってました。

まだ20歳代だったのに、閉塞感でいっぱいでした。

お産の前の妊娠出産の挫折感も強くて(詳しくは、このブログの最初の頃にあるので省略)

おっぱいをあげることに満ち足りた幸せを感じる母性の成熟はなかったのです。

納得できるお産を目指した二人目以降は、おっぱいが本当に幸せに感じられて。

その経験から、おっぱいがでるだけ、おっぱいをあげるだけじゃダメなんだと心底おもいました。

おっぱいが幸せであるという支援をして初めてちゃんと母親の母乳支援をしたことになるんだと。

おっぱいをあげることが目標なんじゃない、おっぱいをあげる母親が幸せでいることが目標なんだと思います。

おっぱいのことしか頭になくて、赤ちゃんが笑いかけているのに気付かないなんてことは本末転倒。

子育てはおっぱいをあげることよりも、子どもにむきあうことの方が大事、

子どもがかわいいと思って育てられることの方が大事だと思います。

そんな風におっぱいをあげることのみに集中してしまう人もいる一方、そんなに簡単にあきらめちゃうの?という人もいる。

おっぱいが出ない時期があっても、粘り強い頑張りで分泌を増やせる人もいれば、混合でという人もいる。

頑張っても充分な分泌に足りない人もいて、ミルクの補充をお願いしても、受け入れる人とそうでない人もいる。

分泌過多も辛いし、乳腺炎を繰り返す人もいるし、白斑ができる人もいる・・・

そして、悩みの多様さの上に、親を悩ますのは、アドバイスの多様さ。

食事を非常に厳しく指導するとか・・・

おっぱいのタイミングを強くアドバイスするとか、3時間あけてとか、3時間あけないで夜も起こしてとか・・・

ミルクを足すべきとおばあちゃんが迫るやら、ミルクは足さないでと助産師さんに言われるやら・・・

舌小帯のアドバイスも、いまだに脅迫的なところだってある(←とても少ないけど)

(かなり減っている印象はありますが)

また、母乳マッサージを定期的に行かないといけないと思いこんでいることもありますね。

依存しているみたいな感じに思えます。

どうしたらいいの?って思って混乱しているお母さんは多いです。

お母さんが今いる状況で、自分にできること、それを一緒に探す、できる範囲で努力してみる、無理はしないでやってみる、

そういうことをしていきたいと思っています。

医療者は、自分の感覚と経験だけでものをいってはいけない、少なくとも断言をしてはいけないと思います。

エビデンス(医学的な根拠)のないことを押し付けてはいけないと思っています。

また、人間の営みですから決めつけもいけないし、何よりも、お母さんの気持ちを尊重することが大事だと思います。

でも、お母さんの気持ちを尊重する、傷つけたくないと思うあまり、消極的になりすぎていたというのが、私の反省です。

一年間、小さい子クラスをしてきての反省です。

そこに困っている人がいるのに、私にもできることがあるのに、見てこなかったしあきらめていたのです。

私にだってできるアドバイスがあったのに、おっぱいのことをあまり深く追求しなかったために

(傷つけたくないという弱気からの逃げですね)せっかくできたアドバイスをしてなかった。

少しのアドバイスでよくなった人もいたのに。

小さい子クラスをして、私にもできるアドバイスをして、うまくいき始めた人が何人かいました。

同時に、私にはできない処置を助産師さんができるってことも何回もありました。

マッサージや処置は全く必要ないという考え方もあります。(世界的にはそちらが主流)

ですが、やはり、人の手に触ってもらってここちよいということだって、否定はしません(私も経験済)。

その人その人のオーダーメイドで、よいところどりのアドバイスや処置が受けられたらいいのではないかなと思います。

そして、ゆくゆくは(なるべく少ないアドバイスで)自分で自分のおっぱいを良い状態にキープするための知恵や工夫を身に着けてほしいのです。

来るたびに、自信を付けて帰れて、数回で一人でできるというようになる、そんな母乳支援でありたいと思います。

どこかで仕入れてしまった情報でくるしんでいることもあって、

ちょっとしたアドバイスがとっても楽になっていくこともあります。

修正が可能なより早い時期に、より正しく的確な情報を届けて、お母さんが楽に幸せな母乳育児をすることができるように。

そんな母乳育児支援をしていきたいと思っています。

保健所の指導で、母乳指導は小児科医が診察をすることが条件ということです。

計測と診察をしてから、客観的に評価をしつつ、助産師さんの温かいケアを受けてもらえるようにしたいと考えています。

私にできることと、助産師さんができることと、一緒になって、お母さんを支えていきたいです。

お母さんが自分でできるようになるまで、自信をもっておうちでもできると思えるようになるまで、

一緒に考えていきたいです。

何回以内に、と焦らす気もないですが、早く自信がつくように、頑張りたいと思います。

何でも、ご相談に乗ります。

お母さんご自身が、納得できる選択をできるように、お母さんが無理なくできる方法を、

これはできるかな?こうしたらどうかな?一緒に考えて行こうと思います。

 

ちょっと前、母乳売買の話が話題になりました。

私は、おっぱいが大切だと主張する人が悪い、お母さんをおっぱいでと責める人が悪いという論調に反発を感じました。

おっぱいは大切なんです。お母さんたちはそれを知ってます。

その大切さを理解せずに、またはしてても、手間のかかるケアをしない医療者がいけないんです。

お母さんの望みをきちんと理解して、そこを支えない医療者がいけないんです。

必死になっておっぱいに懸命になるお母さんは全く悪くないんです。支えてないケアできてない医療者が悪い。

意味がある時期の手間のかかるケアにお金が回らない医療制度が悪いとも言えるかもしれません。

人手が少なく余裕のない病院では、どうしても後回しになってしまうのがおっぱいケアなんです。

初めはだれだってわかりません。

つきっきりで、産後のお母さんの心身を見て、支えながら、ちゃんとしっかりと余裕のある支援者がすべきなんです。

ケアすべきなのにできてない人が、こだわることないのに、というのは、責任回避のような気がする。

大切だよというと同時に、ケアをちゃんとすればいいんですけれど・・・

私の逃げは、ちゃんとケアする余裕がなかったから、だったんでしょうね。

ごめんなさいという気持ちを持ちつつ、健診を担当してたような気がします。

これからは、もっとできることをしていきたいとおもいます。

お母さんを追い詰めないように、お母さんの気持ちを尊重して、お母さんの笑顔が見られるように。

一人一人丁寧に、を目指します。

お母さんを支えるのが、一つの大きな仕事です。

子育てするお母さんが、まず元気でいることがとても大事です。

 

10月から、小さい子のクラス以外に、おっぱいのことを中心に診る一日滞在型のケアを始めます。

出産直後から(退院直後からでも)参加可能な支援です。

小人数制にして、小さい子クラスでは、やりきれなかった、個別の支援をもっとしっかりとしていけます。

ただし、このケア、何度お願いしても、杉並区の子育て応援券が使えません。

助産院と同じことをしていても、滞在型なので、それ以上とも思ってるのですが、

母乳のケアを小児科クリニックでするのは応援券の対象外なのだそうです。

誰のための何のための応援券?といってしまいました

おかしくないでしょうか?

「医療には使えない」というのが前提にあるのですが、助産師の母乳育児相談も健診も保険診療ではできないのです。

だから、自費になる部分を応援するということで、助産院の母乳育児相談では応援券が使えるのですが。

クリニックでする助産師による母乳育児相談は応援券が使えないと不承諾になりました。

何度かお願いしたけれど、ときにはほとんど喧嘩みたいだったけれど、ダメでした。

よい支援をしたいと努力している人を応援するしくみだとも思っていたのに・・・ととても残念です。

使えたらいいのに、と思われる方は、子育て支援課応援券担当の方に、ご意見を届けてくださると変わるかな?

甘いでしょうかね~?

今後のひだまりクリニックのとりくみ、こんなことをしてほしいというご意見も大募集中です。

ぜひ、教えてくださいね。

ひだまりでする、本格的な母乳支援の取り組みです。

子育てのように、じっくりゆっくり、周りの人の手を借りつつ、楽しみながら育てていこう、自分も育とう、と思います

改めて、日時や費用など、具体的なことはお知らせします。

 

 

 

 

 

 


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