矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

ファシリテーション力

2012-05-11 20:59:46 | 医学教育
大学でのTeachingにしても、いろいろな会議にしても、最近必要とされるスキルのひとつに
ファシリテーション力というのがあるのではないかと思います。

相手が考えるのをサポートすることが目的ですが、効果的な質問を投げかけられるかが重要です。

ダイナミックなディスカッションのなかで、自分の知識や考えを総動員して、瞬時に質問を投げられるかはやはりトレーニングが必要です。

ファシリテーションの科学的な理論を知った上で、場数を踏むのが一番と思います。

"Adaptive questioning" (”適応的質問”仮訳)という手法があります。大学などでは、インストラターが学習者に対して、その知識や考えに応じて、同じ内容でも、質問をいろいろな形で変えて聞いてみる、というものです。

すばらしいセッションというのは、自分が参加することから得られる”満足感””体得感”が大きいと思うのですが、そのような”なにかやった”と感じられるようなセッションのデザインをし続けたいと思っています。

Michael Sandel教授のセミナーに参加予定です!

2012-05-10 13:07:17 | グローバリゼーション関連
今度来日される、Harvard大学のMichael Sandel教授のセッションに参加予定です。

なんとか行けるとよいなあと思っています。

日本では、「白熱教室」と名付けられたNHK番組で大変、有名になりました。

著書”Justice”は、世界的な大ベストセラーです。

私がもっとも興味深いのは、どのようにディスカッションをリードしていくのか、そのファシリテーションスキルです。

自身が高い見識と深い知識を持ち、それを瞬時に組み合わせ、参加者からの意見をうまくとりいれながらまとめて、さらに大学セッションではteaching point/take home messageも折り込んで、というと、まさに”Art”の世界です。

見て、肌で体験して、学びたいと思っています。

本日のone point lesson: Mondor disease

2012-05-09 18:27:54 | 医学教育
日頃、感染症の専門診療を中心に診療しています。

プライマリケアの重要性を改めて実感したエピソード。

本日遭遇した疾患は、Mondor diseaseモンドール病でした。

乳房周辺の表在性の血栓性静脈炎。痛み止めなどで数週間で自然治癒する疾患です。

ふだんの診療でほとんど遭遇しない疾患のため、他の医師からのコメントでこの疾患だろうということになりました。

peer-reviewの大切さと思います。

臨床医学は、終わりがなく、卒後20年目ですが、まだまだ日々勉強ですね。

"Every patient is your best teacher."といったティアニー先生の言葉を思い出します。

診断の醍醐味

2012-05-08 22:14:35 | 感染症関連
おそらく臨床医学で、特に内科系の醍醐味は臨床推論ではないかと思います。

NYのレジデントになってあらゆるものが新しく、体系的な教育を受けられる毎日がとても新鮮で充実していたことをいまになっても思い出します。

特にユーモアがあって、頼もしく、しかしとてもシャープな鑑別診断を挙げて教えてくれたチーフレジデントだった方や、1日だけでしたが代理で私たちのチームの朝のラウンドをしてくれた超優秀だったブラジル出身でユダヤ人のレジデントなど、いまでもはっきり覚えています。

彼らか教えてもらったことは、いまでも私の診療の根幹をなしています。その教えを少しでも若手の方に伝えたいと思って懸命にやっています。

今日はとてもチャレンジングな症例が多い一日でした。

患者さんにとって確定診断がつくことは、生命の安全面では最重要ですし、教育面でも確実に想定した鑑別診断の中に確定診断が入っている安全な診療(要するに見逃しのない診療)を提供することは、非常に重要です。

鑑別診断の優先順位のつけ方、検査結果が戻ってくるにしたがって、医療面接、身体所見、検査所見などからいかに総合的に判断するかは、臨床能力の根幹ですね。

こうした実践を通した教育こそ、とても大切にしたいことです。

現場の診療では、限られた時間内に確実で安全な診療とタイムリーな教育の両立が実現できることが理想です。北米型教育では、これがかなり確立しているのですが、なんとかこのような現場教育のモデルのよい点をもっと取り入れたいと思いました。

TEDxUTokyoに申し込みました。

2012-05-06 22:48:03 | グローバリゼーション関連
ぎりぎりでしたが、黒川清先生がいつもBlogで書いていらっしゃるTEDxに参加したいとずっと思っていましたが、今度、東大で開催されるそうです。

本日の23時ごろまでが申し込み締め切りだそうで、出してみました。聴講できるといいなと思います。聴講もSelectionがあるようです。

Global leadershipを取っている方がたとネットワーキングしたいと強く思っているので、よい機会になればと思っています。

週末、2月続く緊張が4月末で少し解消してほっとしたせいか、疲れが一気に出ています。

明日から6月初めまで、計画的にこなすべき仕事が多いので、体調に気をつけてやり遂げたいと思います。

連休中に思い描いていたことの半分もこなせず。。。人生ままならず、ですね。

Lancet ID 5月号 日本からの周術期の抗菌薬に関する記事

2012-05-05 13:41:03 | 感染症関連
Lancet ID 5月号に(2012年1月にonline publicationとなっていましたが)、
下記が掲載されています。ご参照ください。

日本で行われた胃がん患者のdistal gastrectomyに関した、周術期抗菌薬投与のrandomized studyです。術中投与と術後2日間延長した投与とでは、SSI発生率において、術中投与はnon-inferiorだったと結論されています。

http://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(11)70370-X/abstract

感染症まるごとこの一冊が増刷になりました。

2012-05-04 11:09:08 | 感染症関連
おかげさまで、「感染症まるごとこの一冊」が3刷の増刷になりました。

医学部の学生教育をするなかで、必須と思われる基本事項をコンパクトにまとめる、というコンセプトで書いた本です。医学部5-6年生から初期研修医の間の、”4年間ゾーン”と私が名づけている学習ステージでの基本事項ともいえます。

この”4年間ゾーン”は、その後のキャリア形成にも非常に重要な時期だと思います。この時期に身につけた思考プロセス、医療面接や身体所見の取り方のスタイルは、その後もおそらくずっと続くものです。

この真っ白なキャンバスともいえる4年間ゾーンの間に、足腰の強いしっかりとしたトレーニングを積んでいただきたいと思っています。

数学やスポーツでたとえるなら、医療面接と身体所見は、掛け算の九九の感じでしょうか。
スポーツでは基礎筋力トレーニングです。それなしには、その後、どんなことも十分にできないことが自明です。

その後、コモンな疾患をいろいろな患者さんで経験し(分数や方程式)をして、感染症で言うなら、臓器移植などの免疫不全の患者の診療は微分積分かそれ以上のレベル、といえます。

Fever work-up(発熱基本検査)の血液培養採取は、分数から一次方程式ぐらいの基本中の基本。緑膿菌カバー薬をしっかり認識して、使用できるようになることも一次方程式かな。

その先の、臨床判断、治療方針の決定など、行列や指数関数のような感じでしょうかね。

まとめますと、感染症診療の基本といっても、臨床医学の基本は確実にマスターすることが必須です。抗菌薬や感染症だけを取り出して学習することは難しいのです。

教える側としては、知識の階層化を明確に認識し、それぞれの学習ステージに応じた対応と各自個人個人としての到達度の設定が必要です。。

その意味で、この本は、”最低限のボトムライン”になる知識の集約であり、将来に進む診療科によらない診療科・臓器横断的な基本知識であり、生涯にわたりブラッシュアップしていただきたい内容です。。

ご参考までに。。

現在、世界の医学教育は、診療科によらず、すべての医学生に教育すべき項目として、
カリキュラムに下記が公式に導入されてきています。


プロフェッショナリズム professionalism

医療安全 patient safety

感染対策 infection control

教育スキル teacher as a student or resident


こうした世界の流れからも、ぜひ、すべての医学生、研修医の方に、ご自分でこれらの項目について、学ぶ機会をつくってほしいと思います。

日本でも、これらが公式カリキュラムのなかに、”座学”でなく、”実践”として組み込まれることを目指したいと思っています。






NEJM 5月3日号 必読

2012-05-03 12:58:05 | Science全般
最新版のNew England Journal of Medicine 5月3日号。


まだaudioで聞いていないのですが、perspectivesに、エビデンス、患者の好み、レコメンデーション(ガイドラインなど)をどのようにバランスを取るか、といった記載があります。

非常に興味深い内容なので、ぜひ、じっくり読むか聞くかしたいと思っています。

また同じ号に、医学教育についての記載もあります。

audioでサマリを電車で聞いてみようと思います。

いただいた仕事をがんばっています。

2012-05-03 12:47:47 | 感染症関連
連休前に急遽いただいた重要な仕事があり、昨夜は本日が休日のこともあり深夜までオフィスでそれに取り組んでいました。

英語で情報をタイムリーかつ十分な量で発信することは、現在の私の最優先課題であり、今回貴重な機会をいただきました。短時間にも質の高い仕上がりになるように懸命に取り組んでいました。英語のtextbookのchapterを共著させていただく仕事で、共著者の方がドラフトを作成されているので、感染症の観点から、peer-reviewとco-authorとして加筆・修正する仕事です。

研ぎ澄まされた集中力が持続するのはめったにないので、昨夜も遅くなりましたが、一気に
全体を見渡し、ドラフトを作成するところまでやりました。

論理展開やcitationが甘いところを、少し時間をおいて新たな文献検索もして仕上げたいところです。

4連休ですが、このくらいまとまって集中的な時間が取れることは少ないので、ここぞとばかりにほか3つぐらいpaperを仕上げる予定です。昨年も、連休中の集中により課題が進み、その後のプロセスがスムーズになった経験をしました。

今年も6月上旬の渡欧前に、5月いっぱいで複数の重要な仕事の大枠を終了したいと思っています。