矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

感染症まるごとこの一冊が増刷になりました。

2012-05-04 11:09:08 | 感染症関連
おかげさまで、「感染症まるごとこの一冊」が3刷の増刷になりました。

医学部の学生教育をするなかで、必須と思われる基本事項をコンパクトにまとめる、というコンセプトで書いた本です。医学部5-6年生から初期研修医の間の、”4年間ゾーン”と私が名づけている学習ステージでの基本事項ともいえます。

この”4年間ゾーン”は、その後のキャリア形成にも非常に重要な時期だと思います。この時期に身につけた思考プロセス、医療面接や身体所見の取り方のスタイルは、その後もおそらくずっと続くものです。

この真っ白なキャンバスともいえる4年間ゾーンの間に、足腰の強いしっかりとしたトレーニングを積んでいただきたいと思っています。

数学やスポーツでたとえるなら、医療面接と身体所見は、掛け算の九九の感じでしょうか。
スポーツでは基礎筋力トレーニングです。それなしには、その後、どんなことも十分にできないことが自明です。

その後、コモンな疾患をいろいろな患者さんで経験し(分数や方程式)をして、感染症で言うなら、臓器移植などの免疫不全の患者の診療は微分積分かそれ以上のレベル、といえます。

Fever work-up(発熱基本検査)の血液培養採取は、分数から一次方程式ぐらいの基本中の基本。緑膿菌カバー薬をしっかり認識して、使用できるようになることも一次方程式かな。

その先の、臨床判断、治療方針の決定など、行列や指数関数のような感じでしょうかね。

まとめますと、感染症診療の基本といっても、臨床医学の基本は確実にマスターすることが必須です。抗菌薬や感染症だけを取り出して学習することは難しいのです。

教える側としては、知識の階層化を明確に認識し、それぞれの学習ステージに応じた対応と各自個人個人としての到達度の設定が必要です。。

その意味で、この本は、”最低限のボトムライン”になる知識の集約であり、将来に進む診療科によらない診療科・臓器横断的な基本知識であり、生涯にわたりブラッシュアップしていただきたい内容です。。

ご参考までに。。

現在、世界の医学教育は、診療科によらず、すべての医学生に教育すべき項目として、
カリキュラムに下記が公式に導入されてきています。


プロフェッショナリズム professionalism

医療安全 patient safety

感染対策 infection control

教育スキル teacher as a student or resident


こうした世界の流れからも、ぜひ、すべての医学生、研修医の方に、ご自分でこれらの項目について、学ぶ機会をつくってほしいと思います。

日本でも、これらが公式カリキュラムのなかに、”座学”でなく、”実践”として組み込まれることを目指したいと思っています。