矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

AMEE 2016 総括 その1

2016-09-01 22:47:47 | AMEE 欧州医学教育学会
今年のAMEE 2016の総括 その1

1. 参加10周年

2. Research paperのreviewerとして4 回目

3. ポスターor oralも2008年、2010年、2011年、2012年、2013年、2014年、2016年と継続しています。

4. Plenary lecture 全員参加セッションで初めて質問しました。


2006年にストックホルムで開催されたKarolinska and Harvardのjoint faculty developmentコースに参加したのが大きな分岐点となりました。
そこでかけがえのない友人たちと出会い、AMEEを紹介していただき、AMEE学会やシンガポール、New Yorkなどで交流を続け信頼関係も厚いコラボレーションができる形になっています。Friendshipも10周年でした。

医療者教育修士(MHPE)を取得してから、学会でもreviewerのお仕事をいただけるようになりました。リサーチについて勉強する機会となっております。

ポスター(一部はoralで若手の方にしていただきました)は、これまで医学教育活動をreportするものが大半でしたが、Ph.Dプロジェクトの一部の発表もしました。日本からも50名以上の参加者がいたそうで、過去最高のようです。

学会全体としてもハイクオリティーなリサーチが増えている印象を持ちました。進化を肌で感じます。

全員参加のPlenary sessionで、医学生さんのプレゼンテーションが素晴らしく、質問させていただきました。
積極的に質問する姿勢をいつも持っていますが、実行できて1つ目標達成です。

圧巻は最終日のCompetency-based medical education (CBME)コンピテンシー基盤型医学教育の是非を問うシンポジウムで白熱したディスカッションが展開されたこと。

演者が、まさにこの領域の世界的リーダーで、最終日の午前中、参加者も少なくなる時間帯ですが、会場は満場に近い盛況でした。
プログラムで錚々たる演者の名前を見て、絶対参加したいと思い、気合を入れて参加しました。

予想通り、シンポジストのプレゼンテーションは圧巻。
シンポジストとして米国、カナダ、オランダ、など重要組織の重職の方がたを中心に参集していました。

結論として、CBMEは、現時点ではbest availableであるが、労力がかかり、現場では導入・実施に疲弊している状況もある、などの議論が主体でした。

私も発言の機会をうかがっていましたが、時間切れになってきてタイミングが難しく断念しました。

米国、英国、オランダなどのリーダー諸国とその国からの参加者に発言の主導権が握られている状況で、日本はCBMEを80あまりの医学部が導入する準備をしている段階で、そのような国もある、ということをシェアしたいと考えていました。

別の形の”植民地化”でないかとの懸念も、途上国を中心にあります。

議論はTo be continued となっています。

来年のAMEEにも万全の準備をして臨みたいと思っております。





麻しんの制圧へ

2016-09-01 11:25:09 | 感染症関連
今回の麻しんの広域地域でのアウトブレイク。

公開されている疫学情報を見ると、ワクチン未接種の方が大半。年代は20-30代。1990年代前後に生まれた方が大半となっており、ちょうど
ワクチン政策のはざまでワクチン接種していない「ポケット集団」と考えられる未接種集団が発症しているように推測しております。
(より精密な疫学調査は必要かと思います)

当院では、若年患者の無菌性髄膜炎などでは麻しん、風疹、ムンプス、水痘の抗体検査を実施し、陰性の患者にはワクチン接種を推奨するプラクティスを実施しております。普段、医療機関にかかる機会が少ない若年者に対しては、医療機関にアクセスしている機会を逃さずに、確実にワクチン接種をお願いしたいと考えます。

他国に比べ、予防医学の推進が遅れてしまっている日本の医療を「予防ありき」にパラダイムシフトしない限り、「後手になっての治療」の医療から脱出できません。

医学部学生教育でも、「予防」を実習で体験する、実際に患者に指導する機会はほとんどないように見えるため、smoking, modifiable risk factors (高血圧、糖尿病、高脂血症など)は、確実に患者教育していく姿勢を導入したいと考えます。


(余談ですが、症例ケースプレゼンテーションでも)
臨床現場教育でも、成人内科患者のプレゼンテーションで、major risk factorがある患者の場合は、

それらをまず提示するのは「基本中の基本」であり、その認識と浸透を目標にフィードバックしております。

フィードバックされても、「??」『はあ〜?』ときょとんした表情の方も多く、診療文化と共通認識を変えるための課題の大きさを認識しております。。。


改善が必要な例
(主語なしでスタート、年齢も性別もなし、既往歴も最後にしか出てこない)
昨日、発熱で来院しました。咳はでません。家族と来院しました。
脳梗塞の既往あり、xxxx中略xxxxx  既往歴に高血圧と糖尿病があります。
(聞いている医療者が臨床推論をするには困難なまとめ方)

スマートな提示では
年齢、人種、性別を提示、基本の既往歴はここで提示、その後、主訴に関連した現病歴の順。

80歳の(日本人)男性、高血圧、糖尿病、喫煙歴があり10年前に禁煙、左の脳梗塞で右片麻痺の既往があります。
要介護4で自宅療養中です。肺炎球菌およびインフルエンザワクチンは接種歴なしの患者です。
この患者が、昨日、発熱を主訴に、家族が同伴し救急受診しました。

臨床推論力を高めるため、仲間でフィードバックし合いましょう〜。