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Opened Zipper

利己的な遺伝子 / リチャード・ドーキンス

1997-12-21 12:00:00 | 旧 Opened Zipper
学生の頃は生物を学んでいたのですが、周囲で話題になっていた本がありました。
実際に講義の中で使用したりはしなかったのですが、多くの人が読んでいたようです。
内容を聞いてみると、とても面白そう。
大学生協の書籍コーナーに置いてあるのも見かけたんですが、当時は(今でも)とても貧乏だったので、買わないままでした。

結局この本を読んだのは、大学を卒業してから。
大分市内の本屋で見つけ、そのときたまたま財布の中に余裕があったので買ってしまいました。
それがリチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』。
この本を読んで、眼から鱗が落ちました。
(あるいは眼に鱗が飛び込んで来たのかも知れません)

かいつまんで説明できるほど簡単な内容ではないのですが、遺伝子の淘汰のしくみについて書かれたものです。
より後世に伝えられる可能性が高いふるまいを行わせる遺伝子ほど、生き残るということ。
例として挙げられているのは、自分の命を投げ出して我が子を救う親の話です。
感動的な話ですが、この本の中ではそのふるまいは遺伝子によるものだと説明されています。

我が子が危険にさらされた場合、身を呈して守る遺伝子を持つ親と、その遺伝子を持たない親がいたとします。
どちらの持つ遺伝子の方が、より後世に伝わる可能性が高いか?
身を呈して我が子を救った場合、親の命はそこで終わります。
しかし子供の中には親の遺伝子(の半分)が受け継がれています。
その遺伝子の中に、身を呈して我が子を救うふるまいをさせる遺伝子も含まれるかもしれません。

対して我が子を救わなかった親の場合、自分は生き残りますが、その後子供を作ることができなければ親の遺伝子は後世に伝えられないまま終わります。

実際に子供が危険にさらされる状況はそう頻繁に起こるとは思えませんが、長い時間の中で見ると、より後世に伝えられる可能性の高い遺伝子の方が多くなるだろう、という話です。
その結果、身を呈して我が子を救うふるまいを行わせる遺伝子は広まり、定着していったのだろうと。

単純に淘汰だけを考えると、より生存に適した強い個体が生き残ると思ってしまいます。
しかし実際には身を呈して我が子を救う親もいます。
自分の命を投げ出すのは、生き延びるということには反する行為です。
強いものが生き残るという考えと矛盾する行為ですが、遺伝的な淘汰として考えると納得できる行為なのです。

同様に、人間に限らずさまざまな生き物の行動がなぜ行われるのかといったことを、遺伝的淘汰の考えで説明しています。
この本では、なぜ自分の血縁者の子供は可愛いのか、なぜ男は浮気するのかといった事が、とてもすっきりと納得できる説明をされています。
お陰で自分が何か行動するときには、『これは自分をそうさせる遺伝子を俺が持ってるからなんだな』と考えるようになりました。

ある程度は生物の知識が要るかも知れませんが、この本を読んだ人はきっと人生観が変わるでしょう。
ただしその行動を遺伝子が起こさせるからといっても、それは遺伝子の戦略的に納得できる行動だと言うだけで、社会的に正しい行動とは限りませんのでご注意。

※私は浮気はしてません。

科学選書9
『利己的な遺伝子』
(増補改題『生物=生存機械論』)
著者:リチャード・ドーキンス
訳者:日高敏隆・岸由二・羽田節子・垂水雄二

発行:紀伊国屋書店
定価:2800円(当時)
ISBN4-314-00556-4