中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

最近の小職セミナー資料より⑦

2018年07月24日 | 情報

今回の連載は、病気療養しながら求職中の一般市民向けです。
しかし、企業の人事労務部門や産業保健スタッフのみなさんにも参考になることでしょう。

うつ病等の気分障がいや、その他の精神疾患で療養中のみなさん、どのようにお過ごしでしょうか?どのような心境でしょうか?
一日でも早く、元どおりの社会生活を取り戻すために、まず、みなさんの毎日の生活を整理してみましょう。

結論のみを述べますと、以下のような3つの括りに整理できます。
まず、「治療」です。病気を治さないと、何も始まりませんね。
ふたつめは、「生活」です。社会復帰するまで、どのようにして生きていくのか、その手段を確保しなければなりません。
最後に、「社会復帰の準備」です。病気が回復してきたからといって、いきなり就労するのは、危険です。
ですから、いろいろと準備が必要です。

それでは、「治療」について考えてみましょう。
①    当たり前の質問ですが、主治医は、いらっしゃいますか?
あなたの病気を治療する主治医が必要です。いなければなりません。
②次に、主治医には、何でも、正直に、正確に話せていますか?
③ さらに、主治医を信頼していますか?
その結果、主治医と良好な関係ができていますか?

もし、主治医と良好な関係ができていないのであれば、セカンドオピニオンを求めたり、主治医の変更を考えることも必要です。
ただし、主治医を変更することは大きなリスクを伴いますので、慎重に進めなければなりません。

次の、基本的な治療の目的を確認してみましょう。
小職がお世話になっていた「うつ病の予防・治療日本委員会(JCPTD)に教授いただいた資料から引用です。
うつ病の治療の目的です。
・うつ病のあらゆる症状を軽減し、最終的に取り除く
・発症前の心理社会的要因および職業的機能を回復する
・再燃※および再発を防止する
・自殺を防止する
※再燃とは、治療中にまたその疾患が悪化することをいいます。
また、再発とは、いったんよくなっても再び症状が出現することをいいます。

さて、治療の効果があらわれ、症状が一時的あるいは継続的に軽減した状態を「寛解」といいます。
以降も服薬は必要ですが、臨床的には治療の余地がない状態になります。
なお、精神科領域では、「完治」あるいは「治癒」という表現を使用しません。
この段階になると、主治医は就労の準備に入ることを認めます。

もう一つ大切なことがあります。服薬は、主治医の指示に従うことです。
寛解に近づいてくると、当事者はもう治ったのではないかと勝手な解釈をします。
しかし、病状は一進一退を繰り返して回復していきます。
病状が少し良くなったと思っても、主治医の指示がない限り、服薬は継続しなければなりません。
自分の判断で服薬を止めると、症状が「再発」する可能性が極めて高くなります。主治医の指示なしで、服薬を止めてはいけません。
服薬は、社会復帰後も続けなければなりません。場合によっては数年間も継続しなければならないこともあります。

以上、治療について小職のレベルで述べましたが、これ以上については、主治医にお尋ねください。

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働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律

2018年07月23日 | 情報

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律が、平成30.7.6公布(平成31.4.1施行)されました。
労働安全衛生法の改正のみ、衆議院HPより抜粋し、以下に記します。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19605063.htm

第四条 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「-第百十五条」を「-第百十五条の二」に、「第百十五条の二」を「第百十五条の三」に改める。
第十三条第四項中「これを尊重しなければ」を「厚生労働省令で定めるところにより、
当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければ」に改め、
同項を同条第六項とし、同条第三項に後段として次のように加える。
この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。

第十三条第三項を同条第五項とし、同条第二項の次に次の二項を加える。
3 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。
4 産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、
労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として
厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。

第十三条の二に次の一項を加える。
2 前条第四項の規定は、前項に規定する者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせる事業者について準用する。
この場合において、同条第四項中「提供しなければ」とあるのは、「提供するように努めなければ」と読み替えるものとする。

第十三条の二の次に次の一条を加える。
第十三条の三 事業者は、産業医又は前条第一項に規定する者による労働者の健康管理等の適切な実施を図るため、
産業医又は同項に規定する者が労働者からの健康相談に応じ、
適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。

第十九条の三中「第十三条の二」を「第十三条の二第一項」に改める。

第六十六条の五第一項中「第七条第一項」を「第七条」に改める。

第六十六条の八第一項中「該当する労働者」の下に「(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。
以下この条において同じ。)」を加え、同条の次に次の三条を加える。

第六十六条の八の二 事業者は、その労働時間が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超える労働者
(労働基準法第三十六条第十一項に規定する業務に従事する者(同法第四十一条各号に掲げる者及び第六十六条の八の四第一項に
規定する者を除く。)に限る。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
2 前条第二項から第五項までの規定は、前項の事業者及び労働者について準用する。
この場合において、同条第五項中「作業の転換」とあるのは、
「職務内容の変更、有給休暇(労働基準法第三十九条の規定による有給休暇を除く。)の付与」と読み替えるものとする。

第六十六条の八の三 事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、
厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

第六十六条の八の四 事業者は、労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者であつて、
その健康管理時間(同項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が当該労働者の健康の保持を考慮して
厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
2 第六十六条の八第二項から第五項までの規定は、前項の事業者及び労働者について準用する。
この場合において、同条第五項中「就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等」とあるのは、
「職務内容の変更、有給休暇(労働基準法第三十九条の規定による有給休暇を除く。)の付与、
健康管理時間(第六十六条の八の四第一項に規定する健康管理時間をいう。)が短縮されるための配慮等」と読み替えるものとする。

第六十六条の九中「事業者は、」の下に「第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項又は」を加える。

第百一条第二項を同条第四項とし、同条第一項の次に次の二項を加える。
2 産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務の内容その他の産業医の業務に関する事項で
厚生労働省令で定めるものを、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、
労働者に周知させなければならない。
3 前項の規定は、第十三条の二第一項に規定する者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせる事業者について準用する。
この場合において、前項中「周知させなければ」とあるのは、「周知させるように努めなければ」と読み替えるものとする。

第百五条を削り、第百四条中「第六十六条の八第一項」の下に「、第六十六条の八の二第一項及び第六十六条の八の四第一項」を加え、
同条を第百五条とし、第百三条の次に次の一条を加える。

(心身の状態に関する情報の取扱い)
第百四条 事業者は、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、
労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、
労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、
及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
2 事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。
3 厚生労働大臣は、前二項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
4 厚生労働大臣は、前項の指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し、
当該指針に関し必要な指導等を行うことができる。

第百十五条の四中「第百十五条の二第一項」を「第百十五条の三第一項」に改め、同条を第百十五条の五とし、
第百十五条の三を第百十五条の四とし、第百十五条の二を第百十五条の三とし、第十一章中第百十五条の次に次の一条を加える。

(厚生労働省令への委任)
第百十五条の二 この法律に定めるもののほか、この法律の規定の実施に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
第百十九条第一号中「第百四条」を「第百五条」に改める。
第百二十条第一号中「第六十六条の六」の下に「、第六十六条の八の二第一項、第六十六条の八の四第一項」を加える。

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19.20日は、休載します

2018年07月18日 | 情報

19,20日は、出張のため当ブログを休載します。
再開は、22日(月)です、よろしくお願いします。

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勤務間インターバル制度

2018年07月18日 | 情報

小職は、従来より勤務間インターバル制度の導入に賛成です。
御社においても、導入を検討してください。

看護師らに一定の勤務間隔 政府大綱最終案 過労死防止へ検討
7/13(金)  産経

政府が今月下旬の閣議決定を目指す新たな「過労死等の防止のための対策に関する大綱」最終案の全容が12日、分かった。
深夜勤務が非常に多い看護師ら医療従事者を対象に、終業から次の始業まで一定の時間を確保する「勤務間インターバル制度」の
導入の検討を盛り込み、メディア業界に対しては下請け構造の実態把握と長時間労働への対応を求めた。
大綱は平成27年に初めて策定され、今回は今通常国会で働き方改革関連法が成立した後の3年ぶりの改定となる。
業種ごとに行うべき対策を示し、特に長時間労働者が多いとされる業種、分野として
(1)トラック運送業(2)教職員(3)医療(4)情報通信業(5)建設業-などを取り上げた。
医療分野については「質の高い医療に対するニーズの高まりなど」から長時間労働が「他職種と比較しても抜きんでて」いるとし、
勤務間インターバル制度の必要を示した。
厚生労働省は2月に「医師の働き方改革に関する検討会」で中間的な論点整理をまとめ、
医師の行うべき業務とそうでない業務の明確化▽複数主治医への移行
▽女性医師らの出産、育児と医師の両立支援-などの検討を盛り込んだ。
ただ、こうした取り組みを進めると、医療を必要とする人が受診を控えかねないとの指摘があった。
このため大綱最終案では「患者側も含めた国民的関わりによって医療提供体制を損なわない改革を進める必要がある」と記した。
勤務間インターバル制度をめぐっては、日本看護協会が4月、厚労省に対し
「勤務間隔11時間以上」かつ「勤務拘束時間13時間以内」という負担軽減策を要望している
メディア業界に対しては「重層下請け構造や長時間労働の傾向が見られる」と問題点を挙げ、
「実態把握を行った上で業界の特性に応じた取り組みを進めていく必要がある」と記した。

我が国における勤務間インターバルの状況-ホワイトカラー労働者について-
平成30年7月10日 総務省 社会生活基本調査の結果から 総務省HPより引用

政府は,働き方改革の実現のため,長時間労働の是正に取り組んでいます。
このような中で,過重労働の防止及び長時間労働の抑制に有効であると考えられる勤務間インターバル注1)の導入について,
関心が高まっています。
そこで総務省統計局では,平成23年及び平成28年社会生活基本調査のミクロデータから,
ホワイトカラー労働者注2)について,勤務間インターバルを推計しました。

要約
平成28年の勤務間インターバルの状況
•「14時間以上15時間未満」の人が21.7%と最も多い
•「11時間未満」の人は10.4%
•「教員」では「11時間未満」の人が26.3%と多く,ホワイトカラー労働者全体の約2.5倍の割合

5年前と比較した勤務間インターバルの状況
•「11時間未満」の割合は0.4ポイント上昇
•「教員」では「11時間未満」の割合が8.1ポイント上昇

本稿での「勤務間インターバル」とは,勤務と次の勤務との間隔のことを指します。
例えば,1時間の休憩時間を挟む9時から18時までの8時間勤務の場合,
就業終了の18時から翌日の就業開始の9時までの15時間が勤務間インターバルとなります。
EUでは,労働時間指令により,労働者の健康と安全確保の観点から,
24時間につき最低連続11時間の休息時間(勤務と勤務の間隔)を付与することが義務付けられています。
長時間労働に関する一つの判断水準となる月80時間の残業時間を1営業日当たりで考えると,およそ4時間の残業となります。
仮に,通常は上述の例のように9時から18時までの8時間勤務の人が4時間の残業をした場合を考えると,
22時まで勤務することとなり,勤務間インターバルは翌朝9時までの11時間となります。
詳細は、 https://www.stat.go.jp/data/shakai/topics/topi112.html

 

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職場の環境改善(続編)

2018年07月17日 | 情報

当ブログ18.6.20掲載の「職場の環境改善」の続編です。
たくさんの事例が紹介されていますので、「いいとこどり」をしてください。

東京大学 川上憲人教授グループが公表している職場環境改善ツールです。
http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/

川上教授は、長年にわたりメンタルヘルス対策に取り組んでおり、
ストレスチェックマニュアル検討会の中心的委員でもあります。
参考になりますね。

・「ストレスチェック制度を効果的に実施するポイントをお教えします!」
http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/ストレスチェック班成果リーフレット.pdf
当リーフレットには、職場環境改善が労働者の心理的ストレス反応を改善し、生産性を向上させることがわかりました、
即ちエビデンス(科学的根拠)であるとしています。経営トップへの説得材料として使用できますね。
因みに、1次予防を目的としたストレスチェック制度には、これまでエビデンスがありませんでした。
厚生労働省が策定した「仮説」だったのです。

・「産業保健スタッフのための、セルフケア支援マニュアル(ストレスチェックと連動した面接の進め方)」
http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/セルフケア支援マニュアル(クイック版).pdf

・「職場環境改善 スタートのための手引き」
http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/職場環境改善スタートのための手引き.pdf

・「いきいき職場づくりのための参加型、職場環境改善の手引き」
http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/参加型職場環境改善の手引き(2018改訂版).pdf

・「ストレスチェック制度における医師による面接指導のヒント集」(注;医師向けです)
http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/医師による面接指導ヒント集.pdf

 

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