ある専門誌の記事を紹介します。
従業員が、うつ病など、メンタルヘルス不調になったら会社はどのような対応をすべき、についての専門家による解説です。
「会社は、当該労働者のメンタルヘルス不調の原因が業務なのか否かを把握しなければなりません。
厚生労働省『精神障害の認定基準』を参考に、認定基準に該当するような長時間労働がなかったか、
災害・事故など重大な出来事がなかったかなどを検証します。
本人が労災申請を希望すれば、該当するかどうかを一緒に確認しましょう。
該当すれば労災、該当しなければ健康保険を利用することになります。
この入り口を間違えると、その後の手続が煩雑になるので、注意を要します。」
どうでしょうか?一見、正しいように見えますが、実務はそう簡単にはいきません。
まず、会社では、精神疾患の場合には、事故やケガのように労災かどうか簡単には見分けがつきません。
分からない、というのが実態です。
当該企業が当該事案を労災であると確信して、労基署に報告(則第97条)しても、
労基署が労災事案として受理するかどうかは分からないのです。
あるいは、労基署が労災認定しなくても、審査請求、再審査請求により労災認定されるかもしれません。
さらに、労基署が労災認定しても、司法が労災認定を否定した判例もあるくらいです。
結論としては、会社・事業場としては、精神疾患の場合には、労災ではないかと疑問があっても、
私傷病として事務処理をする傾向にあります。
これは、ある意味で止むを得ないことです。
ただし、会社側は、この流れを根拠にして会社側が一方的に有利になるような対応をしてはいけません。
あくまでも事実を追及して、当該労働者と親族には誠実に対応しなければなりません。
その典型例が、東芝(うつ病・解雇)事件(最二小平26.3.24)でしょう。