Q;300人規模の製造業の人事課長です。休職していた従業員の復職先で、トラブルになっています。
休職前と異なる職場に復帰を命じたのですが、「原職復帰」を主張して譲りません。
当該休職者は、休職前わが社でも重要な職務を担当していましたので、
マンパワーの不足は致命的欠陥になることを憂慮して直ぐに後任を補充しています。
当社の人事異動方針をどのようにして説得したらよいでしょうか?
A;厚労省の「職場復帰支援の手引き」に「復帰する職場は、原則として元の職場とする」(P25)と記述されています。
「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成24年7月改定。厚生労働省発表)
https://www.mhlw.go.jp/newinfo/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf
本手引き発出されてから既に12年間が経過しており、精神疾患に関する法令もほとんどないことから、
司法、行政、企業労務等多くの場面で引用されていますので、事業場で実務を担当する人たちばかりではなく、
従業員にも周知されている状況にあります。
ですから、当該休職者が元の職場に復帰したいと主張するのはやむを得ないことでしょう。
しかし、我が国に労働慣行では、労働者との労働契約に特段の定めがある場合を除き、
会社側には休職前と同様(または、同じ)の業務に就かせる義務はありません。
ですから、就業規則に「原則として元の職場とする」との規程がなくても、会社側の裁量で決めることができます。
情勢の変化が激しい今日では、1~2年で企業を取り巻く環境は激変しますので、
組織改編や補充人事などは日常茶飯事のことでしょう。
復帰する職場が残っているほうが稀と考えるべきでしょう。
結論として、当該復職者に対して復職先は、当該従業員の能力・経験・将来性を総合的に検討した決定事項であり、
会社の方針に従ってくださいと説明してください。
なお、一人でも例外をつくると将来に禍根を残すことになりますので、留意してください。