中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

休職復職Q&Aシリーズ⑧

2022年08月24日 | 情報

Q;従業員規模100名程度の製造業の人事課長です。
無断欠勤や遅刻が多いうえ、従来に比べて業務のパフォーマンスが低下している従業員がいます。
産業医の面談で専門医の受診をアドバイスされ、当該従業員に専門医の受診を命じましたが、
当該従業員は医師の受診を拒否しています。対処方法を教えてください。

A;産業医の面談まではこぎつけたのですね。ここまでにも進まない事例も多々あります。
会社側関係者の努力に敬意を表します。言葉では簡単ですが、大変ですよね。

さて、会社側は当該従業員に医師の受診命令を発すればよいのですが、
ご質問されるからには、受診命令を規定するような就業規則がないのでしょうね。

通常であれば、従業員は会社の命令がなくても、熱がある、骨折したかもと意識があれば、専門医を受診するものです。
ですから、就業規則に医師への受診を命じる規程がないのは、ごく当たり前のことです。

まず、当該従業員と面談し、なぜ専門医を受診しないのか、理由を聞き出してください。
考えられる理由としては、
・わたしは、病気ではない
・休職するような診断書がでるのが怖い
・休むと、給与が出なくなり、生活できない 等々が考えられます。

多くは、当該従業員が勝手に思い込んでいる仮定・仮説にすぎません。
貴職は、当該従業員に対して医師への受診を説得し、診断書を提出させてください。
反対に、何の説明もせずに医師への受診を命じたり、休業を命じたりすれば、解決できる事案もかえってこじれるばかりです。

なお、就業規則に規程がなくても会社の安全配慮義務の観点から、合理的かつ相当な理由がある場合には、
医師への受診を命じることができるとの判例(京セラ事件 東高昭61.11.13判)もありますが、
このような対処方法は「最後の最後」にしてください。

また、受診及び診断書の費用は、会社が負担することを前提としてください。
以降の治療費用は、労働者負担で構いません。

追記;記載する順番が前日と逆転してしまいました。
今シリーズは、本日で終了です。

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