中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

休職復職Q&Aシリーズ⑤

2022年08月05日 | 情報

Q;社員100人程度の製造業で総務課長をしています。休職者(うつ病により)が提出した主治医の診断書に、
「復職にあたっては、現職場と異なる職場への異動が望ましい」と付記されています。
主治医の付記に対応しなければいけませんか?

A; 主治医の診断書には、「休職前と異なる職務・職場に復帰させることが望ましい」という付記がある場合があります。
まず、診断書を嘱託の産業医に見せてください。
産業医には、当該労働者が休職した際の状況、その後の休職中の状況等を補足説明し、産業医の意見をもらいます。
会社側は、主治医が付記する要請を受け入れる必要はありませんが、
念のために産業医には、当該主治医に診断書の付記について、その趣旨を確認してもらうことが必要です。
当該主治医の回答としては、「患者が、診断書にそのような付記をするよう求められたからであって、
特に診断上の理由はない」等が推測できます。
主治医は原則患者ファーストですから、患者から求められれば、例え復職できそうにないにもかかわらず、
「復職可」の診断書を認める場合もあるようです。

原則として、復職者の復職先の選定は、一部の従業員を除いて会社側にフリーハンドがあります。
元職でも構いませんし、元職ではなくても何ら問題はありません。
大切なのは、復職先についてその理由を復職者に丁寧に説明することです。

ただし、労働者の休職の原因が、上司や職場のハラスメントが明らかな場合には、元の職場に戻すわけにはならないでしょう。
しかし、ここで大きな問題が惹起します。
まずしなければならないことは、事実関係の究明です。本当に上司や職場のハラスメントがあったならば、
私傷病ではなく、労災事案として対応しなければなりません。
会社がこのことを隠ぺいするようなことがあれば、後日争いになりますし、労基署より所謂「労災隠し」を指摘されてしまいます。
会社として労災事案は避けたいところですが、起きてしまったことは法令等に従って正しく対処してください。

「心理的負荷による精神障害の認定基準」(厚生労働省)2020年5月改正

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/dl/120427.pdf

参考までに、正しく処理した場合に考えられるメリット、デメリットを列記します。

メリット
・法令遵守の履行
・所謂、「労災隠し」の回避
・従業員のモラールの向上
・企業風土の健全化

デメリット
・労災保険料の上昇
・企業の社会的評価の下落(一時的)
・企業風土の改善のチャンスを失う

以上を参考にして、会社側にはそれなりの対処が望まれます。

コメント
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