高木晴光の 『田舎と都市との ・ 日々こうかい記』

「新田舎づくり」を個人ミッションとし、田舎と都市とを行き来する人生・仕事のこうかい(公開・後悔・航海)日記

NPOの継承問題

2021-11-01 17:04:46 | プログラム 研修、講演等

NPOの継承について・・20分 NPO中間支援団体合同研修会 講演要旨

北海道NPOサポートセンター経由で旭川NPOサポートセンターを会場とした道内のNPO中間支援団体の合同研修会の講師に招かれて10月29-30日と旭川へ出張をしてきました。 演題が「NPOの経営継承について」と難題で持ち時間も20分しかないので、PPTスライドを作ることを諦めて KPP(紙芝居プレゼンテーション)で要旨キーワードだけ書いて話す方法でやっつけて来ました。 せっかくなので、講話要旨を珍しく書いたので、貼り付けます。(ちょっと長いです・・)

 

◆自己紹介とNPOねおすの設立

NPO創成期のころ北海道で一番先にNPOの承認を受けました。北海道NPOサポートセンターと富良野演劇工房と一緒に道庁にNPO法人NEOSという自然体験活動を普及・人材育成をする団体として法人申請を上げたのは、1992年前後かな。 NPO法案が施行されて即対応でしたので、全国でも一番早い承認だったと思います。 以来、「自然と人、人と人、社会と自然のつながりづくり」をミッションとして、自然学校という、それを実現する 場、プログラム、担い手づくりを行い、道内や本州に拠点づくりを行ってきましたが、2016年かな・・、解散し、それまで創った各地の拠点を独立させ、私もそのひとつである、道南の人口2700人の小さな町、黒松内で廃校舎を活用して、「黒松内ぶなの森自然学校」を経営しています。

 

◆ねおすの解散

NPOねおすは、常勤スタッフ10数名、夏の繁忙期の季節雇用や補助事業雇用を含めると50名近いスタッフが所属する大所帯になりました。複数の拠点で活動していると、それぞれの地域事情により運営の仕方に違いがでてくるので、全てを統括する経営の仕方ではリスクマネージメントが取れない、迅速に経営決断ができないなどの理由により、それぞれの拠点の責任者を代表としたNPOや個人事業に分化させました。

 

現在、私はNPO法人くろす野外計画社(黒松内ぶなの森自然学校を運営受託)、NPO法人ねおす共育ファンドというふたつのNPOの理事長をしています。

 

◆今日のテーマは自分ごとでもある。

 NPOねおすは、その理念・ミッションを継承しつつ、いわば上手に解散継続することができたと自負していますが、現在足元の自然学校の経営の継承については、私も60代後半に入り、再び現実問題として抱えております。

 NPOは、そのサービスの対象者・受益者によって一概ではないと思います。私たちの活動は、いわば一方的なおっせかい業であるので、なくなったとしても、これまでに私たちの活動サービスを受けている方々には直接的に生活に影響があるものではないでしょう。道のサポセンの生みの親でもあった小林さんは、「NPOがなくなる、なくてもいい社会になればいい」とおっしゃっていましたが、福祉系のNPOであると、サービスの継承がないと受益者はとたんに困ることになってしまいますよね・・・。

◆では・・、どうするべきか

というと、なかなか具体的な提案ができないのが、すいません、率直なところなのですが・・、

 こんなことを言ってしまうと、元も子もないのですが・・、 ひとりで無理をしないで、「社会課題を明確に提示しながら止めてしまう」というのが大きな手だと正直思います。しかし、そうは行かないという福祉系NPOがほとんどでしょうから、自前に後継者がいないのであれば、企業のように同業者合併や他種NPOとの連携経営を模索するしかないのではないでしょうか。  長い目でみれば、現有スタッフの他NPOとの交換研修・サッカーのような選手のレンタル制度や 思い切って野球のドラフト制度みたいな業界全体の人材の共有・活性化を狙ってもいいのではないかな。 NPO活動の蛸壺化をいつも心配しています。レンタルやドラフト制度は極端としても、長い目でスタッフをNPO業界全体で育ててゆくことをこれからは真剣に考える必要があると思っています。

◆理念の継承と変容

私は、ブログやfacebookの投稿を盛んにしています。話すよりも文章書きの方が得意というか好きです。 なので、活動の大きな方針や考え方を時折にしたためて、スタッフに明文化して提示してきました。 中には、ねおす活動のエコロジーの10大原則や組織活動の複雑系!進化則と言った、書いている本人は納得が言っていても、新しいスタッフにはピンと来ない、わかりにくいものをあるということも知ってはいるのですが、それでもいいと思っています。 目標・理念は大きくて、いっけん曖昧で焦点を絞りにくいことも必要です。すると、的が大きいわけですから、それに大枠的に入っていればいいので、個人個人の活動も幅が広がります。 そういった意味から、組織のミッションと個人のミッションのバランス取りが大切で、スタッフのやりたいことが実現できる場づくりを心がけてきました。

かつて、「やらされ感がある」と言い残して去っていったスタッフもいました・・。 

そんなことが、下地にあったお陰か、10年目の頃に、スタッフ全員の研修会で「ねおすツーリズム憲章」なるものを全員からの言葉あつめで作ることができました。これは分派した旧ねおすサイトでも、それぞれの活動の原理原則となっていることを、信じてやみません。

しかし、その理念は創設者としては継承されるのは、大きな願いでもありますが、後継にはその全てを継承してもらうのは荷が重すぎることにもなりかねません。ですから、理念の再構築は時代の変遷とともにあって良いとも考えています。

◆ねおす銀河系ネットワーク

私たちの理念・目標は「自然と人・人と人・社会と自然のつながりづくり」です。 これだけは、ねおす出身者には押さえておいて欲しいとは願っています。 その同総会的なつながりを「ねおす銀河ネットワーク」と呼んでいます。「個性ある小集団を銀河と呼ぼう、それらがゆるやかに繋がり合って社会のセイフティネットとなろう」などと叫んでおります。

◆命とは・・複雑系開放システム

ところで、私の「生きる哲学、経営の哲学みたいな」ことなのですが・・、

みなさんは命ってなんだと思いますか? あなたは、あなたの命をいくつお持ちですか? ・・・・ ふつうは「ひとつ」って答えますよね。 でもね、口の中には自分の意思ではどうにもならない億単位の細菌や小さなうごめくもの達がいます。体内全体だと何兆にもなるそうです。  肝臓移植を考えてみると、肝臓を提供した人は死んでしまいます。でも肝臓の提供を受けた人は生きることができます。 しかし、肝臓は肝臓だけでは生きることができません。肝臓が肝臓らしく生きるためには、他の臓器とつながらないと存在し得ないのです。 だから私は、「命とは、そもそも、何かと何か、違うものがつながりあうことで存在する開放性システム」だと考えています。 これは個の体内的問題だけではなくて、この世にあるすべての存在に言えることだと考えます。 だからね、「自分と違う他者とつながる」ことは、命の原理原則なんですよ。

NPOという組織も同じです。だから、他とつながりあうことによって、組織も命を宿します。また、他とつながり続けなければ命は絶えます。だから、NPO経営の原理原則は、「つながりづくり」であると考えています。そして、さらに組織に命が宿ると、「複雑系」に必然的になります。なので・・、「ねおす複雑系の知」なるわかりにくい目標理念も作りました。た。そのために必然的に全体をゆるやかにつなげながら解散したのです・・・。

◆ひとづくりは、仕事を任せること

 人材育成のキモは、「仕事を任せる」ことだと思います。もちろん、その時の責任者は仕事にミスがあっても最終責任はとってあげるよという気構えは必要ですが・・。 しかし、組織ミッションが大幅大枠であり、個人のミッションも尊重していると自然と自分のやりたいことも膨らんでゆきます。だから、スタッフの興味関心によって新しい仕事が生まれてもいいと考えています。 福祉ケア活動が、旅行サポートになってもいいじゃあないですか、絵画教室をやってもいいじゃあないですか・・。

◆だれのためのNPO活動なのか・・

 NPO活動の受益者は誰かと考えたときに・・ もちろん第一顧客は活動から直接サービスを受ける利用者さん・参加者であるわけですが、その第二顧客はだれなのでしょうか。私はね、それは、活動をしている本人自身だと思うのです。つまりスタッフ自身の自己実現ということが、隠れたる大きな目的でもあると考えています。 かつて、「やらされ感がある」と言い残して、去っていたスタッフがいました。 それはそのスタッフの自己実現ができる場でなかったというゆえでしょう。 だから、NPOはそれができる組織であるべき(スタッフの自己実現を応援すべき)と、そのことがあって以来、強く考えています。

一方では、それは組織経営としては危険でもあるわけで、育ったスタッフが自分のやりたい、実現したいことをもって、独立してゆくのですね・・。 それは経営者としてはつらいことです。しかし、それはNPO経営の宿命でもあります。 NPOの最大の使命は「社会に貢献する人材を輩出」することですから。 これ、ドラッカーさんが流行る前から、私はそう考えておりました(と、ちょっと自慢顔(笑)

具体的には、3年掛かりで事業を切り盛りする私たちの職制というか、役割のチーフディレクターという存在を養成していました。そのためには、研修生という存在を先輩ー後輩という関係性で常に雇用配置して研修生をディレクターにすることをチーフ格に義務つけてきました。この仕組みはとても効を奏してきました。 しかし、この仕組みは研修生は無給という乱暴なやり方で、今ではなかなか研修生が現れなくて頓挫しかかってはいますが・・・。 地域おこし協力隊の制度などと組み合わせたいのですが、これもうまくいくようでいて、いろいろと問題がありますが・・・。

◆NPOの経営目標

頂いたお題に比べて、随分と取っ散らかった話になってしまいましたが、要は、創設経営者は、今ある組織が継承されなくても、悲観せずに、その根本的、変えて欲しくない理念さえ継承してくれる人材が輩出できた、できることで「良し」と、する気概でいいのではないかなあ・・と、いうのが私の今日の締めくくりです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

村まるごとホテル構想

2021-11-01 10:24:27 | 日記

これかぁ!!!

私のお師匠さん(そう勝手にお慕いしている)のおひとりである森良さんからお声がけがあって、12月に埼玉(なのかな?)の入間・日高・比企地方のセミナーの講師として呼ばれています。 「ツーリズムによる地域づくり」というテーマで、行ったこともない地域へ行って、実際にツアーガイド・インタープリテーションをしてその意図開きを翌日にするという・・、ちょっと無茶振りなオーダーなのですが・・。 

森さんは、環境教育・まちづくりということをテーマとしたNGO(彼はNPOでなくてNGOを標榜している、非営利でなくて、非政府を前面に出しているということと私は理解しています)を経営していて、全国各地のまち・むらづくりのコンサル・実践家(シンクタンクではなくてDoタンク)として、今ももっても活躍している私にとっては兄貴分ですから、断るわけにはいかない・・お仕事です。  今や「ツーリズムによる地域づくり」や「エコツアー」は、サステーナブルツーリズムやアドベンチャーツーリズムという名称に取って代わられた感がありますが、結局その根底コンセプト・目標は変わっていないと思っているので、私は古くなりつつある(なった)前世代ではありますが、お役にたてることもあろうと、気持ちだけは準備を整えています。(気持ちだけではうまくゆくまい・・との不安有り)

森さんの思い出話しをしておくと・・、(も一人の兄貴師匠の三木さんからは、「高木さん、そういうことを書き残して置くべき時期だよ。。なんていわれてもおりますので・・)

30年ほど前に会社を辞めて、北海道自然体験学校NEOSなる団体を立ち上げました。その目的は、当初は単純明快で、「もっと地球にやさしく」なんていう、今や気恥ずかしくなるようなキャッチコピーで、子どもの自然体験キャンプと大人向けの自然の中への旅づくり・登山ガイドをしていました。 そのうち、環境教育という言葉・概念に出会い、自然のガイドではなくて、インタープリターという仕事を知りました。俺らのやっていることも環境教育の一環として考えていいのだと思い、「自然体験型環境教育」を旗印にしました。キャッチコピーは「NEOSは進化型自然学校です」なんて、わかりにくいキャッチコピーをつくって、そのころ出会った様々な市民活動をしている人たちとの交流も始まりました。同じ時期に「丸山環境教育事務所」を設立した丸山博子さんとも出会いました。その共通の友人として森良さんがいて、彼は「ファシリテーター」なる役割・仕事をさかんに普及させようとしていました。それって何ということで、丸山さんと一緒に「ファシリテーター養成講習会」なるものを札幌で森さんを講師に展開しました。 

なので、今やどーでもいいことではありますが・・、北海道にファシリテーターなる概念を最初に持ち込んだのは、アタシたちであるという自負があります・・

これによって、単なるガイド業から、インタープリター・ファシリテーター・・そして、まち・地域づくりということが自然体験活動の拠点づくりという我々なりの目的となり、「自然と人・人と人・社会と自然のつながりづくり」を理念として、そのころの様々な市民活動家とも知り合い、市民活動法案⇒非営利活動法人法案の実現に向け動き、法案成立後に任意団体北海道自然体験学校NEOSは、NPOねおすと看板を変えて、社会活動な仕事が広がっていったのです。そう言った意味からもECOM/森さんは私にとって、ねおす銀河ネットワーク構想の構築と実践活動にとって、大恩人なのであります。

その後もECOMの通信誌は継続的に送られてくるのですが、この講師依頼話しがあった以前の2021年8月号を今更ながら、今朝読んだのです。(森さん、ごめんなさい) 森さんが関わった全国各地のツーリズムによるまちづくり事例が掲載されていました。「うーん、すごい、これかぁあ!!」という冒頭の私の感嘆でした。

まち・むらづくりを「人生・社会を學びなおすキャンパス」とのコンセプトで展開実践しているいくつかの事例が紹介されていました。 それを読むと当町は、正直言って、すでに周回遅れ感が否めません・・・。 私が呼ばれた地域でも同じコンセプトであってもその地にあった地域づくりをしてゆこうという前哨なセミナーなのであることが理解できました。

 


なんと、荷が重いなあと思いつつも、私は私なりに30年以上も森理念を下敷きにやってこれたのだから、少しはご参考にして頂けることもあろうかと、頭を絞り出すことに努めよう・・・。 そして、とても参考になる教え・、学びが私にもあると直感するところですが、今更に私だけが勉強しても仕方がないので、当自然学校の次世代も同行させることにし、おっせかいにも、当町の地域おこし協力隊員も研修派遣して欲しいと、役場の担当課にも声がけしております。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする