◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「この涙を忘れてもらわずに」って?

2015-03-01 11:52:32 | めちゃくちゃな敬語
                                  カップに入れてあげた

 だいぶ前ですが、「この涙を忘れてもらわずに」と言った人がいました。涙を流して反省したことを心に刻みつけてこれから頑張ってほしいということを言いたかったようなのですが、なぁ~んかむずむずします。「疑問を持っていただかないように」と言った政治家もいますし、「出馬をさせていただかない」と言った人(元々は芸人で、宮崎県知事をやっていた時期もある、今は何なのか知らないけど)もいましたね。
 「忘れてもらわずに」ではなく、「忘れずにいてもらって」「忘れないでいてもらって」ですが、普通は「この涙を忘れずに」「この涙を忘れないで」と言いますよね。「~ていただく」症候群を変にこじらせた? 「疑問を持たないようにしていただく」も変ですからね、普通は「疑問が生じないように」です。出馬しないということでご了承いただきたい、それは「不出馬ということにさせていただく」ですよ。
 そういえば、以前、「途中で挫折させてあげたくないですね」という例を紹介したことがありました。テレビのインタビューに答えていた一般の人で、普通に言えば「途中で挫折させたくないですね」ですが、品よく見えるようにと頑張ってしまい、単純に「あげる」を入れておかしなことになってしまったのでしょう。「あげる」を入れるなら「途中で挫折しないようにしてあげたいですね」です。
 「せっかく香港に勉強させに・・・させてもらったので」と言った人、やはり「~させてもらう」が口癖になっているのでしょうか。私は最初から話を聞いていたので「せっかく香港に勉強しに行かせてもらったのだから」と言いたいのだと分かりましたが、「~ていただく」症候群の患者は言いたいことをちゃんと日本語にできなくなっています。
 「泊めさせてもらっているから」は一般の人の記述、「オープン直前の館内に特別に入れさせてもらった」は「カスペ!」で聞いたナレーション。泊めてあげているのはだれ? 館内に入れてあげたのはだれ? 「~ていただく」症候群の中でも多く見られる症状で、何でもかんでも「~させてもらう」にしないと気が済まないようですが、「泊めてもらっているから」「オープン直前の館内に特別に入れてもらった」ですからね。
 ついでに言えば、泊まるのはだれ? 館内に入る(はいる)のはだれ? それでいくと「泊まらせてもらっているから」「オープン直前の館内に特別に入らせて(はいらせて)もらった」です。「○○亭から暖簾分けさせてもらい」は「私の何がイケないの?」で聞いたナレーションですが、暖簾分けしてあげたのはだれ? ○○亭でしょ? 「○○亭から暖簾分けしてもらい」ですからね。
 「親が払ってもらってるんですけど」と書いたのは中学生で、これを読んだときは本当に日本語の未来はないと感じました。この文の意味が分かりますか? お金を払っているのはだれですか? これを“直訳”すると、親が、だれかに頼んでお金を払ってもらっている、という意味になりますが、実は、自分が使っているスマホの料金を親に払ってもらっているという意味です。
 この中学生が口頭で伝えるとしたら「親が払ってるんだけどぉ~」でしょうね。でも、すでに「~ていただく」症候群を患っているのか、ちょっと気を遣ったのか、「払ってもらってるんですけど」と書いた、だけど、多くの人がそうであるように、「親に」と書かなければいけないということは分かっておらず、「親が払ってるんだけどぉ~」の「親が」はそのまんまで「親が払ってもらってるんですけど」となるわけです。
 「県民の皆さんが元気を出していただけるような」と言ったのは私が住む県の知事ですが、知事さん、「県民の皆さんに元気になっていただけるような」と言ってくださいよ。知事さんは間違いなく日本人ですよね、「が」ではなく「に」ですよ、なぜこんな簡単なことが分からないの? 何十年、日本語を話しているの?
コメント
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