◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「どうやって飛ばなくさせたのか」って?

2014-11-23 09:51:23 | 気になる言葉、具体例
                                  飛べないからね

 「何とか中に入れさせてもらいました」というナレーションが聞こえたとき、○さん自身、中に入っていました。○さんの荷物を中に入れさせてもらうということなら分かりますが、そうではなく、○さんが、中にいる人に「私を中に入れてください」と頼んだら、中にいる人が○さんを入れてくれたというわけで、「何とか中に入れてもらいました」と言うべきところです。
 “謙虚さアピール”したい芸能人がやたら「~させていただく」と言うようになり、多くの人が感染して「~ていただく」症候群を発症しました。何でもかんでも「~させて」と言い、その挙げ句、全く不要な「させ」を入れたり、「~する」を「~させる」に置き換えたりする人がぐっと増えました。もちろん、そんなことをしたら意味が変わってしまいますが、それでもおかまいなしに置き換えるのですから、差し詰め「させ症候群」といったところでしょうか。
 ますむら・ひろしの漫画はいろいろ読んでいるのですが、ちょいちょい変な日本語が出てくるのでそれは気になっていました。変な日本語アレルギーだから、気にすまいと思っても気になるのです。「アタゴオルは猫の森」第6巻に「どうか弟子にさせてくれいっ」「ゴキゲンにさせているのは△」というセリフが出てきました。
 第6巻は2003年11月30日発行ですから、そんなに前からこういう誤りをする人はいたのですね。そもそも言葉の誤りや乱れなんて、清少納言が「枕草子」の中で書いているくらいですから大昔からあることで、また、それに気づく人は気づき、嘆いているのですが、今は、放送や通信などの電波に乗ってしまったら、誤りが広がる速度と範囲が昔とは比べ物になりませんからねぇ┐( ̄д ̄)г。
 師匠に頼んで自分を弟子にしてもらう、自分を弟子にしてくれるように師匠に頼む、師匠が自分を弟子にしてくれる、弟子になる、ですから「どうか弟子にしてくれいっ」ですね。△が私をゴキゲンにする、△で私はゴキゲンになる、ですから「ゴキゲンにしているのは△」、もっと言えば「ゴキゲンにしてくれるのは△」でしょ。「いただく」ばかり言っていると「くださる」という感覚が麻痺しますよ。
 「さらにドラマを複雑にさせていくんです」は「Cafe du Cinema」(石川テレビ)のナレーション、ナレーターは石川テレビのアナウンサーですが、聞いた瞬間「複雑にしていくんです」だろっ! と画面に向かって突っ込みましたよ。単純にする、複雑にする、分かりやすくする、分かりにくくする、「する」です。アナウンサーなのに、こんな単純なことも分からなくなっているのです。
 ある記事のタイトルが「部下をダメにしてしまう叱り方」だったとき、YAHOO! のスタッフが書いた見出しは「部下をダメにさせる叱り方」でした。「してしまう」がどうして「させる」になるんだか( ̄д ̄)! 「ダメにしてしまう」を短くしたかったら「ダメにする」です。「する」と「させる」の違いぐらい分からない人が、大勢が目にするものを書いているのですo(`д´)o!
 「サイエンスZERO」で江崎史恵アナウンサーが「どうやって飛ばなくさせたのか」「テントウムシを飛ばなくさせる方法」と言い、ナレーションも同様でした。ということは、原稿を書いた人も「飛ばなくさせる」と言っているということですね。アブラムシ駆除にテントウムシを利用する、そのためにテントウムシの飛ぶ能力を奪うわけですが、それは「飛ばないようにする」もしくは「飛べないようにする」です。
 「飛べないようにする」は残酷な感じがするので「飛ばないようにする」と言いたい、まずそういう気持ちが働いているのでしょう、それは分からなくもないからいいとして、なぜ素直に「どうやって飛ばないようにしたのか」と言わないのでしょうか。中途半端に格好つけて「どうやって飛ばなく」と書いて、そこへ「したのか」と続けると何か物足りない、それで「させ症候群」の症状が出て、「したのか」が「させたのか」になったのではないですか?
 「日本だけを苦しめさせて」なんて言った「とくダネ!」のコメンテーター。「苦しめて」と言えばいいのに、それではストレートすぎるとでも思ったのか、それでも「苦しませて」が出てこなかった、そして、中途半端に「苦しめさせて」と言ってしまうのですから、この人も「させ症候群」の患者ですね┐( ̄д ̄)г。
コメント
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