熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

攻撃に徹した経営・・・P.ティッシュ一筋のイデシギョー

2007年05月18日 | 経営・ビジネス
   構造不況産業と言われる紙業において、38年間黒字を続けて気を吐いている会社がある。
   ポケット・ティッシュ生産量日本一のイデシギョーで、儲かった金は、総て新しい機械等に設備投資をするのが、これまでの成長路線を支えてきた秘密だと言う。
   株や土地価格の狂奔で沸いたバブルなど知らなかったし、わき目を振っているそんな余裕もなかったと言うのである。
   
   富士通フォーラムで、”攻撃は最大の防御なり”を地で行き、ニッチ市場を追求し続ける隠れたエクセレント・カンパニー・イデシギョーの井出純一社長が、疋田文明氏を相手にこんな興味深い話を語り続けた。

   戦略的に必要な機械は、長期に借り入れて買うが、通常の機械については、3年で償却出来る見通しが立てば、すぐに新しい機械設備は買う。機械メーカーが、収支を計算して数字を持って新しい機械を売り込みに来る。
   機械については、その図面から交渉して、500メートルのキャパシティなら800メートルのスペックに引き上げて、大きなモーターに切り替え、部品なども太め大きめにしてしておく。70~80%のキャパシティで稼動させれば、モーターも焼けないし機械が長持ちする。
   それに、従業員が慣れると20~30%の生産性はすぐにアップすると言う。
   
   工場などの建物の建設についてもユニークである。
   土地は減価償却出来ないので、効率を上げる為に、エレベーターを必要としない3~4階建てにする。建蔽率を上げない為に階段は総て外付けにする。
   モノを上下に移動するオートレーダーは設置するが、人の乗るエレベーターは据えつけない。毎日歩いて見回っているが、健康に良い。

   販売戦略も、問屋を排除して小売店への直接販売に切り替えた。
   問屋は、メーカーに競争させて天秤にかけて安くさせ、その上、注文数が不安定なので、これでは生きて行けないと思って、問屋の影響がなくて目立たない岩手県水沢から小売店訪問を開始して、販売ノウハウを勉強して蓄積し、徐々に直販を拡大して行った。
   問屋なら単品販売が主になるが、小売直結だと、紙関係全品の需要が見込めたし、当時伸張を続けていたホームセンターが顧客になった。
   小売店に営業をしかけられる営業マンをヘッドハンティングして営業所長の人材を育成して行った。
   この直販システムを拡大して行くと、問屋と競合するので問屋からの購買を即座に打つ切られたが、物流システムの工夫等で切り抜けた。

   あるホームセンターでは、紙関係一つにしても、営業時間中に色々な問屋から納入されていたので、その都度倉庫係が検収していたが、井出社長は、「朝8時までに全品納入するので開店前に品揃えが終わり、収めた商品リストをコンピューターに打ち込むだけで済み手間暇架からず、倉庫係の数を削減出来て業務の邪魔にもならないので任せてくれ」と提案した。
   他の問屋や業者からも買い入れて全品揃えて一挙に納入するのだから、問屋も有無が言えず、その上競争会社の原価も全部分かるようになり競争力を増した。
   物流はアウトソーシングしているが、納入する紙製品については、あらゆる原料から買い入れ一貫生産をして、顧客に最も近い所まで納める努力をしている。
   しかし、自社にはない製品、例えば、コーヒー用フィルターなどは、自社の工場内に業者を入れてアウトソーシングし、厳しい条件を提示し、その上で利益を折半する、自営なので業者も必死になって頑張るので、生産性がぐんと上がる模様である。

   マクドナルドの包み紙から紙製品一切は勿論、ナプキン、便座ペーパー、検便用紙、肉の血を吸わせるミートーペーパー、ソフトクリームの三角紙、ご飯の蒸れを押さえるライス・ペーパー等々、大手の紙会社のやらない商品は総て進出してナンバーワン企業、時には、オンリーワン企業を目指して、子会社と共に生産にまい進するのだと言う。
   
   転んでもただで起きないのが、井出社長の凄いところで、紙を漉いた後のヘドロを使って猫の猫砂の代わりに紙砂を造って売って、無駄な200万円を200万円の収入に換えた。
   元々、水を多用するのが製紙会社なので、ノウハウと残りの設備を活用してミネラルウォーターまで製造販売している。

   営業会議の前日には、必ず、飲み会をして毒気を抜いてから自由な発想で語らせる。
   また当日、何か一つ気に入ったものを持ってこさせて語らせる、自分は、良いデザインのものがあるので、最近は、ハンカチに目をつけているのだと言う。
   経営セミナーに行けば、必ず、聴講者の中に、ホームセンター、スーパー、ドラッグストア等の人を探して、これ営業に努めている。経営学は、勉強したことがないが、先輩達に可愛がられて教えられて来たと言う自学自習の経営者である。

   まだまだ、意表を衝く井出社長の独特な面白い経営哲学が語られていたが、要は、一つの中小企業の生きる為の壮絶な生き残り作戦から生まれた経営の智恵で、こんな素晴らしい企業が生産、物造りの現場を支えているから、日本の製造業は強いのである。
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