熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

NHK世界トップニュース:英国パブが廃業続出危機に

2023年09月19日 | 経営・ビジネス
   NHKが、今日の世界のトップニュースで、「英国パブ 1日に2軒のペースで廃業」と報じた。
   パブ(Pub)とは、パブリック・ハウス(Public House)。イギリスでは、何処の街角にもある酒場のことで、ビールなどの酒類や簡単な軽食などをサーブする気軽な居酒屋である。
   最近10年くらいは英国に行っていないので、今様事情は分からないが、在英5年間には随分お世話になった。
   ロンドン市内でも、昼食時やアフター5などには、街路狭しとサラリーマンがジョッキ片手にひしめき合って憩いの時を過ごす貴重な出会いの場でもある。
   このパブが、英国経済不況の煽りであろう、経営難と人手不足で、ここ数年、半年に400店ペースで廃業しているというのである。
   
   

   ロンドンのシティの開発案件を実施したので良く覚えているが、パブは、存続を旨としており、余程のことがない限り潰せない。どんなに素晴らしい近代ビルに再開発しようとも、元あったパブは、消滅させることは罷りならない、必ず地下か一階に収容する必要があり、ペパーコーンレイト(殆ど名目程度の安い家賃)で貸すこととされている。
   これがイギリスの文化であり知性でもあり、イギリス文化の華であったはずにも拘らず、この公序良俗が廃れようとしているというのである。

  ところで、私の旅とパブの関係は極めて密接で、特に求めてレストランに行くことがなければ、気侭な旅だと昼食時と余暇の大半はパブで過ごしていた。まともにランチを取ろうとすると、正式なレストランで、あまり美味しいとは言えない料理に、長い時間とカネを費やすだけとなり、とにかく、無駄。かと言って、ファーストフッドや日本料理店も味気ないので、気楽気ままに、何時でも食事が出来ビール等を飲んで憩えるパブが、私には恰好の休憩所であった。
   ロンドンに居た頃は、昼には、事務所に近いパブに出かけて、何かメインの一皿を取ってギネスのビターを1パインで昼食を終えることが多かった。イギリス人など、ビールだけで昼食を済ます人も多い。アムステルダムにいた時には、ホテルオークラまで出かけたが、ロンドンでは和食堂には馴染めなかった。
   
   コベントガーデンやストランドなどで、観劇を楽しんだ後、独りの時は、良く、チェアリングクロス駅の近くにあるシャーロック・ホームズ・パブに行った。シャーロック・ホームズなど実在しないが、熱烈なファンが作ったパブで、シャーロック・ホームズ縁と思しきグッズが壁面に所狭しと飾られており、2階には、「シャロック・ホームズの部屋」まである懲りよう。別に、料理が美味い訳でもなく、特色がある訳でもないが、イギリスそのものの雰囲気を楽しめるので、11時の閉店間際だが、小休止の為に良く出かけた。
   
   
   

   イギリス国内を車であっちこっち走ったり旅をしたが、鄙びた田舎などで、歴史的な建造物や骨董品のような綺麗なパブに出会うと嬉しくなって、沈没して、何時間も過ごすことがあった。 田舎だけでなく、ロンドンのストランドやソーホー辺りのパブでも、暇な時などパブの主人やカンバン娘と話していると実に楽しい。
   カンタベリーのトマス・ベケット・パブでは、バーカウンターの女主人が実にチャーミングな美人で優しく、それに、主人の気の利いたサービスなど印象的だったが、豊かなイギリスの文化に触れる憩いの時間が旅の疲れを癒してくれる。

   古いパブには、入り口が2つある。階級制度の名残とかで、昔は、中産階級のサロンと労働者階級のパブリックバーとに区別されていて、真ん中のカウンターは共通だが、入り口と部屋が分離されていた。
   もう、40年も前になるが、日産のイギリス工場のプロジェクトで出かけた時、米国初代大統領ワシントンの故郷ワシントンの片田舎で、完全に2つに分離された歴史の名残を止めたパブに行ったことがある。仕切りなどは取り外され行き来自由になっていたが、イギリスの歴史を見た思いがしたので良く覚えている。
   客が場違いな場所に入ったら、主人はどうするのだとジムに聞いたら、「あちらの方が、貴方には、もっと気楽に楽しんでもらえると思うのですが。」と言うのだと言った。

   とにかく、私には、パブには色々な思い出がある。そのパブが、バタバタ消えていくなどと聞くと、文化の退化を感じて悲しい。
   
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