熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

真似した電器からイノベーターへ・・・CEATEC JAPAN 2006

2006年10月04日 | 経営・ビジネス
   CEATEC JAPAN 2006の基調講演で、松下電器の大坪文雄社長が『「モノづくり」を機軸としたくらし価値創造への挑戦』と言うテーマで松下電器の経営について語った。
   ブラックボックス技術の創造、最先端のモノづくりを目指して、「モノづくり立社」の実現などの松下電器の経営戦略が、当然ながら、先日サンディ・プロジェクトで、田原総一郎氏の質問に対して、松下電器の中村邦雄会長が語っていたのに呼応していて、興味深く聞いていた。

   あの時、田原氏の「真似した電器」に関する質問に対して、中村会長は、真似した電器から脱却して誰も真似の出来ない新製品を生み出せと発破をかけたら喜び勇んだのは開発技術者だったと語っていた。
   電気製品がアナログからデジタルに変ったので、後発では駄目になり、先発者、即ち、新技術と新製品を開発した創業者だけしか利益を得られなくなってしまって、製造業自体がデジタル化によってウイナー・テイクス・オール化してしまったのである。

   その後、松下電器は戦略を大転換して、ブラックボックス、即ち、中身が見えなくて何処の国も何処の会社も、そして誰も真似の出来ないような製品を開発することを社是とし、このブラックボックス戦略を根幹スピリットとして新製品開発の為のイノベーションに邁進してきた。
   その結果生まれ出たのが、プラズマTVのビエラであり、デジカメのルミックスであり、DVDレコーダーのディーガであったのだが、今や、イノベーターの本家であったソニーを凌駕してしまっている。

   昔、松下幸之助が、ソニーの盛田昭夫に「うちには、ソニーと言う研究所が東京にありましてなぁ。ソニーさんがね、何か新しいものをやってね、こらエエなぁとなったら、我々はそれからやりゃいい。」と笑ったと盛田の「Made in Japan」に書いてあるが、真似した電器の面目躍如たるもので、ソニーが先発して散々苦労して市場を開拓した製品を追っかけて作って利益を掻っ攫っていたのである。

   このことを、大宅壮一が、ソニーが開発したトランジスターを東芝が後発で市場を奪ったことに触れて「ソニーモルモット論」を展開した。
   ソニーは苦渋を舐め続けたのだが、結局、結果的には、クリステンセンが連続して複数のイノベーションを連発し続けた唯一のイノベーターと賞賛したソニーが、トップ企業として躍り出たのである。
   もっとも、そのソニーも大企業病にかかって歌を忘れたカナリアになってしまって苦渋を舐めている。

   更に、田原氏に「他社はインターネットなどITを活用して金融など他の事業を行っているが松下はどうか」と聞かれて、中村会長が強調したのは、創業者の築き上げた遺伝子にはもの造りのDNAしかないので、モノづくり以外は絶対にやらない。やれば火中に飛び込むようなもので必ず失敗する。このことは、社員が一番良く知っている、と言うことであった。
   この経営戦略は、住宅や他部門の事業に比較的意欲的で金融部門で利益の10%を弾き出しているトヨタの戦略とは大分違うし、勿論、GEなどとは根本的に違う。超巨大企業である松下電器がモノづくりだけで生きて行けるのかどうか、あるいは、それが唯一の正しい道なのかどうか、要は経営そのものにかかっていると思うのだが、「モノづくり立社」実現の経営戦略の将来が非常に興味深い。
   最近まで、総合電機メーカーが集中と選択の戦略を怠った為に経営悪化を経験して来たし、大前研一氏もANDの経営ではなくORの経営を提唱しているのだが、モノづくりと言っても、事業分野が無尽蔵にあることもまた事実である。

   ところで、CEATEC JAPANの一番人気は、やはり、この松下電器で、大坪社長の講演には多くの聴衆が詰め掛けて、私も、早く入場した筈だったが席がなく、1時間立って聞いていた。
   ブースは、あの103インチのフル・ハイヴィジョンのプラズマTVが場内を圧倒、とにかく、人々でごった返していた。
   やはり、メーカーは「最先端の技術」を開発し、消費者をワクワクさせるような商品を生み出すべきだと言うことであろう。
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