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女性マーケターから見た日々の出来事

基礎研究から応用へと結びつかない現実

2015-10-11 22:45:11 | アラカルト

昨日まで名古屋で、「日本癌学会学術総会」が開催されていた。
最後となった昨日は、「市民を交えてのフォーラム」ということで、出かけてきた。

このようなフォーラムや公開講座などに行くたびに考えさせらえることなのだが、日本の医学基礎研究というのは、世界でもトップクラスだが、応用となると世界から随分遅れをとっているということだ。
「基礎研究が、トップクラス」ということは、素晴らしいコトではあるのだが、応用(=医薬・治療)に関して遅れをとっている、という現実はとても残念な気がする。

例えば、現在一部の肺がんの患者さんの治療で使われている抗がん剤などは、日本の医療関係者と製薬企業が研究・開発したにも関わらず、治験を行ったのは韓国。
乳がんの抗がん剤の一つである「エルブリン(商品名「ハラヴェン」)」は、日本の製薬会社・エーザイが相模湾から採取した「クロイソカイメン」から抽出した成分を使った「生まれも育ちも日本」という薬だ。
しかし、世界で一番最初に承認されたのは、日本ではなく米国。
日本の承認は、米国の承認から約2年遅れだった。
この「エルブリン」のような抗がん剤だけではなく、自然由来の成分から医薬品を創るというのは、世界的に注目されており、日本はこの分野ではトップクラスだと言われている。

「基礎研究」という点だけでいえば、それこそノーベル賞も視野に入るほどの研究成果が出ているのに、なぜ応用研究では、遅れをとってしまうのか?というと、そこには根深い「医療不信」があるようだ。
まず高度な医療を必要とする病気の場合、説明をしてくれる医師の言葉が、専門用語が多すぎて理解できない。
その段階で、「先生にお任せします」となってしまうのだが、新聞などで、大学病院や名の通った病院などでの「医療事故」の報道を目にすると、とたんに患者は「あの大学病院や有名病院でも医療事故が起きるなら、自分の場合も・・・任せて大丈夫なのだろうか?」と不安になってしまう。。
それに加え、話題の新薬として登場した薬で亡くなった方がいる、という報道を見ると、「やはり、新薬は怖い」と思ってしまっても仕方のないことだと思う。
「つらくない・黒白はっきり効果を謳っている」民間療法などの広告や「医療否定」を謳うベストセラー本が、それに輪をかける結果になっているのではないだろうか?

とすれば、何が必要なのだろう?
フォーラムの時にも感じたことなのだが、「医療者と患者や患者家族が一緒になって新しい医療を創る」という、社会的雰囲気というか、文化が必要なのでは?という気がする。
「治験」というと、いまだに「人体実験」を思い浮かべる人が、いらっしゃるように感じる。
しかしその「治験」が実施されない限り、新薬が市場に出ることはない。
また、現在の治療に行き詰った患者にとって、「治験」は自分の未来を託すコトができるチャンスでもある。
それだけではなく、製薬企業から支援を受け新薬の研究・開発をすることは「賄賂などの温床」という見方がされがちだが、「創薬」そのものの事業は「産学協同」でなくては進むことができない事業である、という認識もまだまだ低い(というべきか)ような気がしている。
実際、今回ノーベル賞を受賞された木村先生は米国の製薬企業と一緒になって、受賞対象となった薬を創っている。

「医学・医療」という分野は、これまで生活者と遠いところで研究・開発が進められてきたが、今後この分野で日本が世界をリードするような応用研究をするためには、生活者自身が日ごろから「患者力」を身につけ、患者側も医療に参加し50対50の関係づくりなのでは?という、気がしながら帰ってきた。



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1 コメント

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お名前間違えてます (元天然物化学専攻)
2015-10-12 20:13:30
大村先生のことは存じ上げませんでしたが(現役ではないし、天然物と言っても細かく別れています)、自分のやっていた分野から受賞者が出たことを喜ばしく思っています。
ところで、複数のエントリで先生のお名前が違うようです。
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