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産学官共同事業は良いと思うのだが・・・。

2013-02-05 19:38:24 | アラカルト
昨日、一部の新聞に「がん次世代新薬」の開発についての記事が掲載されていた。
讀賣新聞「がん次世代薬の開発、産学官で工場新設へ」
産経新聞「がんの次世代の薬、経産省が開発支援 企業や大学など集まる拠点を26億円予算計上」(産経新聞の記事が見つからなかったので、Yahooのトピックス記事を紹介)
と言う報道だ。

まず讀賣の記事を読んで、ある種の違和感があった。
それは「工場新設」というコトバだ。
イメージ的には、産経新聞の「産学共同の研究拠点」だと思う。
少なくとも「新薬を工場の生産ラインで作る」というコトでは無く、あくまでも研究素材となる細胞などを作る、と言う意味だと思うからだ。

日本の製薬メーカーだけではなく、全国の大学の医学部やがんセンターなどの研究施設では、様々な研究が地味ながら進められており、その研究は決して海外に後れを取っている訳ではない。
それぞれの研究が進んでいるのに、新薬の開発に結び付かない大きな理由があるとすれば、研究機関と製薬メーカーが共同で研究を進めるコトが難しい、と言うコトがあったからだと思う。
と言うのは、大学やがんセンターなど公的機関(=税金で研究をしている機関)と民間企業である製薬メーカーが、共同で研究を進めると言うのは「研究費」というお金のモラルとして問題があるのでは?と言う考えが、長い間あったからだ。

今回の「がん次世代の薬」というのは、昨年NHKで放送された「がんワクチン」に代表される「免疫療法」だけを指すのではなく、もっと広い意味があるのでは?と考えている。
例えば、検査薬などをペプチドの分子サイズにして、検査そのものが難しいと言われる膵臓や胆管等のがん検診に活用する、と言うコトも考えられる。

何故この様な研究を国が急に推し進めるコトを言い出したのか?と考えると、一つは記事に有る通り、医療費の問題だろう。
ただ個人的には、新薬の開発によってもたらされる、膨大な利益を産業として国が後押しをしたい、と考えているのでは?と言う気がしている。
何故ならがんなどの新薬は承認されると、その国の「標準治療=基本治療薬」となり、開発をした製薬メーカーは膨大な利益を得るコトができる。

問題なのは、この様な「次世代の薬」には必ず「治験」が必要だと言うコト。
「海外に比べ、日本は新薬の承認が遅れやすい」と言われるが、実はその最大の理由が「治験」なのだ。
日本ではまだまだ「治験=実験台」という意識が高く、治療手段の一つという認識がされていない。
何故国内での治験が絶対に必要なのか?と言うと、「がん」と言う病気そのものに様々なタイプがあり、海外での成果が日本でも有効であるとは限らないからだ。
その例が、肺がんの分子標的薬として有名な「イレッサ」だろう。
「イレッサ」の一番効果が高いな肺がんは、腺がんでアジア系非喫煙者。
肺がん患者であれば、誰にでも効果がある、と言う訳では無いのだ。

そう考えると、国が推し進めたいこの事業には国民の「治験」に対する理解が必要だと言うコトがわかる。
経産省だけでは無く、厚労省も協力する必要があるのだ。
これを機会に、是非省益を超えた研究の成功例となって欲しい。













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