日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

Lookismという外見主義とビジネス

2023-03-29 20:59:03 | マーケティング

朝日新聞のWebサイトを見ていたら「まだまだ外見主義(=Lookism)が標準なのだな~」という、記事があった。
朝日新聞:アイドルが「ダイエット義務を果たさず」賠償を求めた芸能事務所が敗訴 

まずこの見出しで気になったのは「ダイエット義務を果たさず」という部分だ。
少なくとも、掲載写真で見る限り元アイドルの女性は、ダイエットを必要としているとは思えない体格だ。
これ以上ダイエットをしたら、逆に病気になってしまうのでは?という気がしてくる。
反面、まだまだこのような若い女性に「痩せている=キレイ」という価値観が、芸能界という業界に残っているのだな~という、印象も持った。

おそらく10年位前からだと思うのだが、フランスの「パリコレ」に出演するモデルたちの体形について、問題視されたことがあった。
パリコレなどに出演するモデルの多くが10代後半という若い女性で、デザイナー側が「やせた体格の女性を求める傾向が強いために、極度なダイエットをしなくては、パリコレの舞台に立てなくなる」という、強迫観念のようなものが植え付けられ、それが原因で拒食症などの病気になってしまうモデルが出るなど問題視された。
Huffpost:痩せすぎモデルの活動は禁止、ファッションの中心地フランスで法律施行 画像修正も… (2017年5月8日掲載分)

この記事が掲載されたのが、2017年なので6年前の話になる。
それよりも10年ほど前から、フランスのファッション業界では若いモデルの摂食障害により亡くなるという事件があり、問題視されていた。
AFP:拒食症に苦しんだ元トップモデル、ファッション業界の闇を暴露

年若いモデルにとって、パリコレのランウェイを歩く、というのは憧れだけではなくトップモデルになるための重要なステップでもある。
だからこそ、チャンスをものにする為にダイエットが必要と言われれば、ダイエットをすることに躊躇しない。
それこそ、命がけのようなダイエットさえやってしまうのだ。
そのようなことがあり、まだまだ「やせ型=キレイ信仰」が無くなったわけではないにせよ、極端に痩せたモデルの起用は減ったような印象がある。
と言っても、十分に痩せ型体形のモデルたちであることには、代わりない。

その後、女性たちの「美意識」の変化もあり「痩せている=キレイ」ではなく、「健康的=キレイ」という価値観になりつつあると、感じていた。
しかしながら、まだまだ日本のアイドルの世界は違っていたようだ。
せっかく、渡辺直美さんのようなプラスサイズの素敵な女性が登場し、良い意味での話題をつくり社会から「体形」というイメージを変え始めていたのに、現実には変わっていなかったということなのだろう。

もう一つ、考えなくてはならないのは健康面という点だろう。
上述したような「拒食症」に代表される「摂食障害」という病気という点だけではなく、成人後の病気にも大きく関わってくるということだ。
50代くらいの方なら、健康診断で「20歳の頃の体重からどれくらい増加したか」という設問がある事に気づかれると思う。
実は、20歳の頃の体重から10㎏以上増加すると、成人病を含む様々な病気リスクがある、という指摘がされているのだ。
女性であれば、乳がんリスクが高いと言われている。
国立がん研究所:20歳時体重、成人後の体重の変化と乳がん(PDFファイル) 

このような病気リスクを考え、アイドルやモデルを起用しなくては、今後企業のイメージが下がってしまう、という可能性がある事を企業は知る必要があると考えている。
何故なら、生活者がテレビCMなどを通して見るアイドルやモデルの姿が、その時代のアイコンとなる存在だからだ。
特に、若い人たちにとってその影響はとても大きい。

今回の敗訴内容は、「ダイエットを怠った」という理由ではなく、雇用契約に関する判断だったようだが、いつまでも「痩せている=キレイ・可愛い」という「古いLookism」という価値観を芸能事務所が持っているとすれば、それは時代遅れであると広告を出す企業側が指摘する時代になって欲しい、と思っている。