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入管法改正の前に考えたいこと

2018-12-09 20:37:25 | 徒然

与党が強行採決をした「入管法改正」。
この結果、海外からの労働者を受け入れしやすい状況となった。
日経新聞:外国人受け入れ5年で最大34万人 改正入管法が成立

この入管法の改正の理由は、将来的に人手不足が考えられるからだ。
既に、建設業や介護の分野では、人手不足といわれている。
だが、その前に考えることがあるのでは?という気がしている。

一つは「難民の受け入れ」だ。
日本は、「難民を受け入れない国」といわれている。
確かに今回の「入管法改正」の正しい名称は「改正入管難民法」だが、報道を読む限りでは「難民を受け入れる」のではなく、「人手不足を補うために入管法改正をした」と読み取れる。
政治的な理由などで命の危険があるため、泣く泣く母国を離れざる得なかった「難民」の受け入れを緩和する、という趣旨のようには思えないのだ。
「人手不足解消の入管法改正」と、「政治的理由で母国に帰れない人たちを受け入れる、入管法改正」とでは、その意味合いは大きく違うように思える。

そして「本当に人手不足なのか?」という疑問だ。
2,3年前に「AIが仕事を奪う」と、話題になった。
AIに奪われる仕事は、多岐にわたっていた。
ある特定の仕事だけがAIに取って代わられる、というわけではないのだ。
とすれば、AIにとって代わられる仕事分だけ、人が余るということになる。
もちろん、代わりの仕事を見つけ、職に就くことができる人も少なくないだろう。
しかし現実に、アメリカでは産業構造の変化などによって、仕事を奪われた人たちは数多くいる。
トランプ氏の熱狂的支持者といわれている中西部・中南部に住んでいる「忘れ去られた人々」だ。
彼らの多くは、1950年代の頃ような働き方が、21世紀も続くと信じてきた人たちでもある。
社会の時代変化についていけなかった、そのための努力や技術や知識の習得をしてこなかった、と言ってしまえばそれまでだが、同様のことがAIの普及によって、日本でも起こる可能性が全くないわけではない。
むしろAIによって仕事が奪われる人たちの多くが、知的職業といわれている人たちである、という指摘があることを考えれば、より深刻な状況が起きてくるのでは?という、気がしている。

今現在「労働力不足」と言われている分野の多くは、上述した通り今日本の若者があまりやりたくない、あるいは志高く仕事に就いたが、余りにも給与面などでの待遇が悪い、と言われている仕事だ。
「AIで仕事が奪われる」というのであれば、「AIで仕事が奪われても、若い人たちが安心して働くことができる、労働不足分野での労働環境改善」を、まずすべきではないだろうか?

「人手不足が懸念されるから、海外から労働力を入れる」という発想は、どこか前近代的な発想のような気がするのと同時に、それにかかる企業や社会の負担はどうなのだろう?