日々是マーケティング

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製薬事業に食品会社が参入する時代がくる?

2013-03-29 12:50:40 | ビジネス
昨日の讀賣新聞のWEBサイトに、大変興味のある記事が掲載してあった。
ビフィズス菌を静脈注射し抗がん剤、治験を開始

この見出しを読んだとき「???」だったのだが、がん予防の一つとして「ヨーグルトなど乳酸菌を積極的に摂取する」ということは、随分前から言われてきた。
それは今回対象となる「胃がん」だけでは無く、乳がんなども子どもの頃からヤクルト(企業名指定となっているのは、試験的に参加したのがヤクルトだったと言われている)を飲んでいると、その罹患リスクは低いと言う指摘もされていた。
そう考えると、ビフィズス菌の利用というのは、それほど奇をてらったことでは無いかも知れない。

この治験を実施する企業が、日本の「アネロファーマサイエンス」と言う産業革新機構という、半官半民の株式会社が大株主となっている企業。
研究機関の中心は、信州大学のようだ。

このアネロファーマサイエンスが、ユニークなのは「患者のQOLを治療の柱」として考えている点だ。
私自身、がんと言う病気と向き合うまでは知らなかったのだが、一般的にいわれる「抗がん剤」の考え方は、「毒を以て毒を制す」。
世界中の製薬会社が競って開発している「抗がん剤」は、「副作用ありき」の考え方で創られており、その基本的な考えは将来的にも変わらないだろうと考えている。
アネロファーマサイエンスのような考え方は、欧米の製薬企業には無い発想かも知れない。

このニュースから考えられるのは、製薬会社では無く食品会社も「抗がん剤」開発に乗り出すチャンスがある、と言う点だ。
中国の「医食同源」や「養生」という考え方からすれば、「食べること」そのものが健康に関わるコト。
予防医学という分野での参入というだけでは無く、昨今何かと話題になる食品のポリフェノールなどを活用した薬剤の開発、と言うことも十分考えられるのではないだろうか?

随分前、製薬販売会社の方から「規制緩和と言われても、薬は人の健康に関わるモノだから、そう簡単に規制緩和と言って欲しくない」と、言われたコトがある。
確かに「薬」は、人の命に関わる製品だ。
だからこそ、製薬会社が新薬を創り市場に出るまでには、治験を繰り返し、その安全性と副作用を確認することになっている。
治験は実施しないにしても、安全性という点においては食品も同じだろう。
とすれば、製薬における規制緩和の一つとして、食品会社の参入ということがあっても良いのかも知れない。

そしてこのニュースに期待したい点では、ビフィズス菌という安価な材料が基となっている、と言う点だ。
抗がん剤の薬価はとても高く高額であるが故に治療を、途中で断念してしまう患者さんもいる。
その様な患者さんが減ることへの期待だ。

ただ一つ残念なのは、日本企業の研究・開発で、食品として安全性が確認されているはずの菌を使った治験が、日本では無く米国で実施されると言う点だ。
もし、国際治験として日本も参加していれば、欧米で承認されるのとほぼ同時期に日本でも承認され、多くのがん患者さんが救われると考えられるからだ。