はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part145 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第44譜

2020年01月23日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第44譜 指始図≫ 9七玉まで


    [不誕生日のプレゼント]

「あら、きれいなベルトしてらっしゃるのねえ!」
   (中略)
「いえまってよ」アリスは考えなおし、「きれいなネクタイよね、そういったつもりで――いえ、ベルトっていおうとして――ああ、ごめんなさい!」アリスは、しどろもどろだ。
   (中略)
「だって首だかウエストだか見分けがつかないんだもの」と、これはアリスのひとりごとだ。
   (中略)
「ネクタイだよ、きみ。きみのいうとおりきれいなネクタイさ。白の王さまとお妃(きさき)がくださったんだよ、ほらね」
「ほんとう?」とアリス。結局いい話題だったんだと思って、うれしくてしかたない。
「ぼくにくださったんだよ」ハンプティ・ダンプティはしみじみとした口調でいって、膝を組みなおし、両手でかかえこみながら、「くださったんだよねえ――不誕生日のプレゼントに」
「え、なんですって?」アリスはきょとんとした顔だ。
「きいたってかまわんよ」とハンプティ・ダンプティ。
「あのう、不誕生日のプレゼントって、なにかと思って」
「誕生日でない日にもらうプレゼントだよ、もちろん」
   (中略)
「自分のいってることがわかっちゃいないんだねえ」ハンプティ・ダンプティは声をあらげ、「一年はいったい何日か?」
「三百六十五日」とアリス。
「じゃあ誕生日は何日か」
「一日」
「三百六十五から一をひくと、のこりは?」

     (『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 「6マス目」で、アリスはハンプティ・ダンプティに出会う。大きなタマゴ形の怪人物で、なぜか高い塀の上にこしかけている。
 会話がめんどくさい方向にすすみそうだったので、アリスは話題を変えようと、彼のベルトをほめた。それを口にしたとたん、あ、間違えた、ネクタイだったかと思いなおした。なにしろハンプティ・ダンプティの全体は「タマゴ形」だったから、首と腹の区別がつかない。
 ネクタイが正解だった。
 そのネクタイは、なんと「白の王さま」と「白の女王さま」にもらった「不誕生日のプレゼント」だという。
 それをきいて、アリスは「あたしはやっぱり誕生日のプレゼントのほうがいい」というと、ハンプティ・ダンプティはアリスの考えちがいを正そうとするのだ。
 理屈はこうだ。誕生日は一年に「一日」しかないが、不誕生日なら「三百六十四日」ある。だから、「不誕生日プレゼント」をもらえる日のほうが圧倒的に多いので、だからどっちがいいかは明らかだと、そのタマゴ形怪人はいうのだった。
 ハンプティ・ダンプティは、こんなめんどくさい奴だ(鏡の世界の人物はこんなのばかりだが)
 この卵型体型の怪人物は、相手を言い負かすことを第一に会話しているようである。しかし7歳の少女アリスを相手に、全力で「言い負かす」ことをやっていると思うと、おもしろい男だとも思えてくる。



<第44譜 9八玉はどうだ>


≪最終一番勝負 第44譜 指始図≫ 9七玉まで

 この図を一手戻した図、「6七と図」を、我々は目下、研究調査中。


6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔柊〕3七桂 → 先手良し
  〔栃〕8一飛 → 後手良し
  〔柳〕7八歩 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉

 ついに、“戦後調査”によって、この「6七と図」における「先手の勝ち筋」は10コとなった。

 さて、まだ未調査の〔桐〕9八玉 はコンピューター・ソフトの評価が高い手だった。たとえば「激指14」は3番目の候補手だったし、最新ソフトも5番目くらいの候補に挙げていた。
 実戦中は採用するつもりがなかったので、それ以上調べなかったこの手だが、実際どうなのかと気になってはいた。
 今回は、この手、〔桐〕9八玉 の調査結果を報告する。




[調査研究:9八玉]

9八玉基本図
 〔桐〕9八玉(図)は、一見、後手に角があると5四角の筋に入るので、悪い手にみえる(だから我々は実戦ではこの手を候補手から排除したのだった)
 たとえばここから7七とに、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛と攻めると、8一桂、同竜、5四角の「王手竜取り」が成立する。この変化ははっきり後手良しとなる。
 その筋を避けるために「9七玉」とする手が考えられるところなのだが、それをわざわざ「9八玉」にするのは、なにかメリットがあるのだろうか。
 実は、メリットはある。 7七とと迫られたとき、後手に「角桂」とあったとしても、「9八玉型」ならば先手玉は“詰めろにはならない”のだ(8七角なら9七玉で、7六角には8九玉で不詰)
 これが「9七玉型」なら、7九角で詰んでしまうところ。

 さて、ここで後手の手が問題だ。
 まず【1】7七と から。


研究9八玉図01
 【1】7七と(図)には、「7八歩」が正着手になる(次の図)

研究9八玉図02
 「7八歩」(図)に、7六と なら、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛のときに、8一桂としても、5四角が王手竜取りにならない。以下8一同竜、8七と、同玉、5四角なら竜が取れるが、6五歩、8一角、同飛成で、先手勝勢である。 と金を捨ててしまっては、飛車だけでは先手玉が捕まらないというわけだ。
 7六と は、3三歩成以下、先手良しになる。

 すると、ここで考えられる後手の手は、7八同と か、7六歩 である(次の図)

研究9八玉図03
 7八同と(図)とと金を移動させることで、これで先手玉は角以外に金や飛車を渡してもまだ詰まない形になっている。
 さて、具体的には、「2五香」(図)と攻めるのがわかりやすい。
 7六桂のような手なら、2六飛、8八桂成、9七玉、3一桂、2三香成、同桂、2四金で、これは先手勝ちになっている。

 よって、後手は「6二金」とする。
 それでも「2六飛」。 対して2四桂なら、同香、同歩、3五桂、3一玉、5二金で先手勝勢だ。
 「1一桂」の受け(次に3一玉が後手の狙い)に、「3三歩成」がある。
 3三同桂なら、2三香成、同桂、2一金、同玉、2三飛成、1一玉、3二角成で、先手勝ち。この変化は後手に7八ととさせた手が生きている(金香を後手に渡しても先手玉は不詰。7八ととさせた効果である)
 また、3三同銀は、5一竜、4二銀右、3四金で寄っている。
 よって後手は「3三同玉」と応じる。

 すなわち、この図(2五香)から、「6二金、2六飛、1一桂、3三歩成、同玉」と進んで―――
 そこで「3七桂」が、“詰めろ”になる(次の図)

研究9八玉図04
 次に3六飛以下、後手玉は“詰み”がある。 2二玉には3三歩がある。
 4四歩には、3六飛、4三玉、3二角成、5二玉、5四歩。
 先手勝勢である。

研究9八玉図05
 戻って、「7八歩」に、7六歩(図)の変化。
 7六歩と打たせて、これで後手5四角の筋がなくなった。よって、3三歩成、同銀、5二角成といく。
 5二同歩なら、3一飛で先手良しになる。
 よってここで後手7五桂だが、それには8九香と受ける(次の図)

研究9八玉図06
 この形も「9八玉型」が生かされている。もしも「9七玉型」なら、5二歩と角を取られ、その手が7九角以下の詰めろになっていた。この場合は、5二歩なら、3一飛が先手で入り、先手が勝てる。
 よって後手は4二銀右と受ける。それには4一馬としておく。
 以下7八と、3四歩、7七歩成(詰めろ)、3三歩成、同銀、3一銀、1一玉、3八飛(詰めろ逃れの詰めろ)、8七桂成、同香、8八と寄、同飛、同と、同玉、3八飛、9七玉(次の図)

研究9八玉図07
 先手に手番が回れば、3二馬がある。
 図より、2二銀が予想される。以下、同銀成、同玉、8九金、7六桂、7八歩(次の図)

研究9八玉図08
 先手勝ち。

 これで、【1】7七と は先手良しとはっきりした。


研究9八玉図09(7五桂図)
 【1】7七と には、「7八歩」があって、先手良しになった。
 そこで、【2】7五桂(図)が、後手の次の候補手となる。
 7五桂と打って、 次に7七とが“詰めろ”になる。

 <x>「3三歩成、同銀、5二角成と行くのは、どうなるだろうか。
 5二同歩に、3一金とするのが良い手になり、8一桂、同竜、5四角、6五歩、8一角、7一飛となれば、先手良し。
 しかし5二同歩ではなく、「7七と」とするのが後手の正着。
 以下、「4三馬」(次の図)

研究9八玉図10
 「4三馬」(図)で、持駒をたくさん持っている先手が良さそうにも思えるが、そうではない。 ここは7六桂と桂を活用する手があって、後手が良い。 7六桂は先手玉への“詰めろ”である。
8九香と受けるが、そこで4二歩(次の図)

研究9八玉図11
 これで、後手優勢。 2五馬のように馬筋をそらして8七桂成、同香、8八桂成から詰める狙い。
 7六馬と切るしかなさそうだが、同ととした局面は、次に後手8七角の寄せがあって後手優勢。

研究9八玉図12
 <x>「3三歩成、同銀、5二角成は先手勝てないということであれば、<y>「8九香(図)と先受けする手が考えられる。
 この図の最新ソフトの評価は、ほぼ「互角」である。
 <y>「8九香には、7六桂が最善か。
 次の7七との手に備えて先手は9七玉。
 以下7七と(代えて後手6六銀も有力→形勢互角)に、7八歩、同と、8五歩とする(次の図)

研究9八玉図13
 7四金なら、8六玉の上部脱出が先手のねらい。
 後手は7四銀とするのが最善。 以下8四歩、8八桂成、同香、同と、同玉、6六銀と進む(次の図)

研究9八玉図14
 後手8五香の手があり、先手厳しいと思われる局面になっている(最新ソフトの評価値は-250くらい)
 9四馬として、どうか。以下、8五香を同馬と取って、同銀に、2六香が返し技。 2六香は、2三香成、同玉、2五飛以下の“詰めろ”である。
 しかし、後手にも返し技がある。 4四角だ(次の図)

研究9八玉図15
 4四角(図)が、"詰めろ逃れの詰めろ"である。
 しかし、9七玉と逃げて、形勢ははっきりしない。
 この変化はここで打ち切り、<y>「8九香は 「互角」としておく。

研究9八玉図16
 「研究9八玉図09(7五桂図)」まで戻って、<z>「3三香(図)があった。 我々終盤探検隊の研究ではこの手が最善手である。
 後手の応手は、3三同銀と、3一銀がある。
 まず3三同銀から。 同歩成、同玉に、6一竜が好手である(次の図)

研究9八玉図17(6一飛図)
 6一竜(図)は、後手の4二玉の筋を無効にした手。この手に代えて4五金では、4二玉で後手良しになるところだった。
 6一竜としておいて、次に4五金をねらう。図で4四玉なら、3七桂で先手良し。
 7七と が後手の指したい手だが、それには、3七飛がある(次の図)

研究9八玉図18
 以下、4四玉、7七飛、7六歩、4七飛、4五香、9七飛(次の図)

研究9八玉図19
 6六歩、6八歩、5八金、3二角成、6八金、6五金、6七歩成、3六歩(次の図)

研究9八玉図20
 これが変化の一例だが、先手勝勢になった。

研究9八玉図21
 6一竜に、 7七と では3七飛で「と金」を消されて後手不利になるということであれば、後手は他の手を指すしかない。
 それなら、5四銀(図)ならどうか。 この銀は先手のねらう4五金を消しながら、6五~7六銀という攻めへの活用も狙っている。
 この手に対しても、3七飛と打つのがよい。後手の7七とをけん制する意味がある。
 以下、3四香、3五歩、4六銀、3四歩、4四玉、4八香(次の図)

研究9八玉図22
 以下、“4五銀”には、3六銀(次の図)

研究9八玉図23
 5五玉、4五銀、同玉、7六銀(次の図)

研究9八玉図24
 先手良し。 以下3六銀、4六香、同玉、5五銀、同玉、3六飛が予想され、そう進むと先手勝ち。

研究9八玉図25
 4八香に、“5五玉”(図)が後手最善手のようだ。
 4六香、7六歩、7八歩、6六玉。
 ここで、7一竜が好手(次の図)

研究9八玉図26
 7一竜(図)は“7筋に竜を利かす”という意図がある。
 6二銀なら7五竜、同金、同馬、同玉、6七飛で、先手勝勢になる。これが7一竜の狙い。
 よって、後手は6二金と受ける。
 以下、5一竜、5二歩、6八歩、5七と、4八金、5六と、8五歩(次の図)

研究9八玉図27
 8五同金なら、6二竜が決め手になる(同銀に、5七銀以下後手玉詰み)
 4六とが粘りのある手だが、5七銀、同と、同金、6五玉、8四歩と進んで―――(次の図)

研究9八玉図28
 後手玉を押し戻して、先手勝勢がはっきりした。 8三馬以下の“詰めろ”。
 後手5五銀なら、3五飛がわかりやすい決め手になる。

研究9八玉図29
 <z>「3三香に、3一銀(図)の場合。
 これには、5二角成といく。
 そこで7七とは、4三馬でこの場合は先手良し。4三馬の手が、3三香が入っているために後手玉への“詰めろ”になっているので、今度は後手7六桂のような攻めは入らないから。だから4三馬には8七桂成、同馬、同と、同玉と進むが、先手優勢である。
 ということで、5二馬を後手は同歩と取り、先手は4一飛と打つ(次の図)

研究9八玉図30
 これでほとんど後手陣に受けが利かない。4二銀引は同飛成、同銀、3二香成以下詰み。4二角と打っても、3一飛成、同角、3二香成、同玉、4一銀以下詰みなので意味がない。
 しかし、7六角と打って、8九玉、7八と、同玉、6七角成、8八玉に、3四馬という手段があった(次の図)

研究9八玉図31
 この図は、最新ソフトの評価値的にも+400~600くらいの値で、先手良しとなっている。
 以下は変化の一例を示しておく。
 3一飛成、3三玉、4五歩、7六桂、9七玉、3五馬、7八金(次の図)

研究9八玉図32
 4五馬、4一竜左、4四玉、3二竜右、5四銀、7一馬、6二歩、7二馬(次の図)

研究9八玉図33
 7二馬(図)で、後手玉は4三竜直、同銀、4五馬以下の“詰めろ”になっている。 6三歩は同馬で無効。6三香と受ける手には、7三馬と銀を取って、この手も3五銀、同馬、5五馬以下の詰めろになっている。
 また図で3三歩の受けには、3七桂がピッタリの決め手になる。代えて3三香には、4六歩、同銀、6五銀のように、やはり「4五」を目標に攻めていく。
 先手勝勢である。

 【2】7五桂 は、<z>「3三香で先手良しとわかった。


研究9八玉図34(7六桂図)
 〔桐〕9八玉 に、【3】7六桂(図)が後手工夫の手。
 【3】7六桂 に(ア)3三香では、今度はうまくいかない。 その手順をまず示しておく。
 (ア)3三香、3一銀、5二角成、7七と(次の図)

研究9八玉図35
 ここで4三馬が"詰めろ逃れの詰めろ"だが―――
 8八桂成、9七玉、8七成桂(次の図)
 
研究9八玉図36
 この場合は、6四にいた桂馬を使って8七成桂(図)と先手の馬を差し違えることになった。持駒の桂は使わないでまだ手に持っている。
 8七同馬、同と、同玉、7五桂。 温存した桂をここで使えるのが大きい。
 以下、9七玉、6九角、8八金、9五歩(次の図)

研究9八玉図37
 後手良し。

研究9八玉図34(再掲 7六桂図)
 また、【3】7六桂(図)に、(イ)3三歩成、同銀、5二角成と攻めるのも、7七とで後手良しになる(この順の解説は省略する)

 では、どうすればよいか。

研究9八玉図38(3七飛図)
 【3】7六桂 には、(ウ)3七飛(図)が正解手である。

 そこで後手が何を指すか。
 (ま)6六銀 なら、そこで3三香と打ちこむ。 以下同桂、同歩成、同銀、3四歩、4二銀、8四馬(次の図)

研究9八玉図39
 8四馬と金を補充して、後手玉は3二角成、同玉、3三金以下の詰みがある。 先手勝勢。

研究9八玉図38(再掲 3七飛図)
 7八と や、7五桂 にも、今と同じように、3三香で先手が勝てる。
 他に考えられる手としては、(み)4四銀上(む)4四銀引 がある。

研究9八玉図40
 (み)4四銀上 と自陣を受けた場合。
 「7七と」と指せないので、後手は先手玉に“詰めろ”をかける手がない。速い攻めがないので、後手は受けを強化したということだ。
 この手に対しては6七飛(と金を取る)もある。 それでも先手良しだが、もっと勝ちの早い攻めがある。
 5三歩と叩く手である。 同金(5一の利きを減らすことに成功)に、3三香と打ちこむ(次の図)

研究9八玉図41
 3三同桂、同歩成、同銀引、3四歩、4四銀上 に、3三桂(次の図)

研究9八玉図42
 これで後手玉は寄り。 先手勝ち。

研究9八玉図43
 戻って、3四歩に、3四同銀(図)の場合。
 これは同飛と取ってよい。 3三香 が気になるところだが、用意の一手があるので大丈夫(次の図)

研究9八玉図44
 2四桂(図)がその“用意の一手”。 2四同歩、同飛、3一玉(2三歩は2一金以下詰み)、3二角成、同玉、2一銀、4一玉、3二金、5二玉、4二金(次の図)

研究9八玉図45
 6三玉、6一竜、6二銀、7二銀、7三玉、8四馬、同歩、8三金までの “詰み”

研究9八玉図46
 3四同飛に、3三桂 の変化。
 ここでも2四桂はあるが今度は3一香と頑張る手がある。それでも先手良しだが、より鮮やかな決め手があるので紹介しておきたい(次の図)

研究9八玉図47
 5四飛(図)である。 3四桂以下の“詰めろ”になっていて、3一玉には、6三角成(5四金なら2二銀、同玉、3四桂以下詰み)を用意している。
 先手勝ち。

研究9八玉図48
 (む)4四銀引 で自陣を固めるのはどうか。
 この手には、「6七飛」とと金を払っておく。

研究9八玉図49
 「6七飛」(図)。 これで後手にはめぼしい攻め手がなくなった。
 ここで後手5八金 のような手なら、3三香と打ちこんで、3一銀に、5二角成、同歩、6一飛成で先手勝勢になる。
 6三歩 では受けだけの手で、7七歩でこれも先手勝勢。
 6四銀右 は考えられるところ。7七歩には7五銀とこの銀を繰り出してくるつもり。それでも先手わるくないが、もっと良い手がある。 6四銀右 には、5四歩が鋭い返し技である。 以下、6六歩に、3七飛とし、5四銀に、3三香(次の図)

研究9八玉図50
  盤上の中段にいる後手の金銀が役に立っていない。
 3三同桂なら5二角成で、そして3三同銀引なら同歩成、同銀に、やはり5二角成で、後手玉は “寄り”である。“3七飛”が攻防にめいっぱい働いている。

研究9八玉図51
 6二金 の変化。
 この手は、3一玉から角を取って、その角で攻めようという手である。
 これには、5二歩とする。同歩なら、もう3一玉からの角取りはなくなるので、7七歩で先手勝勢である。
 よって後手は6一歩と受け、5一歩成、同銀、6三歩に、7五桂、7七飛、5二銀で勝負をかけてくる(次の図)

研究9八玉図52
 図以下、6二歩成、4一銀、6一竜と進む。
 そこで4二銀上は2六香が厳しいので、後手は5一歩と工夫をする。同とに、4二銀上。
 以下、5二と(次の図)

研究9八玉図53
 ここで8七角の攻めはあるが、同飛、同桂成、同玉のときに、後手玉が3一角以下の詰めろになってしまう。
 なのでここは後手6六歩のような攻めになるが、5三と、同銀引、3三歩成以下、先手が勝てる。

研究9八玉図54
 「6七飛」に、7五桂(図)が、コンピューターソフトの推す手だが、どうなるか。
 ここは6六飛も有力だが、3七飛以下の変化を示しておく。
 そこで6六歩では、7八香が好手になる。
 なので後手は7七歩と工夫する。
 それには、6六金(次の図)

研究9八玉図55
 ここは後手の攻めの桂馬を取りにいくのが急所になるのだ。桂馬が入れば、2六香+1五桂の攻めがある。
 図以下、6八桂成、7五金、7八歩成、2六香、1四歩(先手1五桂を防ぐ)、5二角成(次の図)

研究9八玉図56
 5二同歩、2三香成、同玉、2一竜、2二歩、2四桂(次の図)

研究9八玉図57
 2四同玉、2二竜、2三歩、2五金、同玉、2三竜、2四桂、2六歩(次の図)

研究9八玉図58
 以下、2六同玉、2四竜、2五歩、3八桂まで、詰み。

研究9八玉図38(再掲 3七飛図)
 「3七飛図」まで戻る。 【3】7六桂 に、3七飛と打ったところ。
 「激指14」はここで評価値-373(考慮5分)としている。 3一銀 で後手が良さそうというのである(最新ソフトでは+600くらいで先手良しの評価になっている)
 ということで、最後に 3一銀 を調べておこう。

研究9八玉図59
 (め)3一銀(図)
 ここまでこの後手陣(≪亜空間要塞≫)を攻略する手をとことん調べてきた我々終盤探検隊の経験によるカンからすると、ここはきっと先手に勝ち筋があるだろうと感じる。
 具体的なその手順は、何か、という問題になる。
 3三香は有力だが、4二銀引と応じられ、はっきりしない。

 どうやら、3三歩成が良さそうである。 3三歩成、同歩、3四歩とする(3四歩に代えて2六香は3二銀で形勢不明)

研究9八玉図60
 3四歩(図)と合わせるのが見えづらい好手である。
 そこで、後手に、[4四銀引][3四同歩] とが考えられる。
 まず [4四銀引] には、そこで2六香と打つ(次の図)

研究9八玉図61
 3二桂なら、5二角成、同歩、4一金で良い。
 また、1一桂と受けるのなら、6七飛としておき、以下、6二銀引、5四歩、4二銀引、7七歩が一例で、先手勝勢(この変化は先手に怖いところがない)
 だからここでは、「3二銀」で勝負するが、5二角成、同歩、3三歩成、同銀引、3四歩(次の図)

研究9八玉図62
 こう進んでみると、これも先手勝勢の図になっている。 4四銀(4二銀)なら、2三香成、同玉(同銀は3三金以下)、2一竜で、後手玉詰み。
 8八桂成、同玉、5五角という手はあるが、9七玉で問題ない(以下3七角成、3三歩成、同玉に、3七桂が後手玉への詰めろ)

研究9八玉図63
 [3四同歩](図)の場合。 これには、3三歩とする。
 3三同桂に、そこで2六香。3三桂とさせた効果で、後手陣が弱体化している。2六香に3二銀なら、5二角成、同歩のときに、2一金と打って、同銀、2三香成、同玉、2一竜で詰むという仕組みだ。
 1一桂 の受けには、5二角成、同歩、4一金(次の図)

研究9八玉図64
 先手勝ち。2一金以下の“詰めろ”だ。
 4二角と受けるなら、8四馬とする。以下、同銀、3一金、同角に、3二金以下“詰み”である。
 こうした変化のときに「9七玉型」より「9八玉型」のほうが、角を渡しても先手玉が詰まないという意味で優れている。

研究9八玉図65   
 戻って、先手2六香に対し、2五桂打(図)とする受けもある。3七飛の“取り”になっている。
 これには冷静に6七飛としておき、6六歩、7七飛、7五歩に、3七桂と活用していく(次の図)

研究9八玉図66
 4二金以下粘る手はあるが―――
 5一竜、4一金、同竜、3二角、5二竜、4四銀引、2五桂、同桂、3三歩、同銀、4五桂、4二銀右、3三桂成、同玉、2五香(次の図)

研究9八玉図67
 先手勝勢である。

 以上の調査から、【3】7六桂 には(ウ)3七飛 で先手良しと結論する。


9八玉基本図(再掲)

 〔桐〕9八玉 は先手良し



6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔柊〕3七桂 → 先手良し
  〔栃〕8一飛 → 後手良し
  〔柳〕7八歩 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉 → 先手良し

 これで〔桐〕9八玉も「先手良し」となり、この手が、11コ目の「先手勝ち筋」となった。

 つまりこの図は、明らかに「先手良しの図」なのである。しかし実戦中には“相当に良い”というような感覚はまったくない。実際、最新ソフトの評価値も、+350 くらいだし、選べる手は1つしかないのだから、勝ち筋がたくさんあってもそれはあまり意味のないことなのだ。 そして、最新ソフトが一推しの〔橘〕3三香 を我々はまったく発見できていなかった。
 なお、戦闘中に我々の相棒であった「激指14」の評価値は -257 であった。それでも、我々は「ここは先手良しになっている」ということは、“感覚的に”ではあるが、感じていたのであった。

 そして、実戦では、我々終盤探検隊が選んだ手は、〔桜〕9七玉 であった。
 この手も、“戦後調査”の結果は、「先手良し」であることを、ここで伝えておく(その内容についてはこの先の譜で見ていくことになる)


 ただし、「6七歩図」の探求は、まだこれで終わりではない。
 これ以外にも、「有力候補手」があるのだ。



第45譜につづく
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