はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part146 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第45譜

2020年01月29日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第45譜 指始図≫ 9七玉まで


    [女王はおそろしく足が早い]

 アリスはちょっとのま、だまってそれを見送っていたけれど、きゅうにぱっと目をかがやかせて、「あら、見て見て!」とさけびだした。しきりになにか指している。「ほら、白の女王さまが原っぱをかけているわ。あっちの森からとびだしてきたとこよ。女王さまって、ずいぶん足が早いのねえ」
「きっと、敵に追われているんだろう」と、王さまは見向きもせずに、「森じゅう敵だらけだから」
「助けにとんでいってあげないの?」王さまの落着きはらったようすに、アリスはあきれ顔だ。
「むだ、むだ。妃(きさき)はおそろしく足が早いんだ。まるで万蛇砂魑(バンダスナッチ)をつかまえるみたいななものさ。だが、何なら妃のことをメモしておこうか。あれはなかなか愛(う)いやつであるとな」王さまはメモ帳を開きながら、おのろけ調でつぶやいている、「うい、は愛という字をあてればいいんだっけ?」
 このとき、ユニコーンが両手をポケットにつっこんだまま、ぶらぶらこっちにやってきてね。

     (『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 鏡のむこうの世界に入ったアリスは、巨大チェスの一員として参加したいと願い、「白のポーン」となった。
 そのアリスの「ポーン」の出発点は「g2」であった。
 そして、「g2」→「g4」→「g5」→「g6」→「g7」と進んできた。あと一歩進んで「g8」に行けば、アリスは念願の「女王」になれる。

 「g7(7マス目)」は、森であった。そこでアリスは、何千人といる兵隊に出会った。
 それを指揮していたのが「白の王さま」である。
 アリス自身は「白のポーン」であるから、アリスは白軍(先手番)であり、「白の王さま」を守って戦うのがこの「巨大チェス」での本来のアリスの役割である。
 (なお、敵の大将である「赤の王さま」には「g4」ですでにアリスは出会っており、「赤の王さま」はいびきをかいて寝ていた)
 「白の王さま」と話をしているとき、「白の女王さま」が原っぱを猛スピードでかけているのがみえた。敵に追われているらしい。
 アリスは「王さま」に、「助けにとんでいってあげないの?」と聞いたが、「王さま」は「むだ、むだ。妃(きさき)はおそろしく足が早いんだ」という。
 たしかに、チェスの場合、「女王(クイーン)」が最強の戦士で、「王(キング)」は一歩づつしか歩めない守られるべき駒なので、この「白の王さま」の態度は正しい。

 そこに、「ユニコーンが両手をポケットにつっこんだまま、ぶらぶらこっちにやってき」たのであった。




<第45譜 まだある>


≪最終一番勝負 第45譜 指始図≫ 9七玉まで

 この図を一手戻した図、「6七と図」を、終盤探検隊は目下、研究調査中である。


6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔柊〕3七桂 → 先手良し
  〔栃〕8一飛 → 後手良し
  〔柳〕7八歩 → 先手良し
  〔桐〕9八玉 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行(先手良しの見込み)

 ここでの「候補手」はまだある。 ここまできたら、残さず全部調べてしまいたい。
 今回調査するのは、〔椎〕1五歩と、〔檜〕3八香。



[調査研究:〔椎〕1五歩]

1五歩基本図
 〔椎〕1五歩(図)は、1筋の攻めを狙う手。 1筋は後手の薄い場所なので理に適っている狙いだが―――間に合うかどうか、速度の問題になる。
 ここで後手は <あ>7五桂<い>7六歩 とが候補手だ。

 <あ>7五桂、9七玉、7七と、9八金(次の図)

研究1五歩図01(9八金図)
 9八金に代えて8九香もあるが、この場合それは7六歩(次に8七と、同香、7七歩成をねらう手)で、後手良しになる。
 9八金(図)に、後手は(A)7六桂。 以下8九香、6六銀に、ねらいの1四歩(次の図)

研究1五歩図02
 1四同歩に、1三歩、同香、1二歩(次の図)

研究1五歩図03
 1二同玉なら、3二角成がある。 先手成功の図である。


研究1五歩図04(7六歩図)
 (B)7六歩(図)が、代わる後手の有力手である。
 この図は、最新ソフトの評価値はほぼゼロ(互角)で、どちらが良いのかそれだけではわからない。
 1四歩 から攻めてみよう。
 1四歩、同歩、1三歩、同香、1二歩、6六銀、7八香(次の図)

研究1五歩図05
 6六銀は先手玉への“詰めろ”だった。先手は端攻めに歩を使ってしまい、受ける歩がないので7八香(図)と受けた(7九香は6九金が気になる。また8九香と受けるのは8七と、同香、7七歩成で後手良し)
 7八香を、同となら、1一歩成で先手良し。
 なので後手は、8七と、同金、同桂成、同玉で「金」を入手し、7五金と迫る(次の図)

研究1五歩図06
 6七歩の受けは、7七歩成、同香、7六金打で寄せられてしまう。
 しかし1一歩成、同玉に、6七歩はある。以下7七歩成、同香、同銀成、同玉、5八金、7五馬、7四香は、形勢不明。

 図より、7五同馬、同銀としてから1一歩成でどうなるか。以下同玉、3二角成に、2二金の受けがある。
 そこでしかし、先手にも2四桂という妙技がある(次の図)

研究1五歩図07
 先手は「飛金」と持駒を持っている。
 2四同歩、2三金、同金、同馬、1二金(2二金では3二飛で先手勝ち)、3三歩成、同銀、同馬、2二角、3一飛、3三角、3二金、2二金、3三金、同金、3四歩(次の図)

研究1五歩図08
 これは、先手の攻めが成功しているようだ。

研究1五歩図09
 しかし先手2四桂のところまで戻って、そこで後手に8六銀(図)という切り返しがあった。
 同玉に、6八角と打つのである。以下、8五玉、2四角成となり、これは「形勢不明(互角)」である。
 互角ではあるが、しかしこの変化は先手が好んで飛び込んでいく道ではなないように思われる。

研究1五歩図04(再掲 7六歩図)
 後手の(B)7六歩(図)に、1四歩 以外の手がないものか。
 研究の結果、我々は、ここでは 7八歩 と打つのがベストではないかと判断した。

研究1五歩図10
 7八歩(図)と打って、7八同とに、2五飛と打つ。このまま次に2六香と打たれると後手は困るので、後手は6二金。
 そこで3三香とする(次の図)

研究1五歩図11
 3三同桂、同歩成、同玉、3四歩、同玉、5五飛(次の図)

研究1五歩図12
 これは先手良し。
 (B)7六歩には、7八歩、同と、2五飛で先手が勝てるとわかった。


研究1五歩図13(6六銀図)
 (A)7六桂でも(B)7六歩でも、「先手良し」になった。
 そこで後手(C)6六銀(図)が第3の候補手である。
 ここで 1四歩 なら、6七銀不成とし、1三歩成、同香、同香成、同桂、5二角成、7八銀(詰めろ)、8八香、8九銀不成(次の図)

研究1五歩図14
 後手優勢。 これが後手(C)6六銀のねらい。

研究1五歩図13(再掲 6六銀図)
 このようにここで 1四歩 では先手負けになる。
 ではどう指すか。先の7六歩の場合と同じように 7八歩 と指すのは、7六とでも、8七とでも形勢不明の戦いになる。
 2六飛 と打つのが良いようだ(次の図)

研究1五歩図15
 2六飛(図)は次に2五香のねらいで、6七銀不成には2五香で先手勝ちとなる。
 よって、後手は6二金。これなら2五香には3一玉で後手良しになる。また、6二金に6六飛も、3一玉で後手良し。
 他に手がなければ先手が不利ということになるが、3三香がある。以下、同桂、同歩成、同銀に、そこで6六飛と銀を取る(次の図)

研究1五歩図16(6六飛図)
 この局面、最新ソフト(「dolphin1/orqha1018」)の評価値は-348とやや後手に傾いていたが、この先を調査すると、結局は「先手良し」ということになった。
 ここで先手5一竜を許さないために、4二銀右 または 6一歩 が後手の候補手になる。以下の変化を見ておく。

 4二銀右 は、3四歩、同銀、3三歩、同玉、2六桂とする。これは発見の難しそうな手順で、3三歩、同玉を利かすことで、後手の3一玉(角取り)の手を防ぎつつ攻めている。
 後手は7六桂と攻め、先手は7九銀とこれを受ける(次の図)

研究1五歩図17
 8九銀では8七香があるので7九銀(図)と受けた。
 ここで3五銀には3七桂とはね、次に6五飛をねらって先手が指せる。
 7九銀には7八歩がある。これで負けなら7九銀はもともとない手になるが。
 7八歩以下、3四桂、同玉に、8四馬、同銀、4五銀(次の図)

研究1五歩図18
 4五同玉に、3七桂と跳ね、以下、4四玉、4五金、3三玉、3六飛、2二玉、3二角成、1一玉、4二馬となって、先手勝ち。

研究1五歩図19
 6一歩 と後手が受けた場合。
 これには2五桂と打ち、以下4四銀右に、3四歩と打つ。この攻めも、3三桂成としないで3四歩と打つのは思いつきにくい攻め方である。
 3四同銀に、3三歩と攻める。同銀に、2一銀(次の図)

研究1五歩図20
 2一銀が先手のねらいの寄せで、これを同玉は3三桂成で先手良し。
 よって後手は、8七桂成、同金、同と、同玉、4二金と受けるが、3三桂成、同玉、3二銀成、同金、3五歩(次の図)

研究1五歩図21
 3五同銀は3四歩がある。4五銀は3七桂がピッタリ。
 4二玉が最善手と思われるが、3二角成、同玉、3四歩で、やはり先手良し。7五桂には9七玉で、先手玉に詰みはない。
 
 (6一歩以下、この部分の変化について「追加調査による変更」がある。末尾に加えておいた)

研究1五歩図16(再掲 6六飛図)
 よって6六飛としたこの図は「先手良し」ということになり、すなわち、(C)6六銀 には 2六飛 以下、先手良しになるとわかった。

研究1五歩図22
 戻って、この図は 後手<あ>7五桂 に 9七玉としたところ。
 実はここで 7七ととしたのが後手にとっての“悪手”だった のである。「7五桂と7七とはワンセット」のような意味合いがあり、後手としては素早く先手玉に詰めろを掛けたいという意図があったので、当然のように「7五桂、9七玉、7七と」と指してしまうところだが、9八金と受けたその場面はもう「先手良し」となっていたのである。
 ここで「7六歩」として、“二枚目のと金”を作るのが、後手の正着だったのだ。
 しかしここで「7六歩」とするなら、7五桂を打つのは後でもよい。


研究1五歩図23(7六歩図)
 ということで、<い>7六歩(図)の解説に移る。(先手の〔椎〕1五歩に7六歩としたところ)
 ここで7八歩と受けるのは7五桂、9七玉、7八とで後手良し。
 そうであれば、先手は攻めるしかない。しかし3三香は3一銀で先手悪い。2五飛も、7七歩成、9七玉、7五桂で後手良しがはっきりする。

 どうやら、ここは「1四歩」と攻める以外になさそうだ。
 1四歩、7七歩成、9七玉、1四歩、1三歩、同香、8九香、7五桂、1二歩(次の図)

研究1五歩図24
 1二同玉なら3二角成。 3一銀なら、3三歩成、同桂、5二角成。
 6二金なら、3三歩成、同桂、1一歩成。 いずれも先手良し。
 しかし、8七と、同香、7七との攻めがある。これがと金を二枚つくった効果だ。
 以下、9八金、6六銀、1一歩成と進む(次の図)

研究1五歩図25
 8七と、同金、同桂成、同玉、1一玉、3二角成、2二金(次の図)

研究1五歩図26
 2二金(図)と受けられ、これは4一馬といったん逃げるしかないようだ。
 後手は7五金と金を攻めに使う。9八玉、7六金に、1二歩と先手は攻めを続ける。
 以下1二同玉、1四香、同香、1三歩、同玉(次の図)

研究1五歩図27(1三同玉図)
 先手は、後手の7七銀成の詰めろがくる前に後手玉を仕留めなければいけない。
 ここで、2五桂 と、1一飛 が候補手となる。
 2五桂 は、2四玉、6六馬、同金、3三歩成、同銀、同桂成、同桂、2六飛(次の図)

研究1五歩図28
 2五香、6六飛、7四桂、4六飛、4四香(次の図)

研究1五歩図29
 後手良し。
 図以下、(3六飛は5四角があるので)4五歩、同香、3六飛が考えられるが、6五角、9七玉、3五歩、3七飛、4七香成の展開になり、どうも先手に勝ち目がなさそうである。

研究1五歩図30
 1一飛(図)の変化。
 以下、2四玉、3七桂(次の図)

研究1五歩図31
 8四銀、5二角成、3五玉、6三馬、5四香(次の図)

研究1五歩図32
 5二馬から6三馬としたところでは先手がうまくやったようにも思えるが、依然として後手7七銀成がある。8三馬、7七銀成、7九桂、8七歩では、先手が負け。
 4七金は、7七銀成、7九桂、9三銀が、後手9七香、同玉、8七金、同桂、7九角以下の詰めろになっていて、これも後手勝ち。
 ということで、後手は8四馬、同歩、4七銀とするが―――8七金、同玉、6五角の返し技がある。以下、9七玉、4七角成(次の図)

研究1五歩図33
 後手良し。
 この変化は、先手にはまだ三枚の大駒があり、まだ“勝負のあや”はありそうではある。しかし、玉の安全度に大きな差があり、形勢は後手優勢ではっきりしている。

 これで、<い>7六歩 の変化は後手良し、と証明された。


1五歩基本図

 結論はこうなる。 〔椎〕1五歩 は、7六歩以下後手良し




[調査研究:〔檜〕3八香]

 3筋に香を据える「香車ロケット」はどうだろう。

3八香基本図
 〔檜〕3八香 は、3筋をねらう手。
 この手には、【U】7六歩 と、【V】7五桂 がある。
 (なお、この場合は3九香と打っても3六香と打っても同じ変化になりそう。それらを代表して〔檜〕3八香として調べていく)

 【U】7六歩 から見ていこう。


研究3八香図01
 【U】7六歩(図)に、7八歩は、7五桂、9七玉、7八とで、後手良しになる。
 したがって先手はここで、3三歩成と攻める。 以下、同銀、同香成、同玉、3七桂と進む(次の図)

研究3八香図02
 3七桂(図)で、後手玉の上空を押さえる。次に3一飛がねらいになる。
 その手をくらうと困るので、後手は7七歩成、9七玉として、4二玉とする。
 そこで2二金が好手。
 以下、3一香、3三歩、同桂、1一飛(次の図)

研究3八香図03
 5四銀、3一飛成、5三玉、7一竜(次の図)

研究3八香図04
 7一竜として、7三竜をねらう。 6二銀なら、8四馬、同歩、5二角成、同歩、4二銀、4四玉、3四金(図)となって―――(次の図)

研究3八香図05
 後手玉詰み。 3四同玉に、3六香、3五合、2五金、同桂、3二竜以下。

研究3八香図06
 しかし、7一竜に、6三銀が後手の好手で、 これで形勢はまだはっきりしない。 7三竜なら5四玉で後手ペースになる。
 ここで先手の指し手が難しい。実質的に「互角」の局面といえる。
 どうやら、3二角成が先手の最善手。
 以下6二銀に、そこで4四歩と攻める(3二角成と4四歩は発見の難しい手だ)

研究3八香図07
 4四歩が好手で、同銀なら6五銀で先手勝ちになる。
 7一銀、4三歩成、5四玉、5三と、4四玉、7一馬、8七飛(次の図)

研究3八香図08
 先手の3二の馬が、いつのまにか自陣に利いている。これが3二馬~4四歩の効果の一つ。
 8九飛のような手なら、5四と以下後手玉は詰んでしまう(6二歩は同馬で無効)
 だから、8七飛(図)と打って、後手はこの馬を消去して玉のピンチを脱出しようとする。
 8七同馬、同と、同玉、7五桂、9七玉、5六銀、3三竜、5五玉、5二と、6六玉、8八飛、7八歩、4八銀(次の図)

研究3八香図09
 結果は、「先手やや良し」(「dolphin1/orqha1018」評価値は+500くらい)


研究3八香図10(7五桂図)
 【V】7五桂(図)なら、どうなるか。
 9七玉、7七とに、9八金は、9五歩で後手ペースになる。
 しかしこの場合は、3三歩成、同銀(同桂ならいったん9八金と受けて先手良し)、同香成、同玉、3七飛がある(次の図)

研究3八香図11
 3七飛(図)に、後手は3四香と応じる。
 以下、7七飛、7六歩(次の図)

研究3八香図12
 ここで、〔赤〕7九飛〔紫〕5七飛 がある。
 まず、〔赤〕7九飛 から(次の図)

研究3八香図13(7九飛図)
 〔赤〕7九飛(図)に、ここで 5八金 は3五歩で先手ペースの戦いになる。
 6六銀 は考えられるが、それは―――(次の図)

研究3八香図14
 7八歩(図)と受けて先手が指せるようだ。かんたんに7七歩成でと金をつくらせない。

 だから、〔赤〕7九飛には、6七歩 が後手の有力手だ。 5九飛なら、7七歩成で後手優勢。
 しかし、先手には、3五歩の好手がある(次の図)

研究3八香図15
 3五同香は、5二角成、同歩、4五金で、先手勝ちが決まる。
 よって、6八歩成、3四歩、4二玉と進む(3四歩に4四玉は4八香で先手良し)
 以下、5二角成、同玉、7二銀と攻め続ける(次の図)

研究3八香図16
 どうやら先手が良くなったようだ。
 “詰めろ”を受ける6二銀左に、8四馬、同歩、5四香、4二玉、2二金(次の図)

研究3八香図17
 先手勝ちになった。

 しかし、これで先手良し――とは決まらない。

研究3八香図18
 「7九飛図」に戻って、6九金(図)という手があるからだ。
 6九同飛に、7七歩成で、金を押し売りして、その代わりに攻めの主導権を取る指し方。
 以下、9八金、6七歩(次の図)

研究3八香図19(6七歩図)
 結論から言うと、これで「後手良し」。
 図の6七歩に代えて、6二銀左の受けの手(5一を強化して次に4二金や4二玉を狙う)が後手のより手堅い手で、これも後手有望。
 ここでは、6七歩(図)以下を解説しておく。

 先手は、(1)3五歩と(2)6一竜が有力手。

研究3八香図20
 (1)3五歩(図)。
 これを同香なら、先手が良くなる。その手順は、3五同香に、6一竜、6八歩成、3四歩、同玉、4九飛(次の図)

研究3八香図21
 これで先手良し(手順中、6一竜が好手で、これは後手の4二玉をあらかじめ牽制した意味がある)

研究3八香図22
 (1)3五歩に4二玉(図)ならどうか。
 これは以下、2二金、4一玉、8四馬(次の図)

研究3八香図23
 8七桂成、同金、同と、同玉、7六角、8八玉、8七金、8九玉、6二金、7五馬、7七歩、7九歩、5二玉、6三歩(次の図)

研究3八香図24
 6三同玉に、6五歩と指す。先手良しになった。
 これは、後手が応手を誤ったからである。

研究3八香図25
 先手(1)3五歩には、後手は6八歩成(図)としなければいけなかった。これが後手の“正着”である。
 対して4九飛なら、4二玉で後手勝勢になる。
 8九飛と逃げるのが最善だが、今度は4二玉には、2二金、4一玉、8四馬で先手がやれる。この変化のときに8九飛が受けに役立っているのだ。
 8九飛には、後手は7八と寄が正着になる。 以下、3四歩、4二玉(次の図)

研究3八香図26
 8九とと飛車を取られるともう先手は負けなので、その前に先手はここで後手玉を攻め切るしかない。
 2二金、5四銀、6一竜、8九と、5二角成と勝負にいく。以下、同歩に、5一銀、5三玉、7一馬、6二歩(次の図)

研究3八香図27
 6二同竜、4四玉、6四竜、6二歩、4九香、4五角(次の図)

研究3八香図28
 先手の攻めが続かず、後手勝ちがはっきりした。
 (1)3五歩では勝てないとわかった。

研究3八香図29
 それでは、(2)6一竜(図)ならどうなるだろうか。これは後手の4二玉の筋をけん制しつつ、次に3五歩を打とうという意味である。
 これには、4二金が後手の正確な応手である。以下、6三角成、6八歩成、4九飛に、6二銀右とし、4五馬、4四銀引と進む(次の図)

研究3八香図30
 以下、4六馬、7八と寄、3五歩、7六歩(詰めろ)、3四歩、2二玉(次の図)

研究3八香図31
 後手勝勢である。
 先手玉に“詰めろ”が掛かっているので、8九香と受けることになるが、同と、同飛、7八とで、先手に勝ち目がない。


研究3八香図32
 後手7六歩に、〔赤〕7九飛6九金 という手があって、後手良しになった。
 それなら、〔紫〕5七飛(図)に期待をするしかない。
 これには「6六銀」が正着だ。
 これを誤って6九金とすると、3五歩、5六銀、3四歩、4二玉、3一金のような展開になり――(次の図)

研究3八香図33
 この変化は、先手良しになる。

研究3八香図34
 だから後手は、〔紫〕5七飛 に、「6六銀」(図)とするのが正しい。
 以下、5九飛、7七歩成、9八金と進む(次の図)

研究3八香図35(9八金図)
 この図がどちらの勝ちになっているか、それが重要だ。
 ここで後手の有力は候補手が複数あって、最新ソフトの“答え”もコロコロ変わる(評価値は-400くらい)
 調査研究の結果、我々終盤探検隊の出した結論は、次に示す手で、後手良し(次の図)

研究3八香図36
 6七銀不成(図)で、どうやら後手良しになっている。
 この手は、次に7六銀成や7八銀不成を狙う厳しい攻めで、そうなると受けが難しくなる。
 先手の攻めは、やはり3五歩になる。これを同香なら、5五飛で、先手良しになるが―――(次の図)

研究3八香図37
 3五歩に、4二金(図)が後手の好手である。
 以下、3四歩に、2二玉、3三歩成、同歩で、次の図になる。

研究3八香図38
 ここで5三飛成という手がある。同金なら、3一銀で後手玉が詰むが、しかし5三飛成に4一金と応じられて、後手良しである。角を持たれると7九角があるし、それを先受けして8八香と打っても、8九角で"受けなし"になる。5三飛成では先手勝てない。
 また、8四馬として、これを同歩(同銀)なら、3二金、同金、同角成、同玉、4一銀、同玉、5一竜、同玉、5三飛成以下後手玉が詰む。しかし、8四馬に、8七桂成、同金、同と、同玉、4一金と応じられると、逆に先手玉のほうが“詰めろ”になっていて、後手勝ちとなる。

 なので、どうやらここは「6三角成」とするしかないが、8七桂成、同金、同と、同玉、7六銀成、7八玉、7七歩、6九玉、6七成銀、5八飛、5六桂と進んで―――(次の図)

研究3八香図39
 先手が勝てない。5九玉とすればまだ粘れるが、5八成銀、同玉、6八飛、4七玉、4八桂成、3七玉、6三飛成と進んで、後手優勢ははっきりしている。

 〔紫〕5七飛 も、後手良しになった。


 これで、結論が出た。


3八香基本図(再掲)

 〔檜〕3八香 は、7五桂以下、後手良し




6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桃〕2六香 → 先手良し
  〔楓〕2五飛 → 先手良し
  〔柊〕3七桂 → 先手良し
  〔栃〕8一飛 → 後手良し
  〔柳〕7八歩 → 先手良し
  〔桐〕9八玉 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行(先手良しの見込み)
  〔椎〕1五歩 → 後手良し
  〔檜〕3八香 → 後手良し


 〔椎〕1五歩も、〔檜〕3八香も、ともに後手陣の急所を攻める手で惜しいところもあったが、後手に正確に対応されると「後手良し」となるとわかった。
 まだ、未発表の候補手は残っている。


第46譜につづく






[追加調査による変更:〔椎〕1五歩について]

研究1五歩図16(6六飛図)
 この図は、〔椎〕1五歩に7五桂、9七玉、7七と以下の一変化で、この上では6六飛(図)で先手良しという結論になっている。
 6六飛に、後手は4二銀右6一歩だったが、どちらの手も後手玉の攻略ができた。

 しかしあらためて調査して、6一歩以下の変化に “訂正”が必要な個所が発見された。
 6一歩に、2五桂と攻めるのだが、対して、「4二銀右」とするのが、後手の“変更”点だ(次の図)

追加研究図a
 2五桂、4四銀右、3四歩、同銀、3三歩、同銀、2一銀と攻めて先手良し―――というのが本編での手順と結論。
 しかし、この図のように、2五桂に「4二銀右」と銀を引いて受けるとどうやら事情が変わるとわかった。
 そこで同じように3四歩、同銀なら、3三歩以下同じようにこの後手玉を攻略できる。
 ところが、この場合は、3四歩に、「2四銀」がある(次の図)

追加研究図b
 これで先手に継続手がないのだ。
 もしもこれが後手4四銀型なら、4五歩があったので、攻略できた。ところがこの場合は4二銀と引いて受けているので、その手がない。
 ここで6三歩は、2五銀、6二歩成、7六香(詰めろ)で、後手勝ち。他に良い手も見つからず、この図は「後手良し」

 ということで、「6六飛図」は、「先手良し」→「後手良し」 に結論が変わった
 つまり、〔椎〕1五歩に対して、「7五桂、9七玉、7七と」という手順でも、「後手良し」となるということになる。

 しかし、〔椎〕1五歩は(7六歩で)後手良し」という全体の結論に変更はない。 

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