はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

久保と時間(1)

2007年09月20日 | しょうぎ
 2年前、瀬川晶司さんが特別な「プロ編入試験6番勝負」を受けた。その試験官としてのメンバーが話題をよんだ。その中でもA級棋士久保利明との対局が注目だった。久保さんにとってはあまり得な対局ではない。それを敢えて受けた。
 久保「将棋を知らない人にも、A級棋士とはこういうものなんだ、と雰囲気だけでも感じてもらうチャンスだと思ったんです」
 そこには、「負けたら…」というような意識はまるでない。さすがだ。
 将棋の内容も面白かった。早石田からアナグマにもぐった久保八段に対し、瀬川さんは位取り。中盤で瀬川さんはしっかり時間を使い、やや有利な局面をつくる。しかしこのとき、久保は時間に余裕を残し「なんとかなる」と自信をもっていた。瀬川、飛車を奪い、敵陣に打ち込む。このとき、瀬川1分将棋。久保、▲3七角と受ける。瀬川さんが優勢だった。勝つとしたら、ここがポイントだった。△7九飛成とすれば勝っていた可能性が強い。しかし…。

 久保「▲3七角は、1分将棋で△7九飛成は指せないだろうと思って打ったんです。あれ以外は相当早く負かされてますね。今日、いちばん、自分らしい手でした」
 瀬川「△7九飛成は見えていて迷ったんですが、香も取れないんじゃバカらしいと思って。とにかく時間がありませんでした」

 久保八段、取られた飛車を取り返す。それでも、まだ、瀬川有望だったのだが…。
 久保▲9四歩。
 瀬川さんがまったく読んでいなかった手だった。動揺した瀬川さんは、自滅していった。

 久保「さばく展開にはならなかったけど、久保将棋のすべてを出しました。膠着状態のときの▲7九金~▲7八金とかね。ああやって相手に時間を使わせるのがプロの将棋なんです。なまじ時間があるから、考えたくなるんです。このテクニックにいちばん長けているのが羽生さんですよ」
               (『将棋世界』山岸浩史氏の観戦記から)


◇竜王戦挑戦者決定三番勝負
   佐藤康光 2-1 木村一基
   佐藤、2年連続挑戦者に。渡辺明竜王との闘いふたたび。

◇A級順位戦、昨日は郷田真隆が羽生善治に勝ちました。やっぱりA級の将棋はおもしろいですね! 今日は、谷川浩司と丸山忠久が戦っています。

◇そして、羽生-久保の王座戦第2局は、あさって22日です。

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