≪最終一番勝負 第58譜 指始図≫ 7七同歩成まで
[the Red Knight and the White Knight]
ここでアリスの考えごとはたちきられてしまった。「わあい、わあい、王手だ!」とわめきたてる声がして、まっかな鎧をまとったひとりの騎士が、大きな棍棒をふりまわしながらこっちへ突進してきたのだ。アリスの目のまえまでくると、馬はにわかにぴたっととまった。「やい、わしのとりこだぞう!」騎士は馬からころげおちながらどなってる。
アリスはぎょっとしたものの、さしあたって自分のことより騎士のことが心配で、相手がまた馬にまたがるのをはらはらして見守った。ぶじ鞍におさまると、騎士はもう一度いいかけた。「やい、わしのとりこ――」と、そこまでいったところで、べつの「わあい、わあい、王手だ!」という声がわりこんできてね。アリスはおどろいて、新顔の敵はどこかとふりむいた。
こんどは白の騎士だ。アリスのわきに馬をとめると、これまた赤の騎士同様、馬からころげおちてね。それからまた馬にまたがると、二人の騎士がしばし物もいわずにじっとにらみあっている。アリスはおろおろして二人をかわるがわるみつめた。
「この子はわがはいのとりこですぞ!」赤の騎士がついに口をきった。
「さよう。だが、さればこそわがはいが救いにきたのだ!」と白の騎士の答えだ。
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
アリスは「7マス目」の森まできている。
赤の騎士(ナイト)と白の騎士があらわれ、“決闘” をはじめた。アリスをめぐっての闘いだ。
アリス自身は「白のポーン(歩兵)」なので、白のナイト(騎士)がアリスの味方だ。
“決闘” の結果は、白のナイトの勝ち。 赤のナイトは負けを認め、去っていった。
<第58譜 吉祥A図を攻略せよ4>
「吉祥A図」について徹底調査中。
吉祥A図
【0】7八歩 = 実戦の指し手
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
【12】1五歩
今回は、【12】1五歩 を調べていく。
[調査研究 【12】1五歩]
1五歩図
【12】1五歩(図)は遅いようにも見えるが、1筋を攻めるのはこの場合の急所の攻めである。
次に1四歩、同歩、1三歩、同香、1二歩が狙い筋の攻めとなる。1二同玉には3二角成である。
その攻めが来る前に、後手が何を指すか。
<A>7五桂 が最有力だ(次の図)
研究1五歩図01(7五桂図)
<A>7五桂(図)に、受けは2通り。〔昼〕9八金 と、〔夜〕8九香。
研究1五歩図02(再掲 9八金図)
〔昼〕9八金(図)と受けた場合。
そこで〈1〉7六桂なら、8九香と受ける。
後手の狙いの攻め筋は9五歩であるが、ここでの後手9五歩には8五歩として、8八桂成、同香、同と、同玉、6六銀に、5二角成、同歩、6一飛、7七角、8九玉で先手優勢である。
なので、ここでは後手は6六銀とする(次の図)
研究1五歩図03
次に9五歩や6七銀~7八銀不成が後手の狙いである。
先手はここで、1四歩と攻める。1四同歩に、1三歩、同香、1二歩(次の図)
研究1五歩図04
これが先手の狙いの攻めだ。次に1一歩成、同玉、3二角成となれば後手玉は受けが困難になる。
したがって3一銀が考えられるが、1一歩成、同玉、3三歩成、同桂、5二角成で、先手勝勢となる。
研究1五歩図05(6六銀図)
〔昼〕9八金 に〈2〉6六銀(図)が後手の有力手。
〔p〕1四歩と攻めていこう。
同歩 に、1三歩、同香、1二歩―――(次の図)
研究1五歩図06
7六歩(図)で、先手玉への“詰めろ”になって、これは大変な勝負。
歩を使い果たしてしまったので7八香と香車を使って受けるしかない(7九香は6九金がある。また8九香は8七と、同香、7七歩成で後手良し)
7八香を同となら、1一歩成、同玉、3二角成、2二香、3三歩成、同銀、3一飛で先手勝ちになる。
〔後日注: その後の研究で7八香に6二金なら形勢不明とわかった〕
よって、後手は8七と。以下同金、同桂成、同玉と進む(次の図)
研究1五歩図07
どちらが勝っているか。
ここで1二玉(3二角成なら2二金がある)は、3五桂と打って、次に3二角成を狙って先手良し。
また、7七歩成、同香、7六歩は、同香、同桂、3三歩成、同銀(代えて同玉には3六飛で先手良し)、5二角成、7五香、7八歩で、先手良し。
7五金で、どうなるか。
その手には、6七歩がある。以下7七歩成、同香、7六金打(次の図)
研究1五歩図08
7六同香、同金、9七玉、7七銀成、9八金、8四香、同馬、同銀、1一歩成(次の図)
研究1五歩図09
これで先手良し。
図以下、1一同玉、3二角成、7九角、8八香、8七成銀、同金、同金、同玉、2二金が予想されるが、3三銀と打って、3二金、同銀成、4四角、7八金で、先手勝勢である。
研究1五歩図10
〔p〕1四歩 に 8七と(図)の変化がある。
8七同金、同桂成、同玉に、7五金。
以下1三歩成、同香、同香成(代えて1四歩は7六金以下先手負け)、同玉と進む(次の図)
研究1五歩図11
ここで受けるなら7九香だが、それは8四銀で後手良し。
9七玉も考えられる。以下8四銀、9四馬、7七銀成、8九香、9三歩、8三馬、8八歩と進むと、これも後手良し。
したがってここは非常手段で、7五馬、同銀、1五飛、1四歩、7五飛でどうか。“二枚替え”で後手の要の金銀を消した。
しかし、そこで後手7六金がある。同飛、同桂に、8九金、6八桂成(次の図)
研究1五歩図12
実戦的にはまだこれからの勝負だが、形勢はやや後手良しだ。
研究1五歩図05(再掲 6六銀図)
〔p〕1四歩 は、8七と 以下、後手良しになった。
他に考えられる手は、〔q〕2六飛 だ(次の図)
研究1五歩図13
〔q〕2六飛(図)と攻防に飛車を打つ。6七銀不成なら、2五香と打って、先手勝ちになる。
よって後手は6二金とする。
それでも2五香は3一玉で角を取られて先手負けになるし、6六飛と銀を取るのも3一玉で先手が悪い。6三歩と打つのも3一玉で後手優勢。
また5二歩は、6一歩と受けられ、以下6三歩に、6七銀不成、6二歩成、7八銀不成で後手勝勢になる。
ここは3三香と打ちこむのが先手唯一の手段のようだ。以下同桂、同歩成、同銀、6六飛と進む。
以下、6一歩、2五桂、4二銀右(次の図)
研究1五歩図14
後手からは次に9五歩の攻めと、7六桂の攻めがありどちらも厳しい攻めである。
先手は6三歩が指したい手だが、7六桂、6二歩成、8八桂成と進むと、先手玉が寄せられてしまう。
ここはしかし、3四歩という手がある。以下同銀なら、3三歩、同銀、2一銀で後手玉を寄せることができるのだ!
しかし、3四歩に2四銀とかわされると、残念ながら、先手の攻めが続かない。
以下6三歩には、2五銀と桂を取られ、6二歩成に、7六香で―――(次の図)
研究1五歩図15
これで先手玉に“詰めろ”(8七と、同金、同桂成、同玉、7五桂以下)が掛かって、後手優勢。
研究1五歩図02(再掲 9八金図)
これで、<A>7五桂 に、〔昼〕9八金 と受けるのは「後手良し」と確定した。
(後手〈2〉6六銀に対し、〔p〕1四歩、〔q〕2六飛 以上に有望な手はなさそう)
研究1五歩図16(8九香図)
<A>7五桂 に、〔夜〕8九香(図)はどうだろうか。
ここで「7六歩」も有力だが、我々終盤探検隊の研究では、「7八歩」(図)を最善手とみる(次の図)
研究1五歩図17
「7八歩」(図)と打てば、先手に受けはないので、攻めるしかない。
1四歩だ。
1四同歩なら、1三歩、同香、1二歩で、先手優勢になる。
したがって、後手は7九歩成。以下、1三歩成、同香、同香成、同桂、5二角成、8九と、4三馬まで、必然の手順となる(次の図)
研究1五歩図18
4三同銀なら、2一金、同玉、5一竜以下、後手玉が詰む。
ここは、8七と、同馬、同桂成、同玉と進む。
以下我々の研究では、以下、「1四歩、2六桂」が最善の手順ということになった(次の図)
研究1五歩図19
ここで(ア)2一香が、我々の調査研究では最善手と見なされた手だが、この図を一見すると、後手(イ)6九角がぴったりの手(先手1四桂も防いでいる)に思える。
(イ)6九角以下、7八歩に、7六桂の攻めで決まっているようにも思えるからだ。
しかし、4一飛、2一香に、そこで7一馬の好手がある(次の図)
研究1五歩図20
7一馬(図)で9筋を竜で守り、5三馬の攻めを狙う。たとえば8八桂成、9七玉、9五歩なら5三馬で先手勝ちになる。図で7五金(7八角成、同玉、8八と以下詰めろ)なら、1四桂、同角成、5三馬でやはり先手勝ち。
よって、この図では6二歩と受ける手が最善手と思われるが、1五歩以下やはり先手ペースの将棋となる。
研究1五歩図21(2一香図)
戻って、「1四歩、2六桂」に、(ア)2一香(図)と進めるのが最善の手順と思われるのである。
ここから、〔U〕4一飛 と 〔V〕1四桂 を見ていく。
まず 〔U〕4一飛 。この手は1四桂以下後手玉への“詰めろ”である。
だから“6九角”と打ちたくなるのだが、それは7八歩、7六桂、7一馬で、上で示した変化に合流してしまう。先手良しである。
といって“3一香”と受けるのは、4三歩で、以下7六角、7八玉、4三角はまだ互角に近いが、先手ペースの戦いである。
“1二玉”は有力だが、2二香の好手があり、6九角、7八歩、2二玉、1五歩で、やはり先手ペースか。
〔U〕4一飛 には、“2五桂”が、どうやら最善手と目される手である(次の図)
研究1五歩図22
“2五桂”(図)と桂をはねて、後手玉に掛かっていた“詰めろ”を解除した。
以下1四桂、1三玉、2一飛成、1四玉(次の図)
研究1五歩図23
1四玉(図)で後手は桂馬を入手した。このことが大きく、先手玉に逆に後手7五桂以下の“詰めろ”が掛かっているのである。
この図は後手良しになっているようだ。
とはいっても、実戦的にはまだ互角に近い(「dolphin1/orqha1018」評価値は -265)
もう少し手を続けてみよう。
この図では7九香と打つ手がある。これを同とは、先手玉の詰めろが解除され、2六金で先手良しになる。
7九香には、6六角と打つ。
以下変化の一例は、9八金、7六歩(8八と、同金、7五桂以下詰めろ)、7五歩、9五桂(次の図)
研究1五歩図24
9五同歩、7九と、9四馬、同金、9六玉、9三歩(好手)、8七桂、7七角成(次の図)
研究1五歩図25
以下9四歩には8七馬以下“詰み”。後手勝ち。
以上、〔U〕4一飛 には、“2五桂”があって、後手良し、というのが我々の研究である。
研究1五歩図26
というわけで、「2一香」に、〔V〕1四桂(図)ならどうか、というのがここからの調査である。
1二玉に、そこで4一飛。
対して、6九角、9七玉、1四角成が見えるが、それは3三歩成、同歩、3二金、3一香、2二金打、同香、4二飛成で、先手勝ちになる。
したがって、4一飛には、3一香と受ける。
そこで4三歩は、6九角、7八歩、7七歩、同玉、7九とで、後手優勢。
ここは5一竜しかなさそう。その手には後手1一歩と受ける(次の図)
研究1五歩図27(1一歩図)
5一竜を同銀と取ると、1一金、同玉、2二金、同香、3一飛成以下、後手玉は詰まされていた。
なので後手は1一歩(図)と打って、その“詰み筋”を消した。
この図の「dolphin1/orqha1018」評価値は[ -5 互角]
先手はどうするか。このままなら今度は5一銀と竜を取られる手がある。
[花]3三歩成と [風]7一竜 が考えられる手。
[花]3三歩成、同歩で、次の図。
研究1五歩図28
ここで攻めの継続手段は2つ。(1)4二竜 と(2)3二歩。
(1)4二竜、同銀、同飛成、3二角(次の図)
研究1五歩図29
3二角(図)で逆王手が掛かった。よって先手は4三歩とするが、このとき、先手は「金金銀銀香歩七」と沢山の持駒を持っているが、それでも 後手玉への詰めろになっていない。4三銀なら詰めろになっているのだが、それだと4七飛、7七歩、4三飛成で、打った銀を取られてしまう。
なので4三歩だが、後手6六銀が、逆に先手玉への“詰めろ”だ。
これを7八歩と受けるのは、8八飛、9七玉、7八飛成でダメなので、7八金と受けるが―――
以下4七飛、5七歩、同飛成、9八玉、7七銀成(次の図)
研究1五歩図30
後手勝ち。(1)4二竜は後手の勝ちとなった。
研究1五歩図31
戻って、(2)3二歩(図)。この手は詰めろ(2二金以下)だし、後手5一銀としても、2二金以下詰む。
7六角があるが、7八玉、3二角、8九玉は、先手良し。
そうすると3二歩で先手良しかと見えるが、後手に好手があった。2四歩である(次の図)
研究1五歩図32
2四歩(図)で、脱出路を開けた。
3一歩成は5一銀で、後手良しがはっきりする。
よって先手はしかたなく7一竜と竜を逃げておくが、6九角、7八歩、7七歩、同玉、1四角成となって―――(次の図)
研究1五歩図33
後手勝勢。3一歩成なら、4一馬、同竜に、7六歩、8七玉、7五桂以下、先手玉が詰む。
7三竜には、7六歩、8七玉、3二馬だ。
研究1五歩図34
1一歩図(研究1五歩図27)から、[風]7一竜(図)の変化。
これには6九角と打つ。以下7八歩、7七歩、同玉に、7九と(次の図)
研究1五歩図35
6八金と受けても、7八と、同金、7六歩以下寄ってしまう。
したがって、6八玉で勝負する。しかし以下5八金、7九玉に、7六桂があった(次の図)
研究1五歩図36
どうやらこれで後手優勢である。
6七金の受けには、6六銀がある。以下3三歩成、同歩、3二歩で後手玉に先に詰めろが掛かるが、6八金、同金、同桂成、同玉、1四角成が“詰めろ逃れの詰めろ”になっており、後手勝ちになる。
他に、8九玉、6八金、7九香と頑張る手段があるが、1四角成として、次に6九馬を狙っていけばよい。
研究1五歩図21(再掲 2一香図)
以上の検討から、これでこの図は「後手良し」が明らかになったようだ。
もう少し前に戻って、あと一つ、“気になる変化” があるのでそれを片付けたい。
研究1五歩図37
この図は、後手の7八歩に、先手が1四歩と突き、以下7九歩成と進んだところ。
ここで1三歩成以下を調査してきたが、ここで「3三歩成」とするのが、“気になる変化” である。「3三歩成」には、同銀だが、それでなにが変わってくるか。
「3三歩成」、同銀、1三歩成、同香、同香成、同桂、5二角成(次の図)
研究1五歩図38
「3三歩成、同銀」が入っているのが、これまでとの違い。
図以下、4二銀左、3七香、8九と、4三馬が想定される手順。さらに、8七と、同馬、同桂成、同玉と進む。
そこで3三歩が、後手の好手(次の図)
研究1五歩図39
3三歩(図)と歩を一つ進めることで、後手玉は3二~4三の空間が開け、先手の狙いの1四桂や1四歩の効果をうすくした。どうやらこれで後手良しの形勢のようだ(「dolphin1/orqha1018」評価値は +82 互角 だが、調査を進めると後手良しにしかならない)
以下、4四歩(1四桂以下詰めろ)、同銀引、4三歩(同銀と取ると1四桂以下詰む)、7六角(次の図)
研究1五歩図40
7六角(図)と打てば、後手優勢がはっきりする。
9七玉なら、9五香で。
7八玉なら、7七歩、同玉、5八角成で。
研究1五歩図17(再掲)
これで、<A>7五桂 に、〔夜〕8九香(図)は、7八歩(図)で後手良しが結論となった。
というわけで―――
研究1五歩図01(7五桂図)
<A>7五桂(図)と打てば、〔昼〕9八金 でも、〔夜〕8九香 でも後手良しとなると出た。
したがって―――
1五歩図(再掲)
【12】1五歩 は後手良し である。
今回の調査の結論はこれで出たのだが、<A>7五桂 以外の手について、すこし触れておこう。
すなわち、この図から、<B>6六銀、および、<C>7六歩 の手についてである。
研究1五歩図41
<B>6六銀(図)には、1四歩とすぐに攻めて、先手良しになる。
以下、1四同歩に、1三歩、同香、1二歩、7五桂、8九香、8七と、同香、7七銀成、9八金(次の図)
研究1五歩図42
これで先手良し。
1四歩に、手抜きして7五桂の変化もあるが、1三歩成、同香、同香成、同桂(同玉)、8九香と進めて、やはり先手良しである。
研究1五歩図43
<C>7六歩(図)には、「7八歩」が最善手となる。
他に「2六香」や「2五香」も考えられる手だが、「2六香」は6六銀、2五飛に2四桂と受けて後手良し。また「2五香」は、7五桂、9八金、6二金で、これも後手良し。
研究1五歩図44
ということで「7八歩」(図)だが、以下6六銀なら1四歩以下、先手良しになる。
よって、7五桂とするが、ここでは9八金と金で受ける(ここがポイント)
そこで7八とは、2五飛、6二金、3三香以下、先手良し。
なので後手は6六銀とする。
そこで2六飛(次の図)
研究1五歩図45
これは上で研究した「研究1五歩図13」とほぼ同じ図だが、「7六歩、7八歩」が入っているところが違う。この “違い” が、この場合、形勢に大きく影響するのだ。
以下6二金、3三香、同桂、同歩成、同銀、6六飛、6一歩、2五桂、4二銀右と上の研究変化と同じ手順で進んだとき、6三歩と打って―――(次の図)
研究1五歩図46
6三歩(図)と打ったこの場面が、今度は「先手良し」となるのである。
「7六歩、7八歩」が入っていない場合には、6三歩に7六桂で後手良しになっていた。ところがこの場合はその7六桂がないので、後手は5二金や5三金と指すことになる。その変化がいずれも先手有望の変化になるのである。また後手の7六歩が入っていると8五歩~8六玉のような展開も先手有利に働く。
5二金なら3六飛、3四香、4六飛で。5三金なら7一馬で先手良し。
また図で3一玉なら、6二歩成、同銀右、8五角成で、これも先手良し。
というわけで、<C>7六歩 は 先手良し、となるのである。
1五歩図(再掲)
すでに書いたが、もう一度今回の調査の結論を書いておく。
【12】1五歩 は、7五桂以下後手良し。
そして―――
吉祥A図
【0】7八歩 = 実戦の指し手
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
【12】1五歩 → 後手良し
「吉祥A図」の調査結果はこうなった。
次回は、【13】9八金、および、【14】6五歩 についての調査結果を発表する予定だ。
第59譜につづく
[the Red Knight and the White Knight]
ここでアリスの考えごとはたちきられてしまった。「わあい、わあい、王手だ!」とわめきたてる声がして、まっかな鎧をまとったひとりの騎士が、大きな棍棒をふりまわしながらこっちへ突進してきたのだ。アリスの目のまえまでくると、馬はにわかにぴたっととまった。「やい、わしのとりこだぞう!」騎士は馬からころげおちながらどなってる。
アリスはぎょっとしたものの、さしあたって自分のことより騎士のことが心配で、相手がまた馬にまたがるのをはらはらして見守った。ぶじ鞍におさまると、騎士はもう一度いいかけた。「やい、わしのとりこ――」と、そこまでいったところで、べつの「わあい、わあい、王手だ!」という声がわりこんできてね。アリスはおどろいて、新顔の敵はどこかとふりむいた。
こんどは白の騎士だ。アリスのわきに馬をとめると、これまた赤の騎士同様、馬からころげおちてね。それからまた馬にまたがると、二人の騎士がしばし物もいわずにじっとにらみあっている。アリスはおろおろして二人をかわるがわるみつめた。
「この子はわがはいのとりこですぞ!」赤の騎士がついに口をきった。
「さよう。だが、さればこそわがはいが救いにきたのだ!」と白の騎士の答えだ。
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
アリスは「7マス目」の森まできている。
赤の騎士(ナイト)と白の騎士があらわれ、“決闘” をはじめた。アリスをめぐっての闘いだ。
アリス自身は「白のポーン(歩兵)」なので、白のナイト(騎士)がアリスの味方だ。
“決闘” の結果は、白のナイトの勝ち。 赤のナイトは負けを認め、去っていった。
<第58譜 吉祥A図を攻略せよ4>
「吉祥A図」について徹底調査中。
吉祥A図
【0】7八歩 = 実戦の指し手
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
【12】1五歩
今回は、【12】1五歩 を調べていく。
[調査研究 【12】1五歩]
1五歩図
【12】1五歩(図)は遅いようにも見えるが、1筋を攻めるのはこの場合の急所の攻めである。
次に1四歩、同歩、1三歩、同香、1二歩が狙い筋の攻めとなる。1二同玉には3二角成である。
その攻めが来る前に、後手が何を指すか。
<A>7五桂 が最有力だ(次の図)
研究1五歩図01(7五桂図)
<A>7五桂(図)に、受けは2通り。〔昼〕9八金 と、〔夜〕8九香。
研究1五歩図02(再掲 9八金図)
〔昼〕9八金(図)と受けた場合。
そこで〈1〉7六桂なら、8九香と受ける。
後手の狙いの攻め筋は9五歩であるが、ここでの後手9五歩には8五歩として、8八桂成、同香、同と、同玉、6六銀に、5二角成、同歩、6一飛、7七角、8九玉で先手優勢である。
なので、ここでは後手は6六銀とする(次の図)
研究1五歩図03
次に9五歩や6七銀~7八銀不成が後手の狙いである。
先手はここで、1四歩と攻める。1四同歩に、1三歩、同香、1二歩(次の図)
研究1五歩図04
これが先手の狙いの攻めだ。次に1一歩成、同玉、3二角成となれば後手玉は受けが困難になる。
したがって3一銀が考えられるが、1一歩成、同玉、3三歩成、同桂、5二角成で、先手勝勢となる。
研究1五歩図05(6六銀図)
〔昼〕9八金 に〈2〉6六銀(図)が後手の有力手。
〔p〕1四歩と攻めていこう。
同歩 に、1三歩、同香、1二歩―――(次の図)
研究1五歩図06
7六歩(図)で、先手玉への“詰めろ”になって、これは大変な勝負。
歩を使い果たしてしまったので7八香と香車を使って受けるしかない(7九香は6九金がある。また8九香は8七と、同香、7七歩成で後手良し)
7八香を同となら、1一歩成、同玉、3二角成、2二香、3三歩成、同銀、3一飛で先手勝ちになる。
〔後日注: その後の研究で7八香に6二金なら形勢不明とわかった〕
よって、後手は8七と。以下同金、同桂成、同玉と進む(次の図)
研究1五歩図07
どちらが勝っているか。
ここで1二玉(3二角成なら2二金がある)は、3五桂と打って、次に3二角成を狙って先手良し。
また、7七歩成、同香、7六歩は、同香、同桂、3三歩成、同銀(代えて同玉には3六飛で先手良し)、5二角成、7五香、7八歩で、先手良し。
7五金で、どうなるか。
その手には、6七歩がある。以下7七歩成、同香、7六金打(次の図)
研究1五歩図08
7六同香、同金、9七玉、7七銀成、9八金、8四香、同馬、同銀、1一歩成(次の図)
研究1五歩図09
これで先手良し。
図以下、1一同玉、3二角成、7九角、8八香、8七成銀、同金、同金、同玉、2二金が予想されるが、3三銀と打って、3二金、同銀成、4四角、7八金で、先手勝勢である。
研究1五歩図10
〔p〕1四歩 に 8七と(図)の変化がある。
8七同金、同桂成、同玉に、7五金。
以下1三歩成、同香、同香成(代えて1四歩は7六金以下先手負け)、同玉と進む(次の図)
研究1五歩図11
ここで受けるなら7九香だが、それは8四銀で後手良し。
9七玉も考えられる。以下8四銀、9四馬、7七銀成、8九香、9三歩、8三馬、8八歩と進むと、これも後手良し。
したがってここは非常手段で、7五馬、同銀、1五飛、1四歩、7五飛でどうか。“二枚替え”で後手の要の金銀を消した。
しかし、そこで後手7六金がある。同飛、同桂に、8九金、6八桂成(次の図)
研究1五歩図12
実戦的にはまだこれからの勝負だが、形勢はやや後手良しだ。
研究1五歩図05(再掲 6六銀図)
〔p〕1四歩 は、8七と 以下、後手良しになった。
他に考えられる手は、〔q〕2六飛 だ(次の図)
研究1五歩図13
〔q〕2六飛(図)と攻防に飛車を打つ。6七銀不成なら、2五香と打って、先手勝ちになる。
よって後手は6二金とする。
それでも2五香は3一玉で角を取られて先手負けになるし、6六飛と銀を取るのも3一玉で先手が悪い。6三歩と打つのも3一玉で後手優勢。
また5二歩は、6一歩と受けられ、以下6三歩に、6七銀不成、6二歩成、7八銀不成で後手勝勢になる。
ここは3三香と打ちこむのが先手唯一の手段のようだ。以下同桂、同歩成、同銀、6六飛と進む。
以下、6一歩、2五桂、4二銀右(次の図)
研究1五歩図14
後手からは次に9五歩の攻めと、7六桂の攻めがありどちらも厳しい攻めである。
先手は6三歩が指したい手だが、7六桂、6二歩成、8八桂成と進むと、先手玉が寄せられてしまう。
ここはしかし、3四歩という手がある。以下同銀なら、3三歩、同銀、2一銀で後手玉を寄せることができるのだ!
しかし、3四歩に2四銀とかわされると、残念ながら、先手の攻めが続かない。
以下6三歩には、2五銀と桂を取られ、6二歩成に、7六香で―――(次の図)
研究1五歩図15
これで先手玉に“詰めろ”(8七と、同金、同桂成、同玉、7五桂以下)が掛かって、後手優勢。
研究1五歩図02(再掲 9八金図)
これで、<A>7五桂 に、〔昼〕9八金 と受けるのは「後手良し」と確定した。
(後手〈2〉6六銀に対し、〔p〕1四歩、〔q〕2六飛 以上に有望な手はなさそう)
研究1五歩図16(8九香図)
<A>7五桂 に、〔夜〕8九香(図)はどうだろうか。
ここで「7六歩」も有力だが、我々終盤探検隊の研究では、「7八歩」(図)を最善手とみる(次の図)
研究1五歩図17
「7八歩」(図)と打てば、先手に受けはないので、攻めるしかない。
1四歩だ。
1四同歩なら、1三歩、同香、1二歩で、先手優勢になる。
したがって、後手は7九歩成。以下、1三歩成、同香、同香成、同桂、5二角成、8九と、4三馬まで、必然の手順となる(次の図)
研究1五歩図18
4三同銀なら、2一金、同玉、5一竜以下、後手玉が詰む。
ここは、8七と、同馬、同桂成、同玉と進む。
以下我々の研究では、以下、「1四歩、2六桂」が最善の手順ということになった(次の図)
研究1五歩図19
ここで(ア)2一香が、我々の調査研究では最善手と見なされた手だが、この図を一見すると、後手(イ)6九角がぴったりの手(先手1四桂も防いでいる)に思える。
(イ)6九角以下、7八歩に、7六桂の攻めで決まっているようにも思えるからだ。
しかし、4一飛、2一香に、そこで7一馬の好手がある(次の図)
研究1五歩図20
7一馬(図)で9筋を竜で守り、5三馬の攻めを狙う。たとえば8八桂成、9七玉、9五歩なら5三馬で先手勝ちになる。図で7五金(7八角成、同玉、8八と以下詰めろ)なら、1四桂、同角成、5三馬でやはり先手勝ち。
よって、この図では6二歩と受ける手が最善手と思われるが、1五歩以下やはり先手ペースの将棋となる。
研究1五歩図21(2一香図)
戻って、「1四歩、2六桂」に、(ア)2一香(図)と進めるのが最善の手順と思われるのである。
ここから、〔U〕4一飛 と 〔V〕1四桂 を見ていく。
まず 〔U〕4一飛 。この手は1四桂以下後手玉への“詰めろ”である。
だから“6九角”と打ちたくなるのだが、それは7八歩、7六桂、7一馬で、上で示した変化に合流してしまう。先手良しである。
といって“3一香”と受けるのは、4三歩で、以下7六角、7八玉、4三角はまだ互角に近いが、先手ペースの戦いである。
“1二玉”は有力だが、2二香の好手があり、6九角、7八歩、2二玉、1五歩で、やはり先手ペースか。
〔U〕4一飛 には、“2五桂”が、どうやら最善手と目される手である(次の図)
研究1五歩図22
“2五桂”(図)と桂をはねて、後手玉に掛かっていた“詰めろ”を解除した。
以下1四桂、1三玉、2一飛成、1四玉(次の図)
研究1五歩図23
1四玉(図)で後手は桂馬を入手した。このことが大きく、先手玉に逆に後手7五桂以下の“詰めろ”が掛かっているのである。
この図は後手良しになっているようだ。
とはいっても、実戦的にはまだ互角に近い(「dolphin1/orqha1018」評価値は -265)
もう少し手を続けてみよう。
この図では7九香と打つ手がある。これを同とは、先手玉の詰めろが解除され、2六金で先手良しになる。
7九香には、6六角と打つ。
以下変化の一例は、9八金、7六歩(8八と、同金、7五桂以下詰めろ)、7五歩、9五桂(次の図)
研究1五歩図24
9五同歩、7九と、9四馬、同金、9六玉、9三歩(好手)、8七桂、7七角成(次の図)
研究1五歩図25
以下9四歩には8七馬以下“詰み”。後手勝ち。
以上、〔U〕4一飛 には、“2五桂”があって、後手良し、というのが我々の研究である。
研究1五歩図26
というわけで、「2一香」に、〔V〕1四桂(図)ならどうか、というのがここからの調査である。
1二玉に、そこで4一飛。
対して、6九角、9七玉、1四角成が見えるが、それは3三歩成、同歩、3二金、3一香、2二金打、同香、4二飛成で、先手勝ちになる。
したがって、4一飛には、3一香と受ける。
そこで4三歩は、6九角、7八歩、7七歩、同玉、7九とで、後手優勢。
ここは5一竜しかなさそう。その手には後手1一歩と受ける(次の図)
研究1五歩図27(1一歩図)
5一竜を同銀と取ると、1一金、同玉、2二金、同香、3一飛成以下、後手玉は詰まされていた。
なので後手は1一歩(図)と打って、その“詰み筋”を消した。
この図の「dolphin1/orqha1018」評価値は[ -5 互角]
先手はどうするか。このままなら今度は5一銀と竜を取られる手がある。
[花]3三歩成と [風]7一竜 が考えられる手。
[花]3三歩成、同歩で、次の図。
研究1五歩図28
ここで攻めの継続手段は2つ。(1)4二竜 と(2)3二歩。
(1)4二竜、同銀、同飛成、3二角(次の図)
研究1五歩図29
3二角(図)で逆王手が掛かった。よって先手は4三歩とするが、このとき、先手は「金金銀銀香歩七」と沢山の持駒を持っているが、それでも 後手玉への詰めろになっていない。4三銀なら詰めろになっているのだが、それだと4七飛、7七歩、4三飛成で、打った銀を取られてしまう。
なので4三歩だが、後手6六銀が、逆に先手玉への“詰めろ”だ。
これを7八歩と受けるのは、8八飛、9七玉、7八飛成でダメなので、7八金と受けるが―――
以下4七飛、5七歩、同飛成、9八玉、7七銀成(次の図)
研究1五歩図30
後手勝ち。(1)4二竜は後手の勝ちとなった。
研究1五歩図31
戻って、(2)3二歩(図)。この手は詰めろ(2二金以下)だし、後手5一銀としても、2二金以下詰む。
7六角があるが、7八玉、3二角、8九玉は、先手良し。
そうすると3二歩で先手良しかと見えるが、後手に好手があった。2四歩である(次の図)
研究1五歩図32
2四歩(図)で、脱出路を開けた。
3一歩成は5一銀で、後手良しがはっきりする。
よって先手はしかたなく7一竜と竜を逃げておくが、6九角、7八歩、7七歩、同玉、1四角成となって―――(次の図)
研究1五歩図33
後手勝勢。3一歩成なら、4一馬、同竜に、7六歩、8七玉、7五桂以下、先手玉が詰む。
7三竜には、7六歩、8七玉、3二馬だ。
研究1五歩図34
1一歩図(研究1五歩図27)から、[風]7一竜(図)の変化。
これには6九角と打つ。以下7八歩、7七歩、同玉に、7九と(次の図)
研究1五歩図35
6八金と受けても、7八と、同金、7六歩以下寄ってしまう。
したがって、6八玉で勝負する。しかし以下5八金、7九玉に、7六桂があった(次の図)
研究1五歩図36
どうやらこれで後手優勢である。
6七金の受けには、6六銀がある。以下3三歩成、同歩、3二歩で後手玉に先に詰めろが掛かるが、6八金、同金、同桂成、同玉、1四角成が“詰めろ逃れの詰めろ”になっており、後手勝ちになる。
他に、8九玉、6八金、7九香と頑張る手段があるが、1四角成として、次に6九馬を狙っていけばよい。
研究1五歩図21(再掲 2一香図)
以上の検討から、これでこの図は「後手良し」が明らかになったようだ。
もう少し前に戻って、あと一つ、“気になる変化” があるのでそれを片付けたい。
研究1五歩図37
この図は、後手の7八歩に、先手が1四歩と突き、以下7九歩成と進んだところ。
ここで1三歩成以下を調査してきたが、ここで「3三歩成」とするのが、“気になる変化” である。「3三歩成」には、同銀だが、それでなにが変わってくるか。
「3三歩成」、同銀、1三歩成、同香、同香成、同桂、5二角成(次の図)
研究1五歩図38
「3三歩成、同銀」が入っているのが、これまでとの違い。
図以下、4二銀左、3七香、8九と、4三馬が想定される手順。さらに、8七と、同馬、同桂成、同玉と進む。
そこで3三歩が、後手の好手(次の図)
研究1五歩図39
3三歩(図)と歩を一つ進めることで、後手玉は3二~4三の空間が開け、先手の狙いの1四桂や1四歩の効果をうすくした。どうやらこれで後手良しの形勢のようだ(「dolphin1/orqha1018」評価値は +82 互角 だが、調査を進めると後手良しにしかならない)
以下、4四歩(1四桂以下詰めろ)、同銀引、4三歩(同銀と取ると1四桂以下詰む)、7六角(次の図)
研究1五歩図40
7六角(図)と打てば、後手優勢がはっきりする。
9七玉なら、9五香で。
7八玉なら、7七歩、同玉、5八角成で。
研究1五歩図17(再掲)
これで、<A>7五桂 に、〔夜〕8九香(図)は、7八歩(図)で後手良しが結論となった。
というわけで―――
研究1五歩図01(7五桂図)
<A>7五桂(図)と打てば、〔昼〕9八金 でも、〔夜〕8九香 でも後手良しとなると出た。
したがって―――
1五歩図(再掲)
【12】1五歩 は後手良し である。
今回の調査の結論はこれで出たのだが、<A>7五桂 以外の手について、すこし触れておこう。
すなわち、この図から、<B>6六銀、および、<C>7六歩 の手についてである。
研究1五歩図41
<B>6六銀(図)には、1四歩とすぐに攻めて、先手良しになる。
以下、1四同歩に、1三歩、同香、1二歩、7五桂、8九香、8七と、同香、7七銀成、9八金(次の図)
研究1五歩図42
これで先手良し。
1四歩に、手抜きして7五桂の変化もあるが、1三歩成、同香、同香成、同桂(同玉)、8九香と進めて、やはり先手良しである。
研究1五歩図43
<C>7六歩(図)には、「7八歩」が最善手となる。
他に「2六香」や「2五香」も考えられる手だが、「2六香」は6六銀、2五飛に2四桂と受けて後手良し。また「2五香」は、7五桂、9八金、6二金で、これも後手良し。
研究1五歩図44
ということで「7八歩」(図)だが、以下6六銀なら1四歩以下、先手良しになる。
よって、7五桂とするが、ここでは9八金と金で受ける(ここがポイント)
そこで7八とは、2五飛、6二金、3三香以下、先手良し。
なので後手は6六銀とする。
そこで2六飛(次の図)
研究1五歩図45
これは上で研究した「研究1五歩図13」とほぼ同じ図だが、「7六歩、7八歩」が入っているところが違う。この “違い” が、この場合、形勢に大きく影響するのだ。
以下6二金、3三香、同桂、同歩成、同銀、6六飛、6一歩、2五桂、4二銀右と上の研究変化と同じ手順で進んだとき、6三歩と打って―――(次の図)
研究1五歩図46
6三歩(図)と打ったこの場面が、今度は「先手良し」となるのである。
「7六歩、7八歩」が入っていない場合には、6三歩に7六桂で後手良しになっていた。ところがこの場合はその7六桂がないので、後手は5二金や5三金と指すことになる。その変化がいずれも先手有望の変化になるのである。また後手の7六歩が入っていると8五歩~8六玉のような展開も先手有利に働く。
5二金なら3六飛、3四香、4六飛で。5三金なら7一馬で先手良し。
また図で3一玉なら、6二歩成、同銀右、8五角成で、これも先手良し。
というわけで、<C>7六歩 は 先手良し、となるのである。
1五歩図(再掲)
すでに書いたが、もう一度今回の調査の結論を書いておく。
【12】1五歩 は、7五桂以下後手良し。
そして―――
吉祥A図
【0】7八歩 = 実戦の指し手
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
【12】1五歩 → 後手良し
「吉祥A図」の調査結果はこうなった。
次回は、【13】9八金、および、【14】6五歩 についての調査結果を発表する予定だ。
第59譜につづく
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