TVアニメ『アルプスの少女ハイジ』を観ている。小説版とのちがいを味わいながら。
それにしてもハイジの声優の杉山佳寿子さんは上手いですねえ! あんなふうにクスクス笑う女の子を、大人が演技でできるなんて! (…このアニメの放映された数年後に、ラジオ番組『鶴光のオールナイトニッポン』にゲスト出演して、ハイジの声でよがり声をだしたのを聞いたときは、心がよじれそうな気持ちになりましたが。)
上の絵は、このアニメの中のフランクフルト駅を写してみた。
〔 … どうしたはずみか籠の蓋がゆるみ、その中から一つ、二つ、三つ、それからまた二つ小猫がころがり出て、そこいらぢう這ひ廻りました。目もとまらないほど早く方方を駈けずり廻るので、部屋いっぱい小猫がゐるやうに見えました。
(中略)
… それはそれは大騒ぎでありました。クララは嬉しがりました。
『まあ、ちいちやくて、なんて可愛いんでせう。ハイヂ、これ御覧なさい。ね、ね、あすこにもゐるわ。』
ハイヂも大悦びで、あちこち小猫のあとを追って駈け歩きました。先生は途方にくれてテイブルのそばに立ったまま、小猫に引っかかれないように、両方の脚を代りばんこにあげてゐました。フロイライン・ロッテンマイアは、はじめは声も出せないほど仰天してゐましたが、やっと我に返ると命がけで叫びました。
『チネッテ、チネッテ。__セバスチアン、セバスチアン。__』 〕
こんなぐあいに、『アルプスの少女ハイジ』(ヨハンナ・シュピーリ著)にも猫は登場する。アルプスの山ではなく、クララの住んでいるドイツ・フランクフルトでの出来事である。
この小猫たちは、ハイジが山が見たくて登った塔(フランクフルトの街の屋根が続いているだけで山は見えずハイジはがっかりするが)で見つけてきたものである。このシーンは物語上とくべつ重要な場面ではないが、クララとハイジが仲良くなるきっかけとなっている。
上の訳は、野上弥生子(1885-1985)によるもの。 この『ハイジ』を日本語に翻訳した人はたくさんいるが、日本で最初に翻訳したのが、じつは、野上弥生子さんなのである。なんと1910年代のこと。つまり大正時代の初めごろで、タイトルは『アルプスの山の娘(ハイヂ)』となっている。
それにしても、僕が野上弥生子という小説家の存在自体を知ったのが1年前だというのに、ずいぶんもう昔のことのように感じる。野上さんは、夏目漱石の最後の弟子で、彼女が漱石に初めに見せた小説の題名が『明暗』。 それとは内容はちがうのだろうが、漱石の最後の作品の題名も『明暗』で、これは未完で終わった。
フランクフルト(ドイツ中部の大都市)は、最近の僕のブログには、何度か出てきた。 ( 『ハイジ』の中ではフランクフルトは暗い印象に描かれていて、フランクフルトにはちょっとお気の毒。ほんとはそんなことないでしょうに。)
アンネ・フランクの生まれた場所がここだし、ロスチャイルド家も、ヤコブ・シフもこの街の出身だ。
ライン川がアルプスから発し、オランダで海に注いでいることは前に書いた。フランクフルト市には、ライン川の主流は流れてはいないが(支流のマイン川が流れている)、だいたい近くを通っている。 そこをさらに川上に遡るとアルプス(スイスの山)に行き着くわけだ。
フランクフルトより南のこのあたりに、昔、15世紀に、ファウストという男がいて、その伝説がずっと残っている。それをもとに、物語を書いたのが、ご存知ゲーテ(1749-1832)。 ゲーテこそ、フランクフルトが自慢とする文豪である。
彼が『ファウスト』を書いたころ、『ハイジ』の作者ヨハンナ・シュピ-リ(1827-1901)がスイスに生まれた。50歳を過ぎたら小説を書こうと思っていたヨハンナは、1881年に『ハイジ』を発表した。彼女は、ゲーテの文学が大好きだったという。
ゲーテ『ファウスト』の第2部の最初の場面は、アルプスを舞台に始まっている。
ところで、フランクフルトはまた、16世紀に、天文学者ケプラーも育てている。彼は『ケプラーの夢』という著書によって、月に生物を住まわせた人類史上最初の人物なのだそうだ。 もちろん空想の中に、であるが。
それにしてもハイジの声優の杉山佳寿子さんは上手いですねえ! あんなふうにクスクス笑う女の子を、大人が演技でできるなんて! (…このアニメの放映された数年後に、ラジオ番組『鶴光のオールナイトニッポン』にゲスト出演して、ハイジの声でよがり声をだしたのを聞いたときは、心がよじれそうな気持ちになりましたが。)
上の絵は、このアニメの中のフランクフルト駅を写してみた。
〔 … どうしたはずみか籠の蓋がゆるみ、その中から一つ、二つ、三つ、それからまた二つ小猫がころがり出て、そこいらぢう這ひ廻りました。目もとまらないほど早く方方を駈けずり廻るので、部屋いっぱい小猫がゐるやうに見えました。
(中略)
… それはそれは大騒ぎでありました。クララは嬉しがりました。
『まあ、ちいちやくて、なんて可愛いんでせう。ハイヂ、これ御覧なさい。ね、ね、あすこにもゐるわ。』
ハイヂも大悦びで、あちこち小猫のあとを追って駈け歩きました。先生は途方にくれてテイブルのそばに立ったまま、小猫に引っかかれないように、両方の脚を代りばんこにあげてゐました。フロイライン・ロッテンマイアは、はじめは声も出せないほど仰天してゐましたが、やっと我に返ると命がけで叫びました。
『チネッテ、チネッテ。__セバスチアン、セバスチアン。__』 〕
こんなぐあいに、『アルプスの少女ハイジ』(ヨハンナ・シュピーリ著)にも猫は登場する。アルプスの山ではなく、クララの住んでいるドイツ・フランクフルトでの出来事である。
この小猫たちは、ハイジが山が見たくて登った塔(フランクフルトの街の屋根が続いているだけで山は見えずハイジはがっかりするが)で見つけてきたものである。このシーンは物語上とくべつ重要な場面ではないが、クララとハイジが仲良くなるきっかけとなっている。
上の訳は、野上弥生子(1885-1985)によるもの。 この『ハイジ』を日本語に翻訳した人はたくさんいるが、日本で最初に翻訳したのが、じつは、野上弥生子さんなのである。なんと1910年代のこと。つまり大正時代の初めごろで、タイトルは『アルプスの山の娘(ハイヂ)』となっている。
それにしても、僕が野上弥生子という小説家の存在自体を知ったのが1年前だというのに、ずいぶんもう昔のことのように感じる。野上さんは、夏目漱石の最後の弟子で、彼女が漱石に初めに見せた小説の題名が『明暗』。 それとは内容はちがうのだろうが、漱石の最後の作品の題名も『明暗』で、これは未完で終わった。
フランクフルト(ドイツ中部の大都市)は、最近の僕のブログには、何度か出てきた。 ( 『ハイジ』の中ではフランクフルトは暗い印象に描かれていて、フランクフルトにはちょっとお気の毒。ほんとはそんなことないでしょうに。)
アンネ・フランクの生まれた場所がここだし、ロスチャイルド家も、ヤコブ・シフもこの街の出身だ。
ライン川がアルプスから発し、オランダで海に注いでいることは前に書いた。フランクフルト市には、ライン川の主流は流れてはいないが(支流のマイン川が流れている)、だいたい近くを通っている。 そこをさらに川上に遡るとアルプス(スイスの山)に行き着くわけだ。
フランクフルトより南のこのあたりに、昔、15世紀に、ファウストという男がいて、その伝説がずっと残っている。それをもとに、物語を書いたのが、ご存知ゲーテ(1749-1832)。 ゲーテこそ、フランクフルトが自慢とする文豪である。
彼が『ファウスト』を書いたころ、『ハイジ』の作者ヨハンナ・シュピ-リ(1827-1901)がスイスに生まれた。50歳を過ぎたら小説を書こうと思っていたヨハンナは、1881年に『ハイジ』を発表した。彼女は、ゲーテの文学が大好きだったという。
ゲーテ『ファウスト』の第2部の最初の場面は、アルプスを舞台に始まっている。
ところで、フランクフルトはまた、16世紀に、天文学者ケプラーも育てている。彼は『ケプラーの夢』という著書によって、月に生物を住まわせた人類史上最初の人物なのだそうだ。 もちろん空想の中に、であるが。
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