はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

風船爆弾

2007年07月13日 | ほん
 東京御茶ノ水駅の前で、レジ袋が風に舞い上がるのを見たことがある。どこへ着地するのか気になって、僕はしばらくレジ袋の行方を追っていた。しかしそのレジ袋は、着地するどころか、どんどん高く舞い上がり、ビル群よりもはるか上空を飛び、小さくなった。僕は、首が疲れて、それを追うのをあきらめた。

 本屋で『風に舞いあがるビニールシート』という本を見たとき、そのことを思い出した。「しかしこの小説のタイトルはどういう意味なのだろう」と気になった。それで図書館で予約した。これは直木賞をとった小説なので予約している人数が多く、1ヶ月ほど待って、いま、読むことができた。この本は、森絵都さんの短編集で、主人公は大人の女性だったり、中年や壮年の男性だったりするが、どれも密度が濃くて、読後感もいい。
 表題作の「風に舞いあがるビニールシート」は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に勤める女性の話。この女性は投資銀行からここへ転職したのだが、平和な国日本を離れるつもりはまったくなかった。その彼女が、難民のあふれるアフガニスタンへ行って働こう、と決心するまでのこころの動きを描いた小説である。
 「ビニールシート」というのは、難民たちの「小さな平和」のことで、それが「戦争」という「風」に舞いあがる、という意味のタイトルだったのだ。

 この本とは関わりがないが、「風船爆弾」というのがあったそうである。

 大戦中、アメリカで、ある牧師の家族がピクニックへ出かけた。そこで、「妙なもの」を子どもが見つけた。それは、どうやら大空を飛んできたらしく、木に引っかかっていた。子どもが触れると、それは爆発し、一家6人は死んだ。
 その「風船爆弾」は直径10メートルほどの大きさで、日本から飛ばされた。推定約千個ほど、アメリカに届いていたらしい。日本軍は、女学生を動員して、その「風船爆弾」をつくらせた。女学生はぶっ倒れるほど働き、それをつくった。和紙をコンニャク糊ではりあわせてつくる。全国のコンニャクは軍が買い上げ、糊となった。だから当時の家庭では、コンニャクは食べられなかったそうだ。
 その爆弾は、アメリカ人6人を殺し、しかしそれ以上の成果はなかったようだ。それを聞いた女学生たちは、「6人殺した」とよろこび、同時に「(あれほど苦労して)たった6人…」とがっかりしたという。時間がたつにつれ、「たった6人でよかった…」「でも、6人を殺したんだ」と思うようになったのだが。

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2 コメント

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台風が接近中 (han)
2007-07-15 03:08:02
>風船爆弾、やりきれない、お話ですね。
ええ。ひどい話です。

>アメリカン・ビューティーという映画
よし、観てみよう。
返信する
風に舞わされる、ビニール。 (y)
2007-07-13 17:33:13
風船爆弾、やりきれない、お話ですね。

風に舞う、ビニール袋は、
アメリカン・ビューティーという映画
をおもいだしました。
返信する

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