≪最終一番勝負 第70譜 指始図≫ 7七同歩成まで
指し手 △7六歩
[ループする “夏休み”]
何の確信だよ。
「我々は同じ時間を、もう何度も繰(く)り返し経験しているということをです」
それはさっき聞いた。
「正解に言えば八月十七日から、三十一日の間ですね」
古泉のセリフが、俺には虚(うつ)ろに聞こえる。
「僕たちは終わりなき夏休みのまっただ中にいるわけですよ」
※ ※ ※
「ハルヒはどうなんだ。あいつはちょっとでも自覚しているのか」
「まったくしていないようですね。してもらっては困るというのもありますが゙‥‥」
長門のほうへ流し目を送って古泉は宇宙人に尋(たず)ねた。さり気なく。
「それで、何回くらい僕たちは同じ二週間をリプレイしているのですか?」
長門は平気な顔をして答えた。
「今回が、一万五千四百九十八回目に該当(がいとう)する」
(谷川流著『エンドレスエイト』(涼宮ハルヒ・シリーズ) 角川スニーカー文庫 より)
<第70譜 決断の時>
≪最終一番勝負 第70譜 指始図≫
後手の次の手は △7六歩。
そして、「吉祥B図」と我々終盤探検隊が名付けた図になる。
これで「千日手ループ」を一回半、繰り返していることになる。
三回繰り返せば、その時点で千日手が成立するが、我々の意志は千日手にするつもりはなかった。しかし、なかなか何を指すか、決断ができないでいた。
「吉祥B図」の調査の結果のまとめは次のようになっている。
(ただし最新ソフトを使った戦後の調査である。戦闘時は、最新ソフトは使えず、「激指14」を相棒として戦っていた)
吉祥B図
【00】7七歩 → 同歩成で「吉祥A図」 → 千日手ループ
【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
【6】2六香 (先手良し) → 先手良し
【7】2六飛 (先手良し) → 先手良し
【8】2五飛 (先手良し) → 先手良し
【9】3七桂 (先手良し) → 先手良し
【10】3八香 (後手良し) → 先手良し
【11】8一飛 (形勢不明) → 互角(形勢不明)
【12】1五歩 (後手良し) → 先手良し
【13】9八金 (後手良し) → 先手良し
【14】6五歩 (後手良し) → 先手良し
【15】3七飛 (先手良し) → 先手良し
(※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果)
前回も書いた通り、我々が戦闘中に期待していた手――すなわち読みの中心は【4】2五香であった。続いて【7】2六飛、【6】2六香を考えていた。
しかし、はっきりした「勝ち筋」はまだ見えてはいなかった。
「7八歩、7六歩」の手交換を入れてからの(すなわちこの吉祥B図からの)【4】2五香なら、確かに先手に勝ち筋があったということが、“戦後研究”では明らかになったのであるが。
結局、我々はそれらとは別の手を選んで、指したのであった。
≪指了図≫(=吉祥B図)
ついに、“決断”した。
我々――終盤探検隊――がこの図から選んで指した手は、しかし、上に挙げた(先日手ループ継続の【00】7七歩を含む)16通りの指し手とは別の手だった!
“17番目の手” を指して、この千日手ループを打開したのである。
その “17番目の手” を、あなたは予想することができるだろうか。
第71譜につづく
指し手 △7六歩
[ループする “夏休み”]
何の確信だよ。
「我々は同じ時間を、もう何度も繰(く)り返し経験しているということをです」
それはさっき聞いた。
「正解に言えば八月十七日から、三十一日の間ですね」
古泉のセリフが、俺には虚(うつ)ろに聞こえる。
「僕たちは終わりなき夏休みのまっただ中にいるわけですよ」
※ ※ ※
「ハルヒはどうなんだ。あいつはちょっとでも自覚しているのか」
「まったくしていないようですね。してもらっては困るというのもありますが゙‥‥」
長門のほうへ流し目を送って古泉は宇宙人に尋(たず)ねた。さり気なく。
「それで、何回くらい僕たちは同じ二週間をリプレイしているのですか?」
長門は平気な顔をして答えた。
「今回が、一万五千四百九十八回目に該当(がいとう)する」
(谷川流著『エンドレスエイト』(涼宮ハルヒ・シリーズ) 角川スニーカー文庫 より)
<第70譜 決断の時>
≪最終一番勝負 第70譜 指始図≫
後手の次の手は △7六歩。
そして、「吉祥B図」と我々終盤探検隊が名付けた図になる。
これで「千日手ループ」を一回半、繰り返していることになる。
三回繰り返せば、その時点で千日手が成立するが、我々の意志は千日手にするつもりはなかった。しかし、なかなか何を指すか、決断ができないでいた。
「吉祥B図」の調査の結果のまとめは次のようになっている。
(ただし最新ソフトを使った戦後の調査である。戦闘時は、最新ソフトは使えず、「激指14」を相棒として戦っていた)
吉祥B図
【00】7七歩 → 同歩成で「吉祥A図」 → 千日手ループ
【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
【6】2六香 (先手良し) → 先手良し
【7】2六飛 (先手良し) → 先手良し
【8】2五飛 (先手良し) → 先手良し
【9】3七桂 (先手良し) → 先手良し
【10】3八香 (後手良し) → 先手良し
【11】8一飛 (形勢不明) → 互角(形勢不明)
【12】1五歩 (後手良し) → 先手良し
【13】9八金 (後手良し) → 先手良し
【14】6五歩 (後手良し) → 先手良し
【15】3七飛 (先手良し) → 先手良し
(※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果)
前回も書いた通り、我々が戦闘中に期待していた手――すなわち読みの中心は【4】2五香であった。続いて【7】2六飛、【6】2六香を考えていた。
しかし、はっきりした「勝ち筋」はまだ見えてはいなかった。
「7八歩、7六歩」の手交換を入れてからの(すなわちこの吉祥B図からの)【4】2五香なら、確かに先手に勝ち筋があったということが、“戦後研究”では明らかになったのであるが。
結局、我々はそれらとは別の手を選んで、指したのであった。
≪指了図≫(=吉祥B図)
ついに、“決断”した。
我々――終盤探検隊――がこの図から選んで指した手は、しかし、上に挙げた(先日手ループ継続の【00】7七歩を含む)16通りの指し手とは別の手だった!
“17番目の手” を指して、この千日手ループを打開したのである。
その “17番目の手” を、あなたは予想することができるだろうか。
第71譜につづく
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