はんどろやノート

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終盤探検隊 part120 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第19譜

2019年05月20日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第19譜 指始図≫ 9三角成まで

 指し手  △9四歩


    [The Mirror of Erised(みぞの鏡)]
 天井まで届くような背の高い見事な鏡だ。
  (中略)
 鏡に近寄って透明になったところをもう一度見たくて、真ん前に立ってみた。
 ハリーは思わず叫び声を上げそうになり、両手で口をふせいだ。急いで振り返って、あたりを見回した。本が叫んだ時よりもずっと激しく動悸がした―――鏡に映ったのは自分だけではない。ハリーのすぐ後ろにたくさんの人が映っていたのだ。
 しかし、部屋には誰もいない。あえぎながら、もう一度ソーッと鏡を振り返って見た。
       (『ハリーポッターと賢者の石』J.K.ローリング著 松岡佑子訳 より)



 『ハリーポッターと賢者の石』に登場する魔法の「鏡」は、「みぞの鏡」である。これは訳者の松岡氏がそのように翻訳したもので、原作では「The Mirror of Erised」である。「erised」という英単語はなく、これは「desire」(=のぞみ)を逆さに並べたもの。
 この「鏡」は、のぞいた人の「desire」が映し出される鏡だったのである。

 『ハリー・ポッターシリーズ』は映画化もされていて説明する必要もないほどの有名な人気小説で、そのシリーズの最初の作品『ハリーポッターと賢者の石』は1997年に発表された。内容は少年ハリー・ポッターがホグワーツ魔法学校に入り、そこを舞台とする“戦い”の物語である。
 その“戦い”の相手は姿の見えない敵(人間としての肉体をすでに失っている)ヴォルデモートであり、彼は手下を使ってこの学校に密かに収められている≪賢者の石≫を奪おうとしてきた。ハリーとその仲間はそのことに気づいて戦ったのである。
 この≪賢者の石≫は、ホグワーツ魔法学校の図書室の奥の部屋の「鏡」の中に保管されていた、という設定である。つまりこの場合、「鏡」は、この貴重品を秘密に保管しておく“金庫”のような役割として使われていたのであった。
 この≪石≫は、伝説の錬金術師ニコラス・フラメルがつくったもので、この小説の設定では、フラメルは、この≪賢者の石≫をつかって(不老不死を得て)、今も妻とともに生きていて年齢は665歳になると、ハリーとその仲間たちが調べた学校の図書館の本には書いてあった。

 ニコラス・フラメル(ニコラ・フラメルと表記されることのほうが多い)は、14世紀にパリに実在した人物で、「錬金術師」として有名になった。錬金術に関するあやしい本を出していたというのが第一の理由である。
 本業は出版業者であったが、いろいろなところへ多額の寄付をしていたので「その財産はきっと錬金術が成功して得たものだ」と当時から街ではうわさされていたのだろう。
 年を取ってパリ・セーヌ川の近くの家に妻とともに暮らしていたが、ある日夫婦ともども忽然と消えてしまった。そういう妙な“最後”だったので、その後に「ニコラ・フラメルは賢者の石の創造に成功して不老不死となり今も生きている」などということになったようである。

 錬金術師(アルケミスト)とは要するに、独学で「科学」を研究する人物のことであろう。彼らの多くは、「アラビアの書物」から「科学」の知識を学ぼうとしていたのであった。
 なぜ、「アラビアの書物」なのか。それは、その書の中には、欧州ではもうすっかり失われてしまった「科学」というものへの探求があったからである。

 まず、今から約2500年ほど前に、「科学」が地中海で発達した。いわゆる「古代ギリシャ科学」である。
 有名な人物を何人か挙げれば、タレス(紀元前624-546)、ピタゴラス(紀元前582-496)、デモクリトス(紀元前460-370)、アルキメデス(紀元前287-212)など。
 アリストテレス(紀元前384-322)を師として尊敬していたマケドニアの王アレキサンドロス3世が紀元前338年に「東方遠征」を開始した。わずか10年でペルシャ地方をわがものとし、これによって、地中海で発展していた「科学」は、この「東方の地」すなわちペルシャ地方(今のイランの場所)にも広がった。このときに地中海の「科学」がアラビア語に翻訳され図書館に保存された。
 やがて時が過ぎ、「欧州」では、ギリシャからローマ帝国に受け継がれた「科学」も、だんだんと失われていった。
 ところが「東方」すなわちアラビア地域では、「科学」は受け継がれて発展していったのである。アラビア語の「科学」の知識が、バクダッドの図書館などに蓄積されていった。欧州では失われていった「科学」が、アラビア地域には残されたのである。

 1000年以上の時が過ぎ、十字軍の遠征の歴史などを経て、いわゆる「イタリア商人」などの活動があって、少しづつまたアラビアの図書館に蓄積された知識が欧州へと逆輸入されていく。
 アラビア語で書かれた「科学」が、ラテン語に翻訳され、それを欧州の知識人が読んで、その意味を解読するということがゆっくりと行われ、欧州は徐々に「科学」に目覚めていくのである。
 そうしたことを、個々にやっていたのが、欧州の錬金術師(アルケミスト)たちというわけだ。

 この錬金術師たちの目的はさまざまであった。ある者は文字通りに「金」を創造して富を得たいと考えていたであろう。またある者は純粋に「科学」への好奇心が止まらなくなって突き動かされたのかもしれない。
 16世紀、これ(錬金術の知識)を医術に使おうと研究していたのが、スイスでアルケミストとして有名なパラケルススである。彼は病に効く薬をつくろうとしていた。常人の理解を超えるほどの彼の熱意をもった知識探求の努力行為が、人々の間で「パラケルススは賢者の石を創造しそれを使えば不老不死になるらしい」というようなうわさを巻き起こした。
 他に有名な錬金術師(アルケミスト)を何人か挙げておくと、ヘルメス・トリスメギストス(錬金術の祖とされる紀元以前の人物)、ゲオルク・ファウスト(死後ゲーテの小説の主人公として有名になった16世紀の人物)、カリオストロ(シチリア島生まれの18世紀の人物)など。

 

<第19譜 後手8四金の変化>

≪最終一番勝負 指始図≫ 9三角成まで
 ≪亜空間最終一番勝負≫。 △5五銀引 に、▲9三角成 と進んだ。

 先手を持つ我々終盤探検隊は、後手はここで△9四歩と指すことと想定して、こう進めていた。


≪最終一番勝負 第19譜 指了図≫ 9四歩まで

 そして実際にそのとおり、後手――≪亜空間の主(ぬし)≫――の指し手は、△9四歩 だった。

第20譜に続く



[変化8四金の研究]

 ただし、今回の指始図(9三角成図)では、△9四歩と並んで、△8四金も有力な手であった。

8四金図
 もし、「8四金」(図)と後手が指していたらどうなったのか。
 実は、ここでの8四金を、われわれは“こっそりと恐れていた”のである。

参考図1a(3四銀型)
 過去の≪亜空間戦争≫の中で、3四歩を“同銀”と応じた「3四銀型」での、“8四金”についてはすでに経験済みで、さらなる研究調査によって蓄積されたものもあった。
 しかし、「4二銀型」については、まったく準備がなかった。
 とはいえ、「3四銀型」での経験値の蓄積は、うまく利用すれば役に立つはずである。

 ここではやはり、「3四銀型」と同じ手―――8五金(次の図)―――が最善手と考え、我々(終盤探検隊)はもし「変化8四金図」になればそう指す予定であった。

8五金基本図
 8五金(図)には7四歩とくるだろう。(8五同金、同玉、8四金、同馬、同歩、9四玉は先手良し)
 以下、8四金、同歩、同馬、8三歩(次の図)

8五金図01
 8三歩(図)に同馬なら7五金で後手が勝ち。かといって、5七馬も、7五銀で後手良し。
 先手に、二つの有力手がある。 〔ア〕7四馬 と、〔イ〕8五玉

 〔ア〕7四馬 に、後手としてはそこで8四金と打ちたいが、それはこの場合5二馬で先手良しになる。
 なので、〔ア〕7四馬 に、後手は7五金とするのが最善手。
 以下、同馬、同銀、8五玉(同玉は6四角の王手竜取りがある)、8四銀、9四玉。
 そして、4七角(次の図)

8五金図02
 後手の持駒は桂だけなので先手が良さそうに見え、我々はこれで先手が良いだろうと最初は考えていた。
 しかし調べてみると、実はまだ難しいと判明。 ここから先手が良くなるための明瞭な順が見つからないのだ。

 おそらく、最善手は「9三金」だろうと考え、以下進めていく。
 「9三金」、7四角成(8五銀以下詰めろ)、8五香、6二金(次の図)

8五金図03
 この6二金(図)が好手で、ここからはっきり先手が良くなる手順が発見できない。
 この6二金の手は、この金を動員して先手玉を捕らえようという力強い手で、これは後手が「4二銀型」の陣形だから可能な手だ(4二銀がいなかったら先手5一竜がある)
 ソフトはここで7五歩を推奨する。(他の手ではどうも先手が勝てそうもない)
 7五歩、同馬、4一角、3二歩、3三歩成、同桂、8三玉、9三銀、9二玉、8五歩、同香、3一玉(次の図)

8五金図04
 このタイミングで、3一玉(図)。
 ここで6三歩、4一玉、6二歩成、同銀は、後手良し。
 3一玉には、1一飛が優るようだが…
 1一飛、2一金、同飛成、同玉、8三香成、9四銀、9三金、8三銀、同金、9五飛、9三金打、7二金(次の図)

8五金図05
 後手の攻めもなかなか止められない。しかししっかり受ければ先手玉は捕まることはなさそうだ。といっても先手の持駒にももう余裕はない。
 すると千日手の可能性の高い状況である。
 「千日手」では、我々(先手)としては不満だが、しかしこれ以上の成果のある手順が(後手6二金以後)見つけられなかった。

8五金図06
 ということで、戻って、(〔ア〕7四馬 に代えて)〔イ〕8五玉(図)ならどうか。
 これは後手の8三歩に対し、〔イ〕8五玉 として、8四歩に、9四玉と、馬を取らせるかわりにまっすぐ“入玉”しようという作戦である。
 8四歩、9四玉、7三銀で、次の図。

8五金図07
 9三玉、7二金、8三香、7一桂、8二金、8三金、同金、同桂、7二金、6二金(次の図) 

8五金図08
 ここでもまた、後手“6二金”という手が出てきた。
 形勢は先手やや苦しめの「互角」というところである。

 なんとか“入玉”自体はできるのだが、はっきり先手有利という展開にならない。むしろ苦しいのではないか。

 ――――ということで、この 「8四金」 以下の変化を、我々(終盤探検隊)は密かに恐れていたのであった。
 実際には、後手の≪ぬし≫は「9四歩」を指してきたので――それは予想通りではあったが――その“恐れ”は杞憂に終わった。
 ただ、“好奇心”としては、「8四金ならどうなったのだろう」という気持ちが残っているので、さらに“戦後調査研究”として調べてみた。

 すると面白い手が出現してきた。次の手である。

8五飛基本図
 8五金 に代えて、8五飛(図)と打つのである!!
 金よりも飛車が良いなんてことがあるのだろうか!? もしそうだったら面白いが。
 (コンピューターソフト「激指14」も元々この手を有力として示していた。瞬間的には4~5位の候補手だったが、30分ほど考慮させると1~3位に上がってきた)

 図以下、(A)7四歩、8四飛、同歩、8六玉、8五飛(次の図)

8五飛図01
 9六玉(後手の攻め駒が金ではなく飛なのでこう逃げる手が可能になる)、6五飛、7五歩、同飛、8四馬、9五歩、8六玉、6五飛、7六歩(次の図)

8五飛図02
 先手良し。先手玉の“入玉”を後手が阻止することが難しい。

8五飛図03
 8五飛 には、(B)9四歩(図)のほうが優るようだ。
 以下、8四飛、同歩、同馬(次の図)

8五飛図04
 ここで [8三歩][6五飛] とが後手の有力手。

 [8三歩] には、8五玉。 以下8四玉、同玉、4七角(次の図)

8五飛図05
 4七角(図)に、9三玉、7七飛が進行の一例だが、そこで“4一角”と打って、以下3二歩 に、3三香(次の図)

8五飛図06
 ここで“例の攻め”(4一角~3三香)が炸裂。 先手の攻めが成功しているようだ。
 以下、3一銀には、5二角成、同歩、1一金(次の図)

8五飛図07
 先手勝勢。

8五飛図08
 上の攻めは成功したが、実は、“4一角”に、3二歩 に代えて、3一歩 と受けられると、形勢はまだ難しい。(そこで2六香と打っても3二桂または1一桂で攻めが止まり先手つまらない)
 だが、“4一角”、3一歩 には、3七桂(図)が好手で、形勢はバランスを保っていてこの図は、「互角」。

8五飛図09
 “4一角”と打った手をやめて、代えて、“8四金” としたのがこの図。
 これなら、わずかに先手リードの形勢のようである。(最新ソフトの評価値は+250くらい)

8五飛図10
 戻って、後手 [6五飛](図)を調査しよう。
 以下、8三金、7四歩に、8六玉(次の図)

8五飛図11
 ここで後手(1)7五銀なら、8五玉、8四銀、同玉で、“入玉”できる。それは先手良し。
 (2)6六銀は7六歩がある。
 また(3)7三桂には、9四馬とし、以下6七とに、7五歩、同飛、7六歩、6五飛、7五香から、“入玉”を計って、先手良し。
 他に有力な後手の手は(4)6二銀と、(5)6三金。 以下この2つの手を見ていく。

8五飛図12
 (4)6二銀には、5三歩(図)
 以下、5三同銀左、3三歩成、同玉、1一角、2二桂、3七桂、4四銀引、7六歩(次の図) 

8五飛図13
 先手良し(最新ソフトの評価値は+476)

8五飛図14
 (5)6三金(図)の場合。これは9四馬なら7三金とする狙いで、それだと後手良しになる。
 (4一角は、3二歩、6三角成、7五銀、8五玉、6三飛で、後手のワナにはまる)
 ここでは、7五歩とするのが良いようだ。(同飛なら今度は4一角で先手優勢)
 7五同銀に、8五玉、8四銀、同玉、6六角、7五歩(次の図)

8五飛図15
 7五同角、9四玉、6二銀、7六銀(次の図)

8五飛図16
 7三金、7五銀、同飛、8六香(次の図)

8五飛図17
 まだたいへんだが、形勢は少し先手良し。


8五飛基本図(再掲)
 以上、調査の結果、8五飛 は、先手が「互角以上に戦える」という評価となった。
 (少なくとも、先手にとって都合の悪い変化はなかった)


8五金基本図(再掲)
 さて、もう一度 8五金 に戻る。
 ここで後手7四歩だが、そこで上では「8四金、同歩、同馬」以下を考えてきた。
 その順で難局になると予想されたわけだが、7四歩に、「8六玉」が有望なのではないか―――というのが、次のテーマだ。

変化8六玉基本図
 この 「8六玉」 である。
 この手は、次に、「8四金、同歩、9五玉」を狙っている。
 だから後手はそれを防ぐ意味で、7五銀 と来る(次の図)

変化8六玉図01
 以下、9六玉 に、9二歩(次の図)

変化8六玉図02
 9二歩(図)がここでの後手の好手である。
 同竜、8五金、同玉、8四金、同馬、同銀、9四玉、7一桂(次の図)

変化8六玉図03
 先手の9一の竜を9二に動かしたことで、この図の7一桂が打てた。
 これは先手が悪い。

変化8六玉図04
 先手は、後手の7五銀 を、同金(図)とするのが正着だった。
 以下、同歩に、8四馬、同歩、9五玉、4七角(次の図)

変化8六玉図05
 さあ、これで先手後手どちらが勝っているか。
 この4七角(図)が後手にとって良さそうな感触の手。
 だが、ここで先手に「8二飛」と打つ手がある(次の図)

変化8六玉図06
 ここで6二歩(先手5二飛成を受けた)なら9四玉で先手良し。
 後手の指したい手は、8三金だ。それでどうなるか。
 しかし8三金には、5二飛成がある。 さあ、どっちが勝っているか。
 5二飛成以下、9四歩、8六玉、8五歩、7七玉、7六歩、8八玉(次の図)

変化8六玉図07
 これは、「先手の勝ち」になった。

変化8六玉図08
 上の変化をふまえて、「8二飛」に、“6二銀”(図)が後手工夫の手。
 もし9四玉なら、7三銀と出て後手良しになる、という意味。7三銀に5二飛成は、9三歩(同玉は8三金以下詰む)、同竜、5二歩で、後手良し。

 この手(6二銀)には、「5三歩」がある(次の図)

変化8六玉図09
 ここで7四角成は、9四玉、7一桂、8三銀で先手優勢。 
 「5三歩」(図)に、同銀左には、3三香(次の図)

変化8六玉図10
 3二歩なら、1一銀、同玉、3二香成で寄る。(3三同桂は3一銀、同玉、3三歩成)
 なので3一歩が考えられるが、それにも、1一銀、同玉、3一同香成といく。
 以下2二金(代えて4二金は、2一成香、同玉、5一竜で寄る)に、3三角(次の図)

変化8六玉図11
 先手勝ち。

変化8六玉図12
 「5三歩」に、9三歩(図)
 これは放っておくと8五金で詰まされてしまうので、9三同竜と取るが、そこで7一桂。この手がまた次に8三桂打とする手があって、実はこれも“詰めろ”。
 なので先手は8四竜とする。そこで後手8三金(次の図)

変化8六玉図13
 ここで5二歩成と金を取り、以下8四金、同飛成、5二歩。
 そこで1五角(次の図)

変化8六玉図14
 この1五角(図)が、3三銀以下の“詰めろ”。
 それを防ぐ2四桂には、同角、同歩、3五桂。 また2四歩には、3五金と打って、これも“詰めろ”。
 この角打ちで先手は「勝ち」をたぐり寄せた。

 どうやら、この変化(8六玉に後手7五銀)は先手が良い。「8二飛」が先手を勝ちに導く好着手だった。


変化8六玉図15
 さて、「8六玉基本図」に戻って、そこで後手 7三銀(図)を見ていこう。
 この手は、7五銀 に比較すると、王手にはなっていないので先手に“手番”が来る。だから感覚的には先手がやれそうだが、具体的に何を指すかが問題である。(8四金は同銀、同馬、同歩、9五玉でこれが後手の狙い。形勢は「互角」)
 我々の見つけた“答え”は、次の一手だ(次の図)

変化8六玉図16
 「2五香」(図)と打って攻めの準備。
 ここで後手6六銀なら2六飛と打ってこれが詰めろ銀取りで先手良しになる。
 6四銀左上が有力だが、それは4一角、3二歩、5二角成、同歩、4一飛、3一角、7六歩のような展開で、これも先手が良い。
 「2五香」には、3二歩と先受けするのが最善のがんばりかもしれない。その手には、3七桂が好手(次の図)

変化8六玉図17
 この桂跳ねで敵陣上空を押さえ、次に8四金、同銀、同馬、同歩で、金銀二枚を入手すれば、2三香成、同玉、2四銀以下、後手玉を詰ますことができる。
 なので後手は3一桂とさらに受けることになるが、以下4五桂、6四銀、3三歩成、同桂、同桂成、同銀、4一飛(次の図)

変化8六玉図18
 4一飛(図)と打って、1一角の寄せを狙う。(8四の金を取って、3四桂、同銀、1一角、同玉、3一飛成以下詰み)
 2四歩、3五桂、1一桂、6一角(次の図)

変化8六玉図19
 4二金、5一飛成、6六銀、2四香、2三歩、2三桂成、同桂左、8三角成(次の図)

変化8六玉図20
 先手優勢。(以下、7五銀引、9六玉、4一桂が予想されるが、8四金、同銀上、同馬左、同銀、同馬、と清算して、次に3四歩を狙う)


 以上の研究調査の結果、「8五金、7四歩、8六玉」 の手順で「先手良し」とわかった。これなら先手が勝てそうだ。
 

8五金基本図(再掲)
 さらに、もう一つ、先手にとって有望な手が見つかった。
 8五金(図)までまた戻って、ここから7四歩に「8四金」以下の変化で、8四金、同歩、同馬、7四馬、8五金、同馬、同銀、8五玉、8四銀、9四玉と進んだ時、「8二角」 が有望ではないかということに気がついたのだ。

8五金図09
 この図である。(上では9三金を最善手と考えて進めていたがそれでは先手不満となった)
 「8二角」 以下は、7四角成、8六香、6四銀引が想定される。
 そこで7五歩があった。以下、同銀左に、7一飛と打って、それで「先手良し」なのではないか。(実際最新ソフトの評価も+500くらいになった)


8四金図(再掲)
 見てきたように、いくつかの先手良しになりそうな順が発見され、どうやら後手 「8四金」(図)は先手が勝てそうだとわかった。
 ただし、「最終一番勝負」で後手の≪ぬし≫が 「8四金」 と指してきたとき、はたして我々終盤探検隊がそれらの順を発見できたかどうか、それはわからない。



≪最終一番勝負 第19譜 指了図≫ 9四歩まで

 実戦の後手の指し手は △9四歩 だった。




<参考>

参考図1a(再掲、3四銀型の8四金)
 「3四銀型」の8四金(図)の場合どうなるかを参考のために書いておく。
 先手はやはりここで「8五金」と打って―――
 8五金、8四金、同歩、同馬、7四馬、8五金、同馬、同銀、8五玉、8四銀、9四玉、9三金(次の図)

参考図1b
 9三金と打つ。以下、7四角成、8六香。
 ここまでは「4二銀型」と同じ。「4二銀型」の場合はそこで6二金があって先手不満(形勢は互角)だった変化であるが…
 ところが、この「3四銀型」の場合はその手がない(6二金には5一竜がある)ので、「先手良し」になる。
 指すとすれば、6二銀だ(次の図)

参考図1c
 ここで5三歩が“手筋”だが、この場合は5三歩に7三銀上とされ、以下5二歩成は8二桂があって、後手良しになる。
 しかし、“次の一手”ならば、先手が勝てる(次の図)

参考図1d
 「5四飛」(図)だ。
 7三銀上には7四飛、同銀、8四香で先手勝勢。 6四銀には、5五角がある。
 また、6三馬には、4一角、3二桂、3四飛、3三歩、8四飛で先手が良い。
 「5四飛」に、7三馬以下を、進行の一例として見ておこう。
 以下、3四飛、3三歩、8四飛、9一馬、8三飛成、7一桂、3二歩(次の図)

参考図1e
 以下、3二同玉に、1一銀と打つ。 こんな感じで、5四飛以下ははっきり「先手良し」。
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