はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

生きものの記録

2006年09月07日 | はなし
 ラジオで大田光が黒澤明の『生きものの記録』を、「黒澤のかくれた名作」といっていたのを聞いて、観てみました。
 ああ、たしかに名作っぽい。主役の老人を三船敏郎が演じているんですけど、黒澤・三船のコンビでなければできないようなこの老人の「存在感」。
 でもね、これみて僕は「ああ、つらい」とおもいました。
 この映画の主役の老人は、原爆・水爆のキケンからのがれるために、家族も愛人も、愛しているものたちすべてを連れてブラジルへ移住しようとします。自分の築いてきた財産をすべて投げ打って。つまり、生きるために最善の努力をしようとするのです。パワフルなじいちゃんです。
 けれど家族にしてみれば「狂っている」からやめさせようということになります。
 原爆・水爆のキケンなんて考え出したら果てがない。だから僕たちは「考えない」ように生きている。器の小さいものがそんなことを考えはじめると手に負えません。考え始めるとどんどん「ウツ」になっちゃうよ。
 だから「考えない」のが「ふつう」の生き方。でもそうすると、「感性」って鈍くなってゆくんですよね。 そんなことを考えると、さてどうしたらいいのか、なんて重苦しくなる。そんなハードな映画です。
 じいちゃんはいいます。「わしはお前たちを一人として死なせたくない。だからブラジルに行ってくれ。」

 それはそれとして、この映画の舞台は昭和30年頃。土の道路を車が走り、建物の窓は開いていて、暑いのでしきりとウチワで扇いでいます。なんだかなつかしい。僕もまだ生まれていないのですが。『三丁目の夕日』も観ようかな。 

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