≪最終一番勝負 第57譜 指始図≫ 7七同歩成まで
[年齢遡行症(マリーン・シックネス)]
〈スフィンクス〉のなかでなにかが起こって、あなたは時潮に呑まれてしまった。その結果、あなたのからだには変化が起こった。ばかげて聞こえるでしょうけれど、あなたはね――若返っているのよ。あなたの肉体は、いまも刻々と若返っているの。もっとも、当面、それは重要なことじゃないわ。重要なのは、あなたが眠っているうちに゙‥‥記憶がなくなってしまうこと。毎日眠るたびに、一日ずつ記憶が消えてしまうの。
(『ハイペリオン』 ダン・シモンズ著 酒井昭伸訳 ハヤカワ文庫 より)
辺境の惑星ハイペリオンには、〈時間の墓標〉と呼ばれる謎の遺跡群があり、そこではエントロピーが逆向きに流れているのだった。
<第57譜 吉祥A図を攻略せよ3>
「吉祥A図」について徹底調査をしているところ。
吉祥A図
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛
今回の調査は、【11】8一飛。
参考図
この図の2手前(「9七玉、7七と」の前)の8一飛の場合は、図のように7六歩として後手良しだった。7六歩~7七歩成で「と金を二枚つくる」ことが後手勝利のポイントになっている(第43譜)
ところが、「9七玉、7七と」とすると、8一飛に、今度は7六歩としても、5二角成、7五桂、9八金、1四歩、7八歩以下、これははっきり先手良しになる。というわけで事情がまったく違ってくるのである。
[調査研究 【11】8一飛]
8一飛図
【11】8一飛 と打って、次に5二角成を狙う。
したがって、後手 〔サ〕6二金 が考えられる(次の図)
研究8一飛図01
そこで「7八歩、7六歩、8九香」が先手良しへ道筋となる(次の図)
研究8一飛図02
以下6一歩に6三歩、7二金、6一飛成、8二銀(次の図)
研究8一飛図03
ここで5四歩と打って、先手が勝てる。5四同銀には7二竜が、3二角成、同玉、2二金以下、“詰めろ”になる。
よって5四歩には、7五桂として、5三歩成、9一銀、9八金と進む(次の図)
研究8一飛図04
9八金(図)と打って先手玉の“詰めろ”を受けておけば、次の4二とで後手玉は“受けなし”に追い込まれる。先手良し。
ただし、もしもこの図で「7八歩、7六歩」の手交換がなかったら、この図は逆に“後手良し”になっていた。ここで6七飛と打ってその手が8八と以下“詰めろ”(同玉に7六桂)になるからだ。
ところが「7八歩、7六歩」を入れておくと、6七飛が詰めろにならないので(8八と同玉に7六桂が指せないため)、4二とで先手勝ちになるのだ。
4二とを後手は許せないので、この図では後手は5三銀とすることになるが、以下7二竜、6二歩。
そこで1一銀(次の図)
研究8一飛図05
同玉には3二角成。そして3一玉には6二歩成で先手が勝てる。
研究8一飛図06(7五桂図)
【11】8一飛 に、〔シ〕7五桂(図)が有力な手だ。
これには、[A]8九香 と、[B]9八金 があり、迷うところ。
[A]8九香 には、どうやら1四歩が最善手で、後手良しになるようだ(次の図)
研究8一飛図07
以下 7八歩 には、同と、5二角成、8九と、3三歩成、同歩、4一馬、7六香(次の図)
研究8一飛図08
これで後手が勝ち。
7六に歩ではなく香車を打ったのは、7六歩だと7八歩で受けられるから。香を打てばその受けがない。
7六香(図)に、受けるなら6八金くらいしかないが、後手5八金で無効である。
研究8一飛図09
1四歩に、3七桂(図)ならどうか。
以下7六歩、5二角成、8七と、同香、7七歩成、9八金、6六銀(詰めろ)、7八歩、8七と、同金、同桂成、同玉、7五金(次の図)
研究8一飛図10
後手良し。
研究8一飛図11
ということで、〔シ〕7五桂(図)に、[B]9八金(図)のほうが良さそうだ。
研究8一飛図12
[B]9八金 には、6二金(図)が最善手とみる。
そこで先手は7八歩(次の図)
研究8一飛図13
7八歩(図)と打って、後手の対応を聞く。
これには、〈1〉7六歩、〈2〉7六と、〈3〉3一玉 の対応がある。
(他に〈4〉7八同と、〈5〉8七と は先手良しになる)
まず〈1〉7六歩は、3三歩成、同桂(同玉は3七桂で先手良し)、8五歩、3一玉、5二歩、6一歩、5一歩成、同銀、6三角成(次の図)
研究8一飛図14
これで先手が良い。
7九角には、8六玉とし、さらに8七と、同金、6八角成と追撃されても、9七玉で先手玉は大丈夫。
以下6三同金、6一竜、6二銀右に、5一竜、同銀、同竜、4一飛、同竜、同玉、2一飛(次の図)
研究8一飛図15
後手3一飛合に、同飛成、同玉、1一飛、2一飛、同飛成、同玉、6一飛、3一飛、1一銀(次の図)
研究8一飛図16
先手勝ち。
研究8一飛図17
7八歩に〈2〉7六と(図)の変化。
3三歩成、同桂、5二歩と攻めるのが最善と思われる(5二歩に代えて3四歩は3一玉で後手良し)
対して6一歩なら、5一歩成、同銀、6三歩で、先手良しになる。
しかし5二歩に、6六銀と攻め合う手があって、以下きわどい勝負に突入する。以下5一歩成、7七歩、5二と、6一歩(次の図)
研究8一飛図18
7七歩、同銀不成、8八香(代えて8九香は7八銀不成で後手良し)、同銀不成、同金(次の図)
研究8一飛図19
ここで8七香は、4二と、同銀、1一銀(3一玉なら2二銀以下詰み)、同玉、3二角成、2一銀、6一飛成、同金、2二銀、同銀、6一竜で先手勝ちになる。
また5一歩と受けるのも、6二とで先手良し。
8六と、同玉、8五香の攻めが有力だが、以下7七玉、8八香成、5三と、同銀、6八玉、5六歩、5九玉と金を入手して、その瞬間に後手玉に3二角成、同玉、4一銀、同玉、6一飛成以下の“詰み”が生じていて、先手勝ちになっている。
なので、この図では後手9五歩が最善手であろう。
そこで4二とは、同銀、9五歩、5二歩と進んで、これは後手良し。
4二とではなく、5三とが正着手(同銀は4四歩、同歩、4三銀で先手良し)で、以下9六歩、同角成、9五歩。
そこで8四馬が好手(次の図)
研究8一飛図20
「8四馬(図)、同銀、4二と」が好手順となる。これを単に4二とでは、9六歩、9八玉、2四歩(以下3四銀としても9七香、8九玉に6七角がある)で、後手勝ちとなる。
「8四馬、同銀」としておけば、9六歩には、同竜と取ることができる。
すなわち図から、8四銀、4二と、9六歩、同竜と進む。以下3一香、同と、同玉、5一銀(次の図)
研究8一飛図21
先手勝ち。〈2〉7六と(図)の変化はきわどかったが、先手良しとわかった。
研究8一飛図22
7八歩に〈3〉3一玉の変化。
これも後手の有力手。以下5二歩、8七と、同金、同桂成、同玉、6一歩、5一歩成、同銀、6三歩(次の図)
研究8一飛図23
4一玉、6二歩成、同銀左引、6一竜、4二玉、8九香(次の図)
研究8一飛図24
8九香(図)が落ち着いた好手(この手に代えて5四桂と打ちたくなるが、それは5三玉でこれは後手玉を逃がしてしまっている)
ここで後手9五歩なら、同歩と取っておく。
この図では5四角が有力手。以下6五歩、同角、9七玉、9五歩に、4五桂と打つ。
以下9六歩に、8八玉(9六同玉もあるところ)。
4五桂は後手玉への“詰めろ”になっている。なので後手は1四歩とする(代えて7一歩は同馬で先手が良い)
先手は、3七桂(次の図)
研究8一飛図25
3七桂(図)として、後手玉はまた“詰めろ”が掛かっている。7一歩としても同馬だし、5二歩としても5三歩が有効なので、この図は先手良しである。
後手玉の“詰み”を確認しておこう。図から6九金に、5一竜、同銀、5三銀、3一玉、5一竜、2二玉、3三銀、同桂、同歩成、同歩、4二竜、1三玉、2四金(次の図)
研究8一飛図26
2四同歩、3三竜、2三合、2五桂打、同歩、同桂まで。
以上見てきたように、〔シ〕7五桂 には、9八金、6二金、7八歩と進めて、互角に近いが、なんとか先手良しに導くことができるとわかった。
8一飛図(再掲)
まとめるとこうである。
〔サ〕6二金 → 先手勝ち
〔シ〕7五桂 → 先手勝ち(ギリギリ)
しかし、後手の有力候補手はまだ他にもある。
〔ス〕1四歩、〔セ〕6一歩、〔ソ〕7一歩 がある。
これを以下、調べていく。
研究8一飛図27
〔ス〕1四歩(図)には、7八歩と細工をする。同となら、5二角成、同歩に、2一飛成、1三玉、7九金、同と、2六香で、先手勝ちになる。
「7七と」の位置がこのと金のベスト・ポジションなので、7六歩とその位置をキープする。
そこで5二角成が成立する。同歩に、2一飛成、1三玉、8八香(次の図)
研究8一飛図28
8八香(図)と、先手玉の7九角からの“詰み”を受けた。それでも7九角なら8九金、3五角成、4一竜左で、次に3二竜左から二枚の竜で玉を追って行けばよい。
8八香に、7五桂には、7九桂。
以下4六角に、2五金(次の図)
研究8一飛図29
2五金(図)と打って、後手玉に“詰めろ”(1四金、同玉、1二竜以下)を掛けて、先手勝勢。
〔ス〕1四歩 → 先手良し
研究8一飛図30
〔セ〕6一歩(図)を同飛成と取ると、6二金、7一竜右、7五桂、8九香(9八金)、3一玉(次の図)
研究8一飛図31
これで後手良しになる。角を取られて先手の攻めが一手遅い。これが〔セ〕6一歩 の狙いだ。
といっても、6一歩で先手の二枚飛車の攻め止められては困る。良いタイミングで6一飛成とするための下準備を考えたい。しかしなかなか良い手がない。7八歩は打ってみたいが、同とと取られて、次の手がまたわからない。
ここは8九香が良いかもしれない(次の図)
研究8一飛図32
対して7五桂なら、5二角成、同歩に、6一飛成で先手良しになる。
なので8九香としたこの図では、後手6六銀が最善か。今度は5二角成は、同歩、6一飛成に、5一桂があって、これは後手勝ちになっている。
そこで先手は、5四歩と打つ(次の図)
研究8一飛図33
5四同銀なら6一飛成として、そこで6二金なら5一竜、同銀、同竜で先手優勢。
よって後手は6二銀左だが、6一飛成、7一歩、7四歩、同銀、5三歩成、同銀右、7一竜左、6三銀、7八歩、7六歩(次の図)
研究8一飛図34
そこで7七歩は、千日手になりそう。
それは先手が面白くないので、6五歩(5六桂なら8五歩、7五金、5七金で先手良し)、6二金、5一竜、6一歩、6四歩、5一銀、6三歩成、7五桂(次の図)
研究8一飛図35
ほぼ互角の形勢だが―――もう少し進めてみよう。
ここは7五同竜がある。以下7五同銀に、5三と。この手は3二角成、同玉、4四桂(同歩に4三銀)以下の“詰めろ”になっているのだ。
なので後手は4七飛。以下5七歩、7九飛、9八銀(次の図)
研究8一飛図36
ここで5七飛成は、8四馬(3二角成以下後手玉の詰めろになっている)で先手良し。
よって5三金とするが、3三桂が好手。以下同桂に、2五桂の妙手の用意があるのだ(次の図)
研究8一飛図37
どうやら「先手良し」の結論が出た。
2五同桂なら、3三銀、同歩、3二金、1一玉、8四馬で、先手勝ち。2一桂と受けても、3三歩成、同桂、3四桂がある。
研究8一飛図38
〔ソ〕7一歩(図)。
これを同飛成だとどうなるか。以下7五桂、9八金、6二銀右、6一竜、6三銀(次の図)
研究8一飛図39
こうなって、どうやらこの図は後手が指しやすい。
研究8一飛図40
〔ソ〕7一歩 には、7八歩(図)が良いようだ。この瞬間なら後手7六歩がないし(二歩禁である)、7八同とは7一飛成で先手良しなので、後手は7六とと応じる。
そこでチャンスと見て 5二角成 としてみる。5二同歩に、7一飛成、5一桂(代えて6一歩もある)、3三歩成、同歩、7三竜、“7二歩”(同竜なら5四角がある)、8二竜、5六角(次の図)
研究8一飛図41
こうなって、互角(形勢不明)。
なお、後手“7二歩”に代えて、“7七歩”も有力。
また、先手7八歩に、後手7六ととした次の図まで戻って―――
研究8一飛図42
ここで 5二角成 以下を見てきたのだが、この手以外にも先手は選択肢がある。
たとえば 3三歩成。以下同玉、3七桂が予想される。
また、7一馬 も有力だし、8八香 もあるし、6五歩 も指してみたい手だ。
いずれも、未調査であり、ソフトの評価値的にも、それぞれ「互角」の変化である。
そうしてみると、調べるべき変化がまだまだたくさんあり、結論を出すのは容易ではない。
〔ソ〕7一歩 については、「互角(形勢不明)」とするしかないと我々(終盤探検隊)は判断した。
以上をまとめると―――
8一飛図(再掲)
〔サ〕6二金 → 先手良し
〔シ〕7五桂 → 先手良し(ギリギリ)
〔ス〕1四歩 → 先手良し
〔せ〕6一歩 → 先手良し(ギリギリ)
〔ソ〕7一歩 → 互角(形勢不明)
つまり、【11】8一飛 は互角(形勢不明)、を結論としたい。
吉祥A図
【0】7八歩 = 実戦の指し手
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
「吉祥A図」の調査はまだ終わっていない。
第58譜につづく
[年齢遡行症(マリーン・シックネス)]
〈スフィンクス〉のなかでなにかが起こって、あなたは時潮に呑まれてしまった。その結果、あなたのからだには変化が起こった。ばかげて聞こえるでしょうけれど、あなたはね――若返っているのよ。あなたの肉体は、いまも刻々と若返っているの。もっとも、当面、それは重要なことじゃないわ。重要なのは、あなたが眠っているうちに゙‥‥記憶がなくなってしまうこと。毎日眠るたびに、一日ずつ記憶が消えてしまうの。
(『ハイペリオン』 ダン・シモンズ著 酒井昭伸訳 ハヤカワ文庫 より)
辺境の惑星ハイペリオンには、〈時間の墓標〉と呼ばれる謎の遺跡群があり、そこではエントロピーが逆向きに流れているのだった。
<第57譜 吉祥A図を攻略せよ3>
「吉祥A図」について徹底調査をしているところ。
吉祥A図
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛
今回の調査は、【11】8一飛。
参考図
この図の2手前(「9七玉、7七と」の前)の8一飛の場合は、図のように7六歩として後手良しだった。7六歩~7七歩成で「と金を二枚つくる」ことが後手勝利のポイントになっている(第43譜)
ところが、「9七玉、7七と」とすると、8一飛に、今度は7六歩としても、5二角成、7五桂、9八金、1四歩、7八歩以下、これははっきり先手良しになる。というわけで事情がまったく違ってくるのである。
[調査研究 【11】8一飛]
8一飛図
【11】8一飛 と打って、次に5二角成を狙う。
したがって、後手 〔サ〕6二金 が考えられる(次の図)
研究8一飛図01
そこで「7八歩、7六歩、8九香」が先手良しへ道筋となる(次の図)
研究8一飛図02
以下6一歩に6三歩、7二金、6一飛成、8二銀(次の図)
研究8一飛図03
ここで5四歩と打って、先手が勝てる。5四同銀には7二竜が、3二角成、同玉、2二金以下、“詰めろ”になる。
よって5四歩には、7五桂として、5三歩成、9一銀、9八金と進む(次の図)
研究8一飛図04
9八金(図)と打って先手玉の“詰めろ”を受けておけば、次の4二とで後手玉は“受けなし”に追い込まれる。先手良し。
ただし、もしもこの図で「7八歩、7六歩」の手交換がなかったら、この図は逆に“後手良し”になっていた。ここで6七飛と打ってその手が8八と以下“詰めろ”(同玉に7六桂)になるからだ。
ところが「7八歩、7六歩」を入れておくと、6七飛が詰めろにならないので(8八と同玉に7六桂が指せないため)、4二とで先手勝ちになるのだ。
4二とを後手は許せないので、この図では後手は5三銀とすることになるが、以下7二竜、6二歩。
そこで1一銀(次の図)
研究8一飛図05
同玉には3二角成。そして3一玉には6二歩成で先手が勝てる。
研究8一飛図06(7五桂図)
【11】8一飛 に、〔シ〕7五桂(図)が有力な手だ。
これには、[A]8九香 と、[B]9八金 があり、迷うところ。
[A]8九香 には、どうやら1四歩が最善手で、後手良しになるようだ(次の図)
研究8一飛図07
以下 7八歩 には、同と、5二角成、8九と、3三歩成、同歩、4一馬、7六香(次の図)
研究8一飛図08
これで後手が勝ち。
7六に歩ではなく香車を打ったのは、7六歩だと7八歩で受けられるから。香を打てばその受けがない。
7六香(図)に、受けるなら6八金くらいしかないが、後手5八金で無効である。
研究8一飛図09
1四歩に、3七桂(図)ならどうか。
以下7六歩、5二角成、8七と、同香、7七歩成、9八金、6六銀(詰めろ)、7八歩、8七と、同金、同桂成、同玉、7五金(次の図)
研究8一飛図10
後手良し。
研究8一飛図11
ということで、〔シ〕7五桂(図)に、[B]9八金(図)のほうが良さそうだ。
研究8一飛図12
[B]9八金 には、6二金(図)が最善手とみる。
そこで先手は7八歩(次の図)
研究8一飛図13
7八歩(図)と打って、後手の対応を聞く。
これには、〈1〉7六歩、〈2〉7六と、〈3〉3一玉 の対応がある。
(他に〈4〉7八同と、〈5〉8七と は先手良しになる)
まず〈1〉7六歩は、3三歩成、同桂(同玉は3七桂で先手良し)、8五歩、3一玉、5二歩、6一歩、5一歩成、同銀、6三角成(次の図)
研究8一飛図14
これで先手が良い。
7九角には、8六玉とし、さらに8七と、同金、6八角成と追撃されても、9七玉で先手玉は大丈夫。
以下6三同金、6一竜、6二銀右に、5一竜、同銀、同竜、4一飛、同竜、同玉、2一飛(次の図)
研究8一飛図15
後手3一飛合に、同飛成、同玉、1一飛、2一飛、同飛成、同玉、6一飛、3一飛、1一銀(次の図)
研究8一飛図16
先手勝ち。
研究8一飛図17
7八歩に〈2〉7六と(図)の変化。
3三歩成、同桂、5二歩と攻めるのが最善と思われる(5二歩に代えて3四歩は3一玉で後手良し)
対して6一歩なら、5一歩成、同銀、6三歩で、先手良しになる。
しかし5二歩に、6六銀と攻め合う手があって、以下きわどい勝負に突入する。以下5一歩成、7七歩、5二と、6一歩(次の図)
研究8一飛図18
7七歩、同銀不成、8八香(代えて8九香は7八銀不成で後手良し)、同銀不成、同金(次の図)
研究8一飛図19
ここで8七香は、4二と、同銀、1一銀(3一玉なら2二銀以下詰み)、同玉、3二角成、2一銀、6一飛成、同金、2二銀、同銀、6一竜で先手勝ちになる。
また5一歩と受けるのも、6二とで先手良し。
8六と、同玉、8五香の攻めが有力だが、以下7七玉、8八香成、5三と、同銀、6八玉、5六歩、5九玉と金を入手して、その瞬間に後手玉に3二角成、同玉、4一銀、同玉、6一飛成以下の“詰み”が生じていて、先手勝ちになっている。
なので、この図では後手9五歩が最善手であろう。
そこで4二とは、同銀、9五歩、5二歩と進んで、これは後手良し。
4二とではなく、5三とが正着手(同銀は4四歩、同歩、4三銀で先手良し)で、以下9六歩、同角成、9五歩。
そこで8四馬が好手(次の図)
研究8一飛図20
「8四馬(図)、同銀、4二と」が好手順となる。これを単に4二とでは、9六歩、9八玉、2四歩(以下3四銀としても9七香、8九玉に6七角がある)で、後手勝ちとなる。
「8四馬、同銀」としておけば、9六歩には、同竜と取ることができる。
すなわち図から、8四銀、4二と、9六歩、同竜と進む。以下3一香、同と、同玉、5一銀(次の図)
研究8一飛図21
先手勝ち。〈2〉7六と(図)の変化はきわどかったが、先手良しとわかった。
研究8一飛図22
7八歩に〈3〉3一玉の変化。
これも後手の有力手。以下5二歩、8七と、同金、同桂成、同玉、6一歩、5一歩成、同銀、6三歩(次の図)
研究8一飛図23
4一玉、6二歩成、同銀左引、6一竜、4二玉、8九香(次の図)
研究8一飛図24
8九香(図)が落ち着いた好手(この手に代えて5四桂と打ちたくなるが、それは5三玉でこれは後手玉を逃がしてしまっている)
ここで後手9五歩なら、同歩と取っておく。
この図では5四角が有力手。以下6五歩、同角、9七玉、9五歩に、4五桂と打つ。
以下9六歩に、8八玉(9六同玉もあるところ)。
4五桂は後手玉への“詰めろ”になっている。なので後手は1四歩とする(代えて7一歩は同馬で先手が良い)
先手は、3七桂(次の図)
研究8一飛図25
3七桂(図)として、後手玉はまた“詰めろ”が掛かっている。7一歩としても同馬だし、5二歩としても5三歩が有効なので、この図は先手良しである。
後手玉の“詰み”を確認しておこう。図から6九金に、5一竜、同銀、5三銀、3一玉、5一竜、2二玉、3三銀、同桂、同歩成、同歩、4二竜、1三玉、2四金(次の図)
研究8一飛図26
2四同歩、3三竜、2三合、2五桂打、同歩、同桂まで。
以上見てきたように、〔シ〕7五桂 には、9八金、6二金、7八歩と進めて、互角に近いが、なんとか先手良しに導くことができるとわかった。
8一飛図(再掲)
まとめるとこうである。
〔サ〕6二金 → 先手勝ち
〔シ〕7五桂 → 先手勝ち(ギリギリ)
しかし、後手の有力候補手はまだ他にもある。
〔ス〕1四歩、〔セ〕6一歩、〔ソ〕7一歩 がある。
これを以下、調べていく。
研究8一飛図27
〔ス〕1四歩(図)には、7八歩と細工をする。同となら、5二角成、同歩に、2一飛成、1三玉、7九金、同と、2六香で、先手勝ちになる。
「7七と」の位置がこのと金のベスト・ポジションなので、7六歩とその位置をキープする。
そこで5二角成が成立する。同歩に、2一飛成、1三玉、8八香(次の図)
研究8一飛図28
8八香(図)と、先手玉の7九角からの“詰み”を受けた。それでも7九角なら8九金、3五角成、4一竜左で、次に3二竜左から二枚の竜で玉を追って行けばよい。
8八香に、7五桂には、7九桂。
以下4六角に、2五金(次の図)
研究8一飛図29
2五金(図)と打って、後手玉に“詰めろ”(1四金、同玉、1二竜以下)を掛けて、先手勝勢。
〔ス〕1四歩 → 先手良し
研究8一飛図30
〔セ〕6一歩(図)を同飛成と取ると、6二金、7一竜右、7五桂、8九香(9八金)、3一玉(次の図)
研究8一飛図31
これで後手良しになる。角を取られて先手の攻めが一手遅い。これが〔セ〕6一歩 の狙いだ。
といっても、6一歩で先手の二枚飛車の攻め止められては困る。良いタイミングで6一飛成とするための下準備を考えたい。しかしなかなか良い手がない。7八歩は打ってみたいが、同とと取られて、次の手がまたわからない。
ここは8九香が良いかもしれない(次の図)
研究8一飛図32
対して7五桂なら、5二角成、同歩に、6一飛成で先手良しになる。
なので8九香としたこの図では、後手6六銀が最善か。今度は5二角成は、同歩、6一飛成に、5一桂があって、これは後手勝ちになっている。
そこで先手は、5四歩と打つ(次の図)
研究8一飛図33
5四同銀なら6一飛成として、そこで6二金なら5一竜、同銀、同竜で先手優勢。
よって後手は6二銀左だが、6一飛成、7一歩、7四歩、同銀、5三歩成、同銀右、7一竜左、6三銀、7八歩、7六歩(次の図)
研究8一飛図34
そこで7七歩は、千日手になりそう。
それは先手が面白くないので、6五歩(5六桂なら8五歩、7五金、5七金で先手良し)、6二金、5一竜、6一歩、6四歩、5一銀、6三歩成、7五桂(次の図)
研究8一飛図35
ほぼ互角の形勢だが―――もう少し進めてみよう。
ここは7五同竜がある。以下7五同銀に、5三と。この手は3二角成、同玉、4四桂(同歩に4三銀)以下の“詰めろ”になっているのだ。
なので後手は4七飛。以下5七歩、7九飛、9八銀(次の図)
研究8一飛図36
ここで5七飛成は、8四馬(3二角成以下後手玉の詰めろになっている)で先手良し。
よって5三金とするが、3三桂が好手。以下同桂に、2五桂の妙手の用意があるのだ(次の図)
研究8一飛図37
どうやら「先手良し」の結論が出た。
2五同桂なら、3三銀、同歩、3二金、1一玉、8四馬で、先手勝ち。2一桂と受けても、3三歩成、同桂、3四桂がある。
研究8一飛図38
〔ソ〕7一歩(図)。
これを同飛成だとどうなるか。以下7五桂、9八金、6二銀右、6一竜、6三銀(次の図)
研究8一飛図39
こうなって、どうやらこの図は後手が指しやすい。
研究8一飛図40
〔ソ〕7一歩 には、7八歩(図)が良いようだ。この瞬間なら後手7六歩がないし(二歩禁である)、7八同とは7一飛成で先手良しなので、後手は7六とと応じる。
そこでチャンスと見て 5二角成 としてみる。5二同歩に、7一飛成、5一桂(代えて6一歩もある)、3三歩成、同歩、7三竜、“7二歩”(同竜なら5四角がある)、8二竜、5六角(次の図)
研究8一飛図41
こうなって、互角(形勢不明)。
なお、後手“7二歩”に代えて、“7七歩”も有力。
また、先手7八歩に、後手7六ととした次の図まで戻って―――
研究8一飛図42
ここで 5二角成 以下を見てきたのだが、この手以外にも先手は選択肢がある。
たとえば 3三歩成。以下同玉、3七桂が予想される。
また、7一馬 も有力だし、8八香 もあるし、6五歩 も指してみたい手だ。
いずれも、未調査であり、ソフトの評価値的にも、それぞれ「互角」の変化である。
そうしてみると、調べるべき変化がまだまだたくさんあり、結論を出すのは容易ではない。
〔ソ〕7一歩 については、「互角(形勢不明)」とするしかないと我々(終盤探検隊)は判断した。
以上をまとめると―――
8一飛図(再掲)
〔サ〕6二金 → 先手良し
〔シ〕7五桂 → 先手良し(ギリギリ)
〔ス〕1四歩 → 先手良し
〔せ〕6一歩 → 先手良し(ギリギリ)
〔ソ〕7一歩 → 互角(形勢不明)
つまり、【11】8一飛 は互角(形勢不明)、を結論としたい。
吉祥A図
【0】7八歩 = 実戦の指し手
【1】3三歩成 → 後手良し
【2】3三香 → 後手良し
【3】8九香 → 先手良し
【4】2五香 → 互角(形勢不明)
【5】5四歩 → 先手良し
【6】2六香 → 先手良し
【7】2六飛 → 先手良し
【8】2五飛 → 先手良し
【9】3七桂 → 先手良し
【10】3八香 → 後手良し
【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
「吉祥A図」の調査はまだ終わっていない。
第58譜につづく