恩師の御著書「真理を求める愚か者の独り言」より
第一章 或る愚か者の生涯
◆葡萄一粒で故郷を捨てた少年時代◆
先の続き・・・
それ以来、良心の呵責に耐えられなくて、
とうとう生まれた故郷をあとにすることに決めました。
もちろん、親は反対しました。
田を私にも譲り、家を建て、
いなかで分家してほしかったと思います。
それから、関西汽船に入社し、
別府航路の船に乗ることになりました。
そして、はじめて他人のつくった飯を食い、
親から離れて世間というものを知って、
親の有難さを知りました。
葡萄を一粒かすめようとして見咎められたくらいで、
故郷を去るなどとは、
ずいぶん潔癖という変わった子だったと
思われる方も多いかと思うのですが、
たしかに私という人間は幼少の頃より
ふつうの子とは変わったところがありました。
たとえば、両親が野良仕事に行くと、私も田畑についていって、
そこでおとなしく遊んでいます。
泥をこねて仏様をつくったりしていました。
仏様に象るなどというのは、
あまり子どもらしくないかもしれませんが、
なぜか私はそんな遊びをしました。
そして、できあがった泥仏に向かい手を合わせていました。
また、昆虫や魚も自分の想念で自由に動いてくれました。
小学校の友達に催眠術をかけたりということが
自然にできてしまうのでした。
これなどもどう見ても風変わりなふるまいです。
今から思えば、かなりヘンな子だったようです。