昔の話ですが、アタクシはヘビースモーカーだった。
日に40本ほども吸っていた。
あの頃は、世の中全体が煙草に寛大で、吸っている人も多かった。
勤めている会社の男性社員は8割がた煙草を吸っていた。
だから夕方になると、冬など締め切った事務所の中に「タバコ雲」としかいいようのない煙が、中空を漂う青白い雲となって漂っていた。
誰も窓を開けて換気しよう、などと思わなかったから思えば「すんごい時代」だった。
飛行機や新幹線の中にも禁煙席があったが、ひとつのキャビン、ひとつの列車の中で前方と後方に分ける程度だから、その席はまるで意味がなかった。
そして空中における空気の流れを止める装置は何もなかったから結局は同じことだ。
あのヘンテコな時代に、同じような疑問を持った人がたくさんいたはずだと思うが、結構長く続いた。
温泉の大浴場の右を女性用、左を男性用に分けて「互いに見ないこと」などと言ってるみたいで呑気といえば呑気な時代であった。
10年ほど前に煙草はやめた。
大きな理由はひとつ、肺炎になったからである。
微熱が続いてそれがやがて高熱になり、「こりゃだめだ」となって病院へ行ったら即入院。
一週間ほど入院してあぁーやれやれ、と思ってたが退院するときの看護師さんの一言が強烈だった。
「アンタこの先タバコ続けたら、3年先には酸素ボンべ背負ってまた入院だよ」と脅された。
その一言でタバコはきれいさっぱりやめたから、アタクシの喫煙人生は看護師さんの投げた球を、詰まりながらセカンドの頭を超えたヒットを打ち返し、見事解決したしだい。
あのときの看護師さんに感謝である。
やめてよかったと思うのは、あのままヘビースモーカーを続けていたら、決して今の健康はなかっただろうと確信できるからだ。
心肺系の影響は絶対ある。
それから「飲み物食い物」の味が絶対違っていた。
飲食中のタバコが特に大きく関係してくるような気がする。
喫煙者が唯一安心して煙草を吸えるのは、分煙装置をしていない居酒屋などかな。
サケを飲むと煙草が欲しくなるものだ。
隣の席に3~4人の煙草吸いがいると、その影響はモロだから、家に帰ると煙草の煙の残汁をそっくり連れて帰ってしまっている。
朝起きて、前日の衣類に染込んだ煙草の臭いにゲロが出そうになる。
お店側としては営業上なかなか難しいのだろうが、せめて分煙措置でもしてくれればありがたいものである。