竹村ばあちゃんがお泊まりの夜。夜勤当番はワタクシの日。
この前の提供者会議の時(ブログに書いてます)夜は息子さんが毎日添い寝をしていることを知った。
昼間のばあちゃんと違い、夜は混乱することが多いらしく(前に泊まった時にはそれほどでもなかったのだけど・・・)常に誰かがそばにいないと不安になり、トイレの場所もわからないので、大変だという話だった。
私たちは「たまには休むことも必要だから、いつでもお泊まりしてくださいね」と伝えていた。
そして先日、ばあちゃんが泊まることになった。(近くの施設をショートで利用をしていた時もあったけど不安が強くなってからは、ばあちゃんが馴染んだところの方がいいとのご家族の希望で、あえて介護保険の使える施設ではなくて池さんを使ってくれたわけ)
ばあちゃんがやってきた。
大頭で一日過ごし、そのままお泊まり。
「はて、私は今晩はここへ泊まるのでしょうか?」
「そうよ。一緒に寝ようね。」
「お手間かけて申し訳ありませんね~。一体息子はどうしたんやろう?」
「ちょっと忙しいみたいで、お嫁さんも会があって忙しいらしいよ」
そうですか、と納得をしてとりあえず一緒に布団に入ってしばらくの間静かに寝ていたと思ったら・・・夜中2時ごろパッチリ目が開き・・・
「どこだろうか?」とトイレを探し始めるばあちゃん。「おっと!これだな!」と誘導。
ばあちゃんは耳がよく聞こえないから、話すたびにでっかい声を出すもんで(私はじいちゃんやみよちゃんが起きないかと心配しながら)ヒソヒソ声で話すけど「何でしょうか?」とますますでっかい声を出されて、トホホ
で、トイレが終わって布団に入りしばらくすると、
「あっと、ご飯を炊く時間じゃね~
」と何やらニコニコしながら、起き上がるばあちゃん。「まだ夜中だから、もうちょっとしてからでもかまわんよ!」と言ったけど、「いえ、間に合わんといけんから!」と布団に入ったものの寝やしない。トホホのホ
そして・・・(もちろん全部布団の中で、ばあちゃんは夢の中にいるわけで)
「みそ汁もボチボチ作った方がええねえ~
」というわけで、今度は味噌汁作り始めたばあちゃん。
「え~っと、昆布はどこかいな?あ~あったあった。う~ん、塩が足りんのかいな~?味噌・・・年取ったら味がわからんようになって困ったもんじゃ・・・」とまあ長い間、でっかい声でひとりごとを言い続け、夢で完璧に味噌汁をつくるばあちゃん。
「まあ、味噌汁納得いくまで作ったらええわ」とのん気に構えていたワタクシに、急にご指名が入る。「あ~若い人がおったんか!ちょっと味噌汁の味をみてもらえませんか~?」「はいはい。おいしいよ。」と軽く言って見たら・・・「もっとちゃんと味をみんと、年寄りが作っとんだから、訳は分からんのんですよ!」と怒り始める。
「いえいえ。本当においしいよ。」と今度は心を込めて言ってみる。でもばあちゃんは納得しない。「塩はどうですか?入れた方がいいですか?」「これで十分よ」「いえ、本当のことを言ってくださいよ。年寄りなんだから!」
年寄りならさっさと寝ろ!!!と半分やけくそになりながら、「そうしたらもうちょっと入れますか?」と言ってみる。
「さ~?あんまり入れても身体によくなかろうか?」「なら、そうしますか?」「もう何がなにやらさっぱりわからん。」「いえ、それはこっちのセリフですけど!」「一回味見てもらおうか?」「はいはい」
ワタクシたちは真夜中延々と(布団の中で)味噌汁を作り続けたわけで・・・トホホのオホホ
明け方近く、ばあちゃんは言った。
「どうして誰もおらんのじゃろうか?」「まだ夜中よ!」「あら!それなら寝んといかんのよね~」「(今更・・・と心の声)そうしてくれたら嬉しいわい
」とワタクシ。
「寝る前にトイレに行っとこうか?」・・・(泣)トイレに行くために、またまた大声の連発
そして、無事に夜が明けて、ばあちゃんは何事もなかったかのように「あれ、池さんの奥さん。どうしてここへおるんですか?」とつぶやいた
頭で理解していても、ご家族の苦労は計り知れないだろう。一晩一緒に寝て改めてご家族の毎日の介護がどんなものであるか、垣間見えた様な気がする。
迎えに来たばあちゃんの息子さんが言った。「本当に久しぶりに、ぐっすりと眠ることができました。ありがとうございました。」息子さんは言う。「ばあちゃんには、どうやっても返すことができないくらいの恩がある。苦労して育ててくれた恩がある。」と。
ここまで親を想うことができるのだろうか。私は感動する。息子さんは母を深く想い、「たとえわからなくなろうとオシッコを漏らそうと、堂々と生きたらいい」のだと言い切ることができる人。素晴らしい人。
そして、何もわからなくなっても・・・
ばあちゃんは、今日も大事な家族のために一生懸命(夢の中で)味噌汁を作る人。
家族の在り方に、そして竹村のばあちゃんと言う人の偉大さに改めて感動したばあちゃんとの夜。