池さんで働くおばさんの日記

デイサービス「池さん」の大ちゃんママのブログです。

月ちゃんの大根

2009-01-25 00:17:34 | デイサービス池さん
去年夏から、池さんの利用者になった月ちゃん。

要介護5

月ちゃんは、身体も手も足もほとんど動かせない。表情もなく、言葉もない。いや、しゃべれないわけではなくて、時折びっくりするくらい大きな声で、単語を怒鳴る。いや、怒鳴るわけではなくて、力を入れて声を出そうとするから、大きな声になるだけ。「熱い!」とか、「痛い!」と単語のみ話す。

池さんに来るまで、月ちゃんは他の通所リハビリを利用していた。

今も、通所リハビリは利用しているが、生きる気力のなくなった月ちゃんが、ちょっとでも元気になるようにと、池さんを週1回利用するようになった。

一番最初、月ちゃんがやってきた時、すごい違和感を感じた。(そのときはなぜなのか気付かなかったけど)後で気付いたのは、月ちゃんはひどい尖足ということだった。座位が不安定ということで、車椅子に座る月ちゃんは、ずれないように座る位置を固定されていたため、足はブラブラ状態。その上、寝ている時間が長いため、両足が尖足に変形していたのだ。見た目の違和感は、足の変形にあった。

通所リハビリも、訪問リハビリも受けている月ちゃんの足の状態を、なぜ専門家が気付かないのか?対応しないのか?不思議だった。

そして、私はいつものように元気よく「おはようございます」と言った。

月ちゃんは、すかさず言った。

「あ~うるさい!」

月ちゃんのこの一言は、私の心に響いた。

病気で身体の自由を失った月ちゃんが、自分の意思とかけ離れたところで、どれだけ辛く不本意な毎日を送ってきたか。生きていくことに、どれだけ意欲をなくしているか。

その時、思った。そして、強く心に誓った。

月ちゃんを笑わせたい。よそでは見せない笑顔を引き出したい。月ちゃんが、生きていてよかったと思ってもらいたい。絶対に、そうしたい。

池さんノートの1ページ目に、こう書いた。「月ちゃんの笑顔を見てください。」と。

表情がほとんどなかった月ちゃんに、池さん流のやり方で関わり始めて半年がたつ。

特浴しか利用したことのない月ちゃんを、れいこさんがゆっくり時間をかけて家庭用のお風呂に入れる。前日に特浴で身体を洗ったはずなのに、汗かきの月ちゃんの身体は垢だらけ。(特浴ってもんは、ほんまにな~んの役にもたたん!)れいこさんが、月ちゃんの身体を丁寧に洗っていく。足の裏をこすると、月ちゃんは言う。「こちょばい!」

声を出そうとして、大きな叫ぶような声を出していた月ちゃんが、だんだん話すコツをつかんできた。一呼吸おいて、ちょっと息を吸ってから声を出すと小さな声が出るようになったのだ。

大好きなコーヒーを入れて飲む時、猫舌の月ちゃんが言う。「熱いよ」

最初の頃午後は横になっていたのに、最近は「横になる?」と聞いても首を振り、皆と一緒にいる時間を好むようになった。りょうちゃんや幹太が賑やかに遊ぶのを穏やかな顔で見ている月ちゃん。

帰る時「もう時間やね。帰らないかんねえ」と言うと、「帰らん」と言ってくれ、送って行った大ちゃんに「ありがとう」と言ってくれる時もある。

月ちゃんの誕生日。

いつものように、メッセージを書き、ケーキをつくり、ロウソクに火を灯し、ハピバースデーの曲を歌い、月ちゃんの横にスタッフがそろった時、月ちゃんが・・・溢れるような優しい笑顔で・・・笑った。

月ちゃんの笑顔は、池さんノートのページを飾った。

ひどい尖足も、私たちはなんとか改善したいと思い、皆であれこれ考えた。フットレストの上に、マットを置き、足がつくよう改善した。「足がつくようになったよ。月ちゃん、これでいい?」と聞くと、月ちゃんは笑顔でうなずいた。

こうした月ちゃんの変化を、ご家族の方が驚いてくれ、喜んでくれた。

提案した尖足の対応もできていて、普通に座位がちゃんと取れることをわかってくれて、新しい車椅子に変わり、今はフットレストにちゃんと足がつく。完全ではないものの、今、月ちゃんを見ても何の違和感もない。

そして今週、月ちゃんを送っていった大ちゃんが、でっかい袋を抱えて帰って来た。見ると、でっかい大根がいっぱい!

「月ちゃんのお父さんがくれた!」

送迎の時に、いろいろもらって帰ることがあるけど、この大根は本当に特別嬉しかった。

大ちゃんと話した。「お父さんが、こんなふうに親しく思ってくれることが嬉しいね」と。

月ちゃんの大根。

でっかい大根。

月ちゃんが笑ってくれるように、生きることに絶望しないよう、支えることができたら・・・と思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

個性!

2009-01-21 23:09:25 | デイサービス池さん
三好春樹さんのセミナーで、「個性」について、話していたことを思い出した。

「年をとると、人格が完成すると思っていたが、個性が煮詰まるだけだと気付いた」

今日、三好さんのこの言葉を思い出した!

「個性が煮詰まる」

まさに、「個性が煮詰まった人」・・・発見!

たぶん、

ず~っとこうして、生きてきたんだろうな~~~って思う人あり。

働いている時も、近所づきあいも、親としても・・・

若い頃、どんな風に生きていたのか、わかるような・・・

老いて、呆けて、今も、その人格と個性の中に生きている。

「個性の煮詰まり」

なんて、納得できる表現なんだろう、と改めて三好さんの偉大さを知る。

皆が、年取って、達観して、人格者として完成するなんて、ありえね~ことだし、そうじゃないから人間、面白いわけだし・・・

そうやって、個性を振りかざして生きていくことは、決して悪いことでも問題でもないんだから。

問題なのは、関わる介護者の側の、心の問題。

その人を「問題老人」とするのかどうかの問題。

池さんでは、もちろん、「また、でた。今日も、元気なね~!」の世界。

夕礼のとき、「今日も、でた~!」で終わり。

それも、これも、「個性」だとしたら、笑って済ますしかないもんね。

三好さんが言った言葉。

「最後に求められるのは、体重と人格だけと思うと、生きるのが楽になる!」

・・・はてさて、いずれ私が年をとって、呆けた時、

体重は、まあ、あんまり重いほうではないので、心配ないけど、

「やっぱり!こうなると思った!若いときからめんどい人やったけんねえ。やっぱり個性が煮詰まってこうなると思った!」

と、

将来の池さんスタッフに、言われないように、

皆に「好かれる個性」になる努力をしておく必要がありかも・・・・・ね。

えっ?

もう手遅れ?

トホホ・・・

もし、超めんどいばあちゃんになったら、

ごめんよ~~~みんな。

どうか、よろしくね~~~

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

じいちゃん

2009-01-17 21:58:56 | デイサービス池さん
あっという間に認知症が進んでしまったみよちゃんのダンナ様じいちゃん。

昨年の9月までは、本当に・普通の・じいちゃんだった。

血圧の変動が多くなり、不安定な毎日を送り出してから3ヶ月。

好きだったタバコを吸う事も忘れ、自慢だった戦争の話もイマイチ食いつかず、嫌いだった甘いものをいっぱい食べ、好き嫌いの多かった食事もたらふく食べる信じられないじいちゃんが目の前にいる。

介護事業所だから、認知症の人だらけだから、こういうことには馴れているはず・・・

・・・なのではない!

私たちは、日々老いていく人たちを目の当りにして、悩み・苦しむ。

先週はこんなことなかったのに・・・昨日はできたのに・・・

認知症は、緩やかに進行する場合と、じいちゃんのように身体的な変化を伴い急激に進行する場合がある。

じいちゃんのように、こちらの気持ち(受け手の覚悟)と別に、急に何もかもわからなくなる場合、私たちは、戸惑い、困惑し、受け止めるための心の準備にあたふたすることになる。

じいちゃんの変化を受け止めるために、私と大ちゃんは、悩んだ。

受け止めなければいけないことは、わかっている。

でも、あまりにも急激で、こういうじいちゃんを見たくない、と思った。

認知症の人に対応する方法論はある。

でも、そのマニュアルにじいちゃんを当てはめることなんてできないと思った。

じいちゃんは、あくまでプライドの高い、戦争を生き抜いた、わがままで、強いじいちゃんでいて欲しいと思った。

でも、常に、現実は目に前にある。

大変になった家族を支えるために、夕食をみよちゃんと一緒に池さんで食べてから、夜7時半に、送り届ける毎日。家はじいちゃんにとって寝る場所。毎日朝9時には、池さんにやってくるじいちゃん。

近い将来、たぶんみよちゃんと一緒にじいちゃんも池さんに住むようになるだろうと思う。

2人が一緒に、安心して住めるようにしていきたいと思う。

いろんな人を見ていると、

こうして、

思いもかけず、

あっという間に、

老いていく人を見ていると、

人生の、

今まで生きてきた、

道のりの長さと、深さを想い、

切なく、

悲しく、

私の心は、

重く、

なる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

車窓

2009-01-15 22:25:01 | デイサービス池さん
なんか、こういう番組もあったような・・・

今までは、あんまり、景色がどうのこうのという暮らしをしていなかったのかもしれない。

最近、特に池さんを始めて、朝と夕方の送迎をするようになってから、特にこの車窓からの風景を、心の底から楽しめるようになってきたように思う。

特に今の冬。

石鎚山に雪がうっすらと積もり、今日は本当に綺麗だった。

朝、一便の送迎は、育成園と三芳方面への便。

世田山から三芳へ向かう新しい道から見える東予の海岸と、石鎚の山はまさに絶景。今日は西の山にも雪がかかっていた。

夕方、西条方面への送迎時、瓶が森・笹ヶ峰付近は、まるで絵葉書のように壮大で美しい稜線と、雪が積もった峰峰の美しさ。

春は桜が山に咲き誇り、秋は色とりどりの山の色・・・

青田・稲が実り穂を垂れる田んぼ・麦の緑・・・

雨上がりには、遠くに虹を見ることもできる。

本当に美しい周桑の田畑と山々。

車を走らせ、じいちゃんばあちゃんを乗せて、美しい景色に、皆でワイワイ言いながらのドライブ。

「幸せだな~」って思う瞬間。

「今日もいい一日になりそう」と思える瞬間。

車窓を眺めながら、心地よいひと時に、心躍る瞬間。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新年を迎えて・・・パート2.縁

2009-01-07 22:27:06 | デイサービス池さん
最近特に思うこと!

「縁」

人と人の縁・土地との縁・いろいろな縁があるけど・・・

今、池さんを利用してくれている人たち。

「どこでもいいから」と思っている人(家族)は、たぶんいないと思う。

いろいろな事情があって、「池さんでないと・・・」と思ってくれている人(家族)と出会い、深い深いお付き合いをさせて頂いている。

感謝。

これも「縁」・・・

そして、もう一つ。私が深く感じる縁。

「大保木」

池さんを始めてしばらくしてからのこと。

湯浪のじいちゃんが、「ええ流木があるけん、池内さんとこの玄関に飾っとけ」と言って見せてくれたでっかい木。

台風で流れてきたというその木は、まるで竜のようにくねった木の根っこ。

じいちゃんが誰かと2人がかりでひきずって帰り、丁寧に磨いていたもの。

「こんなにでっかいのは、家には入らんわ!」と言う私に、じいちゃんは「これはたぶん大保木から流れてきた木じゃ。竜神さんがついとる!もって帰れ!」と言って聞かない。

「しかたないなあ」と思いながら、スタッフで軽トラに乗せて、エッサエッサと家に運んだ。

で、「無理よね~!」と思いながら、玄関に入れたら、なんとぴったり収まってしまったのだ!

その時、なんか縁を感じてしまった池内家の面々。

それ以来、毎朝、社長はその木を丁寧に磨くのが日課になった。

その時は、あまり感じなかったけど、それ以来、池さんはなんだか大保木と縁ができたような気がする。

介護保険の認定をはずれても、池さんが好きで来てくれる伊藤さんも大保木の人。去年の夏は、倒れてから始めて、大ちゃんが伊藤さんを背負って大保木の家を訪れた。遠方に住む娘さんや息子さんとも交流させて頂いている。池さんの心強い応援団。

竹村のばあちゃんも、ヒイチャンも大保木出身。

後で知ったことだけど、湯浪のじいちゃんも、実は大保木出身だった。

昔・昔、源氏と平家の合戦で敗れた平家の人たちは、山伝いに西へ西へと逃げていった。大保木に住み着いた人の中で、東の川と呼ばれる地域に住み着いた人たちと、西の川と呼ばれる地域に住み着いた人たちに別れ、もっと安住の地を求めた人は、湯浪や、もっと西の千原などへ住み着いたらしい。(これは湯浪のじいちゃんの説)

お正月の準備の仕方を話している時、大保木のヒイチャンの家に伝わるお供えと、千原のれいこさんの実家に伝わるお供えが、全く同じだと言うことを知り、池さん皆で驚いたのだ。

縁。

本当に不思議な縁。

倉敷からヨメに来た私など、全く知らなかったいろいろな風習が、言い伝えの通りに、子孫によって継承されていく不思議。

今回の、「こりゃど~でや」にも書いてあるけど、

大ちゃんは、注連縄づくりという技術や知識を池さんに通っていたじいちゃんから教わった。じいちゃんは死んだけれど、その知識は、大ちゃんに受け継がれている。

大保木の歴史や、歌、伝承を、私たちはここで今、いろいろな人から聞くことができる。

大保木だけでなく、戦争の話・土地の話・・・いろいろな話を、その時代を生きた人から聞くことができる。

介護の現場ではあるが、ただ介護する・されるのではなく、こうした大切な話を私たちは聞くことができる。そして、伝えることができるのだ。

「介護」って、奥が深いと思う。

本当に、貴重で、良い仕事だと思う。

今のことを忘れる人たちも、ずっと昔のことは、はっきりと覚えているのだから。

縁あって出会った人たち。

全てが、私たちの宝物。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新年を迎えて・・・パート1、ごあいさつ

2009-01-02 16:22:28 | デイサービス池さん
皆様、明けましておめでとうございます。

昨年同様、今年もよろしくお願いしますね~

お正月。

本当に、のんびり過ごしています。

こんなにのんびりしたのは・・・どのくらい前だったか、思い出せないほど、ずっと忙しかったから。

とにかく「時間を持て余す」幸せを、感じてま~す!

29日に娘夫婦が、宮崎へ里帰りしてからは、元気者幹太に狙われることもなく、ゆっくりビールを飲み、幹太中心の生活から大人だけの生活に戻り、家中の掃除と片づけを終え、おせちを作り、31日から里で一人暮らしを続ける母の所へ行き、一緒に年越しをしてきました。

こうやってのんびり過ごしていると、「時間」を感じることができます。

「あ~まだ、10時か・・・」と思うゆっくりした時間の流れ。

仕事・事務・夜勤・・・とあわただしく毎日が過ぎていく中で、大切な時間を見失わないように、これから生きていきたいな~って思います。

5日がくれば、またいつもの日常に戻ります。

特に、3年が終わった池さんでは、今年はたぶん大きな転機となると思ってます。更に大きく羽ばたくために、いろいろな意味で変化があるはず・・・

池さんの、どの変化も、更に大きな池さんを作るために、プラスな変化であるように、頑張りたいと思っています。

どうか、これからもよろしく。

温かく見守ってくださいね

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする