去年夏から、池さんの利用者になった月ちゃん。
要介護5
月ちゃんは、身体も手も足もほとんど動かせない。表情もなく、言葉もない。いや、しゃべれないわけではなくて、時折びっくりするくらい大きな声で、単語を怒鳴る。いや、怒鳴るわけではなくて、力を入れて声を出そうとするから、大きな声になるだけ。「熱い!」とか、「痛い!」と単語のみ話す。
池さんに来るまで、月ちゃんは他の通所リハビリを利用していた。
今も、通所リハビリは利用しているが、生きる気力のなくなった月ちゃんが、ちょっとでも元気になるようにと、池さんを週1回利用するようになった。
一番最初、月ちゃんがやってきた時、すごい違和感を感じた。(そのときはなぜなのか気付かなかったけど)後で気付いたのは、月ちゃんはひどい尖足ということだった。座位が不安定ということで、車椅子に座る月ちゃんは、ずれないように座る位置を固定されていたため、足はブラブラ状態。その上、寝ている時間が長いため、両足が尖足に変形していたのだ。見た目の違和感は、足の変形にあった。
通所リハビリも、訪問リハビリも受けている月ちゃんの足の状態を、なぜ専門家が気付かないのか?対応しないのか?不思議だった。
そして、私はいつものように元気よく「おはようございます」と言った。
月ちゃんは、すかさず言った。
「あ~うるさい!」
月ちゃんのこの一言は、私の心に響いた。
病気で身体の自由を失った月ちゃんが、自分の意思とかけ離れたところで、どれだけ辛く不本意な毎日を送ってきたか。生きていくことに、どれだけ意欲をなくしているか。
その時、思った。そして、強く心に誓った。
月ちゃんを笑わせたい。よそでは見せない笑顔を引き出したい。月ちゃんが、生きていてよかったと思ってもらいたい。絶対に、そうしたい。
池さんノートの1ページ目に、こう書いた。「月ちゃんの笑顔を見てください。」と。
表情がほとんどなかった月ちゃんに、池さん流のやり方で関わり始めて半年がたつ。
特浴しか利用したことのない月ちゃんを、れいこさんがゆっくり時間をかけて家庭用のお風呂に入れる。前日に特浴で身体を洗ったはずなのに、汗かきの月ちゃんの身体は垢だらけ。(特浴ってもんは、ほんまにな~んの役にもたたん!)れいこさんが、月ちゃんの身体を丁寧に洗っていく。足の裏をこすると、月ちゃんは言う。「こちょばい!」
声を出そうとして、大きな叫ぶような声を出していた月ちゃんが、だんだん話すコツをつかんできた。一呼吸おいて、ちょっと息を吸ってから声を出すと小さな声が出るようになったのだ。
大好きなコーヒーを入れて飲む時、猫舌の月ちゃんが言う。「熱いよ」
最初の頃午後は横になっていたのに、最近は「横になる?」と聞いても首を振り、皆と一緒にいる時間を好むようになった。りょうちゃんや幹太が賑やかに遊ぶのを穏やかな顔で見ている月ちゃん。
帰る時「もう時間やね。帰らないかんねえ」と言うと、「帰らん」と言ってくれ、送って行った大ちゃんに「ありがとう」と言ってくれる時もある。
月ちゃんの誕生日。
いつものように、メッセージを書き、ケーキをつくり、ロウソクに火を灯し、ハピバースデーの曲を歌い、月ちゃんの横にスタッフがそろった時、月ちゃんが・・・溢れるような優しい笑顔で・・・笑った。
月ちゃんの笑顔は、池さんノートのページを飾った。
ひどい尖足も、私たちはなんとか改善したいと思い、皆であれこれ考えた。フットレストの上に、マットを置き、足がつくよう改善した。「足がつくようになったよ。月ちゃん、これでいい?」と聞くと、月ちゃんは笑顔でうなずいた。
こうした月ちゃんの変化を、ご家族の方が驚いてくれ、喜んでくれた。
提案した尖足の対応もできていて、普通に座位がちゃんと取れることをわかってくれて、新しい車椅子に変わり、今はフットレストにちゃんと足がつく。完全ではないものの、今、月ちゃんを見ても何の違和感もない。
そして今週、月ちゃんを送っていった大ちゃんが、でっかい袋を抱えて帰って来た。見ると、でっかい大根がいっぱい!
「月ちゃんのお父さんがくれた!」
送迎の時に、いろいろもらって帰ることがあるけど、この大根は本当に特別嬉しかった。
大ちゃんと話した。「お父さんが、こんなふうに親しく思ってくれることが嬉しいね」と。
月ちゃんの大根。
でっかい大根。
月ちゃんが笑ってくれるように、生きることに絶望しないよう、支えることができたら・・・と思う。
要介護5
月ちゃんは、身体も手も足もほとんど動かせない。表情もなく、言葉もない。いや、しゃべれないわけではなくて、時折びっくりするくらい大きな声で、単語を怒鳴る。いや、怒鳴るわけではなくて、力を入れて声を出そうとするから、大きな声になるだけ。「熱い!」とか、「痛い!」と単語のみ話す。
池さんに来るまで、月ちゃんは他の通所リハビリを利用していた。
今も、通所リハビリは利用しているが、生きる気力のなくなった月ちゃんが、ちょっとでも元気になるようにと、池さんを週1回利用するようになった。
一番最初、月ちゃんがやってきた時、すごい違和感を感じた。(そのときはなぜなのか気付かなかったけど)後で気付いたのは、月ちゃんはひどい尖足ということだった。座位が不安定ということで、車椅子に座る月ちゃんは、ずれないように座る位置を固定されていたため、足はブラブラ状態。その上、寝ている時間が長いため、両足が尖足に変形していたのだ。見た目の違和感は、足の変形にあった。
通所リハビリも、訪問リハビリも受けている月ちゃんの足の状態を、なぜ専門家が気付かないのか?対応しないのか?不思議だった。
そして、私はいつものように元気よく「おはようございます」と言った。
月ちゃんは、すかさず言った。
「あ~うるさい!」
月ちゃんのこの一言は、私の心に響いた。
病気で身体の自由を失った月ちゃんが、自分の意思とかけ離れたところで、どれだけ辛く不本意な毎日を送ってきたか。生きていくことに、どれだけ意欲をなくしているか。
その時、思った。そして、強く心に誓った。
月ちゃんを笑わせたい。よそでは見せない笑顔を引き出したい。月ちゃんが、生きていてよかったと思ってもらいたい。絶対に、そうしたい。
池さんノートの1ページ目に、こう書いた。「月ちゃんの笑顔を見てください。」と。
表情がほとんどなかった月ちゃんに、池さん流のやり方で関わり始めて半年がたつ。
特浴しか利用したことのない月ちゃんを、れいこさんがゆっくり時間をかけて家庭用のお風呂に入れる。前日に特浴で身体を洗ったはずなのに、汗かきの月ちゃんの身体は垢だらけ。(特浴ってもんは、ほんまにな~んの役にもたたん!)れいこさんが、月ちゃんの身体を丁寧に洗っていく。足の裏をこすると、月ちゃんは言う。「こちょばい!」
声を出そうとして、大きな叫ぶような声を出していた月ちゃんが、だんだん話すコツをつかんできた。一呼吸おいて、ちょっと息を吸ってから声を出すと小さな声が出るようになったのだ。
大好きなコーヒーを入れて飲む時、猫舌の月ちゃんが言う。「熱いよ」
最初の頃午後は横になっていたのに、最近は「横になる?」と聞いても首を振り、皆と一緒にいる時間を好むようになった。りょうちゃんや幹太が賑やかに遊ぶのを穏やかな顔で見ている月ちゃん。
帰る時「もう時間やね。帰らないかんねえ」と言うと、「帰らん」と言ってくれ、送って行った大ちゃんに「ありがとう」と言ってくれる時もある。
月ちゃんの誕生日。
いつものように、メッセージを書き、ケーキをつくり、ロウソクに火を灯し、ハピバースデーの曲を歌い、月ちゃんの横にスタッフがそろった時、月ちゃんが・・・溢れるような優しい笑顔で・・・笑った。
月ちゃんの笑顔は、池さんノートのページを飾った。
ひどい尖足も、私たちはなんとか改善したいと思い、皆であれこれ考えた。フットレストの上に、マットを置き、足がつくよう改善した。「足がつくようになったよ。月ちゃん、これでいい?」と聞くと、月ちゃんは笑顔でうなずいた。
こうした月ちゃんの変化を、ご家族の方が驚いてくれ、喜んでくれた。
提案した尖足の対応もできていて、普通に座位がちゃんと取れることをわかってくれて、新しい車椅子に変わり、今はフットレストにちゃんと足がつく。完全ではないものの、今、月ちゃんを見ても何の違和感もない。
そして今週、月ちゃんを送っていった大ちゃんが、でっかい袋を抱えて帰って来た。見ると、でっかい大根がいっぱい!
「月ちゃんのお父さんがくれた!」
送迎の時に、いろいろもらって帰ることがあるけど、この大根は本当に特別嬉しかった。
大ちゃんと話した。「お父さんが、こんなふうに親しく思ってくれることが嬉しいね」と。
月ちゃんの大根。
でっかい大根。
月ちゃんが笑ってくれるように、生きることに絶望しないよう、支えることができたら・・・と思う。