弁護士任官どどいつ集

弁護士から裁判官になった竹内浩史のどどいつ集

人生最後の ブレーキかけた バス運転手と 裁判長

2008年04月20日 11時57分35秒 | 未分類
東京新聞の18日のコラム「筆洗」は、裁判長を、先日の東名高速道路で起きた観光バス事故で、大型トラックから脱落したタイヤに運転席を直撃されたのにハンドルを放さず、ブレーキを踏み込み続けたまま亡くなったバスの運転手関谷定男さんに、うまくなぞらえたものだった。
ただ、他の報道にも言える点だが、3人の裁判官の合議体による判決を、当然のように裁判長の意見と見なして論じるのは、いかがなものかと思う。裁判長への個人攻撃を容易にする面もあるからである。
現に「問題のある裁判長だった」との根拠の無い非難も既に出ているし、今週は例によって例のごとく「裁判官がおかしい」という個人攻撃が各誌で展開されることが容易に予想される。しかし、私は名古屋で弁護士をしていたのでお世話になったが、この合議体の裁判官について問題があるなどという批判はついぞ聞いたことがない。
(東京新聞18日朝刊「筆洗」の後半を抜粋)
▼そして、これもまたブレーキの話であろう。自衛隊のイラク派遣差し止め訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁が示した歴史的な違憲判断。多国籍軍の兵士を運ぶ空自のイラクでの活動は、武力行使に当たるとして「憲法九条一項違反」と認定した▼日本国憲法、ことに九条は、この国が二度と戦争へと暴走しないよう設けられたブレーキだ。それがあるから、国民も安んじて「乗客」になっていられる。だが、段々(だんだん)に、なし崩し的な骨抜きの速度が増していたのも確か▼そこに、今回の判断だ。裁判長は判決直前に退官している。このブレーキも、裁判官人生の最後に踏み込まれたのである。