若い つばめ！

「明日は棚卸しだなぁ・・・」

入荷されたばかりの冷凍食品を血相かえて補充している鈴木すず子の横を通りかかった俺は、足を止め、手伝いながら鈴子に言った。すず子にとって、とあるスーパーで体験する初の棚卸しであるから、ここで一つ、簡単な説明でもしておいた方が良いだろうと、思ったのだ。

しかし・・・・。

すず子からは何の返答もない。

この世に冷凍食品と すず子のみが存在するかのような

二人だけの世界を演出しているのだよぉ。

折角、明日の作業手順なんかを一通り、補充しながら・・・

と思ったが、や・め・た！

実は、もう一つ、すず子に知らせたいことがあったのだ。

すず子くん！　明日から君にも後輩が出来るのだよぉ～と。

すなわち、新しいスタッフがグロッサリー一族に加わるのだ。

すず子くんの方が2ヶ月半、先輩になるのだから、しっかり頼む、と一言・・・

ただ、一言を・・・。

 

しーーーーーん。

俺は諦め、向かって左側に居た女性パートさんに話しかけた。

「来週、新しいスタッフがグロッサリーに入るんですよ。若い　つばめがっ！」

俺は、若いを強調した。グロッサリーのパート・バイト従業員の中ではカトを除けば鈴木すず子が一番若いのだが、明日　加入する包（勿論、仮名で読み方は、つつみ、だ。「ふろしき」ではない）くんは、更に若いのだ。これで、グロッサリーの平均寿命・・・もとい、

平均年齢もぐーーーんと下がるであろう。

「ところで、副店長・・・新しいスタッフは女性（うふっ）ですか？」

この・・・・質問の仕方・・・・

俺が若い女性スタッフの加入を心待ちにしていると確信しているかのような・・・

俺に質問をした女性先輩スタッフのみならず、近くに居た鈴木すず子も

しっかりと　聞き耳を立てているではないかっ！

だが、残念ながら・・・？

「お・と・こ　　」

俺は許せる範囲でニュースタッフについて、個人情報を与えておいた。

いずれ分かることであるからにして・・・

「彼は**大学4年生です。就職があるため、来年の3月まで・・・つまり半年しか働けません」

担当を持たずに、荷出しを中心にやってもらおうかと思っている俺。

そうだなぁ。俺の担当の米なんか、どうだろう・・・。

俺のぎっくり腰も完治には　程遠い訳だしよぉ。

 

翌日の午後―。

今後の　つばめ君の指導について俺が思いを巡らしている間、

二階の休憩室では、つばめ君情報が飛び交っていた訳であるが・・・。

みなさ～ん、そのことをご存知だったのだろーか？

俺、知らんかった（驚）

 

ミナミ