2016年3月20日(日) 銀行の本店
銀行は、商法上は、立派な株式会社で、通常の会社の本社と同様、組織全体を統括する機能を有し、そのトップは、社長とは言わず頭取と呼ばれる。 そして、本社機能を兼ねながら、現場としての業務もこなす本店がある、という独特の形態をとっているのが一般的である。
先日、筆者に関わる銀行間の資金移動で、この「本店」が関係する、珍しい体験をしたので、本稿で、取り上げることとした。
①往時、勤務した経験のあるT社だが、保有していた当社の非上場株式を、必要上、手放すこととなった。その売却代金を、T社の取引銀行で口座のある、りそな銀行K支店から、筆者の口座のある、みずほ銀行に送金してもらうこととなったことが、事の発端である。
②この1月、保有している株式を手放したい旨をT社に伝えたところ、程なくして、引き受け手が決まったことで、T社の経理担当から、
イ.名義変更関連の書類、
ロ.売却代金の振り込み先の書類、
が送られて来た。
この中の、ロの振り込み先を書き込む書類には、印刷された形で、
みずほ銀行 本店 口座番号××××××× 口座名義○○○○
とある。この口座は、T社の現役時代に、会社に届けているもので、退職後も、例年、所持している株式の配当金が、振り込まれているものだ。
後述するように、みずほ銀行の組織変更で、旧みずほ銀行の本店が、支店扱いの「東京営業部」となったことは、筆者は承知していたので、書類にある、みずほ銀行 本店という呼称が気にはなったのだが、上述のように、T社からの送金ルートとして、システムで確立していることなので、この書類を、そのまま返送したのである。
③そして、暫く日時が経過したある日、件の経理担当から、電話があった。 送金に行った りそな銀行の窓口で、書類に記載してある、みずほ銀行の当該口座は“実在しない”と言われたとの、思わぬ電話だったのである
改めて、控えに取ってある、ロの書類の写しを見て確認すると、上記のように、みずほ銀行 本店とある。
④ここで、みずほ銀行の歴史・経過を調べて見た。
第一勧銀、富士銀、興銀の3行が合併して、持ち株会社形式で、みずほFGがスタートしたのは、2000年で、この時に、リテールの「みずほ銀行」(本店は、旧第一勧銀本店(内幸町))と、法人向けの「みずほコーポレート銀行」(本店は、旧富士銀本店(大手町))等に再編された。
筆者の口座は、第一勧銀本店から、みずほ銀行本店になったのである。そして、この暫く後に、筆者がT社に勤務することとなり、届けたのが、上述の口座名である。
⑤その後、2013年に、みずほ銀行と、みずほコーポレート銀行とが合併して一つになり、後者が存続行となって、新行名は、ややこしいのだが、みずほ銀行となった。
そして、旧コーポレート銀行の本店が、新みずほ銀行の本店となり、旧みずほ銀行の本店は、店舗の一つである、東京営業部に改称となった。
銀行間の合併や、店舗の統廃合などで、店名が変わったり、無くなることはよくあるのだが、今回のように、統廃合の前にも、後にも、「みずほ銀行 本店」という同じ名前が残って、全く別の組織になるというのは、かなり珍しいだろうか。
現在のみずほ銀行本店には、該当する名義の口座は存在しないのは、当然のこととなる。
⑥送金先を、みずほ銀行 本店から、みずほ銀行 東京営業部に修正して、送金してもらい、入金も確認できて、一件落着である。
この関連で、おまけに、数百円の組み換え手数料を、筆者が負担することとなった。
⑦銀行の合併や、支店の統廃合は、決して珍しい事ではないが、これに対応する場合、どの様なルールになっているのだろうか。
・銀行間の取引では、変更した銀行側と、周囲の銀行との間では、変更した側で、(一定期間は)読み換え等を行って、対処するのだろうか。あるいは、変更する側から金融業界内に変更情報を周知し、双方で修正対処するのだろうか。
・一方、利用者側からみると、店舗名等の変更は、銀行側の都合で行っていることなので、一般的には、利用者側での変更手続きは、原則、不要だろうか(少なくとも一定期間は)。
利用者が送り手となる場合は、ATMで自動的に、新店舗名で送金される。又、受け手となる場合は、受け側のシステム上で、旧名→新名に読み換える、と考えられる。
⑧みずほ銀行の、この筆者の口座は、年金等の入金や、各種料金の振り替え等で、長期に亘って利用しているのだが、上述の店舗名の変更に絡んで、こちらから、変更手続きを行った記憶は無い。これまでは、利用者には見えない、送金・決済システムの中で、機械で自動的に処理されていた、と言う事だろうか。
でも、経験では、口座を持っている、某銀行の支店が廃止され、他支店に統合された時は、出向いて手続きをしたような記憶もあるがーーー。
⑨今回の事案は、改めて手動による送金となって、店舗名を手動で入力することとなり、問題が表面化したことだ。
筆者として、T社から送られて来た書類を、現行に訂正していれば済んだことでもあるが、 T社から送金する方法として、配当金の場合と同様に入力できたなら、システム上で機械的に行われて(読み換えられて)、問題は起こらなかったようにも思える。
T社、りそな銀行、みずほ銀行の、資金移動に関わる各システム内で、今回の本店の変更に伴う実データが、時間の経過とともに、どのように、読み換えられ、或いは修正されて来たのか、興味のあるところだ。
又、帳票上ではどの様に記載され、変更されて来たかも同様だが、今回は、T社の帳票上では、修正されていなかったということだ。
◎ともあれ、T社の担当が、りそな銀行K支店から、改めて送金するのに、数百円の組み換え手数料なるものを請求されたようだ。
この費用を、やや大げさに言えば、みずほ銀行、T社、筆者(口座利用者)の、誰が負担すべきかは、議論のあるところだろうか。
筆者としても、責任は無いとは言えないのだが、結局、こちらが支払ったということには、やや、すっきりしないものを感じる。