日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 冬来たりなば春遠からじ。

 ……ちょっと早すぎましたか。でもそう言ってみたい気分にもなるというものです。

 もう御存知でしょうがこのニュース。心を浮き立たせる話題じゃないですか。
 
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 ●李・前台湾総統が来春訪日の意向「奥の細道訪ねたい」(読売新聞 2005/11/02/03:10)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20051102i501.htm

 【台北=石井利尚】台湾の李登輝・前総統(82)は1日、台北市内で読売新聞などと会見し、来年4月に東北地方など松尾芭蕉の「奥の細道」ゆかりの地を家族で訪問する意向であることを明らかにした。

 李氏は「4月ごろは桜が咲いているし、暖かくなる。必ず行きたい」と述べた。

 中国政府の強い反対は必至だが、李氏は「(台湾人の日本観光は)ノービザの時代になった。リタイアした総統は普通のピープルじゃないか」と日本語で語り、日本政府に入国を認めるよう期待を表明した。李氏は、10月にワシントン訪問が実現したことを挙げ、東京訪問への期待感も改めて示した。

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 ●李登輝氏、4月訪日に意欲 桜の季節「奥の細道」に/東京へも(産経新聞 2005/11/02/02:42)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051102-00000011-san-int

 【台北=河崎真澄】台湾の前総統である李登輝氏(82)は一日、台北市内で産経新聞などとの会見に応じ、(中略)自身の再訪日については、「来年四月に『奥の細道』を必ず歩きたい」と話した。

 五年前の総統退任後、初の家族旅行として昨年暮れから今年初めまで訪日している李氏は、「家内に来年の四月には(念願の)『奥の細道』を必ず歩こうと話した」と明かし、サクラの開花時期に合わせて東北地方を訪れる希望を表明した。

 訪日目的として、「夕焼け小焼けの童謡にあるような人間と自然が溶け合う日本人の持つ情緒的ないい面は他国にないことであり、(李氏が『奥の細道』で芭蕉について語ることなどで)日本人に改めて良さを知ってもらいたい」と話した。

 また、先月の訪米で首都ワシントンで連邦上下両院議員や記者を前に演説した実績を踏まえ、「(首都ワシントンに行けたのに)東京に行けないことはない」とし、一九八八年の総統就任後、初めてとなる東京訪問に改めて意欲を示した。

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 それにしてもこの時機を捉えてのこの発言は、さすがに百戦錬磨の政治家ですね。

 ただでさえ求心力に欠ける胡錦涛政権。指導力に疑問が呈されていることは、先月開催された党の重要会議「五中全会」(党第16期中央委員会第5次全体会議)で人事に全く手をつけられなかったことからも明らかです。その公報から匂い立っていた危機感・緊張感の欠落した「ふわふわ感」は、胡錦涛が「強権政治+準戦時態勢」のもと強い指導力を発揮して積もり積もった諸問題に荒療治を行う。……という構想がもはや実現不可能になったことを示しています。

 その直後に小泉首相が靖国神社参拝です。続いて行われた内閣改造では小泉首相に安倍官房長官・麻生外相という超攻撃型3トップの「靖国シフト」を敷かれてしまい、日本への対応策を練り直す必要に迫られています。「靖国参拝+靖国シフト」という「靖国コンボ」に著しく刺激されて蠢動する政治勢力もあるでしょう。

 政情不安から政争へと展開しそうな気配。社会状況が迂闊に「反日」を煽れないほど悪化していることは、「反日」と全く無関係に暴動やデモが各地で頻発していることでもわかります。だから中共は「参拝」パンチを喰らっても、今回は「反小泉+反右翼勢力」と攻撃対象を局限して「反日」には発展させず、経済関係など他方面への影響回避を図るしかありませんでした。

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 その時機を逃さずに千両役者・李登輝氏の訪日希望表明です。訪日の意向は米国滞在中にも匂わせてはいましたが、今回はより明確な形で「来春訪日」との意思表示。中共にとって李登輝氏の訪日が「靖国参拝」以上のインパクトを持つものであることは、すでに昨年の来日時に実証済みです。そのときは近年にないレベルの強硬な抗議姿勢を示し、野蛮にも恫喝まで試みました。

「(もし李登輝氏が来日すれば)トラブルメーカーが戦争メーカーになるかも知れない」

 という名言を残したのは王毅・駐日大使でしたか。当人は恫喝のつもりだったんでしょうけど、「戦争メーカー」って何だそれ(笑)。脱力感満点の造語のお蔭で、脅したつもりが微笑ましいエピソードになってしまいました。

 ともあれ抗議だ恫喝だと手を尽した中共ですが、日本側に無視されたらもはや何のカードも残っていないことを露呈した形に。今までは日本が構ってやり過ぎていたんですね。構わずスルーに徹してみたら、中共は結局相応の報復措置らしいものを何も出せないまま、尻すぼみで退散。李登輝氏が身を以て教えてくれたといってもいいでしょう。

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 さあ楽しみです。李登輝氏の訪日となると台湾問題そのものですから、軍部が黙っていられなくなるでしょう。

 実際に、昨年末の李登輝氏訪日に続いて今年2月には日本政府が尖閣諸島の灯台国有化を宣言、さらに「2プラス2」において日米が台湾問題への介入姿勢を示したことで、軍内部の対外強硬派とも過激派ともいえるグループが我慢の限界に達しました。そこに江沢民の上海閥を始め様々な政治勢力が結集して「アンチ胡錦涛諸派連合」のようなものを形成、それが今春の反日騒動(反日に名を借りた政争=倒閣運動)につながっていったのです。

 ともあれ、胡錦涛政権にとってはまたまた大ピンチですよねえ。昨年を思い出します。日中首脳会談におけるパフォーマンスの悪さにブーイングを受け、慌てて急遽セットした小泉・温家宝会談もフォローできずに収穫なし。そこに続いて李登輝氏の訪日決定となり、ダメ出しされて対日路線の修正を余儀なくされています。

 今度は靖国参拝をされてしまい、さらに「靖国シフト」まで敷かれたところで李登輝氏が来日したいと言い出したのです。大ピンチ+αといったところてしょうか。桜を見たい、東京へも寄りたい(「奥の細道」の起点ですから当然でしょう)、東京へ寄るなら桜は九段。比島で戦死した兄が御祭神に名を列ねている以上、李登輝氏にとって靖国参拝はデフォでしょう。胡錦涛政権にとっては弱り目に崇り目です。

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 いやいや、確か「川に落ちた犬は棒で叩け」みたいな諺が中国にありましたね。「打落水狗」。転じて「失敗者にさらに追い打ちをかける」とか「相手が再起不能になるまで徹底的に叩く」との意味になるそうで、何とも小気味よい格言です(笑)。胡錦涛政権には実にお似合いなのですが、ここまで落ち目になるとそろそろ温家宝が胡錦涛を見捨てることになるかも知れませんね。

 ……何だか心浮き立つままに書いてしまいましたが、李登輝氏にとっては「奥の細道」は別として、超攻撃型3トップに象徴される日本代表の新たなフォーメーション(小泉内閣)の本気度を測る旅になるでしょう。それを踏まえた上で、どうも最近みていて焦れったくなるような独立派(緑)に有効なカンフル剤を打ってほしいものです。日本政府も是非これまで以上の入れ込み方で、「台湾」をバックアップしてあげてほしいと思います。
 
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 前回来日した際の往路の機内では日本の記者団に日本語で応えていた李登輝氏、

「将来どういう名目で行けるか分からないが、もっとおもしろい状態になるでしょう。おもしろいビザをもらってもう少し、深く日本を見る」
(※1)

 と話していました。さすがに意味深長で凄みのある語り口です。私などにはその胸中など忖度できようもないのですが、確かに昨年よりずっと「おもしろい状態」であり、台湾人はノービザとなりました(李登輝氏の場合は日本政府との事前協議が必要になるそうですけど)。

 今回は日本を見るだけでなく、より多くの日本人が台湾と台湾人に関心を持つよう、講演や政治活動にも従事してほしいです。もし国会での演説が実現したらすごいでしょうね。靖国神社を参拝するときに偶然小泉首相に遭遇してしまい、折角だから一緒に参拝した。……というのは夢物語ですけど、超攻撃型3トップには是非楽しい仕掛けを準備しておいてほしいものです。

 ともあれ、「奥の細道」の跡をたどるなら、まずは芭蕉記念館からスタートでしょう。拙宅からだと川向こうで歩いていける距離なのです。絶対お迎えにあがって、一目だけでも構いませんから、歴史に名を留めることになるであろう哲人政治家の風貌に接してみたいです。


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 【※1】
http://www.sankei.co.jp/news/041227/sha090.htm(リンク切れ)

     「李登輝氏来日(8)桜の季節に。」(2004/12/29)


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 【余談】訪日が実現すれば今回もきっと新華社から記者が来るんでしょうね。畜生相手には刀を抜くまでもありません。芭蕉像の下あたりから隅田川に投げ込んでやりましょう。墨堤ダイブです。運が良ければ何とか清洲橋あたりまで泳ぎ着けるでしょう。……あ、「打落水狗」でしたね。それなら先回りして、紙のお金を燃やしながら待つことにするとしますか(笑)。



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「上」の続き)


 ところで、「上」にて紹介した「上海必死だなw」という独特な動き、これににちょっと似た出来事が夏にありましたね。上海を舞台にした日本人を巡る謎の事件。「斜陽の広東王国に村民のハンストに上海の情報戦」(2005/09/01)で既報したもので、詳細はそちらを御参照頂ければと思います。

 ●「上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打」(国際在線/新浪網 2005/08/31/10:11)
 http://news.sina.com.cn/s/2005-08-31/10116828922s.shtml

 という『民主と法制時報』の報道を上海市当局が声明を発表して打ち消した一件です。

 ●『上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打』は事実に反したもの(解放網 2005/08/31/12:42)
 http://www.jfdaily.com.cn/gb/node2/node142/node200/userobject1ai1048311.html

「8月30日に新浪網(SINA)など商業系サイトに転載された『民主と法制時報』王敏記者による記事『上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打』は事実から著しく逸脱した内容である」

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 当時は「八・一五靖国参拝」がなかったために「反日」を発端とする政争を仕掛けられなかった「アンチ胡錦涛諸派連合」による情報戦
(殴打事件→反日感情高まる→デモだデモだあ→暴動だ暴動だあ→胡錦涛馘首)かと考えていました。実際にそうだったのかも知れませんが、これまた外資に身を任せた上海市当局の必死さが伝わってくる事件です。

 とは、「新浪網」が「殴打」報道を掲載してからわずか2時間半後には、当局(上海市公安局)がそれを否定する声明を発表し、各メディアに報じられているからです。各メディアとはタイトルを太字にして重要ニュース扱いにした「解放網」(『解放日報』の電子版)をはじめ、「新華網」「人民網」それに「新浪網」など大手ポータルのニュースサイト。

 たったの2時間半ですよ。上海市当局が何を最も恐れていたかといえば、

「広範なるネットユーザーは虚報に踊らされないようにしてもらいたい」

 と声明の中でわざわざクギを刺していることから明らかです。
「殴打→反日→デモ&プチ暴動の再発」ということになるでしょう。外資に逃げられたら失血死する、という生存本能が「2時間半」というレスの速さに出ているのではないかと思うのです。

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 ……という訳で、

 ●「友好の花」一直線
 ●殴打事件報道への即レス(「報道は事実に反する」声明)

 という「上海必死だなw」の実例を挙げれば、第3のケースを思い出す方も多いことでしょう。

 ……そうです。上海にとって最も危険だった
今春の反日騒動における「デモ&プチ暴動」です。上海市当局にとっては「四・一六事件」ともいうべきものでしょう。

 あのとき破壊された日本人経営の店鋪などには弁償措置が講じられた(ただ補償金額が低すぎて折り合わないようですけど)ようですが、北京市での反日デモ(4月9日)以上の被害となり、振り返ってみれば反日騒動における最大規模の騒乱でした。

 「上海にとって最も危険だった」というのは、「中央に対する面目が云々」「それで中央からの介入が強まって云々」なんてことではなく、この「四・一六事件」が全世界に報じられ、その結果として日本の外務省から「退避勧告・渡航延期勧告」が出された場合、外資の柱である日系企業の動きが止まってしまう可能性があったからです。

 もし欧米諸国がこれに足並みを揃えれば?……あの1989年の天安門事件による経済制裁の再演となります。外資依存度が高まっている現在は、まさに失血死状態になる恐れがありました。同時に不動産バブルが一気に弾けたことでしょう(上海市当局のサイドビジネスが頓挫したともいえますね)。

 「上海にとっての危機」であることは、市当局もよく認識していたことでしょう。……古い話を続けますが、そこであの怪文書、反日デモを激しく断罪した『解放日報』(2005/04/25)の論説記事(評論員文章)となる訳です。

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 ●解放日報評論員:本質を見極め、違法行為には厳罰を(解放日報/新浪網 2005/04/25/09:09)
 http://news.sina.com.cn/c/2005-04-25/09095742012s.shtml

 いやーまだリンクが生きているとは思いませんでした。以下、当ブログ「怪文書」(2005/04/29)から引用しつつ話を進めます。

 前述したように、『解放日報』は上海市党委員会の機関紙、つまり上海における中共の代弁者ということになります。その新聞に「四・一六事件」から1週間以上経った4月25日、この重要記事が1面トップを飾ることになります。唐突、というのが「怪文書」の「怪」たることその1です。

 「怪」たることその2は、記事の内容そのものです。真っ向から容赦なく「四・一六事件」を否定し断罪し、反政府行動とまで決めつけていることです。

「大量の事実が証明している。最近発生した非合法デモは、愛国的行動でも何でもなく、違法行為なのだ。民衆の自発的な動きでも何でもなく、背後に黒幕を控えての陰謀なのだ。」

 と、冒頭から「反日デモ」や「愛国無罪」を非合法認定。「陰謀」とは反政府活動のことです。デモがその「陰謀」だと断定されています。凄まじいの一言です。

 当時の党中央・中央政府サイドから出ていた記事や通達がいずれも反日活動参加者の「愛国の情」は認めつつ、「なだめすかす」「諭す」「説教する」「自重を促す」といった姿勢だったのに対し、この「怪文書」は
「デモに参加した奴らはみんな有罪。こうした動きを上海は断固許さない!」と、明確に「対決姿勢」を打ち出しているのです。要するに、

「デモに加わった者は人民の敵」(つまり反政府分子)

 という認識なのです。一連の反日活動に対する記事において、明らかに敵対姿勢を打ち出したのはこの文章だけです。

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 そしてこの鬼気迫るが如き記事は「新華網」をはじめ大手ポータルのニュースサイトにも次々と転載されていきました。……が、なぜかほどなくして今度は次々と削除され始め、最後には記事の発信元である『解放日報』の「解放網」からも消されてしまうのです。これが「怪」たることその3。

 消された原因はいまもって謎です。この記事に対しネット世論が激しく反発したことは事実ですが、そんな簡単な理由ではないでしょう。反日騒ぎに対するその後の対応ぶりから、党中央が「勇み足に過ぎる」と判断したのかも知れません。あるいはより高度な政治的判断により、党上層部が反日デモを断罪しない方針で固まった可能性もあります。この場合は、

「反日デモを断罪することで反政府的な気運が出ては困る」
「騒ぎを放置しておくことで国際的イメージが傷つく」
「反日デモの断罪を避けておけば、いずれ必要なときにまた反日を口実にした政争が仕掛けられる」

 など、様々な思惑が交錯したかと思います。ちなみに「反日を口実にした政争」とは党上層部内の主導権争いだけでなく、「反日」を対日外交上のカードに使えるかも、という意味合いもあった筈です。ただいずれにせよ、それらはあくまでも北京から中国全土を見渡した大局的見地によるもので、外資に命を預けてしまっている上海市の感覚を実感することはできなかったでしょう。

 デモ&プチ暴動の激しさに接した上海市当局は驚愕し、これは厳しく断罪しないと死活問題になる(外資が逃げる)という認識が生まれたのだと思います。要するにこれまた「上海必死だなw」の発露なのです。

「経済制裁や外資一斉引き揚げなどは可能性が低いですからリスクというほどでもありませんが」

 と「上」で書きましたが、そのとき上海市当局は確かにそのリスクが現出する気配を感じたのだと思います。

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 以上は上海閥への応援歌ではありませんし、私にとって1年暮らした街ではあっても、全てが変貌している以上、いま行ってみたところで何の感慨も湧かないでしょう。ただ単に、上海には「外資に身を任せた街」という個性(行動原理)があり、そのために中央と感覚を共有することができない部分があるように思える、というだけの話です。

 考えてみれば外灘に並ぶ重厚な趣の欧風建築、これは本来中国にとって屈辱的な租界時代の名残りですが、中共政権の成立後もそのまま接収されて政府機関などとして利用され、現在に至っています。私がいたころからすでに観光スポットでしたが、現在は道路も修復されライトアップもされて、一段と磨きがかかっていることでしょう。

 「偽りの正面」と呼ばれたあのビル街こそ、上海が昔から、そして現在においても「外資に身を委ねた街」であることを示しているようでもあります。



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