日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 陳情農民に続く小ネタを用意していたのですが……今朝(6月30日)の香港紙を見て急遽差し替えです。

 ちょっと面白い動きが出てきました。もちろん差し替えるに値する大ネタです(と私は思うのですが)。政界ではなくマスコミ業界からのアクションなんですが、その異例の規模からみて、展開次第によっては政局に影響を与える可能性が出てくるかも知れません。

 ケレン味なく素直に表現するなら、

「中国の新聞記者たちがついに立ち上がった!」

 といったところでしょうか。いやこれは誇張でも何でもなく、言論・表現・報道の自由が保証されていない中国にあっては、非常な勇気を必要とする行動だと思うのです。

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 御存知の方も多いでしょうが、広東省に『南方都市報』という新聞があります(1997年創刊)。

「マスコミはあくまでも党・政府の代弁者たること」

 という、日本では考えられないような枠がはめられ、それが常識である中国のマスコミにあって、同紙は正義感にあふれた、真直ぐで気骨ある編集方針を貫いている「異端」の存在として知られています。

 その「異端」ぶりは伊達じゃありません。地元公安局の暴虐なる取り調べで身分証を持ち忘れただけの大学生が命を失ったことを暴き出し(孫志剛事件)、中国肺炎(SARS)が流行していた際には、患者数などの関連情報を広東省当局が隠蔽している事実をいち早くスクープ。昨年には深センの隠された闇の部分に光を当てるルポを掲載するなどして、深セン市当局から「発禁処分」(一定期間、深セン市内での同紙販売を禁止)を喰らったりもしています。

 権力を恐れず、権力に屈しないその姿勢にはネット世論も拍手喝采。海外からも高い評価を得ています。当然ながら読者の受けもよく、発行部数は1日平均140万部。広東省で最も読まれている日刊紙です。

 そういえば当ブログも貴州省の巨大公害を紹介した際、同紙の詳細を極めた現地ルポのお世話になっていました。俗な言い方なら「社会派」というところでしょうか。必要とあらば「党と政府の代弁者」という枠を突き破ることすら辞さない。『南方都市報』とはそういう新聞なのです。

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 とはいえ、中共一党独裁による専制社会にあって「異端」を実行し、貫こうとすれば、例外なくリスクを背負うことになります。

 実際、「孫志剛事件」「中国肺炎報道」では広東省上層部の不興を買い……どころか激怒させてしまい、権力による報復が行われることになります。昨年1月、当時編集長だった喩華峰氏、それに『南方都市報』を抱える「南方報業集団」の同紙担当役員だった李民英氏が逮捕・投獄されたのです。

 広州市中級法院で開かれた裁判では、贈賄と公金横領の罪をでっち上げられた喩華峰氏には懲役12年、収賄罪の濡れ衣を着せられた李民英氏には懲役11年という実刑判決がそれぞれ下されました(2004/03/19)。さらにその同じ日に、当時『新京報』編集長に転じていた程益中・元編集長も出張先の四川省で拘束(後に逮捕)されたことで、

「まさに筆禍」
「醜悪な権力者による、あからさまな報復だ」

 ……などと、ネット世論は大沸騰。ジャーナリストの立場や人権を問う問題としても捉えられ、中国内外を大きく騒がせる事件となりました。

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 大騒ぎしてもらったおかげ……つまり広東省当局が世論の強い反発に怯んだのか、広州市中級法院で開かれた控訴審における判決では、喩華峰氏が懲役8年、李民英氏は懲役6年といずれも刑が大幅に軽くなっています(2004/06/15)。

 一方の程益中氏はといえば、広東省のトップ(広東省党委員会書記)をかつて務めた任仲夷・呉南の両長老が、

「『南方都市報』の件は寛大に処理してやれ」

 と異例の呼びかけ(というか現執行部への干渉)を行ったおかげで起訴が取り下げられ、めでたく無罪放免(2004/08/27)。ただし広東省当局の腹の虫がどうにも収まらなかったのでしょう、釈放された当日に程益中氏は党籍を剥奪されるという処分に遭っています。嫌がらせですね。

 それにしても、第二審で判決が軽くなったとはいえ、喩華峰氏と李民英氏は冤罪で投獄されたままです。

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 ……ということで、冒頭に話が戻ります。中国国内の新聞記者たちが先ごろ、いまなお獄中にいる両氏の釈放を求め、連署による公開書簡を発表したのです。

 署名者数は驚くなかれ2356名。当の『南方都市報』をはじめ、『新京報』『第一財経日報』『新聞晩報』『上海青年報』の各紙、それに大手ポータルサイト「新浪網」(sina.com)や「捜狐網」(sohu)の記者も名前を連ねています。

 中国国内において、中国人記者がこれほどの規模で連署を行ったのは前例がありません。知識人や作家などを含めれば1989年2月に提出された魏京生氏(中国における民主化運動の源流をなす活動家)の釈放嘆願書、そして同年3月の「三峡ダム建設反対声明」などの例があるものの、人数では今回に遥かに及びません(※1)。

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 冒頭で書いたように、これは非常に勇気の要ることなのです。独裁政権に楯突く行為とみられても不思議ではなく、仮にそうなれば署名者は全て犯罪者。署名行為の合法非合法を云々しても無意味です。もし司法で裁けなくても、党でいかようにも料理できるのですから。

「まさかこれで罪人にはされまい」

 と多寡をくくっている部分があるのかも知れませんが、失職する恐れはあります。そういうリスクを伴う活動に自ら名前を晒すというのは、やはり覚悟の要ることではないかと思うのです。

 なお、この公開書簡はつい先日である6月27日、カリフォルニア大バークレー分校においてジャーナリズム関連のテーマで修士課程にある中国人留学生たちのウェブサイトで発表されました。宛先は広東省高級法院です。署名数もさることながら、この公開書簡では投獄されている両氏が冤罪であることを検証してもいるため、合計5000字(※2)というこの種の文章にしては大部なものになっているそうです。

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 今回の件、濡れ衣を着せられ投獄されている『南方都市報』の2人の釈放要求が出されたということより、2356人もの中国人記者(全て中国国内メディア)が連署した、という事実が何よりも重いです。

 私たちは、そこに中国人記者たちの強い危機感をみるべきなのでしょうか。

 例えば?と問われても、こちらはいつもの料理を出すことしかできません(笑)。要するに中国の社会状況が危機感を持たざるを得ないほど悪化しているということです。その具体例として物価問題、失業問題、拡大する貧富の格差、蔓延する党幹部の汚職などがあり、失地農民(開発用地確保のため耕地を無理矢理奪われ、流民同様の境涯に墜ちてしまった農民)の問題もあるでしょう。

 それらの表現として、河北省定州で発生した暴徒による農民襲撃事件があり(映像が世界に流された、あの騒動です)、最近紹介した安徽省池州市の都市暴動があります。農作業が一段落すれば、また農民暴動も頻発するようになるでしょう。……これが「危機感」の第一点。

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 もう一点指摘しておかなければならないのは、恐らく報道者ないしは表現者である中国人記者たちが、報道者・表現者として非常に息苦しくなっているのではないかということです。意地悪く言ってしまうと、これは自業自得ともいうべきで、心の準備ができていなかった記者たちの方に問題があります。

 昨年9月の胡錦涛政権発足時、私はこの新政権が目指すスタイルを「強権政治&準戦時態勢」と形容しました。そこまでの指導力を手にできない限り、現在のような中共(中国全土の統治者)は胡錦涛で終わるだろうという邪推によるものです。当時の胡錦涛が示してみせた、危機感にあふれた所信表明(四中全会公報)がその裏付けともいうべきものでした。

 「強権政治&準戦時態勢」なら言論統制は当たり前なのです。実際にまず反日言論・報道が統制され、その後はネットはもちろん、ドラマやCMの内容から、知識人の公的活動にまで枠がはめられました。当然の展開です。

 ところが、胡錦涛政権に対して江沢民時代よりも開明的なイメージを抱いていた記者たちは、報道者・表現者としての自分たちの空間がより拡大されるだろうと期待してしまったのです。で、箱を開けてみたらハズレの紙が入っていた……というところでしょう。記者だけでなく、中国国内や海外を問わず、少なからずの知識人には似たような期待があったようですが、みんな横っ面を張られてしまいました。

 「胡錦涛は開明的ではない」

 という趣旨の文章が一時、在外知識人の集まるサイト(例えば民主論壇)に出ていたりしたものです。散歩しながら雲ひとつない青空を見上げて、

「今日は晴れている」(棒読み)

 ……と、わざわざ同行者に教えてやるような阿呆らしさです。

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 ともあれ、今回の釈放要求に署名した2356名という数字に、危機感にかられ、あるいはキレかかって堪え切れずに、止むに止まれず立ち上がってしまった……というイメージを私は結びます。この2356名はあくまでもコアであり、その周囲には署名こそしなかったものの、やはり同じ気持ちでいる記者たちが何倍もの数でいることでしょう。

 最近は胡錦涛がどうとか軍部の動静がどうとかいう話ばかりしていますが、政府の用意した窓口を見限って相手にしなくなった陳情農民たちの変化も、ジャーナリストたちのこういう挙動も、社会が何やらかすかに揺れ始めていることを反映しているのではないでしょうか。

 いまは震度2から震度3といったところ。そろそろ「震度4弱」ぐらいにはなるでしょうか。

 何せ中国ですから。突如の激震、ということもあるのでこちらも落ち着いてはいられないのです。


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 【※1】そういえばここで名前の出ていた人たち、その大半はほどなく起きた大学生による民主化運動を積極的に支持する側に回り、天安門事件(六四事件)のあおりを喰って海外に出てしまいましたね。

 【※2】日本語なら5000字×3=1万5000字ぐらいでしょうか。

 【資料】『蘋果日報』(2005/06/30)
     『明報』(2005/06/30)
     http://www.epochtimes.com/gb/5/6/30/n969912.htm(大紀元gb)


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 どうやらガセネタではなかったようです。

 とは、つい先日お伝えした「陳情農民が大挙して外国公館へ?」(2005/06/24)のこと。当時は共同通信しかこのニュースを報じておらず、しかもそれが消息筋情報。さらにこの手のネタに強い香港各紙や反体制系ニュースサイト「大紀元」による後追い報道もなかったため、結局情報の確度は「?」のままだったのです。

 ……が、このたびその疑問符がとれました。今朝の香港紙『蘋果日報』(2005/06/29)や「大紀元」、反共?ラジオ局「RFA」(自由亜洲電台)が、それぞれ同じようなニュースを報じています。

 共同通信さん、確度を疑ってゴメンナサイ。そして改めて香港紙を出し抜いた報道にGJ!です。

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 どうやら大使館駆け込み狙いは陳情者(上訪人士)のトレンドとなったようで、今では連日のように数百人規模のチャレンジャーが「上訪村」(上京した陳情者が寝泊まりするバラックの一群)から朝靄をついて出撃していくそうです。

 当時の共同電によれば、陳情者が目指したのは「米仏両国の大使館」ということでしたが、いまでは駐北京国連難民事務所もターゲットに加えられているとのこと。まるで脱北者のようです。

 もっとも成功率は目下のところほぼゼロです。『蘋果日報』によると昨日(6月28日)も少なくとも数百人が米国大使館を目指して朝6時から数十名単位で、五月雨式に「上訪村」を出発。例によって各グループが別ルートをたどり、そのうち約30名が午前9時、大使館の敷地に駆け込もうとしたものの、50名を超える武装警察などに阻まれて敢え無く御用。ああ法を犯してはいませんから「御用」ではなく「故なき拘束」と言うべきですね。ともあれ警察車両に詰め込まれて連行。

「大使館駆け込みは、70とか80の年寄りでなければ100%拘留される」

 とは陳情農民の弁。だから出撃に際しては、

「拘留に備えて身の回りのものを全部バッグに詰める。それで長ズボンを履けば準備OK。それじゃあ行こうか、て感じだね」

 長ズボンというのも拘留に備えての準備のひとつで、留置所が不潔きわまりない環境にあるため、暑いとはいえ半ズボンだと伝染病にかかり易いからだそうです。拘留されれば大体4~5日で釈放されるとのこと。

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 「駆け込み」が陳情農民のトレンドになった以上、治安当局も手抜かりはありません。陳情者の目標が明らかなのですから、念入りに網を張っておけばいいのです。

 でも、仮に駆け込みに成功したとして、どうなるのでしょう。陳情者たちは記者の取材に、

「外交官に自分の口で窮状を訴えたい。それで全世界の人に関心を持ってもらいたい」
「難民事務所の職員に、自分が冤罪であることを伝えたい。」

 などと語っていますが、それでどうなる訳でもなし。それでも当人は満足するのでしょうか。……少なくとも言えることは、中国政府の担当窓口はもはや信用されず、見限られたも同然ということです。

 「上訪」
(陳情)

 という言葉に対して、

 「截訪」
(陳情阻止)

 という単語があります。「上訪」を何度か繰り返すうちに、あるいは古株からの口伝てによって、

「上京→陳情→拘束(陳情阻止)→連行→強制帰郷」

 というメカニズムがすっかり機能していて、たとえ担当窓口で訴えることができてもロクに相手にされない、ということを知ってしまっているのでしょう。とはいえ連日行われる「駆け込み」も成功例が皆無とあっては、チャレンジャーたちはどこまで本気なのか、わからなくなってきてしまいます。

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 一方で、陳情者たちのターゲットにされている側はこれをどうみているのでしょう。共同電を掲載した『産経新聞』(2005/06/24)に触発されて、「RFA」が同日午後、北京の米国大使館に電話取材を試みています(※1)。相手は大使館付報道官。事実を尋ねる記者に対し、

「ああ、そういうことがあったみたいだね。先週の日曜には何人かが大使館の入口まで来ていたよ」

 ――何人ぐらいですか?

「人数ははっきりしていないんだ」

 ――それで、その人たちは結局(治安当局に)拘束されてしまったんですね?

「それもよくわからないな」

 ……とまあ、その程度の認識のようです。

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 ところで、これら地方からの陳情者に対し、北京で待ち構えている同郷の当局者が幾許かの金銭を握らせて大人しく帰郷させる……という裏話を「1読者」さんが以前、コメント欄で紹介して下さいました(色々と探してみたのですが数が多くて……「1読者」さん申し訳ありません。本当はもっと長くて面白い話だったのに)。

 それがどうも半ば制度化しつつある模様なのです。少なくとも福建省ではそうなっているとのこと。

「どうも、福建(省政府)は決定を出したようなんだ。陳情内容が妥当であろうとなかろうと、北京まで来た者には1~3万元を渡して、二度と陳情で上京しないことを約束させて帰郷させる。陳情内容が妥当なら、内容にもよるけど、最高で10万元くらいもらえるよ。まあ1万から10万だね。だから福建から来た連中はみんな帰っちゃったよ」(陳情農民・白さん)

 「上訪」は合法的な陳情活動なので、治安当局による「截訪」(陳情阻止)は逆に違法行為となりかねません。そこで一種の買収活動で事を穏便に済ませる、という方法が採られ始めているようです。

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 それにしても、こういう陳情者の中から器の大きい親分みたいのが出てきたら面白いですね。数百人単位でほぼ毎日出撃していく訳ですから、うまいこと束ねれば数千から1万といった人数になるでしょう。それが首都北京の一角である「上訪村」で群れている。仮に衆望を担い得る号令者が出現すれば、ちょっと面白いことになるのではないでしょうか(笑)。

 治安当局にしてみたら、金を握らせてとっとと帰ってもらうのが上策、という考えに行き着くのもわかるような気がします。陳情農民もそれで何となく納得してしまうのかも知れませんが、過去の冤罪を晴らしたいというならともかく、土地収用を巡るトラブルとか、村の党幹部の汚職といった現在進行形の訴えは解決を見ないまま、放置されてしまうことになりますね。

 銃器製造が冬の内職になっている内陸部の農村もあるそうです。帰郷した農民が街の闇市場へ行き、もらったカネで銃器を購入していたりして。……それは冗談ですが、今年も農閑期は荒れるのではないでしょうか。やや気の早い話ですが、やっぱり楽しみです(笑)。


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 【※1】http://www.epochtimes.com/b5/5/6/28/n968327.htm


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 前々回の「奇病百態もあるかも。」(2005/06/25)で「2005-06-27 14:56:37のUnknown」さん及び「ああ」さんからコメントを頂いたのですが、レスが余りに長くなってしまい、コメントの文字色も読みにくい色なので(あの色は調整できるのでしょうか?)勝手ながら記事にしてしまいます。

 「2005-06-27 14:56:37のUnknown」さん、「ああ」さん、晒しageとかそういうつもりは一切ないので誤解しないで下さい。でも私はブログの世界をよく知りませんので、これが流儀に反するとか迷惑だということであれば御一報下さい。その場合はこのページを削除し、記事は長文ながら本来の居場所たるべき前々回のコメント欄にレスをつける形にしておきます。

 さて一連のやりとりは、

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 胡錦涛は対日融和派(Unknown) 2005-06-27 14:56:37

 ではないそうです。
 http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20050626#p1

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 という「2005-06-27 14:56:37のUnknown」さんの唐突かつごく短いコメントが発端となっています。唐突というのは、エントリーの内容とは全く関係がないものだったからです。

 その後のやりとりは前々回のコメント欄を御参照下さい(御面倒をおかけしてすみません)。以下は「ああ」さんの最後のコメントに対する私のレスです。

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>>「ああ」さん(皆さんもうどなたか御存知でしょうが)

 土下座外交という用語が不適切なら、他の言葉でも構いません。要するに日本の対中外交のスタイルが昨年後半からそれまでとは打って変わって、強腰気味になったということです。それから日本人の対中感情が高まった。これが外交にも反映されたのでしょうけど。

>ここで趙氏は、そもそも胡錦涛は「対日新思考」が取りざたされた頃から歴史問題と台湾問題
>という「二原則」の堅持こそが日中関係が成り立つ政治基礎であるという姿勢を明確に示して
>おり、彼はもともと対日融和派なのだという見方を一蹴する。

(「2005-06-27 14:56:37のUnknown」さんが発端となるコメントで示したリンク先から「ああ」さんが引用したもの)

 そもそもこの「趙氏」(どなたか存じ上げませんが)の認識に誤りがあるのではないでしょうか?歴史問題と台湾問題を原則とするのは胡錦涛に限らず、日中国交樹立以来代々の中共指導者は皆そうだった筈です。

 歴史問題は御注進メディアの活躍もあり言わずもがなですが、台湾問題についても、これまで日本が手を出さなかったから揉め事にはならなかっただけでしょう。台湾が絡めば中共はその都度すぐ介入してきました。光華寮問題然り、李登輝氏訪日(前々回の病気治療)然りです。対日強硬派であろうとなかろうと、この「二原則」は中共にとって絶対に譲れないものでしょう。ですからこれを以て、

 >彼(胡錦涛)はもともと対日融和派なのだという見方を一蹴する。

 ……と断じるのは無理があると思います。また以前のレスにも書きましたが、胡錦涛を対日強硬派と位置付けてしまうと、以下のことについて説明がつかなくなります。

 ●胡錦涛の御用新聞である『中国青年報』が常に行き過ぎた反日への火消し役になっていたこと。
 ●昨秋の胡錦涛政権スタート当初から日中首脳会談までは逆に反日言論に強い統制が加えられていたこと。
 ●胡錦涛の対日外交が現実路線という点で総書記就任以来ブレていなかったこと。

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 特に江沢民時代末期(江沢民が党中央軍事委主席で胡錦涛が総書記)から今年5月半ばまでにおける『中国青年報』の一貫した火消し役ぶりは、対外強硬派のそれとは到底思えません。

 また単なる偶然かも知れませんが、江沢民引退(辞表提出=昨年8月末)とほぼ同時に大手反日サイト複数の完全閉鎖や謹慎処分(論壇の一時閉鎖)が行われていますし、9月半ば以降はマスコミ・ネット世論を問わず反日言論・報道に強い規制がかかりました。

 反日言論・報道への統制が行われていることは当時、新聞弁公室主任がそれを明言していましたね。中国国内メディアでは「靖国」がNGワードになったりもしました。このあたりは当ブログがリアルタイムで跡づけていますので宜しければ御参照下さい。対日強硬派なら反日言論統制はもちろん、今年3~4月の反日騒動で火消し役を演じる必要もなかったと思います。

 以前のレスにも書いたように、私は胡錦涛を対中融和派とはみていませんが、対日強硬派という程のものでもないと考えています。「現実路線」というのは対日外交についてのもので、必要がなければ歴史問題を殊更に言い立てることなく、胡錦涛なりの未来志向で現実的にひとつひとつの案件を処理していこうという姿勢のことです。ところが昨年後半から日本の腰が強くなってしまったため、胡錦涛の計算が狂ってしまいました。以前のレスにも書きましたが、

 ●東シナ海ガス田紛争
 ●ODA打ち切り論
 ●李登輝氏訪日
 ●1月に死去した趙紫陽氏に対する事蹟評価の問題
 ●日本による尖閣灯台の国有化
 ●日米2プラス2

 ……といった一連の出来事への対応について、何やら押されているような、受けに回っている一方のような印象を周囲に与えてしまい、胡錦涛の手法への疑問や批判が増え、一方で以前の支持層と疎遠になったりしたのだろうと私は考えています。

 そういう批判勢力、あるいは利害対立のある勢力の中で、今春の反日騒動を奇貨として反日気運を煽ることで胡錦涛に揺さぶりをかけた一派がありましたが、それに対しても胡錦涛はなお火消し役(ほどよい反日志向)に徹したのです。当時の資料を振り返れば明らかですが、火消し役は反日活動がデモに発展する以前からのものでした。これが対日強硬派のすることでしょうか?

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 じゃあ対日強硬派はどんなだ、と言われても、自民党の派閥のように明らかになっている訳ではないので憶測にならざるを得ないのですが、私のイメージでは昨秋に「国家統一促進法」の草案をまとめた連中……たぶん党中央台湾事務弁公室と人民解放軍の一部将官あたりが実行部隊の核になっているかと推測します。純粋な対日強硬派の最大の関心事は、実は台湾併呑にあるものと愚考しています。ただそれに取り巻き組や胡錦涛サイドと利害対立のある勢力(例えば地方の指導者)などがわらわらとくっついており、さらに後ろ盾を務める大物が控えていることで、対日強硬論を掲げる「抵抗勢力」を構成しているのでしょうが。

 党中央台湾事務弁公室が江沢民派に牛耳られていたことは親中紙『香港文匯報』が指摘していますし、党の方針に異論を持つ勢力が軍内部に存在していることは『解放軍報』の署名論評でしばしば論じられています(一例として2004年8月1日付社説)。この「国家統一促進法」が米国の反応や党内の意見調整によって「反国家分裂法」へとトーンダウンされたことは御存知の通りです。

 対日融和派ではないけれど、胡錦涛はそこまで強硬派でもなく、対日外交は上述したような現実路線、というのが私の見方です。……正確には「本来の胡錦涛は」と言うべきかも知れませんね。外交面に限っていえば、少なくとも昨年末の李登輝氏訪日の手前あたりまでは、総書記就任以来一貫したスタイルの「胡錦涛」でした。

 ただ外交には相手があることですし、現に日本が以前とは態度を変えてきています。また味方に批判勢力を抱えている上に政争を仕掛けられたりもしています。肩書は最高指導者(党軍事委主席+党総書記+国家主席)なのに、主導権を握って思い通りに振る舞うことがなかなかできない、というのが胡錦涛の現状でしょう。

 では現時点では如何に、といえば、他の面はともかく、少なくとも対日外交において胡錦涛はイニシアチブを他者(他の政治勢力、たぶん対日強硬派を主とする一派)に奪われているようだ、というのが私の見方です。中国国内メディアの動きから察するに、5月半ばにターニングポイントがあったように思います。


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 以上です。長文ですみません。

 私は「ああ」さんの御意見も伺いましたし、私の見解は上の通りですから、もうこのくらいで宜しいかと思います。本来のHNを名乗らなかったり今回は一人二役だったりと色々大変でしょうから、「ああ」さんも後は御自分のブログで勝手にやって下さい。

 私は仕事と生活を背負う身ですから頂いたコメントの全てにレスをつけることは難しいのですが、時間が許す限りは、馬鹿なりにあれこれ考えてレスをつけているつもりです。ただ、揶揄や嫌味な一言だけ、といったコメント(1度ではないですね)は不愉快ですし付き合いかねます。もう再三申し上げていますが、あとは放置プレイということで。ええ、私を放置するということです。私も放置されることに徹しますので、構わないで下さい。


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 前回の記事からリンクを張った「悪魔の錬金術」(2004/12/19)という半年前のエントリーで書きましたが、開発の名の下に行われる強制収用によって代々耕してきたであろう田畑から引き剥がされ、流民同様の境涯に身を墜とす農民が中国では後を絶ちません。それで「失地農民」という言葉が生まれ、昨年の流行語ランキングにも入ったほどです。

 立ち退きに当たっては地元政府から補償金が支給されますが、農民の手に渡るまでに途中で役人共に少しずつ着服されたり、あるいは地元党幹部と開発業者が結託して、土地評価を不当に低くして補償額を抑えたり(もちろん党幹部には開発業者から袖の下が)。とにかく追い出される農民は以前の生活水準を維持できない雀の涙ほどの金額しか手にできないようです。

 耕地から引き剥がされて新しい移転先を与えられても、農業を続けるにも痩せた土地だったりします。さりとて補償額が少ないから転業資金にもならない。そこでやむなく日雇い労働などに従事し、その日暮らしの生活になってしまう、というケースが大半のようです。「失地農民」という言葉は単に耕地を失っただけでなく、そういう流民同然の生活に墜ちてしまう悲惨さをも含んだニュアンスだろうと私は理解しています。

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 流民同然の生活に墜ちてしまうのが明白なだけに、農民は抵抗します。昨年の四川省・漢源暴動がその好例ですが、似たような事件は他の場所でも発生しています(その一例:広東省掲陽市)。そりゃ誰だって流民同然にはなりたくないですから。最近河北省・定州で発生した暴徒数百名による農民襲撃事件もまた然りです。そもそもの原因は補償額を不満とする農民が立ち退きを拒み、それを当局・デベロッパー側が力づくで排除しようとしたものでしょう。

 この定州事件で地元の党(党委書記)と政府のトップ(市長)がそれぞれ更迭されましたが、一体何の責任を負ったのかは不明ですね。事件そのもの、つまり騒乱発生の責を負わされたのか、用地収用交渉の進捗が遅れていたためなのか、あるいは開発業者と結託して暴徒を使ったことが悪かったのか、その一部始終をビデオに撮られてその映像を世界中に流されたのがマズかったのか。

 こういう農村でのトラブルに関する報道を読んでいて感じるのは、農民側の「官」に対する抜きがたい不信感です(それから「官」の横暴)。そもそも中国共産党の背後には農村・農民による強力なバックアップがあり、それゆえ中華人民共和国を成立させることもできたのでしょうが、それから半世紀経ってみたら、「官」と「民」の関係は、いわば革命前の元の鞘に収まってしまった観があります。

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 当然のことながら、「官vs民」という対立軸は農村のみに存在するものではありません。安徽省に池州という街があるそうですが、一昨日(6月26日)の午後から夜にかけて、この池州市で些細なことから暴動が発生しました。

 ●地元紙『池州日報』の記事
 http://www.czrb.com/news/jryw/cb0627a1.htm

「ごく普通の事故が殴打、破壊、強奪、放火を誘発」

 とこの記事のサブタイトルにあるのですが、確かに発端は他愛のない事故でした。乗用車(トヨタ製)が歩行者を引っかけて怪我を負わせたというのが発端です。ここからは中国お決まりの口論です。被害者も口論するに差し支えない程度の傷だったのでしょう。

 こういう場合、かの国ではデフォなのですが、ドライバーは謝りません。もちろん通行人も謝らない。言い合いが熱を帯びてきたところで野次馬がわらわらと集まってきます。集まったのを見て「ええい面倒だ」ということでしょうか、車の同乗者が出てきて被害者を殴り、さらに怪我させてしまったのです。これで取り巻きはこぞって被害者の味方となり、110番する者も出てきました。

 これは私の想像ですが、加害者側が「斬り捨て御免」とばかりに被害者をタコ殴りする様子から、真偽はどうあれ、野次馬の市民たちは「こいつら役人だな」と感じ、義憤したのではないでしょうか。義憤した証拠になるかどうかはわかりませんが、ほどなく現場に到着した警官が加害者を派出所(警察署)へと連れて行く際(被害者は病院へ搬送)、野次馬たちもゾロゾロとそれに続き、群衆が警察署を取り巻く形になったのです。

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 不穏な空気に池州市政府の上層部(市長?)が出てきて、現場を去るよう群衆に呼びかけたのですが、全く効果なし。そして18時ごろになって群衆の一部が加害者の乗用車(トヨタ製)を壊し始め、原形を留めぬところまで破壊した上に仰向けに車体をひっくり返したそうです(奥田クン見てるかなw)。トヨタだから壊されたのかどうかはわかりませんけど(笑)。

 18時50分には野次馬の数が1万人を超え、一部の「不法分子」が破壊された車に放火し、さらにそこに爆竹を投げ込む者も出て大騒ぎとなりました。随所から立ちのぼる白煙と火薬のにおい。これが警察署の前で起きているのですからエラい話です(笑)。武装警察(武警)が出動したものの、群衆の数が多すぎて手の出しようがなかったとのこと。

 そのうちに「不法分子」たちは警察署前に駐車してあった警察車両を手で押していって警察署の玄関に突っ込ませ、この車にも放火。燃えたとみるや再び爆竹を投げ入れてパパパパーンてなもんです。手をつかねている武警は群衆からレンガを投げられて負傷者6名。火事騒ぎに駆け付けた消防車も消火栓を破壊されたうえ、人の波に囲まれて現場から10m以上遠ざけられたそうです。

 まだ終わりません。19時25分には警察署の電源が切られ、「不法分子」らが警察署内にも爆竹を投げ込み、乱入して物を壊したり放火を試みたりと大騒ぎ。このころ、屋外では新たに警察車両2台が放火されています。ここまで来ればもう正真正銘の都市暴動でしょう。参加者数も万単位、重慶市万州区で昨年発生した暴動に遜色ありません。

 「不法分子」たちはさらに近くのスーパーに狙いを定め、玄関をぶち破って店内に侵入。略奪など狼藉の限りを尽し、商品は全て持ち去られたとのこと。その後、野次馬の数が徐々に減る一方、増援を受けた警察側(合計700名)の反撃態勢がようやく整ったことで23時すぎに事態は収拾されました。事件の重大さに安徽省長まで腰を上げたそうですが、逮捕者はわずか数名と手際の悪いこと悪いこと(※1)。

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「今年は都市暴動に注目」

 などと私は当ブログでしばしば指摘していますが、今回はそのセオリー通りの展開をたどったケースだと思います。些細なトラブルから「官」に対する民衆の不信感が著しく刺激され、爆発してしまうというものです。

 もちろんその背景には「官」への不信感だけではなく、思いきり鬱憤晴らしをしたくなるような、社会に広がる一種の閉塞感のようなものがあるでしょう。物価問題、失業問題、拡大する一方の貧富の格差、そして蔓延する党幹部の汚職……。仮に当時、現場の野次馬の一人に北京五輪の話を振ったとしたら、

「北京五輪?タマーダそれで俺たちの暮らしがよくなるとでも思うか?糞くらえだ」
(※2)

 ぐらいの答が返ってきてもおかしくはないのではないか、と思うのです。

 それから、池州市ではちょっと前に同市公安局・交通警察支隊の副支隊長、つまり前線部隊を束ねる警察幹部の一人ですが、これが収賄で逮捕され、6月12日に同市中級人民法院で判決が出ています。

 http://news.xinhuanet.com/legal/2005-06/12/content_3074967.htm

 今回は場所も場所(警察署)ですから、このことが「官」に対する庶民の不信感を大きく増幅させていた可能性もあるでしょう。

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 最後に「失地農民」の都市バージョンを紹介しておきます。これも悲惨なケースです。舞台は重慶市のとある共同住宅、住民たちが20年ほど前に手を入れて住み古してきたものなのですが、土地所有権のある重慶市工貿客運公司が、再開発用地とするため立ち退くよう住民に通告したそうです。補償金は何とゼロ。

「だって所有権は重慶市工貿客運公司にあるんだから」
(そこへ勝手に住み着いた連中に金を払う必要はない)

 という理屈なのですが、ところが住民たちはみんなちゃんと土地使用証を持っていて、居住は合法的であることが判明しました。もちろん退去拒否。

 こうなると若い衆の出番です。6月25日の午前8時、約20名の暴徒が乱入して家財道具はもとより住宅そのものを大破状態にまで破壊し、一方で住民に暴力を振るうといった行為に出ました。

 北京でも最近(6月16日)似たようなケースがありましたが(※3)、今回は写真多数の添えられた投稿記事が反体制系ニュースサイト「大紀元」に寄せられています。中国語版ですが写真だけ見ても状況を察することができるかと思います。

 http://www.epochtimes.com/gb/5/6/27/n967439.htm
 http://www.epochtimes.com/gb/5/6/27/n967461.htm


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 【※1】よくぞここまで赤裸々に報じたものだと『池州日報』の記者を褒めてあげたいです。

 【※2】タマーダ=「他媽的」。罵倒語ですがこの場合は憤懣やる方なし、の表現として使われています。

 【※3】香港文匯報(2005/06/18)
     http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0506180024&cat=002CH


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 【追記】いま今朝(6月28日)の香港各紙に目を通してきたところです。安徽省池州市の暴動、上の記事は地元紙『池州日報』に拠ったものですが、香港各紙の報道によると、地元では別バージョンの話が広まっているようです。

 それによると被害者は自転車に乗っていた中学生で、加害者は私立病院の院長。要するに金持ちです。で、車の運転手と中学生との間で口論(治療費を出す出さないとか、いくらにするかとか)しているうちに、同乗していたガードマン複数が出てきて中学生を袋叩きに。それで近くにいたバイクタクシーのお兄さん方が「おいそれはちょっと酷すぎるんじゃないか」と割って入ったところ、車内にいた院長が「やっちまえ。どうせ殺したところで30万元だ」と一言。

 これを聞いたガードマンが懐からナイフを取り出し切り付けるなどして負傷者が出て、野次馬の怒りに火がついたとのこと。または途中から仲裁に入った警官が院長側の肩を持ったことが民衆を憤慨させたとも言われています。その後民衆は警察署を取り囲みましたが、18時ごろ「中学生が運ばれた先の病院で死亡した」との噂が流れ(真偽は不明)、一気呵成に暴動へと発展したとのこと。

 富の偏在……貧富の差がはっきりと拡大していくなか、「どうせ殺したところで30万元だ」という言葉のように何でもカネで片付けようとする金持ちの風潮、それにカネ次第でどっちにも転ぶ警官、といった日常を市民は見慣れており、こうした背景も暴動への後押しとなったようです。それだけに社会状況をいみじくも反映してしまった象徴的な事件、といえるように思います。警察側はやられっ放しですが、現場の地形などがわからないので何とも言えません。ただ頭に血が上った1万人を超える熱い群衆相手に、数百単位の武装警察では力不足は否めないと思います。実弾を使うなら別ですけど。(2005/06/28/10:12)



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 不謹慎な話をしますので嫌な方はスルーして下さい。

 福建省とか広東省が水害で大変のようですね。広東省などは数カ月前まで干害がどうのこうのと言っていたのに、雨乞いのし過ぎでしょうか。今度は雨不利杉。

 南部では洪水なんですけど江蘇省あたりでは相変わらず水不足。北京でも猛暑の影響で1日当たりの水消費量が新記録達成とか。全く中国は広いものですねえ。

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 毎日中国国内メディアをチェックしていますと、一種の職業病(私はアマですけど)といいますか、死者数に麻痺してくるんですよね。あくまでも中国に限ってなんですけど。

 炭坑事故とか交通事故で死者2桁は当たり前、2桁行かなかったら「何だいショボい事故じゃねえか」くらいに思えてくるのです。だって私が記事を漁るごく狭い範囲でみても、犯罪は別として、毎週100人は確実に不慮の事故で死んでいます(実際にはその倍くらいあるでしょう)。麻痺しない方がおかしいくらいです。

 この間も定州で暴徒が農民を襲撃する事件があったでしょう。6死48傷。農民が現場に何人いたかは知りませんが、暴徒1個中隊を投入してこの程度の戦果では、やっぱり支那人は戦争下手すぎ、と思ったりします。武装警察や防暴警察のように、暴動で民衆に防戦しつつの反撃ならわかりますが、黎明の奇襲戦という一方的なシチュでこれですから。

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 今回の水害では死者が500人を超えました。ようやくサマになってきたという感じです。

 純粋な天災ならともかく、どうせ天災+人災でどちらの要因が大きいのかわからないのですから、日本もあまり援助金などはずむ必要はありません。胡錦涛の足元の地べたに百万円くらい投げてやればそれでいいのです。

 高速道路でさえ手抜き工事でひどい路面状態なのですから、万一に備えた堤防や土砂崩れ防止工事などは推して知るべしです。今回は洪水の通報を受けてからの対応が遅くてクビになった地方当局の責任者がいましたが、そういう手落ち(人災)だっていくらでもあるでしょう。ほらこの間の黒龍江省の土石流事件のように、です。

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 でも本当に怖いのは天災か人災かわからぬ水害が引いてからですよね。

 例えば広東省、もう工業廃水などで土壌自体が汚染されていて、畑からとれるのは重金属野菜。毒まがいの農薬を使っているか否か、という以前に土が汚染されていて根っこから毒が摂取されている(だから野菜をいくら洗っても無駄)……てなくらいですから、河川の汚染度は言うまでもありません。工業・生活廃水による珠江デルタ地域の水質汚染は以前から問題になっています。

 その汚染された水が街路に流れ込んで床上浸水状態にもなっているのですから。水害よりその後の方が怖いです。奇病百態、ということも起こりかねません。もっともよほどの規模で患者が出ないと報道されないでしょうけど。

 ま、今まで(今でも)GDP信仰で上から下まで効率無視の量的拡大に狂奔してきた訳ですから、災害に備えた事業など後回しにされてきたのでしょう。

 それより農地を収用して開発区を作り、外資をどんどん導入しろと。そこに住んでいた農民には雀の涙ほどの補償金(もちろん農民の手に渡るまでにあちこちで着服されています)を渡してどこにでも勝手に行けと。あるいは荒れた土地を指定してそこへ移転しろと。もちろんその過程では地元党幹部の懐が大いに暖まるような不正がまかり通っています()。

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 昔の日本だって高度成長の陰に公害問題が存在していましたけど、並べて論じる訳にはいかないでしょう。現代には現代の経済発展に関する世界基準というものがあります。30年前40年前と同じことをやったら許されないのです。

 自業自得ですね。「二百年に一度の豪雨」などと中国国内メディアでは報じられていますが、それは責任逃れというものです。天意かくの如し。無理に無理を重ねた歪んだ成長モデルはこういうところでボロが出ます。抗日なんたら60周年記念とはいえ、さすがに水害まで日本軍の仕業にはできないでしょうから(笑)、せいぜい善後策に頭を痛めて下さい。

 ……ああ考える必要はありませんでしたね。地元責任者のクビをすげ替えて、温家宝首相がウソ泣きしてみせればそれでいいのです。それが中共政権がいうところの「以民為本」、いわゆる「民の為の政治」ですから。


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 【余談】前回書いた陳情者(上訪人士)を警察が片っ端からとっ捕まえてどんどん故郷に送還する、これも「以民為本」の一環なのでしょう。奥が深すぎて私には理解できませんけど(笑)。前回のニュースの真偽はともかく、そういう陳情者狩り(法的根拠なし)はごく日常的に行われています。



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 またまた……というより今度は本当にニュースの丸投げになってしまいますが。

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 ●農民1000人、外国公館へ陳情 腐敗に不満、当局が拘束(Sankei Web2005/06/23 20:58)
 http://www.sankei.co.jp/news/050623/kok091.htm

 中国共産党や官僚の腐敗反対などを訴える農民や労働者が18日から23日にかけ、北京市内の国連機関の施設や米国大使館、フランス大使館へ「陳情」のため相次いで押しかけ、約1000人が公安当局に拘束されたことが分かった。消息筋が明らかにした。

 押しかけたのは、腐敗や農地の強制収用への不満、救済措置を中央政府に直訴するため、北京に滞在している地方農民ら。外国機関を対象としたのは、対策を講じない「中国指導部へのいら立ちの表れ」(消息筋)とみられ、胡錦濤指導部への失望感の高まりを示した形だ。

 米大使館は「示威行為があったことを認識している」と一部事実関係を認めた。陳情者らは数十人の集団に分かれて両大使館などを訪れたが、待ち構えていた北京と地方の公安当局に次々と拘束され、警察車両で連れ去られたという。

 消息筋によると、農民らは、それぞれ陳情内容を記した文書を持参したが、スローガンや垂れ幕などは掲げずデモの形態は取らなかった。

 中国政府は5月1日に改正「陳情条例」を施行。陳情は代表者5人以下で行うことや、国家機関の建物を取り囲む行為などを禁止事項に規定、陳情活動に対する規制を強めている。陳情活動のため北京に滞在する吉林省出身の男性は「反日デモを黙認しておきながら、当局がわれわれを拘束するのは理屈に合わない」と不満を述べた。(共同)

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 ……以上、『産経新聞』が報じていますが、記事文末にある通り配信された共同電をそのまま掲載したようです。その共同通信の記事はこちら。

 ●農民1000人、外国公館へ陳情 腐敗に不満、当局が拘束(共同通信2005/06/23/20:55)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=HKK&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2005062301003901

 これがVer. 1.0なのか、記事は第2段落(……高まりを示した形だ。)までしかありません。直後に3段落分を追加した新バージョン(上の記事)が流れ、『産経新聞』はそちらを使ったのだと思います。

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 いずれにせよ、事実なら驚くべきニュースです。

 「陳情」というのは中国語でいう
「上訪」のことですね。陳情者は「上訪人士」、その多くは農民です。地元の揉め事や何らかの窮状(地元党幹部の汚職など)を改善してもらいたくて、でも地元ではラチが開かないので、はるばる北京までやってきます。

 もちろん「上訪」は合法的な陳情活動で、北京の中央政府をはじめ省政府、県政府といった各地方にも担当窓口があります。人数は北京(上京陳情者)だけで年間延べ20万人にものぼるといわれています(記憶モード)。

 ただ当局側はこうした庶民の陳情活動をうざったく感じているようで、窓口に出向く「上訪」ではなく、書類を担当部門に送る形の陳情である
「信訪」を主流にしようとしています。上の記事の中で、「国家機関の建物を取り囲む行為などを禁止事項に規定」とのくだりがありますから、実際にそういう事態も発生しているのでしょう。

 でも「信訪」で解決されるならコストもリスクも大きい「上訪」を選んだりはしないでしょう。で、「上訪人士」として上京してみたけれど、「北京の窓口でも駄目だ」ということになって今回は一大飛躍……というより切羽詰まったのでしょうが、米国やフランスの大使館を訪れて個々の陳情資料を渡そうとした、というものです。

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 いずれにせよ、事実なら驚くべきニュースです。
ところがこの情報、確度が問題なのです。

 現時点まででこれを報じているのは共同通信のみ。今日付(2005/06/24)の香港各紙や台湾方面、それに反体制系ニュースサイトも回ってみたのですが、報じていたのは香港紙『太陽報』のみ。ただしこれも共同電の引用で、しかも初期バージョンをより簡素化したものです。

 ひと晩寝かせてみたものの、外電や香港・台湾マスコミさらに反体制系サイトにも
目下のところ後追いする様子がみられません。という訳で、ありそうな話だとは思うのですが、私はその信憑性に自信が持てないままであることを申し上げておきます。

 ……と半信半疑のままこの話題を続けることにやや気が引けますが、やはり面白いネタですので(笑)。ありそうな話だとは思うのです。今回は外国公館を目指したという点が新しいですし、だからこそニュースになったのでしょう。

 ただこの「いっそ米国大使館を狙ってみよう」というアイデアは、農民主体と思われる「上訪人士」から出たものでしょうか。
人権活動家あたりが耳打ちしたのではないかと思います。農民をバカにする訳ではありませんが、陳情一筋に思い詰めて上京してきた連中に、そこまで頭を回す余裕はないのではないかと。

 あるいは、党上層部に権力闘争の気配があり、奪権を狙う一派が「上訪人士」を使ってひと騒ぎ起こさせることで
胡錦涛政権に揺さぶりをかけてみた……という筋立てなら香港の政論誌あたりが書きそうでもあります。

 ――――

 信憑性を横に置いてさらに続けますと、この記事はどこまでが「消息筋」でどの部分が共同通信の独自取材なのか明確ではありません。ということは全部消息筋情報なのかな、と考えるしかありません。

 それにしても「約1000人」というのも大層な数字です。
「数十人の集団に分かれて」といっても、数十人がまとまって歩けば目立ちますし、「約1000人」であればそれが数十の集団ということになります。情報が事前に洩れたのか追跡中に行き先を偵知したのか、あるいは最初から当局のペテンだったのかはわかりませんが、大使館に着くか着かないかのところで治安当局が「いらっしゃーい」と待ち伏せしていて、

「次々と拘束され、警察車両で連れ去られた」

 のだと思います。陳情者の地元の公安担当者まで待っていた訳ですから、まさに飛んで火にいる……という展開です。

「米大使館は『示威行為があったことを認識している』と一部事実関係を認めた。」

 とのことですが、
「そういやウチの外で何か騒いでたみたいだよ」という程度のものでしょう。ともかく「上訪人士」による新しい試みは失敗したということです。

「陳情活動のため北京に滞在する吉林省出身の男性は『反日デモを黙認しておきながら、当局がわれわれを拘束するのは理屈に合わない』と不満を述べた」

 ……なんてあなた、いやしくも
中共一党独裁政権の奴隷なんですから、それは「寝言は寝て言え」てなもんですよ。そんなことは日米英仏とか台湾といった国で主張して下さい。いま言うとすれば「われわれがこんな国に生まれたのは理屈に合わない」といったところでしょうか。

 ――――

 ちなみに、

「胡錦濤指導部への失望感の高まりを示した形だ」

 という形でまとめたのは、さすがは共同通信という印象です。
「失望感の高まり」なんて生易しいものではないでしょう。政府(陳情窓口)を見限ったからこその行動ではないでしょうか。中国社会の一風景として、中共政権を「見限る人々が現れた」(海外メディアに捉えられた)ということは、見逃せない事実だと思います。

 ……ああそうでした。このニュースが事実だったら、なんですけど。北京在住の方、目撃談をお待ちしております。


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 【追記】反体制系ニュースサイト「大紀元」でも報じられていますが、『産経新聞』の記事をそのまま使っていますので、これまた共同通信の引用のみです。(2005/06/24/11:37)



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 いつも仕事にかまけてブログ更新が滞ってしまい申し訳ありません(最近謝ってばかりですねorz)。私事ながら仕事上の拡声器を使う必要に迫られまして苦慮しているところです。随分長い間中国語を使っていますが、愚鈍な私にとってはいつまでたっても外国語。このブログを始めてしみじみと思ったのですが、日本語だと本当に思ったまま書けるので気楽でいいです。

 それはさておき、たまにはニュースを丸投げしてもいいですか?これは是非ふれておかなければいけない出来事ですし、さほど説明を要する内容でもないと思うのです。感想を言えば、とうとう出たこの一言、というところでしょうか。

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 ●靖国参拝、日中・日韓関係の「核心でない」…首相(読売新聞2005/06/22/13:49)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050622i105.htm

 ●小泉首相:靖国参拝「日韓・日中関係の核心とは思わず」(毎日新聞2005/06/22/14:08)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050622k0000e010056000c.html

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「日中、日韓関係で私の靖国神社参拝が核心だとは思っていない。日中、日韓ともに未来志向で過去の歴史を直視しながら、いかに発展させていくかが核心だ」
(読売新聞)

 というのは、先の日韓首脳会談で盧武鉉大統領が靖国問題を
「日韓関係の核心だ」としたことに対する返歌のようなものです。むろん中国にも鉾先は向けられています。そして、

「韓国や中国の言う通りに全部しろ、という考えを私はとっていない。日本には日本の考え方がある。違いを認めて友好増進を図ることが国と国として大切だ」
(読売新聞)

 ……と、このコメントです。ごく当たり前の内容なのです。が、日中国交樹立以降、かくも明確な言辞を示した首相がいたでしょうか。その意味でこれは、
歴史的発言だと思います。

 私は長屋の熊公みたいなものですから、溜飲を下げたといいますか、とりあえず祝杯といきたいくらいスーッとしたのですが、仕事中なのでアルコールは控えて、さりとて海軍コーヒーを飲みに行く時間的余裕もないので、日本海軍伝統の三つ矢サイダーにしておきます。

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 ●「日本側の努力必要」 加藤氏、中国要人と会談(産経web)
 http://www.sankei.co.jp/news/050620/sei080.htm

 一方で加藤紘一や野田聖子ら親中派を自任する連中が北京詣でを行っているようですが、今回の小泉発言はそれらを一瞬でセピア色にしてしまう(笑)ものだったと思います。河野洋平が首相経験者らを動員して説得に当たらせ、一方では反日署名論評連発の国内メディアや外交部定例会見で小泉包囲網ともいうべき猛攻を繰り返してきた中共政権ですが、小泉発言は、

「韓国や中国の言う通りに全部しろ、という考えを私はとっていない。日本には日本の考え方がある」

 ……と、それらに屈することは断じてない、と真っ向から旗幟鮮明なる態度を示したものです。しかも中国・韓国を名指しですから(笑)。

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 名指しされた中国も反応は早かったですねえ。上が香港、下が中国国内(新華網)に流れた速報です。

 ●小泉首相が中韓には絶対屈服しないと宣言(明報2005/06/22/15:15)
 http://hk.news.yahoo.com/050622/12/1drv2.html

 ●小泉首相、靖国参拝停止に圧力をかける中韓には屈服せずと発言(中新網2005/06/22/15:39)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-06/22/content_3120221.htm

 ――――

 中国としては、最近は台湾を使った尖閣問題などでチマチマと点数を稼いできました。これは台湾国内の反日感情を高める上でも妙策だったように思います(敵ながら天晴れ)。ただ、今回の小泉発言を受けて、改めて戦略を練り直す必要に迫られるでしょう。党上層部における勢力争いがあるとすれば、胡錦涛の立場がいよいよ悪くなりそうです。

 もし今後の対日外交が反胡錦涛派=軍部主導で動くなら、硬質なリアクションもあるでしょう。いままで抑えていた香港の尖閣防衛組織にゴーサインを出して、小型船を使った現地上陸を試みさせる。その際に巡視艇(海軍ではない)をつかず離れずの間合いで遊弋させたり、日本の主張する領空範囲のギリギリ外側まで軍用機を飛ばす、なんて示威(自慰?)行為があるかも知れません。

 あとは反日デモですね。「愛国者同盟網」など大手反日サイトの謹慎を解いた効用が示される訳です。まずは
「七・七」(盧溝橋事件)で「なんちゃってデモ」(動員数50名前後のお行儀のいいデモ)。あるいは公式なイベントを現地盧溝橋で大々的に執り行うかも知れませんから、「なんちゃってデモ」は日本大使館に向けて行われる可能性もあります。そのあともし小泉首相による「八・一五参拝」があれば、本格的な反日デモ再燃(もちろん対外強硬派が煽ることによるもの)の目もあるでしょう。

 ひるがえって言えば、安保理問題でも意思表示してしまっていますし、経済面でのアクションも起こせないとなると、そのくらいしか選択肢はないように思うのですが。ええ、つまるところ伝統の「人海戦術」です(笑)。

 でもこれ以上「反日」を煽ってしまうと、別な方向(社会問題)から火の手が上がりそうな気もします。いやすでに散発的にパチパチと火花を散らしている訳ですが。その点についていえば「時間との競争」(時限爆弾)であることに少なくとも胡錦涛は気付いているようですが、対外強硬派はどう認識しているのか、気になります。

 ――――

 ともあれ、今回の歴史的発言に対し、中国からどんなボールが投げ返されてくるでしょうか。とりあえず新華社や人民日報あたりではいま現在、署名論評をせっせと書いている記者がいることでしょう。最近の反日記事はネタ切れで勢いが感じられなくなっていただけに、一発奮起に期待です。どうか久々の怪電波をよろしく。……怪電波宜候、との応答を心待ちにしております(笑)。



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 不穏です。……という言い回しは前々回使ってしまいましたが、

「一触即発」

 という程でもなさそうなんです。ともあれ険悪な空気が現場を包みつつあることは事実のようですが。

 ――――

 前回の冒頭で
官民衝突に触れました。確認できるだけで暴動めいたものが3件(河北省定州市、広東省東莞市、広西チワン族自治区南寧市)発生し、このうち定州と東莞で死者が出ました。特に定州の一件は『ワシントン・ポスト』(電子版)を通じて生々しい現場映像が全世界に流れましたから、御存知の方も多いかと思います。

 バレちゃあしょうがねーなー、ということで定州市の党・政府部門のトップ(党委員会書記と市長)が早速更迭されましたね。バレていなかったらどうだったことか。中国肺炎(SARS)のときもそうでしたが、どうやら
中共政権が唱える「庶民の為の政治」というのは、大規模な被害が出てそれが暴かれたら地元責任者のクビを飛ばす、ということのようです(笑)。

 それにしても棍棒を振り回すは銃声が鳴り響くわで、画像はやや不鮮明ながら暴徒の朝駆けに遭って混乱する現地の空気をそのまま伝える物凄い映像でした。撮影者も負傷したそうですが、まさか農民がハンディカムなんかを持っている訳じゃないでしょう。例によって「官」による農地収用(発電所関連)、でも見返りの補償金は雀の涙(農民側の言い分)というお決まりのパターンで、以前から揉めていた問題のようです。

 河北省は北京市に隣接していますから、海外プレスの目が届きやすかったのか、それとも法輪功とか民主化活動家、あるいは人権団体の地下ネットワークが捉えた情報なのか。そういえば昨年秋に河南省の田舎で起きた漢族と回族の武力衝突、あれも米メディアが素早く捉えていましたよね。おかげで外交部が会見を開かなければならなくなった。もちろん中国国内には内緒ですけど。

 ――――

 バレちゃあしょうがねーなー、ということで中国国内メディアも写真付きで報じています。もっとも国営通信社・新華社のウェブサイト「新華網」では目立たない位置に置かれています。参考までに。

 http://www.xinhuanet.com/chinanews/2005-06/14/content_4438144.htm
 http://www.xinhuanet.com/chinanews/2005-06/15/content_4440210.htm
 http://www.xinhuanet.com/chinanews/2005-06/15/content_4440213.htm
 http://www.xinhuanet.com/chinanews/2005-06/16/content_4454238.htm

 忙しかったせいもあって、私はこの事件をリアルタイムで追い切れなかったのですが、掲載写真からすると、北京の地元紙『新京報』が活躍したようですね。

 しかし迷彩服で猟銃まで所持した
「私兵」投入とは驚きです。これじゃまるで軍閥ではないですか。中国社会も来るところまで来てしまっていますねえ。まあ、これも「よくある話」のひとつに過ぎなくて、運悪くバレちまった、ということなんでしょうけど。

 例えば村のボス(もちろん党幹部兼任)が気に入らない村民を黙らせるため、金で雇った襲撃部隊に相手の自宅を襲わせ、鉄パイプで殴りまくった挙げ句被害者とその妻をそれぞれ匕首でズブリ、という事件も起きています。

 http://news.xinhuanet.com/legal/2005-06/16/content_3092815.htm

 ――――

 まあ、以上は余談です。再び前回の冒頭に話を戻しますと、3件の暴動めいた騒ぎのほか、

「それに騒動に発展しかねない動きが他に2件燻っています。いずれも『官』の不正不義に『民』の側が反発したようなニオイです。」

 という燻る2件のうちのひとつについて速報しておきます。今朝の香港紙『蘋果日報』(2005/06/17)の報道に拠っています。

 ――――

 舞台は黒龍江省寧安市の沙蘭鎮。例の「200年に1度の大洪水」による土石流が6月10日に発生、児童(小学生)を中心に多数の死者が出たところです。はや初七日を迎えました。

 問題はこの「多数の死者」なんですが、「新華網」の報道によると昨日の段階で
103人ということになっています。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-06/16/content_3094164.htm

 ところが地元住民はそれを信じていない。
200名はいる筈だということで遺体が安置されている寧安市立斎場に押し掛けました。が、入れてもらえないのです。完全武装したうえ盾を手にした多数の武装警察が斎場の門前を固めていて、それに遺族など群衆が対峙しているという状況です。遺族の入場を武力で拒むとは、何とも異様ではありませんか。

 遺族を遺体安置所に入れないということから、当局が死者数を少なく発表しているという疑惑が流れています。当然でしょう。それに死亡が確認されていなくても、子供が帰って来ていない家庭があるでしょう。200名も荒唐無稽な作り話と一笑に付すことはできません。

 という訳で、一触即発というほどではないにせよ、険悪な空気であることは確かです。

 ――――

 15日にまず16名の遺体が荼毘に付されたのですが、このときも当局は早朝4時から斎場への道路を警官によって封鎖。その遺族といえども、火葬に関する協議書にサインしなければ中には入れてもらえませんでした。

 この協議書というのがポイントなのですが、遺族は事故発生後、

 ●派出所及び地元政府関係者の責任を明らかにせよ。
 ●遺族に対する補償が薄すぎる(15万元)ため増額せよ。

 との要求を出しているのです。

「もし関係者に手抜かりがなければ、上流の洪水情報が沙蘭鎮に達してから実際に土石流に見舞われるまでに、40分以上の時間があった筈だ。その間に児童たちを避難させることは絶対に可能だった」

 というのが遺族側の言い分です。手落ちが疑われるような平素の怠慢な勤務ぶりを、地元が周知しているのかも知れません。が、沙蘭鎮救済報道官である王同・牡丹江市党委員会秘書長はこれに対し、

 ●関係者に手落ちがなかったかどうかは当局が調査に着手しているが、現在はまだ発表する段階にない。
 ●15万元という補償額は国内の類似ケースを勘案して定めたもので、増額される可能性はない。

 と、ピシャリ。協議書へのサインはこれを受け入れることに他なりません。命の値段が15万元というのは、例えば炭坑事故死者の遺族には最低でも20万元が支払われています。相場相応の金額かどうかは私にはわかりません。

 で、この「ええい黙れ黙れい」という取りつくシマもない「官」の姿勢に、遺族らは一カ所に集結して道路に座り込み、横断幕やプラカードを掲げたりと不穏です。もっとも「いまサインすれば5000元上積み」という手に軟化してしまった遺族も86名に達したようですが、「死者は200人に達している筈だ」という住民の声は消えません。そして座り込み、斎場の門前は武装警察が固めている。
いずれにせよ、被災地に現出する光景とは到底思えない、というのが私の感想ですが、如何でしょうか。

 ――――

 『読売新聞』(2005/06/17)が中国筋の話として伝えたところでは、「今年4月末、中国の地方メディアは、許可がないかぎり、所在地以外での他地方でのニュース取材を原則として禁止された。」とのことです。

「以前なら、他地域のメディアが被災地に殺到し、現地の情報が大量に速報されたはず。新しい指示が出てから、当局は情報を統制しやすくなった」(消息筋)

 要するに体よくまとめられた新華社の原稿をそのまま使え、ということなのでしょう。その警戒網をかいくぐって、「狗仔隊」(パパラッチ)呼ばわりされる香港紙の記者が果敢に現地に潜入しては遺族に接触するなどして、新華社なら絶対伝えないであろう情報を発信している、ということに私は賛辞を惜しみません。だって発覚すればよくて送還、悪くすれば投獄ですから。かの定州暴動の映像を米国メディアに送った仕事にも頭が下がります。

 あ、定州の一件は「官」が「民」を襲撃した(嫌疑が濃厚)もので、いずれにせよ襲われたのは現地住民ですから、暴動とはいえませんね。どう表現したらいいのでしょう。暴徒乱入でこの騒ぎですから、農民10万人が蜂起し、武装警察(あるいは武装警察の制服をまとった人民解放軍)2コ師団を投入してこれを鎮圧した昨秋の漢源農民暴動(四川省)の現場はどういう状況だったかと思うと、空恐ろしくなります。

 言うまでもないことですが、漢源にせよ今回の定州や東莞や南寧の騒乱、それに水害被災地の険悪な空気は、中国国内メディアが必死にがなり立てている「反日」とはぜーんぜん関係ありません。こういう散発的な、火花を散らす程度の騒ぎで済んでいるから辛うじて社会の安定が保たれているに過ぎないのです。「反日」煽りなんかにかまけてて大丈夫なのかなあと思うのですが、これは余計なお世話でしたね。存分に煽るがよい(笑)。

 ――――

 死人の話ついでに挙げておきますと、香港の親中紙『香港文匯報』(2005/06/17)が北京発の新華社電として伝えたところによれば、今年1-5月における中国の炭坑事故による死者数は早くも2000人を突破して合計2187人、前年同期比9.7%増だそうです。

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0506170014&cat=002CH

 まあ、そういう国であり、社会ですから。それで半世紀以上やってきている訳ですし、これからもその路線で走り続けるしかないという成長モデルで固まってしまっていますから。ええ、無理に無理を重ねて、目指すは「調和社会」(笑)。いや冗談じゃないそうで。

 いずれ破綻が訪れるでしょうけどねえ。



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 ずいぶん間を空けてしまい申し訳ありませんでした。

 どうも中国国内がざわついてきたようですね。まずは
官民衝突。ここ1週間以内で確認できるだけで3件の暴動めいたものが発生してうち2件で死者。それに騒動に発展しかねない動きが他に2件燻っています。いずれも「官」の不正不義に「民」の側が反発したようなニオイです。

 もうひとつ、これは政治的な実にキナ臭いニュースです。

 ●反日サイトが続々再開 中国、歴史問題で圧力か(共同通信2005/06/15)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=HKK&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2005061501003319

 「愛国者同盟網」「反日先鋒」など糞青(自称愛国者の反日教徒)が集うべき反日サイト、4月の反日デモを受けて閉鎖されていたのですが、ここにきて続々と復活しているとのことです。私はIDが削除されずに残っていたらしく、「愛盟」からは活動復活のお知らせを頂きました(笑)。

 まあ珍獣(プロ化した糞青)の代表格・童増が会長を務める「中国民間保釣連合会」はかなり早い時期に復活していましたし、前回お伝えしたように童増会長も際どい発言や怪論を内外のマスコミを通じて発表しています。その内容はもちろん対日強硬論です。

 童増がそれを吐きまくることが許されているというのは、要するに「反日を抑制して現実路線で関係強化を図る」という胡錦涛従来の対日路線が否定され、別の政治勢力(対外強硬派)が主導権を握ったということなのでしょう。

 ――――

 胡錦涛の対日路線、及びその維持のために払った努力については昨年秋あたりに当ブログでも追いかけていたのですが(※1)、李登輝氏訪日(12月)から趙紫陽死去(1月)、それに2月の尖閣灯台国営化と「日米2プラス2」あたりで破綻した、というより内部から突き上げを喰らって圧力をかけられ、その後、路線転換を余儀なくされたような観があります。

 具体的には3~4月の反日騒動、あれは実質的には対外強硬派(火付け役)と胡錦涛派(火消し役)の政争の表現であり、「反日」が全国に広がる勢いをみて両派とも反政府運動(反中共政権)に変化する恐れを感じ、慌てて手打ちを行って総力で火消しに走ったもの、と私はみています。そのときはメディアの動きから胡錦涛優勢がみてとれ、実際に多くの反日サイトが潰されたりしました(火消し役たる胡錦涛派の意に沿う動き)。

 では胡錦涛側は「手打ち」に際してどんな譲歩を行ったかといえば、恐らく半年以来やられっ放しの観すらある対日外交での強硬姿勢を強める、ということではないかと思うのです。

 ただ5月の胡錦涛は、中国国内に広がった「反日」の余熱を冷ますのに懸命だったような感じです。せいぜい現地日本大使館などに対する日本からの「謝罪・賠償」要求に対し、謝罪をはねつける程度のもの。元々謝ることのない国ですからこれを以て対日路線硬化の証拠にするのはどうかと思います。

 ――――

 そこに一大転機が訪れた、ともいうべきアクションが呉儀事件(5月23日、来日中の呉儀副首相が小泉首相らとの会談をドタキャンして前倒し帰国)です。その内幕についてはいまなお謎のままですが、これを契機に中国国内メディアによる「反靖国」や「日本の常任理事国入り反対」といった反日報道が一気に噴出、連日のように署名論評が大手紙のいずれかに掲載されます(現在に至る)。

 胡錦涛の御用新聞でこれまでは常に反日の火消し役だった『中国青年報』までが靖国神社に祭られているA級戦犯を紹介する連載企画を行うなど、メディアの動きから今度は4月とは逆に胡錦涛が劣勢、すなわち対外強硬派の奪権成功が感じられるようになりました。

 この動き、メディア攻勢だけでは不足とばかりに日本の親中派政治家までを動員してのキャンペーンに発展。いわゆる「中国必死だなw」というやつですが、童増が怪論を発表したり、大手反日サイトが謹慎を解かれたというのは、こういう流れの中で生起したものです。

 反日サイトの復活は、とりあえずは7月7日(盧溝橋事件)を見据えたもの、といえるかと思います。そのあとに「九・一八」(満州事変)も控えています。……でも実はそれよりも、秋に党の重要会議(第16期五中全会)を控えた今夏は、権力闘争の季節です。そのために対外強硬派が選択肢を増やしたのではないかと思うのです。つまり状況によっては、「反日デモ」で相手(胡錦涛派)を揺さぶる可能性もあるのではないかと。

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 反日サイトの相次ぐ復活で役者が揃ってきていい感じ(笑)ですが、今回の主題は別なところにあります。尖閣諸島周辺での台湾漁船取り締まり、そしてそれに対する台湾漁民の抗議などによって生まれた動きです。

 ●台湾漁船60隻、日本に抗議 尖閣近海取り締まりに反発(共同通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050609-00000123-kyodo-int

 ●<台湾漁船>日本の違法操業取り締まりに抗議 与那国島沖(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050609-00000049-mai-soci

 ●台湾漁船、尖閣諸島近海での日本の取り締まりに抗議(ロイター通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050609-00000131-reu-int

 ……いずれも6月9日のニュースですが、台湾では、

「なぜ海軍を出さない。海軍を出せ」
「場合によっては対日開戦だ」

 という威勢のいい強硬論が野党の一部から出て、台湾政府や国防部はこれに対し、

「漁民保護は海巡署(海上保安庁のようなもの)の仕事」
「こちらが海軍を出せば向こうも海上自衛隊を出してくる。日本と戦ったって勝てやしない。事態をいたずらにエスカレートさせるのは得策ではない」

 ……などと答弁しています(※2)。

 で、「よせばいいのに」と言うべきか、「この展開を待っていた」というべきか、とにかく中共がこの話題に首を突っ込んできたのです。

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 ●台湾国防部「漁民保護は海軍の任務ではない」――日本と戦えば敗北は必至(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/taiwan/2005-06/16/content_3091543.htm

 今朝(2005/06/16/09:33)掲載された報道です。内容は記事標題の通りで【※2】の記事を引き写したようなものなのですが、台湾軍部の弱腰を嘆いている、あるいは嘲笑しているかのようでもあります。

 さてこの記事、というより国営通信社・新華社発のかくも勇ましい記事が中国国内も含めて配信されたことは、

「よせばいいのに」
「この展開を待っていた」

 のどちらなのか。「撃ちてし止まん」の対外強硬派(笑)が主導権を握っているような気配の現時点からすれば「この展開を待っていた」というノリなのでしょうが、この記事を掲げた意味は重いのではないかと思うのです。要するに、

「われわれ中国はそんな情けないことはしない」

 と宣言することに等しいでしょう。中国や香港の「保釣」(尖閣防衛)活動家がしばしば現地上陸を目指して船出しては、わが海上保安庁によってその企図を挫かれていますが、これからはこの種の活動に対して中国が巡視船などの護衛をつけるということでしょうか。

 ……この新華社電は、そういう勘繰りが可能な記事なのです。折しも香港の活動家が100トン級の小型船を購入し、これでまた船を出すとしていました。「5月か6月に」と前に言っていましたが、それ以来、香港紙にも情報が出てきません。もう6月も半ばを過ぎたというのに、どうしたのでしょう。

 香港も中国の一部ですからねえ。活動家が船を出せば、対外強硬派の肚の据わり具合を測るケースになるかと思います。……そもそも「中国の一部」という原則に照らせば台湾漁民も自国民という理屈になりますが、そちらは保護しないで座視したままですか。そうですか。


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 【※1】江沢民引退なら「反日」はレベルダウン(2004/09/02)
     「日本叩き」に当局が圧力、メディアに加え反日サイトにも(上)(2004/10/16)
     「日本叩き」に当局が圧力、メディアに加え反日サイトにも(下)(2004/10/16)
     続・東シナ海資源紛争――「反日」再燃の気配?(2004/10/19)
     踏ん張る胡錦涛、「反日」抑制は続行中?(2004/10/22)
     抵抗勢力?(2004/10/23)
     副作用(2004/10/24)
     「対決」控え中国は友好ムード演出?(2004/10/25)
     日中首脳会談――章啓月女史の奮闘(2004/11/20)
     ささやかな反日?(2004/11/21)

 【※2】http://tw.news.yahoo.com/050615/15/1y9uw.html(聯合新聞網)
     http://tw.news.yahoo.com/050615/195/1ya4i.html(東森新聞網)
     http://hk.news.yahoo.com/050615/12/1dk0j.html(明報)
     http://www.takungpao.com/news/2005-6-16/TM-415235.htm(大公報)



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 土日でちょっと時間ができました。しばしば書いていますが私は完全夜型生活です。仕事仲間である「台湾チーム」と「香港チーム」が昼間は仕事をしないので(怒)、仕方なく合わせてやっているのですが、最近昼間も働いているせいか、正午を過ぎても眠くなりません。ただ頭はボーッとしています。

 何だか最近、オーストラリアで中国人の亡命騒ぎがたて続けに発生してちょっとした騒ぎになっていますね。

 
現地勤務の領事と、観光ツアーで入国した天津の国家安全部職員(記憶モード)。いずれも情報担当(法輪功の監視)を自称しています。それに続いてまた1名、氏名や任地などは秘密にされていますが、やはり法輪功監視担当の公安幹部が豪州で亡命申請を出しているとのこと(『蘋果日報』2005/06/11)。

 一連の事件について中国国内では報道されていないようです。香港では『香港文匯報』なども親中紙ながら報じています。ただし「あれは帰国したくないから騒いでいるだけだ」という大使館側のコメントを載せていましたが、事件がこうも続けざまに起きてしてしまうと、説得力に欠けてしまいます。

 ――――

 豪州国内で1000人以上の中国関係者が情報活動をしている、という証言は、地元では衝撃をもって受け止められているようです。それが真実かどうかはともかく、香港紙『蘋果日報』(2005/06/09)によれば、この
豪州ルートは1999年に団体旅行が解禁になって以来、一種の「脱出経路」として中国人に重宝されているようです。天津の情報担当者もそうですが、同紙によれば、汚職に関わったとされる藍甫・元アモイ市長もこのルートを使ったとか。豪州政府に亡命申請を出して却下されても、米国政府が「拾う神」になってくれる可能性が高いというのも魅力のようです。

 それにしても今回の事件、法輪功が仕掛けたのかどうかはともかく、情報担当者の相次ぐ政治亡命ということでインパクトのあるニュースです。そして諜報網が存在するとの証言。当の豪州や欧米諸国はもちろんですが、むしろ中国の脅威を直接受けることになるASEAN各国にある種の緊張が走っているのではないでしょうか。

 さて、連続して明らかになったこの3件の亡命騒動、どうみたらいいのでしょう。××系統といった派閥は上は政治局常務委員会から下は末端組織にまで及んでいますから、自派の旗色が悪いとみて三十六計に如かずとなったのか。何だか沈む船からはネズミが逃げ出すといった伝説を思わせます。互いに相識らぬ同士とはいえ、3人が偶然同じ政治勢力に属していたのなら、党上層部における政治環境の変化を反映したもの、といえなくもありません。もちろん、3人の政治的背景に全くつながりがなく、たまたま同じ時期に重なっただけ、というのが自然な見方ではあります。

 逆に、亡命が自発的なものではなく、法輪功が仕掛けたというのなら、むしろその方が興味深いですね。

「仕掛ける時機が到来した」

 という判断の下に行われたアクションということになりますから。反体制のプロとまではいいませんが、その道の玄人である法輪功が動いたのであれば、
動くに値する状況が中国国内(特に中共内部)で起きているということでしょう。とすれば次は亡命とは限りませんが、何らかの形で二の矢、三の矢が放たれることになる筈です。

 ――――

 中国国内のマスコミについては、特に目立った動きはありません。連日、『人民日報』をはじめとする大手紙から対日批判の署名論評が出ています。小泉首相の靖国参拝阻止と日本の常任理事国入り阻止が目下の主題のようです。

 前者に関しては、御存知の通り日本の親中派政治家まで総動員して、もはやなり振り構わぬといった様相です。まさに「中国必死だなw」なのですが、ここまで全力投球しておいて、それでも小泉首相が靖国神社を参拝したら一体誰が責任をとることになるのでしょう。胡錦涛?といえばその御用新聞の『中国青年報』、相変わらずA級戦犯特集を連載していますが、何だか糞青(自称愛国者の反日教徒)どもに占拠されてしまったような感じで、明らかに編集方針が一変しています。最近は珍獣(プロ化した糞青)の代表的存在である童増・中国民間保釣連合会会長の記事まで掲載する始末(2005/05/31)。

 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-05/31/content_11581.htm

 この記事によると童増は、

「もし小泉首相が8月15日に靖国参拝したら?」

 というフジテレビの電話取材を受けたそうで、

「デモや日貨排斥などが再燃することはあるか?」

 という問いかけに、

「可能性は極めて高い」

 と答えたことになっています。4月の反日デモを中共当局が躍起になって鎮静化させたことを思えば、これは政治的にかなり際どい発言だと思うのですが、それを公言し、中国国内メディア(中国青年報)にも掲載されたということは、対日強硬派である童増の後ろ盾がしっかりしていることを思わせます。

 ――――

 童増関連はまだあります。もう珍獣大暴れです。これまた『中国青年報』(2005/06/01)。

 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-06/01/content_12088.htm

 これは同紙記者が童増に直接インタビューしているのですが、ここで驚くべき新説を披露しています。

「日本からの対中円借款などの返済分について、中国政府は今後の返済を一切拒否し(合計1726億元)、戦争の賠償金扱いとすべきだ」

 ……というもので、さすがは珍獣としか言いようのない無茶苦茶な論法です(童増の脳内では理屈が成立しているようですが)。

 とはいえ、この珍説も中国国内メディアに掲載されたのですから油断がなりません。要するに『中国青年報』に掲載させるだけの政治的圧力が童増のバックにはあるということです。

 童増のこの論法は香港紙『明報』(2005/06/11)にも掲載されて、王録生・貴州省政治協商会議(政協)副主席がこれを支持する発言を行っています。

 http://hk.news.yahoo.com/050610/12/1decl.html

 童増とこの王録生、たぶん珍獣仲間なんでしょうけど、政協はまがりなりにも公的機関です。省政協副主席として童増の珍説に対する支持表明ができる訳ですから、無視することのできない動きとはいえるかと思います。

 ――――

 最後にもうひとつキナ臭い動きを挙げておきますと、ブッシュ米大統領が6月9日、テレビのインタビューに対し、中国が台湾に武力侵攻した場合、米国は台湾関係法に則って台湾防衛に動くと明言したところ(※1)、打てば響くとばかりに翌10日、親中紙『香港文匯報』には「中国はイラクではない」という記事が掲載されました。

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0506100002&cat=002CH

 これは「長期にわたり台湾問題に注目している人民解放軍のある将官」のコメントという形で、

「台湾問題は中国の内政であり、他国の干渉は許さない。中国はイラクではない。もし他国が台湾海峡の事態に介入することがあれば、中国の軍隊は必ずやその勢力に受け入れ難い代価を支払わせることになるだろう」

 とし、ブッシュ発言に真っ向から反発しています。「キナ臭い」というのはこのリアクションの速さで、かの「呉儀事件」では初動を外電の詰め合わせ記事でごまかし、1日遅れでオリジナル記事(社説)を出した同紙()が、今回は9日のブッシュ発言に対し、翌10日には
北京発・軍高官コメントという形で上記のオリジナル記事を掲載していることです。

 ――――

 以上、話題が散ってしまいましたが、つなげて考えてみると中共上層部で何かが進行しつつあり、それも3~4月の反日騒動とは逆に、どうやら対外強硬派が優勢な局面にあり、メディアを制しつつあるように思われてなりません。

 不穏かといえば、確かに不穏ではあります。


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 【※1】http://hk.news.yahoo.com/050609/12/1dc17.html


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 業務連絡です。

 急に仕事が立て込んでしまい、更新が滞ってしまい申し訳ありません。ルーチンワークの他に単発で入る仕事が一時期に重なるとブログが疎かになってしまいます。もっと忙しい人でもちゃんとブログを更新できているのに、私にそれができないのはひとえに能力の問題です。本当に申し訳ありません。

 いま多忙のど真ん中なのですが、ヤマは越えましたので、ほどなく平常に復することができるとは思います。

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 それにしてもサッカー日本代表のワールドカップ出場権獲得(しかも「全球最快」=世界最速)は嬉しいニュースでした。私見では、彼らの活躍こそ若い世代のごく自然な愛国心の育成に最も貢献していると考えていますので、その流れが断ち切られずに済んで本当に良かったと思います。

 異例の無観客試合でしたが、スタジアムの外まで来て声援を送る日本人サポーターがいて、その声が仕事をしながらテレビを観ていた私の耳にも入ってきました。バンコクのホテルでも特設会場を設けて応援が行われていました。スタジアムで観戦できないと知りつつも、日本からわざわざやって来たサポーターも多いでしょう。

 そういう人たちはかなりコアなサポーターだとは思いますが、日本を応援する気持ちは国内のスポーツバーや自宅でテレビ観戦をしている人たちも同じだったと思います。「日本代表」というより「日本」を応援しているのです。

 嬉しいじゃないですか。

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 実は昨夜(6月8日)、仕事の待ち時間のおかげでフッと1時間ばかり自由になりまして、日本の勝利でつい血が騒いでしまった私は、この喜びを中国人とも分かちあうべく、年甲斐もなく某大手ポータルの掲示板で活動して参りました。

 【多謝各位】慶祝日本隊全球最快出線!【全力支持】(出線=予選突破)

 というスレッドを立てて板の盛り上げに一役買いました。スレッド自体はすぐに消されてしまったのですが、他にも今回の試合を「抗日の機会」と捉え、テレビで北朝鮮の敗戦を目の当たりにしてガッカリしているスレッドがあったので、そこに張り付いて久しぶりに暴れた次第です。

「中国は香港相手に7-0だろ?比類なき実力だ。予選突破はいつなんだ?」

 と書いたら簡単に盛り上がってしまいまして。

「これは反中言論だ。管理人は公安に通報しろ」

 というレスには、

「通報するなら公安じゃなくて国家安全部だろ」

 と正しい道を教えてやり、

「中日関係はいま氷河期に入っている。わが民族の感情に影響する言動は慎んでもらいたい」

 と冷静さを装ったレスには、

「何で日本の出場決定が中国人の民族感情に影響するんだ?中日友好だろ?中国チームも頑張って予選を勝ち抜いて、一緒にドイツへ行こうぜ。頑張れ中国!」

 と、道理を説いたところ大破炎上して罵倒が始まりました。お里は争えないものです。

 ――――

 そんなことやっているヒマがあったらブログのコメントにレスをつけろ、というお言葉、誠に耳が痛いです。つい嬉しかったものですから久しぶりに中国語の練習をしてしまいました(笑)。

 そんな馬鹿なことやってるんじゃないよ、という向きには言葉もありません。ただこのブログ、元々は「反日サイトに対する活動報告&チナヲチ」を趣旨としてスタートしておりますので、こういう千載一遇の機会に巡り会うとつい地金が出てしまいます。

 ――――

 折角ですから軽くチナヲチの話をしておきますが、中国の小泉首相叩きというか靖国参拝阻止の動き、ちょっと異常ではないでしょうか。

「中国必死だなw」

 の一言で済ませてもいいのですが、それにしては度が過ぎているというか、傾斜しすぎているように思います。しかもときどき馬に鞭を当てるがごとく、『解放軍報』(人民解放軍の機関紙)にも日本批判の署名論評が出ます。

 確たることはまだ何もわかりませんが、必死にならざるを得ない何かが起きているのではないでしょうか。

 最近シンガポール紙の記者である香港人・程翔氏が逮捕された一件、これも深いところで「必死だなw」の動きと何かつながっているように思います。

 程翔は左派(要は基本的に親中共)で台湾統一派で、反体制系・民主化運動系とは接点がありません。しかも胡錦涛の意を受けて色々活動していた、という情報が出て、さらに中国国内でも社会科学院?あたりで逮捕者が出たあたりから、これはいつもの記者拘束とは全く違うケースではないか、と私は思うようになりました。

 いま丹念に資料に当たっている時間がないのでこのくらいしか書くことができないのが残念です。一刻も早くチナヲチに復帰すべく仕事を片付けます。

 ――――

 言い忘れましたが、私が今回活動したサッカー板、すっかり抗日板に変わってしまいました(笑)。コレダカラヤメラレマセン。




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 御存知の通り、6月4日は1989年の天安門事件(六四事件)16周年でした。

 事件当時、私は北京ではありませんが中国国内の某大都市に留学していたものですから、その日のことはよく覚えています。その日から数日の間に様々な出来事がありました。書こうと思えばまた「昔話」扱いで色々書くこともできます。

 ただ、いまはどうもそんな気になれません。

 ――――

 天安門事件の翌年である1990年の春、私は留学を終えて帰国することになりました。

 その日の朝、仲が良かった中国人学生たちが入れ代わり私の部屋を訪ねてきてくれました。その中に、前年の民主化運動で学生リーダーのひとりだった奴もいました。

 色々話をして、最後になって、奴は突然私の手を両手でぐっと握りました。私の名前を呼んでから、

「中国はいまこんなだけど、政策は3年もすれば変わる。そのうちにきっといい国になる。今度いつ会えるかわからない。わからないけど、そのときにはマトモな国になっていると思うから」

 そんなことを、あれは泣き笑いとでも言うのか、そういう表情で私に話しました。奴とは再会を誓ってそれで別れましたが、そのあと私は香港・台湾を流転する破目となり、奴も異動で住所が変わったりしましたので、連絡が途絶えてしまい、未だに再会の約束を果たせないのが心残りです。

 ともあれ、うっかりそういう体験をしてしまいますと、やはり6月4日を平然と迎えることができません。

 ――――

 それから3年後、私は香港にいました。

 奴の予言は見事に的中して、ちょうど3年で中国は大きく舵を切りました。トウ小平が挑んだ人生最後の権力闘争によって引き締めから改革加速へと政策が一変したのです()。そのときを起点に、現在に至る中国の経済成長が始まることとなります。私はその大転換を目の前で、まざまざと見ることができました。

 ただし、それは「六四」で失脚した趙紫陽・総書記(当時)とそのブレーンが描いていた青写真とは異なるものでした。経済改革とともに政治制度改革を実施することで、一党独裁体制に市場経済を持ち込むことの弊害(例えば特権を利用した党官僚の汚職)を極力防止する、という趙紫陽構想に対し、トウ小平そして江沢民は
「安定は全てに優先する」というスローガンを掲げ、政治制度改革に手をつけないまま、経済改革一本で十数年も突っ走ってしまいました。

 それによって、中国は賞賛であれ揶揄であれ、とにかく「世界の工場」と称されるほどの経済的地位を国際社会で獲得するに至りました。ただ政治制度改革を置き去りにしたため、躍進する一方で片肺飛行のツケを抱え込むことになりました。汚職の蔓延もそうですが、ある種の調節機能を欠いたシステムだったため、
経済が走れば走るほど「格差」が拡大するという結果になったのです。

 「格差」とは貧富の差であり、都市と農村の差であり、沿海と内陸、または沿海同士といった地域間格差でもあります。それを十数年続けた後、胡錦涛が江沢民からバトンを渡されたときには、社会状況は危険なまでに悪化していました。現に各地で暴動やデモ、ストライキなどが発生しています。いずれも「反日」とは全く無縁であり、端的にいえば、
物価上昇、失業者の増加、貧富の差の拡大、党幹部の汚職蔓延……といった問題によるものです。

 ――――

 政治制度改革を含めた趙紫陽構想が実現していれば、上手くいっていたかどうかはわかりません。いずれにせよ、1989年の民主化運動が「六四」の血の弾圧によって頓挫し、当時一貫して武力弾圧に反対していた趙紫陽が失脚したことでこの構想は葬り去られました。

 その趙紫陽は終生軟禁生活を余儀無くされ、上述したような社会状況について、

「いまの中国は、最悪の資本主義をやっている」

 という言葉を残し、今年1月にこの世を去りました。

 あいつだったら何と言うだろう、この現状を評して「マトモな国」と言うだろうか。……と、私は奴のことを考えてみたりします。

 奴や私がいた街は風景が一変し、高層ビルが競うように建ち並んで、中国の経済発展を象徴する都市のようにいわれています。たとえ表面的であれ、当時からは信じられないような発展を遂げた風景を重くみるか、それとも急成長の陰で当時よりはるかに悪化している社会状況を重視するか。

 私は中国に対して何の責任もない外国人ですから、躊躇することなく後者に目を向けます。当時の奴でも間違いなくそうだろうと思います。しかし、今はどうでしょう。

 一別以来すでに15年です。この世に住み古し、仕事に追われ、組織にもまれ、またその間に結婚もしたでしょうし、父親になっているかも知れません。その過程で考え方や価値観が変化していても不思議ではありません。私自身、色々な面で当時とは考え方が大きく変わっています。そしてオッサンになりました(笑)。お互いオッサンになったところで奴と再会を果たし、四方山話に花を咲かせてみたいところです。

 「六四事件」の扱われ方も変化しています。当初は
「反革命暴乱」という禍々しいレッテル(定性=党による政治的評価)を中共によって貼られたものの、「安定は全てに優先する」という後に掲げられた大原則のもと、当局が公の場で事件に言及する際には、

「1989年の春から夏にかけて起きた政治的な波風」(在一九八九年春夏之交所發生的政治風波)

 と柔らかな表現が使われるようになっています。もちろん、口ではそう言っても「反革命暴乱」という「定性」はそのままであり、
中国ではいまなお「六四」を公然と論じることはタブーとされています。

 ――――

 いや、中国で唯一「六四」を大っぴらに語れる場所がありました。特別行政区・
香港です。

 1989年当時、大規模なデモを連日繰り替えし、物資支援なども行って中国の大学生による民主化運動を熱烈に支持したこの街では、毎年6月4日になると、都心に近い「維園」(ビクトリア公園)でキャンドル集会が開かれています。「反革命暴乱」との烙印を押されたままである「六四事件」の名誉回復と、中国の民主化促進をアピールするためです。

 あるいは、それだけではないかも知れません。「民主」には覚醒して間もない香港人も、「自由」の有り難さは何十年と満喫しているだけによくわかっています。反中共スタンスの新聞や雑誌を出すことができますし、中共批判の言論や文章を発表することもできます。法輪功も活動OK。江沢民がかつて香港を、

「あそこは反動勢力の拠点だ」

 と罵っただけのことはあります(笑)。もっとも言論や思想の自由、信教の自由などはあっても、政治的自由度(民主)だけは十分でないことに漸く気付いたところですが。

 ともあれ、中国国内なら絶対許されない「六四事件」の名誉回復を求める集会を開くことができるのです。「自由」の尊さを肌で知っており、その「自由」が中国返還後、脅かされつつあると感じている香港人にとって(世論調査参照)、このイベントには
「香港にはいまなお『自由』が維持されているのだ」という象徴的な意味合いも現在(返還後)は含まれているのかも知れません。

 ――――

 さて今年で16回目となるキャンドル集会ですが、例年同様、6月4日夜に「維園」で開催されました。事件から16年、といえば当時生まれた赤ん坊が高校生になっている訳ですから、事件の風化も進んでいます。さらに当日は雨(途中から土砂降り)と屋外イベントには最低の条件でしたが、それでも4万5000人(主催者発表)が集まりました。警察発表では2万2000人となっていますが、集会の性質と悪天候からすれば、2万人としても上出来だと思います。

 この集会については昨日(6月5日)の香港各紙が詳しく報じています。あ、『香港文匯報』『大公報』(いずれも電子版)といった親中紙だけは厚顔無恥にも堂々とスルーして、「なかったこと」にしていますけど(笑)。

 報道を詳しく紹介するのは避けますが、参加者や野次馬といった街の声を甲斐甲斐しく拾って回るという点では、いつものことながらやはり最大手紙の『蘋果日報』(Apple Daily)が群を抜いていました。その中で印象的だった記事をかいつまんで取り上げてみます。

 ひとつは大陸(中国本土)からの観光客の反応です。香港は今年秋にディズニーランドがオープンする一方、経済面で担っていた役割を中国本土に奪われつつあることから、従来の「金融センター」「中国進出の玄関口」「貿易中継点」といったポジショニングから単なる観光地へと傾斜を深めつつあります。その観光客の主力が、大陸からの中国人ツアーです。

 中国国内ではCNNやNHK、広東省では香港のテレビも視聴できるようですが、当局にとって都合の悪い部分になるとブチリと強引に画面が切れてしまうそうです。そういう手間をかける一方で、大勢の観光客が香港に入ってきて「自由な空気」に触れてしまう。「維園」の横を通りかかったツアー客が指差して、

「ほらあそこ。あそこがあの『七一大遊行』(2003年の50万人デモ)の出発地点だよ」

 と会話したりしているそうです(義姉談)。大陸からのツアー客は今後拡大する一方と見込まれていますから、中共当局はいずれこれら観光客の「伝播力」を無視できなくなると思います。そのときに、どうするか。いつもの中共ならば香港政府に圧力をかけて、市民の「自由」を大幅に制限する法律を強引に通させてしまうところですけど。

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 で、大陸からの観光客ですが、近くにデパートなどが多いことから、今回の集会に遭遇した人がかなりいたようです。主催者側もそれを見越したのか、北京語の司会までちゃんと準備していたという心憎い配慮(香港は広東語ですから。方言とはいえ北京語とは外国語といっていいほど異なります)。しかも、

「平反六四!」(六四事件の名誉回復を行え!)

 などNG用語満載のシュプレヒコールを唱和している訳ですから、当然ながら集会が多数の中国人観光客を吸い寄せる形になりました。そこに記者が突入して街頭取材。多くはノーコメントと避けられてしまったそうですが、「写真は駄目だけど」と応じてくれた袁氏は、事件当時はちょうど広州の大学に在籍しており、デモにも参加したそうです。この16年、「六四」に関する話題は友人との間でさえ避けてきたとのことですが、この集会を目にして血が騒いだのかも知れません。

「あのころのクラスメートや、北京の学生のことを思い出したよ」

 とコメント。写真撮影には応じませんでしたが、

「いつか、明るい空の下で写真を撮らせてあげることができるようになったらいいね」

 という印象的な言葉を残して立ち去ったたそうです(それで私はうっかり「奴」のことを懐かしく思い出してしまったのです)。

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 もうひとつだけ。こちらは香港人、大学1年生のカップルです。もちろん香港の大学ですが、入学してすぐに「国情教育」なるものが行われるそうです。この二人によると、

「(国情教育では)中国は多党制で統治されている(一党独裁ではない)国家だ、とても偉大な国家だ、なんて教えられるんだけど、それって僕らが聞いている話と全然違う。だからここに来て六四事件のことを勉強しようと思って。まあ実地の国情教育だね。学校の国情教育では六四事件には全然ふれない。何でだろう?」

 これにはビックリです。香港の大学でもそんなことが行われているとは夢にも思いませんでした。大学1年なら18歳とか19歳、事件当時はまだ幼稚園にも上がっていない幼児ですから、大陸で行われている教育と同様、「六四」を「なかったこと」にする「国情教育」でもある程度の効果が認められるのでしょう。でも香港なのにそんなことをやっているとは……
本来保障されていた「自由」がすでに侵蝕されつつあるのを感じずにはおれません。やっぱり大陸からの観光客が増加するにつれて、中国では香港だけに残された「自由」も二重三重に縛り上げられてしまうのでしょうか(マカオも特別行政区ですが、あそこにはメディアらしいメディアがありません)。

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 という訳で話題が二転三転してしまいましたが標題(写真)について。知人である香港人フォトグラファー(万一を考えて名前は伏せておきます)が閉鎖直前の香港・啓徳空港を撮影したシリーズの中で、私が最も気に入っている一枚です。

 ビルの群れをすぐ真下に眺めつつ着陸するので有名だった啓徳空港は、英国統治が終わりを告げるとともに閉鎖され、香港が中国に返還された1997年7月1日からは現在使われている新空港が空の玄関口となっています。

 ただそれだけです。中国は天安門事件で、香港は中国返還によって、それぞれ何か大事なものを失ってしまったのではないかと思うのです。




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 いやーどうしてもわからないのです。かれこれ20年になりますが未だにわからない。日本の首相の靖国神社参拝に中国や韓国が目くじらを立てる理由がです。韓国は真性でキムチ食い過ぎの基地外国家、ぐらいの認識しか私にはありませんから放置しておきますが、中国は畜類同然(前回参照)とはいえ、

「日中間で取り交わされた3つの政治的文書に違背しないことを望む」

 などと一応理屈をつけてきます。ところが靖国神社に首相が公式参拝することは、この「3つの政治的文書」のどこにも違背するものではありません。その証拠に、小泉首相が過去に靖国参拝をするたびに中国政府から出される抗議声明には、
「3つの政治的文書」云々という文言は出てきません。これが一昨年の森前首相訪台とか、昨年末の李登輝・前台湾総統の来日、それに今年2月の日米2+2などといった台湾関連の問題に対しては必ず引っ張り出されるのですが。

 ――――

 
日本の首相が靖国神社に参拝することは、問題だとすればそれは日本国内の問題であって、どう考えても中国政府がとやかく言える筋のものではありません。逆にとやかく言ってしまうと、「お互いに内政干渉はしない」と明記された「3つの政治的文書」(のうち、確か日中共同声明)に違反することになります。小市民としては、日本政府がそこら辺で鋭く切り返してくれると溜飲が下がるんですけどねえ。根拠がないために、

「中国人民の感情を傷つけた」

 という理由にもならない理由を中共は引っ張り出してきていますけど、それでは、

 ●増加の一途をたどる中国人による日本での犯罪や密入国
 ●昨年のサッカーアジアカップにおける中国人サポーターの振る舞い
 ●中国原潜の日本領海侵犯

 ……などはどうでしょう。これに日本国民の多くが感情を傷つけられ、対中嫌悪感が8割に達したではありませんか。今年3月から4月にかけての一連の反日活動や日本関連施設を標的にしたプチ暴動もまた然りです。日本側がこれらの問題を言い立てたとして、それらの中に内政干渉と胸を張って言い返せるものがあるでしょうか。それとも中国人犯罪も歴史問題が原因とでも強弁しますか?

 だいたい「人民の感情を傷つけた」という曖昧模糊とした理屈が通るなら、これは何でも理由にできますね。「江沢民の下衆じみたルックス」「朱鎔基の変な形の眉毛」「胡錦涛の無表情」が「日本国民の感情を傷つけた」、ということもできます。外交部報道官として記者会見に出てくる孔泉のヒョットコ顔や劉建超のブタ面も同様。……まあ冗談ですけど。

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 首相の靖国神社参拝は、純然たる日本の国内問題です。

 胡錦涛や温家宝が人民英雄記念碑に献花しようが南京何たら記念館を訪れようが、日本から文句が出ないのと同じことです(※1)。

 日本は東京裁判の結果を受け入れて、サンフランシスコ講話条約を結んでいる。これは小泉首相も言明していることです。中国はその点をついて、A級戦犯がどうのこうのと言いますが、そこは国民を畜類扱いする前近代的社会の悲しさか、A級にせよB級にせよC級にせよ、
戦犯は罪名を得て刑に服したことで戦犯たる責任を果たした、という常識が理解できないようです。

 さらにいえば、戦犯は刑を執行されたり恩赦されたりすることで戦犯たる責任を全うしているうえ、
日本の国内法では犯罪者とはされていませんよね。現に米国やロシアや英国、フランスからは抗議が出て来ない。ところが中国は抗議してくる。「アジア人民の感情を……」と大きく出ることもあります。これは素で知らないのですが、東南アジア諸国の政府から、小泉首相が靖国神社を参拝したことへのリアクションして、正式な抗議声明が出たことはあるのでしょうか?(華僑は騒ぎますけどね)まあ、あったとしてもいいのです。日本としては内政干渉で片付ければ済むことですから。あとODA減額してほしい?と尋ねてあげるのも親切でいいでしょう。

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 最近の中国国内メディアの報道を見ていると、中国お得意の「離間の計」、つまり小泉首相と日本国民一般を切り離し、小泉首相を集中攻撃することで、日本政界が与野党ともにそれに乗ってくれることを期待しているようです。ああ財界の取り込みも忘れてはいけませんね。ちなみに石原都知事、町村外相、中川経済産業相は小泉一派に含められているようですが。

 でもネタ不足なのか、中国国内メディアはここ数日も相変わらず森岡・厚生労働政務官の発言(A級戦犯は日本国内ではもう罪人ではない)を粘着に叩き続けています。森岡発言に反駁する署名論評も連日のように出てきますね。あれはきっと、相当苛立っているのだと思います。
「失言による引責辞職か罷免」という以前なら当たり前の展開になる気配が全くないからです。何やってるんだ、早く辞めさせろ、ほら朝日もっと働け(笑)、ということなのでしょう。

 ここら辺が猿回しの猿以下たる所以であって、ちょっと前に中山・文部科学相による教科書問題に関する発言がお咎めなしで終わったことから学習できていない訳です。教科書といえば「従軍慰安婦」という記述が全ての歴史教科書から消えましたし、歴史教科書に関しては町村外相もゴルフに例えて中共が反発しそうなコメントを出しています。こんなに材料がありながら、全く学習できていない。少しは空気を読んだらいいのにと思うのですが。というか空気嫁。

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 最近の国会における小泉首相の答弁をみていると、今年も靖国神社を参拝する意向のようですね。ただ「一個人として」とか「首相の職務としてでなく」とか但書きをつけるようになったのは嘆かわしいことですけど。実際に参拝するときにいきなり「首相としての公式参拝」に豹変したら面白いのですが。国連改革などとの絡みもあるので時期の選定には慎重になるでしょうが、もちろんベストは
「八・一五参拝」です。

 中国政界にとって「五中全会」(党中央委員会総会=重要会議)を秋に控えた
今夏は権力闘争の季節ですから、「八・一五参拝」が実現したらインパクトがあるでしょうねえ。反日デモ再燃という可能性もあるかも知れません。

 4月のデモが未許可で違法だということを中共政権は認めていますが、かの国では法より政治が優先されます(※2)。以前当ブログで何度か指摘していますが、その政治的価値判断(定性)、つまり
政治的に善か悪かという公式見解を、党中央は現在に至るまで明らかにしていません。違法行為でも政治的に善ならOKですから(※3)、やるやらないは別として、中共は日本に対するアクションのひとつとして「反日デモ」という選択肢を留保したままなのです。

 もちろん、仮に反日デモが再発するとしても、その実質は靖国問題を口実にした権力闘争の表現です。もし「八・一五参拝」がなかったとしても、何らかの日本の「罪状」を口実にした反日デモ、という可能性もあります。いずれにせよ、
靖国参拝への内政干渉も反日デモも、中国政界の政争の具であり、権力闘争の一環として行われることになります。先の「反日」騒動も、結局は対外強硬派と胡錦涛派が相争う舞台でしかなかった、と私は考えています。

 ――――

 靖国神社への首相の参拝に中国が初めて文句をつけてきたのは1985年の中曽根政権当時です。北京では大学生による反日デモも行われました。とはいえ本当の目的はそこにはなく、これらもその実質は、改革派(改革開放推進派)と保守派(計画経済など社会主義理論に忠実な勢力)の政争を反映したものでした。

 というより、
「靖国問題」が中国の権力闘争のためでなく、純粋に提起されたことがこれまであったでしょうか。常に「政争の具」ではありませんか。昨年の日中首脳会談で胡錦涛、温家宝がいずれも靖国問題に言及したのも、そうしないと党内や軍部の統御に支障を来たすからでしょう。一見すると日本へのメッセージなのですが、実は国内政治向けに持ち出しているのです。「歴史教科書」も同じです。脊髄反射をしてもいいのですが、ああ党上層部でまた何か起こっているな、毎度毎度お疲れさん……と思いを巡らすのがヲチの態度というものではないかと。

 だから、日本としては相手にする必要はないんです。国内統御が……と胡錦涛に泣きつかれても、そのくらい最高指導者(国家主席+総書記+党中央軍事委主席)なんだから自分で何とかしろ、と袖にしてやればいいのです。温家宝がウソ泣きしたって放置プレイということで。子供じゃないんですから。

 ――――

 それより温家宝、お前いまちょっとチャンスじゃないの?と言ってやりたいです。

 「棲息地その2」でも書きましたが、権力闘争で対外強硬派が大局を制して「五中全会」を迎えたとしても、主導権を握っているなら胡錦涛を今のままのポストに残したまま、対外強硬派の言いなりにさせておく方が内外の混乱も少なくていいのではないかと私は考えています。が、もし大きな人事が行われるのであれば、江沢民派の筆頭格である曽慶紅ではなく、
民衆から支持されている温家宝の方に目があるんじゃないかと思うのです。

 「胡温体制」とか言われつつも、オイシイところを持っていくのはいつもこの人です。炭坑事故でのウソ泣きもそうですが、全人代閉幕時の記者会見でブルース・リー(李小龍)をパクって大見得を切ったこと()、それに4月の反日活動は当初報道NGだったのに、その禁を破って訪問先のインドでの記者会見で反日デモに言及(新華社記者のヤラセ質問に応じる形だった筈です)、

「これで日本人も反省するだろう」

 などと言って火に油を注ぐ役目を担ったのも他ならぬ温家宝です。特にこの
反日デモの口火を切ったことは、胡錦涛が火消しに躍起になっていただけに留意しておくべきだと思います。

 この二人、結構仲が悪かったりして(笑)。


 ――――


 【※1】この話は中国の反日掲示板でときどき話題になるのです。そのたびに、「俺がもし日本人だったら、やはり靖国神社を参拝しているだろう。祖国に殉じた人々を追悼するのは当たり前だからだ」とか、「どうして中国の指導者は人民英雄記念碑や八宝山(革命に殉じた「烈士」や要人の墓所)、それに南京何たら記念館を毎年訪問したりしないのだろう。嘆かわしいことだ」といった書き込みが散見されます。

 【※2】法制あって法治なし。中国語なら「有法制却没有法治」というところでしょうか。発音すると駄洒落というかオヤジギャグになってしまいます(笑)。

 【※3】逆に、合法的行為でも定性(政治的価値判断)で悪とされればアウトなのです。1989年の天安門事件で失脚した故・趙紫陽氏(元総書記)に対する処遇がそうでしたね。法を犯していない証拠に法廷の被告席に立たされることはありませんでしたが、政治的に悪とされたため終生軟禁生活を余儀無くされました。


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 誠に遺憾なことではありますが、私は諸事情により、自分の仕事について当ブログで明らかにすることはできません。ただ今回の主題の都合上ちょっとだけ言うならば、クリエイティブな分野のもの(おおカッコいいw)、といったところでしょうか。ネジや歯車を作ることも、家やビルを建てることも、あるいはピザ屋さんもクリエイティブな分野に入るかも知れませんが、それとはまた別のものです。またチナヲチとか中共、中国市場とは一切関わりがありません。

 仕事仲間として「香港チーム」と「台湾チーム」がいます。クリエイティブな部分の大半は彼らが担っているのですが、如何せん私の業種では日本と香港・台湾のレベルの差が懸絶しています。そのために発生する様々な摩擦を緩和すべく言い訳したり頭を下げたり、逆に「現地には現地の事情があるんだから日本のモノサシで測るな」と逆ギレしてみせるために、私が両チームの代弁者として東京に駐在している、というようなものです。ときに王毅に親近感を持ったりなんかして(笑)。

 香港チームと台湾チーム、どちらも日本人の眼で日本の同業者と比較すればゴミみたいなレベルです。でももちろん連中は連中なりに一生懸命やっているのです。指揮系統が曖昧のまま、年長者である私を立てて劣悪な労働条件のもと頑張ってくれています(※1)。

 両者を比較してみると、台湾チームは期日や制約を真面目によく遵守するため仕事が手堅いです。その代わり朴訥すぎるとでも言いますか、臨機応変が必要とされる場面には弱く、センスも創造力も不足気味というきらいがあります。一方の香港チームはセンスや創造力、また臨機応変といった面では台湾チームよりずっと上です。ただ臨機応変に走り過ぎたり創造力を発揮しすぎることがままあり、期日や制約にもルーズなところがあります。それから実力に反比例してプライドが高い一面も(笑)。

 どちらも可愛い奴らなのですが、どちらも私の白髪を増やすことにとても貢献してくれています(涙)。

 ――――

 今回は香港の話です。私にとっては住み古した街でもあります。その香港で生活したり仕事をしたりする中で気付いたのは、

「香港は国際都市で外国人も多いのに、こいつらは意外と閉鎖的で『国際派』市民たるには程遠いんじゃないか」

 という点です。ごく少数のエリートは別として、私がふだん接していた庶民レベルの香港人(20~30代)には
「小中華主義」というか「大香港主義」というか、とにかく香港が天下の中心であり、香港がいちばんいい、というような気風があります。

 商売の世界もそうで、これは業種や企業規模にもよりますが、香港市場で生き残り、あわよくばナンバーワンになることが全てで、海外へ打って出るという気風に乏しい印象です。地元の華字紙だと国際面がきわめて貧弱なのが目立ちます。それが関係しているかどうかはともかく、「世界の中の香港」という視点や発想にやや欠ける、といった感じです。……以上はあくまでも私の個人的体験に基づいた感想ですから、別の生活・仕事環境で香港生活を送った人にはまた異なる見方があることでしょう。

 とりあえず持ち前の「小中華主義」や「大香港主義」ですが、これが転じて、大陸の中国人を見下したり、台湾人をダサい・田舎臭いと思ったり、また日本文化の受容度は高いものの、一般的には台湾の「哈日族」のような憧れめいた気分はなく、どこか「小日本」(※2)と多寡をくくっているようなところがあります。

 それは、香港人の底流には素朴で幼稚な反日気分があることも関係しているかも知れません。中共は嫌い(※3)でも、いわゆる歴史問題については中共の宣伝を鵜呑みにし、また当時を題材にした映画やドラマ(例えば南京何たら事件とか)、いずれも中共史観をベースに、誇張と脚色に満ちたデタラメ映画でありドラマなのですが、それを「史実」だと思い込んでいるフシがあります。

 ――――

 歴史認識は別として、「香港がいちばん」意識をいみじくも指摘した香港人が最近現れて、記事にもなりました。

 ●香港人は国際的視野が不足している――林長英・天文台長
 http://hk.news.yahoo.com/050507/12/1c9ps.html

 天文台長とは日本でいえば気象庁のトップです。この人がラジオ番組にゲストで招かれた際、

「香港人には狭隘な『大香港主義』心理があり、国際的な視野に欠けている」
「『大香港主義』のため、経済的に香港より劣る地域やそこに住む人を見下したりする」
「香港の中だけの細かいことにこだわって、世界の大局の急激な変化を気に留めない。これでは国際的大都会の市民とは呼び難い」

 ……と、あたかも私の感想を代弁してくれたようなことを言ってくれて、ああ香港人にもわかっている人はいるんだなあ、とちょっと嬉しくなりました。「野蛮」と標題に書いたのは、ルールや制約といった約束事を守らない、公の精神の欠如、公共意識の乏しさ、「やったもん勝ち」的心理&行動原理、そして井の中の蛙ともいうべき「小中華主義」「大香港主義」といった意味合いを込めたものです(※4)。

 例えば中国で問題になりつつある知的所有権、パクりや海賊版の問題ですが、これは香港でも横行しています。小さな香港ひとつさえきれいに掃除できないのですから、中国を知的所有権に厳格な国にする、というのは到底不可能でしょう。ゴミのポイ捨てで街が汚いのも香港の特徴でしたが、最近これが改善されつつあるのは、政府が監視員を各所にバラまいて違反者から高額の罰金を取るようになったからです。私服監視員も巡回していますから気が抜けません(笑)。それを知らずにタバコのポイ捨てをやって引っかかり、500香港ドルだかを取られて大憤慨したそうです(岳父談)。

 香港人が「清潔」に目覚めたのは、たぶん中国肺炎(SARS)で痛い目に遭ったおかげでしょう。帰宅したらまず手を洗ってうがいをする習慣も身についたようです。それまでは「口をすすぐ」という言葉はあったものの、衛生のためにうがいをするという習慣はなかったし、学校でも教えていなかったそうです(配偶者談)。

 ――――

 とは申せ、大陸の中国人に比べれば香港は社会も人も50年は進んでいると私は思います。都市部だけをみて「そんなことはない」と反論する人もいるでしょうが、農村部を含んだ全国平均でいえば「50年」は決して不穏当な表現ではない筈です。

 「四つ足」も不適切ではありません。大陸の中国人は畜類同然です。その証拠に、生殺与奪の権を中共に握られているではありませんか。法制あれど法治なし。たとえ合法的行為でも、中共の政治的価値観で「悪」と認定されればアウトです。いつ屠殺場へ引っ張っていくか、どう料理するかは中共政権の思いのまま。その中共にしたって、選挙で選ばれた訳ではありませんから、民意を代表しているとは言えません。建国以来すでに半世紀以上を経たというのに、まだこのレベル。

 香港人の不幸は、自分達より50年遅れた連中に統治され、普通選挙権すら与えられていないことです。これなら植民地同然、どうせ植民地なら英国統治の方がまだマシ、という気分がいまなお多くの香港人の間に根強く残っています。

 普通選挙の制度は、いずれは導入されるでしょう。自分達のリーダーである行政長官も直接選挙で選べるようになるでしょう。ただし、その行政長官を中共が気に入らなければ、選挙は無効とされてしまいます。正確にいうと全国人民代表大会(全人代)常務委員会の承認が必要なのです(ミニ憲法である「香港基本法」の付則に明記されています)。

 植民地という実質は、どこまで行っても変わらないままなのです。

 ――――

 ところが、その香港人の大半が「中国人であることが誇り」だと思うようになったそうです。昨日(6月1日)、中国の国営通信社である新華社、そのウェブサイト「新華網」に世論調査結果の記事が掲載されました。

 ●大多数の香港人「中国人であることを誇りに思う」――世論調査(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-06/01/content_3033309.htm

 香港公民教育委員会は1日、先ごろ実施した世論調査の結果を発表した。それによると、急発展する国家(中国)を誇りに感じるとする回答が大半占め、73%は自分が中国人であることを誇りに思うと回答した。
 同委員会による今回の世論調査は、1986年の第一回(調査は2年ごとに実施)以来、初めて香港市民の国民意識、国家意識に関するものとなった。
 調査結果によれば、中国国民であるという意識と国家を誇りに思うという回答は、比較的高年齢の層や内地(特別行政区や台湾を含まない中国国内)との接触が頻繁な市民に多い傾向がみられた。
 また、大部分(74%)が内地の経済発展に満足しており、また政治(88%)や経済(93%)の面において、中国の国際的地位が高まりつつあるとしている。
 公民教育委員会は香港大学の「政策廿一」と「公民社会と管理研究センター」の依託により、昨年10月から12月、無作為に抽出した1054名の香港市民(15歳-69歳)に対し面接方式で調査を実施。有効回答率は70.2%だった。
 香港では祖国への返還以降、特別行政区政府(香港政府)による国旗掲揚をはじめ国歌を歌う、国旗や国章への理解を深めるなどといった形で、市民や学生・児童に対し愛国教育が行われている。

 ――――

 この調査結果は香港でも今日付(6月2日)の各紙で紹介されています。

「中国人であることを誇りに思うか?」

 ●思う(73%)
 ●思わない(16%)

 ……と、中共当局の発表と変わりありません。上の記事には出ていませんが、

「香港が我が家だと思う」

 ●思う(96%)
 ●思わない(2%)

「香港は法治社会だと思う」

 ●思う(92%)
 ●思わない(4%)

 ……と続きます。でも香港の親中紙でも紹介されるのはこの辺りまででしょう。

「公立学校では国旗掲揚の儀式を毎日行うべきだと思うか?」

 ●思う(38%)
 ●思わない(43%)

「内地で起きている一部の事件は国の恥だと思うか?」

 ●思う(72%)
 ●思わない(14%)

 ……ほらほら、雲行きが怪しくなってきました(笑)。

 ――――

「香港の人権状況は中国返還後、後退したと思うか?」

 ●思う(50%)
 ●思わない(31%)

「立法会の全議席と行政長官(香港のトップ)の選出には早急に普通選挙制を導入すべきだと思うか?」

 ●思う(59%)
 ●思わない(16%)

「たとえデモが面倒を招こうとも、公衆のデモや集会の自由は保障すべきだと思うか?」

 ●思う(83%)
 ●思わない(8%)

 ……香港人の政治意識の高まりを示す数字です。中国返還以降の香港政府の政権運営の拙さ、また愚民政策に慣れた中共が香港市民に対しても愚民政策型の宣伝をやってしまったことで(そりゃ自分よりレベルが高い相手に子供騙しのような手を用いれば反感を買って当然でしょう)、それまで「カネこそ全て」(No money, no talk)だった香港人は、中共の思惑とは逆に「市民」として覚醒することになりました。皮肉なものですねえ(笑)。

 ――――

 ……で、最後はこうなります。

「中央政府(北京)を批判するのは非愛国的だと思うか?」

 ●思う(13%)
 ●思わない(72%)

「国家が過ちを犯しても、それでも国家を支持するべきだと思うか?」

 ●思う(15%)
 ●思わない(71%)

「外国政府の前で中国の国情を批判するのは非愛国的だと思うか?」

 ●思う(23%)
 ●思わない(57%)

「大陸の民主化と人権状況改善を促進するため、大陸に圧力をかけるよう外国政府に求めるのは非愛国的だと思うか?」

 ●思う(20%)
 ●思わない(62%)

 ……この結果じゃあ、さすがに中国国内には流せませんよね(笑)。

 ――――

 と言う訳で、中国といえども香港特別行政区の市民とは日本人も共有できる価値観を持っていることがわかります。要するに話が通じる、対話が可能、ということです。

 ただそれも、英国統治時代を知っている世代まででしょう。今年から愛国教育のプログラムが学校教育にも導入されるという記事を香港紙のどこかで読みました。そうでなくても最近すでに北京語の上手なガキが増えています。当然のことながら、北京語だけ教わる訳ではないでしょう。それが今後一層強化されていくのです。

 トウ小平は生前、「中国国内に香港をいくつも造るのだ」と言っていましたが、いまの中共のやり方からは、香港を力づくで愚民化しつつ中国国内のレベルまで退化させて吸収してしまおう、という印象を受けます。極めて歪んだ形の発展モデルながら中国国内の経済成長が著しいため、相対的に香港の旨味が薄くなった、ということも関係しているのかも知れません。

「香港に生まれてよかったと思うけど、でも大陸は絶対嫌」

 と配偶者は言っております。1989年の天安門事件当時、香港でも学生を支援するデモが連日行われ、配偶者もクラスメートたちと共にそれに参加していたそうですから、我が家は「反中共」という点においては一点の曇りもなく、全く揺るぎません(笑)。

 一国家二制度のみならず、香港のような普通選挙制を導入し得る社会を相手に愚民化政策をやって効果があるのかどうか。これもまた偉大なる実験であります。でも近年の無理に無理を重ねている足取りからみて、実験結果が出る前に中共が先に崩壊してしまうような気がしますけど。


 ――――


 【※1】具体的な業種を明かせないのは、私がかようなブログを書いていることがバレてしまい、万一「香港チーム」や日本側の取引先に迷惑がかかると困るからです。

 【※2】広東語ですから「o架仔」「死o架仔」「蘿蔔頭」などと言うのが正確ですね。

 【※3】香港人の多くは中共を嫌っているか、某かの反感を持っています。1989年の天安門事件(六四事件)を見てしまったということが第一。さらに50代以上の香港人の多くは反右派闘争、大躍進、文化大革命といった政治運動や、本業を脇に置いて政治運動にかまけていたところに天災が加わって深刻な食糧不足となり、記録的な餓死者を出したといわれる時期(三年困難)に密入境して逃げてきた広東人たちです。要は中共の本質を知っているので好きになれる訳がありません。ただ大陸への望郷の念のようなものはあるでしょう。

 【※4】この「蛮性」は「生き馬の目を抜く」などと言われた香港を特徴づける魅力でもあり、社会の活力の源でもあり、一代で大富豪に成り上がり、香港ドリームと呼ばれた成功者たち(例えば李嘉誠)を生む土壌でもありました。でも現在は李嘉誠の息子など財閥2世が仕切る時代です。社会はすっかり固まり、香港ドリームも昔の話になってしまいました。


 ――――


 【関連】香港人からみた「中国の一例」上(2005/02/18)
     香港人からみた「中国の一例」下(2005/02/19)



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