日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 前回の続編というか、経過報告のようなものです。

 「胡錦涛の新聞」たる『中国青年報』に一昨日付(2002/02/24)で出た、いままでの流れを断ち切るかのような記事。

 ●紅客の「愛国の情」を私は理解しない
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/24/content_1036943.htm

 訳文は前回を参照して下さい。中国ハッカーの行為に拍手喝采する糞青(自称愛国者の反日教信者)どもへの燃料投下かと思いきや、読み進むほどに現在の中国社会一般の風潮を斬るかのような広がりと深さをみせてくる、なかなかの評論です。良心ある知識人、あるいは建前と本音が絡み合った胡錦涛の肉声が聞こえてくるかのような文章だと私は感じました。

 ――――

 さて、「胡錦涛の新聞」がこういう従来の流れに逆らう記事を出してきたことで、前回述べたように、御難続きでグラつき揺さぶられていた胡錦涛が、いよいよ巻き返しに出てきたのではないか、と私は邪推しました。流れを断ち切り、逆の方向へと向けることに成功したのか否か、これはこの記事が他の中国国内メディアにどう扱われていくかが目安のひとつになる、とも書きました。

 という訳で、現時点(2月25日22時すぎ)までの主要メディアにおける転載状況です。大手では、「新華網」、「人民網」、「新浪網」(sina)、「捜狐」(sohu)に転載されています。押さえるべきところは押さえているいるようですね。

 ――――

 ●新華網(首頁>>言論>>媒体精萃)
 2005/02/25/00:00
 http://news.xinhuanet.com/comments/2005-02/25/content_2612500.htm

 ●人民網(首頁>>観点>>媒体言論)
 2005/02/24/16:17
 http://opinion.people.com.cn/GB/1034/3200227.html

 ●人民網(首頁>>IT>>新聞>>観察・管理)
 2005/02/24/11:11
 http://it.people.com.cn/GB/42891/42895/3199365.html

 ●新浪網(首頁>>新聞中心>>綜合)
 2005/02/24/05:25
 http://news.sina.com.cn/o/2005-02-24/05255184682s.shtml

 ●新浪網(首頁>>科技時代>>互聯網)
 2005/02/24/08:01
 http://tech.sina.com.cn/i/2005-02-24/0801533932.shtml

 ●新浪網(首頁>>財経縦横>>随筆◇談)
 2005/02/24/09:48
 http://finance.sina.com.cn/review/essay/20050224/09481380232.shtml

 ●新浪網(首頁>>文化>>文字)
 2005/02/24/11:22
 http://finance.sina.com.cn/review/essay/20050224/09481380232.shtml

 ●捜狐網(首頁>>新聞頻道>>国内新聞>>媒体評論匯総>>評論匯総)
 2005/02/25/00:17
 http://finance.sina.com.cn/review/essay/20050224/09481380232.shtml

 ――――

 何だか「新浪網」が絨毯爆撃のような転載ぶりですごいです。ちなみに「捜狐網」だけは「新華網」からの転載(中国青年報→新華網→捜狐網)で、あとは中国青年報から直接の転載です。地方系のニュースサイトはまだ確認していません。

 ちなみに調べる過程で判明したのですが、実はこの記事、『中国青年報』オリジナルではなく、『第一財経日報』が元ネタなのでした。その記事も「新浪網」で読むことができます。

 ●新浪網(首頁>>科技時代>>互聯網)
 2005/02/23/06:35
 http://tech.sina.com.cn/i/2005-02-23/0635532488.shtml

 これを拾い上げてややリライトされたものが『中国青年報』オリジナルとして掲載され、上のように転載された訳です。拾い上げられた経緯を知りたいものです。それにしても以前にも『解放軍報』→「新華網」でありましたが、ちょっとリライトしただけでオリジナル扱いにできるのでしょうか。このあたり中国はさすがにルーズだという気がします。

 なお、記事の文中で槍玉に挙げられている「ハッカー賛美」記事(『中国青年報』2005/02/22)も発見しました。「人民網」に転載されたものです。参考までに。

 ●紅客の愛国の情は理解されるべきだ
 http://opinion.people.com.cn/GB/1034/3194144.html

 ――――

 で、前回の内容につき改めたいことがひとつあります。

「何たって一昨日(23日)に、『民間保釣聯合会』(尖閣奪回運動組織)のサイトが日本のハッカーに攻撃された云々、と真っ先に報じていたのが他ならぬ『中国青年報』なのです。この2日ばかりの間に、中共上層部で何らかの動きがあったのでしょう」

 と書きましたが、分水嶺は23日の「保釣サイトが日本のハッカーに攻撃された」の後ではなく、その前日、22日に掲載された上記「紅客の愛国の情は理解されるべきだ」の後ではないかと今は考えるようになっています。

 ――――

 「保釣サイトが日本のハッカーに攻撃された」という記事は、「胡錦涛の新聞」である『中国青年報』らしからぬ、一見糞青をけしかけるかのような報道という印象を受けます。しかも昨日(25日付)同紙で、

 ●保釣サイト攻撃は主に日本から
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/25/content_1037839.htm

 という続報記事まで出ました。これまた矛盾するかの如き動きです。……でもそのお蔭で、私はふと思い出したのです。今回の尖閣問題の初動期、当局は中国国内メディアに『中国青年報』の論評記事や関連報道をマスターバージョンとして使い回させていたじゃないですか(※1)。

 今回もそのケースではないでしょうか。簡単に言えば、尖閣問題のニュース(分析や解説ではなく)は『中国青年報』一途から出て、他のメディアがそれを転載するという状況がつくられているのではないかと。同紙が尖閣関連報道を一手に仕切る、ということです。

 仕切ることのできる状況であるなら、「保釣サイト攻撃される」というような記事が『中国青年報』から出ても不思議ではありません。胡錦涛自らが手綱を握ることで、尖閣報道が暴れ馬になって、世論が「反日」なり「尖閣」で盛り上がってしまうことを未然に防ぐ……ええ、これも邪推に過ぎませんけどね。


 ――――


 【※1】当ブログ「尖閣続報:やっぱり『棚上げ』希望?」2005/02/16。


コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )





 さあさあ面白い記事が出て参りましたよ。某巨大掲示板風に言えば、糞青の激昂は疑いなしの上質燃料が投下されたのです。対糞青用の燃料投下といえば、胡錦涛の広報紙、『中国青年報』しかないでしょう。

「行き過ぎた愛国主義や民族主義はよくない」

 という2003年末の楊振亜・元駐日大使の談話掲載に始まり、昨年8月のアジアカップにおける中国サポーターの非礼な振る舞いには、

「政治とスポーツを一緒くたにするな」
「こんな『愛国』には誰も拍手しない」

 との署名記事を掲載。いずれも糞青からタコ殴りにされたのは、内容がマトモだった証拠でしょう(笑)。

 その『中国青年報』がまたやってくれました。ハッカー組織「中国紅客聯盟」(紅客)の解散に伴い、その「事蹟」を評価するような記事がいくつか出たのですが(当ブログ「サイバーテロ支援国家。」2005/02/20)、それに真っ向から斬撃を加えんとする勇ましい記事です。

 ――――

 ●紅客の「愛国の情」を私は理解しない
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/24/content_1036943.htm

 簡潔にまとまったタイトルからして糞青に向けて中指を立てているかのようで、極めて戦闘的です(笑)。ええ、私の中で久しぶりに、じゃーんと銅鑼が鳴りました。その勢いのまま翻訳いきます。

 ――――

 ●紅客の「愛国の情」を私は理解しない(『中国青年報』2005/02/24)

 ハッカーとその組織について、本来なら何も言うことはあるまい。その是非ははっきりしており、法規でも十分明確にされていることである。わが国の「コンピュータ情報ネットワークインターネット管理暫定規定」「コンピュータ情報システム安全保護条例」そして「全人代常務委員会のインターネット安全保護に関する決定」によれば、ハッカーのやっていることは、インターネットの安全を破壊する違法行為なのだ。

 だがハッカー組織――中国紅客聯盟の解散にことよせて、ハッカーの功績を讃える者が出てきた。「紅客の愛国の情は受け入れられるべきだ」「(紅客の行為には)一般国民の心の中にある最も素朴で最も原始的な愛国主義の情が含まれている」「彼らの技術と精神は永遠に賞賛されるべきものだ」などと、高らかに謳い上げている(2月22日本紙)。ハッカーの行為に対してこのように賞賛し拍手を送るとは、全く呆れて物が言えない。

 ハッカーが「愛国」を自称するのは、彼らが米国や日本、台湾のウェブサイトを攻撃したからだ。彼らはそれによって米軍による在ユーゴ中国大使館誤爆事件や南シナ海における接触事故(米偵察機と中国戦闘機の接触)、また李登輝の「二国論」などに対する中国人民の抗議の意を表現したとし、その行為に民間には「よくやった」との声があふれた。だが私はかねてから思うのだが、ハッカーは所詮はハッカーであり、いかに「愛国」の上着を羽織ろうと、ハッカーなのだ。法律も法律にすぎないが、「愛国」のために法を犯せばやはり違法であり、何の例外もない。もし国を愛するのなら、国の法律を遵守して然るべきではないか。

 ハッカーとは、不法手段を用いてネットワーク世界の秩序を破壊する者を指している。「黒客」(ハッカーの中国語)と呼ばれる所以は、連中が闇に紛れてひそかに(秩序を)撹乱し、もとよりその行為を恥とも何とも思わないでいるからだ。ネットワークは20世紀の人類による偉大な発明である。それは世界を地球村へと変え、時空の隔たりは短縮され、人類の生活に革命的な変化をもたらし、生産力の発展を推進した。それゆえ、ネットワークの安全を維持し保護することは人類に共通したニーズであり、個々の責任感を有する者と国家が必ず守らなければならないルールなのだ。

 現在、多くの人の考え方が誤った方角に向いてしまっている。高尚で偉大な事業でさえあれば、手段の善し悪しを問う必要はないと考えている(誰も口にはしないが)。ハッカーに対する態度がまさしくその好例であろう。だからこそメディアは無辜のイラク市民や外国人記者を殺害するテロリストに「反米武装勢力」という呼び名を与える。多くの人がパレスチナの「人間爆弾」に対し曖昧で同情的な見方をするのも、彼らの目的が「愛国」だから、手段などは構わないということだろう。私はどんな状況であろうと、高尚で正確な目的は正当かつ合法的な道を経て実現されなければならない、という考え方を揺るがせにはしない。

 歩む道が正しいものでなければ、目標にたどり着けないばかりか、その道が地獄への掛け橋になってしまうかも知れない。その種のことは枚挙に暇がない。司法部門が容疑者に自白を強要するのは、早急に事件を解決し、法治を維持するため。コーチが非人道的な方法で選手を鍛えるのは、国に名誉をもたらすため。学生の負担を重くするのは、大学入試に合格させるため。農民の負担を増やしその金銭を剥ぎ取るのは、民を豊かにするプロジェクトを進めるため……どれもこれも体のいい旗印に守られつつ、数々の卑怯な振る舞いをやってのけるものだ。長年にわたりずっとこのザマなのだから、別に目新しいことでもないが。

http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/24/content_1036943.htm

 ――――

 これはまさしく燃料、それもとびきり上等な燃料です。……ただじっくり読み直してみると、どうも自称愛国者の反日教信者たる糞青だけに向けられたメッセージではなさそうです。最後の段落、その一気呵成の筆致が読む者を魅き込みます。それでいて最後にはポーンと突き放したような終わり方。嫌でも余韻が残ります。糞青の十字砲火を浴びた過去の説教くさい文章とは、明らかに一線を画したものです。

 この文章が「胡錦涛の新聞」に出たということを考えなければなりません。当ブログ「サイバーテロ支援国家。」が取り上げた文章、「紅客」賛美ともとれる記事(下記)は、もともとこの『中国青年報』に掲載されたのが、「新華網」などあちこちに転載されたものです。

 ●国内最大規模を称するハッカー組織「中国紅客聯盟」が解散を宣言
 http://news.xinhuanet.com/it/2005-02/18/content_2589594.htm

 今回の文章によれば、2月22日付の『中国青年報』にはより明確な「紅客」賛美記事が出たことになります。それなのに一転してこの文章。しかもその鉾先はどうやらハッカーとその賛美者たちだけに向けられたものではない様子です。これをどう考えればいいのでしょう。

 という訳で、素人の邪推と相成ります。

 ――――

 『中国青年報』は胡錦涛の新聞です。全ての記事が胡錦涛の意を汲んでいるかどうかは別として、胡錦涛の意に沿わない記事はまず掲載されないと考えていいでしょう。「サイバーテロ支援国家。」のコメント欄でも触れましたが、たとえ胡錦涛の思惑とは逆のような、反対派に迎合するような記事が紙面を飾ったとしても、それは胡錦涛の意向によって掲載されたものなのです。

 邪推の結論からいえば、このところ足元が揺らいでちょっとフラフラしていた胡錦涛が、ここにきて巻き返してきたのかな、というところです。

 思えば中国はやられっ放しなのです(自業自得なのですが)。昨年末に李登輝氏の訪日があり、ODAも廃止の方向が打ち出され、4月にはダライ・ラマ14世も来日する。加えて一年のうち最もおめでたい旧正月の元日(2月9日)に、日本政府が尖閣諸島の灯台国有化を発表し、同じ日に国会は愛知万博期間中の台湾人ノービザ法案を可決。続いて「2+2」(日米安全保障協議委員会)が「共通戦略目標」に台湾海峡問題を盛り込む。……もうずっと一方的に、顔に泥を塗られっ放しなのです。

 領土問題の「尖閣」に続いて台湾統一に直接絡んでくる「2+2」と来れば、胡錦涛外交への疑問の声が党内から出ても決して不思議ではないでしょう。それを政争の具にせんとする輩もいたでしょう。尖閣領有も台湾統一も、中共であれば誰も反対することのできない錦の御旗ですから。前回紹介したように、「尖閣」と「2+2」に関して中国国内メディアがあれやこれやと騒いだのも、あるいはそういう政争めいた、少なくとも不統一なままでいる党内の雰囲気を反映したものかも知れません。

 とはいえ、たとえ政争めいた動きがあったとしても、江沢民とて院政すら敷けない甲斐性なしですから、他は推して知るべしです。長老グループは愚痴や嫌味は言ったかも知れませんが、趙紫陽問題のときのようなパワフルな動きには出ていない模様です。動けば気取られるものですが、内外の報道にその気配が全く出ていません。

 ――――

 騒ぐだけ騒げば、疲れてしまうものです。前回書いた通りです。同時に、全人代(全国人民代表大会)及び政協(全国政治協商会議)、この「両会」と呼ばれる春恒例の大型政治イベントにおける「反分裂法」審議が目の前に迫っています。重要会議の開催を控え、北京市内ではすでに警備態勢が強化されているそうです。

 そういう空気とタイミングを巧みに捉え、胡錦涛は「尖閣&2+2」から「反分裂法」へと焦点をすり替えることに成功したか、すり替えるべく動き始めたのではないか、と思うのです。その過程で党内の意思統一も取りあえず達成、あるいは達成されつつあるという印象です。200名以上の死者を出した炭坑事故も利用したでしょう。事故現場である遼寧省の副省長のクビが飛ばされましたね。党内の空気を肅然とさせる上では効果があったと思います。

 「尖閣&2+2」にしても、胡錦涛を叩く一方で、党内には緊張が走ったでしょう。そこは「中共人」ですから、脊髄反射とそれに名を借りた権謀術数の時期が過ぎれば、「中共の危機」ということで団結する方向に向かうでしょう。そろそろそういう時期に入ったのではないか、流れが変わったのではないか。……あるいは胡錦涛が流れを変えるべく動き出したのではないか、ということを今回の文章は感じさせます。

 糞青だけが相手でない様子の記事だけに、なおさらその印象が強いです。何たって一昨日(23日)に、「民間保釣聯合会」(尖閣奪回運動組織)のサイトが日本のハッカーに攻撃された云々、と真っ先に報じていたのが他ならぬ『中国青年報』なのです。この2日ばかりの間に、中共上層部で何らかの動きがあったのでしょう。そして、上述したような方向に党が取りあえずまとまりつつあるか、あるいは胡錦涛がそれを目指して動き始めているのではないか、と思うのです。

 それが確かな流れとなっているのかどうか。その目安のひとつは、この記事が他の中国国内メディアでどう扱われるかということになるでしょう。


 ――――


【内緒】実は他にも密かに注目している記事が1本あるのですが、これはあと半日か1日ばかり寝かせておいて様子をみたいと思います。



コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )





【シリーズ:反日騒動2005(01)】



 そろそろ時節柄の話題に戻った方がいいのでしょうか。

 尖閣諸島の灯台国有化問題とか、2+2(日米安全保障協議委員会)が「共通戦略目標」に台湾海峡問題を織り込んだという一件のことです。

 中国国内メディアは相変わらずいろいろ騒いでいるようですが、事態そのものはそれほど動いているようにはみえません。備忘録として、下に私の手元にある関連記事(直接関係があるもの)を列挙します。たくさんありますよ。

 ――――

 ●2005/02/17

 台湾当局は釣魚島で日本との取り引きを狙う(国際先駆導報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/herald/2005-02/17/content_2586323.htm

 日本、釣魚島の灯台国有化の影に軍事目的――軍拡の口実に(国際先駆導報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/herald/2005-02/17/content_2586413.htm

 釣魚島の背後に戦略的狙い(新京報→人民網)
 http://www.people.com.cn/GB/news/37454/37461/3183519.html

 ●2005/02/19

 日米「台湾問題」を織り込む「共同戦略目標」をきょう発表へ(新京報→人民網)
 http://world.people.com.cn/GB/14549/3187490.html

 ●2005/02/20

 台湾海峡問題が日米の共同戦略目標に――わが国は断固反対(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/20/content_2596048.htm

 日米が「2+2」開催――北朝鮮核問題など討論、声明発表(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/20/content_2596205.htm

 日米が新戦略同盟で合意、初めてわが国の台湾問題に言及(人民網)
 http://www.people.com.cn/GB/junshi/1077/3188551.html

 外交部:台湾問題に言及した日米の共同声明に中国は断固反対する(新華網・人民網)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/20/content_2597110.htm

 ●2005/02/21

 日本外務省報道官「中国を激怒させるつもりはない」(中国青年報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/21/content_2598055.htm

 中国民間保釣聯合会が香港で会社設立(中国青年報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/21/content_2598007.htm

 中国は絶対に如何なる圧力にも屈しない――日米は台湾海峡に手を出すな(人民日報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/21/content_2598040.htm

 警戒すべき「共同声明」、日米は台湾海峡から手を引け(人民日報海外版→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/taiwan/2005-02/21/content_2597971.htm

 警戒すべき「共同声明」、日米は台湾海峡から手を引け(人民網→人民日報)
 http://tw.people.com.cn/GB/14811/14869/3189307.html

 日米共同声明が初めて台湾海峡情勢に「関心」(中国青年報)
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/21/content_1034566.htm

 日米共同声明が初めて台湾海峡情勢に「関心」、その背景とは(中国青年報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/21/content_2598592.htm

 日米共同戦略が初めて台湾海峡問題を織り込んだことに注目集まる(北京青年報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/21/content_2598148.htm

 日米、「中国の脅威」に言及せず――じわじわと包囲網形成を狙う(参編→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/21/content_2598901.htm

 日米声明は東アジア政治情勢の不確実性を高める(新京報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/21/content_2598940.htm

 日米安保声明は自他共に傷つけるもの(新京報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/21/content_2598961.htm

 日本が台湾に関心、各国は日本に注目(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/21/content_2602849.htm

 ●2005/02/22

 専門家「台湾に言及した日米声明、台湾危機を爆発させる可能性も」(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/taiwan/2005-02/22/content_2602040.htm

 日米共同声明が台湾海峡情勢に「関心」、中国は台湾への言及に反発(中国青年報→人民網)
 http://world.people.com.cn/GB/14549/3190002.html

 釣魚島問題、日本の漸進式占領に警戒せよ(環球→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/globe/2005-02/22/content_2603297.htm

 小泉首相「中国との新たな摩擦を作るつもりはない」天然ガス共同開発を希望(中新網→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/22/content_2603300.htm

 日米共同戦略の台湾言及、日本が中国側に説明へ(中新網→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/22/content_2606797.htm

 学者:日米は主権に干渉し人権を侵犯している、中国人民は絶対に許さない(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/22/content_2606086.htm

 外交部定例会見、朝鮮半島問題や日米連合宣言に言及(人民網)
 http://politics.people.com.cn/GB/1027/3194682.html

 東シナ海での資源採掘に日本が停止要求、中国側は拒絶(中国日報網→新華網→新華報業網)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/22/content_2606086.htm

 日本政府の釣魚島灯台接収に抗議を――弁護士が署名活動呼びかけ(華夏時報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/22/content_2602055.htm

 台湾軍当局、今年の漢光演習での日米台共同兵棋演習実施を否定(中国台湾網→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2005-02/22/content_2604375.htm

 ●2005/02/23

 日本の釣魚島灯台「接収」、国際法に反する一方的行為(人民網→人民日報)
 http://world.people.com.cn/GB/1030/3195312.html

 保釣聯合会サイトに攻撃、修復作業中(中国青年報→新華網)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/23/content_2606762.htm

 ――――

 以上、「新華網」と「人民網」などを中心に漁ったものですが、他にも見落としたものがあるでしょう。あと「人民網」とだけあっても「新華網」に転載されているケースや、その逆もあります。

 ――――

 さて、御覧の通り非常に騒がしいのですが、実はただ騒がしいだけですね。中国人(特に南方人)の喧嘩のように、手を出すことなく延々と口喧嘩が続く、あれのようなものです。罵倒するのみで手を出さない。「2+2」及び「尖閣」に関しては、事態そのものは動いていないように思います。

 だいたい上記の記事の中で、政府の公式見解というものがどれほどあるでしょうか。政府としては孔泉・外交部報道局長の記者会見のみです。党中央ということで考えれば、『人民日報』の署名論評を含めてもいいのですが、これは非公式な態度表明です。いずれにせよ、

「反対する」
「抗議する」
「許さない」

 とは言うものの、「2+2」及び「尖閣」のアクションに対し、具体的に何かをやる、ということには全く言及されていません。中国政府が唯一動いたケースは、東シナ海資源紛争で日本側の採掘停止要求を拒否したことのみです。

 外交部の会見でいえば、「2+2」の共同戦略目標の内容に対決姿勢をにじませた2月20日の脊髄反射に比べ、2月22日のそれは随分ソフトに、トーンも低いものとなっています。当然のことながら、「反分裂法」(※1)に関して中国から内容説明の特使が日本へ派遣された、という報道はどこにもありません。

 ――――

 尖閣諸島問題ついては、当ブログ「尖閣続報:やっぱり『棚上げ』希望?」(2005/02/16)で紹介した論評記事、

 ●今回の日本側のアクションに対する署名論評(中国青年報)
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/16/content_1032297.htm

 この基本線からズレていないように思います。台湾問題の騒ぎの中で埋没している、というより「埋没させている」ような印象です。

 ときどきフォローされるように関連記事が出ますが、「会社設立」「署名呼びかけ」「サイトに攻撃」など、いずれも民間の動向や「専門家」の見解を紹介するのみで、政府がどう動く、というものは一切ありません。まさか「尖閣奪回」行動を政府が起こす訳にもいかないでしょうから(笑)。

 といって、民間組織が上陸目的に船を出そうとすれば、胡錦涛は圧力をかけてその動きを潰すでしょう。「なんちゃってデモ」以上「船出」未満、このあたりが民間組織に対する許容範囲かと思います。

 ――――

 まあ、中国側もそろそろ騒ぎ疲れてくる頃合でしょう。香港の親中紙『香港文匯報』によると、「反分裂法」は3月6日に全人代で審議されるようですから(※2)、そこが次の注目点となります。あと10日ほどですね。胡錦涛政権としては、そろそろ手綱を引き締めてマスコミの報道に統制をかけ始めるタイミングかと思います。

 とりあえず、この「反分裂法」の中身が焦点となるでしょう。内容次第ではまた何らかの動きが日米から出てくる筈です。

 中国にとっては動きにくいこの時期に、日本には東シナ海資源紛争で何らかのアクションを起こしてほしいところなんですけどね。


 ――――


 【※1】台湾独立に向けた動きに対する武力行使に法的根拠を与えるものとされる法案。

 【※2】http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0502230001&cat=002CH



→反日騒動2005(02)へ





コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )





 前回に引き続き大学絡みのニュースなんですが、今回は卒業後の話です。大学ネタに関しては素材が豊富で、どれから手をつけようか迷うほどです。

 日本でも報道されたニュースもあります。

 ●就職率に水増し疑惑 中国、大学生の就職難で(共同通信)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=MRO&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2005022201001607

 で、本当はこの記事を遡上にと考えていたんですけど、「就職難」つながりで資料を集めていたらもっと面白いものがあったので、今回はそちらの方を。

 ――――

 ●大卒者に激増する「傍老族」、富の偏在という歪んだ社会を象徴
 http://finance.sina.com.cn/xiaofei/shenghuo/20050222/10061373572.shtml

 前回、中国の大学で貧乏学生と金持ち学生の二極分化が進行していると紹介しましたが、これは金持ち学生の話です。

 ●蝶よ花よと育てられた「小皇帝」(一人っ子)世代
 ●親に経済的余裕がある
 ●潤沢な仕送りに頼って贅沢三昧の大学生活

 ●でも大学新卒者は就職難!

 ……という流れになれば、必ず出てきそうなものじゃないですか。ええ、果たせるかな出てきましたよ。ニートです。特に大都市圏で増えているようです。

 それでは記事をかいつまんで……と思ったのですが、内容が濃くなかなか読みごたえのある面白い記事だったので全訳してみました。例によって翻訳の精度は期待しないで下さい。

 元ネタは今日の『市場報』(2005/02/22)、これを新浪網が即日転載したものです。

 ――――

 ●大卒者に激増する「傍老族」、富の偏在という歪んだ社会を象徴
 (『市場報』2005/02/22)


 就業圧力の増大は数多くの富裕層の大学生を家でブラブラさせるようになった。挑戦することを恐れ、社会から脱落してしまうこの一群「傍老族」がいま、懸念されるようになりつつある。

 ■就職難と就職忌避

 旧正月が終わり、大学4年生による就職活動のピークがまた巡ってきた。ここ数年、大学卒業者数が増加の一途をたどるにつれ、就職難が多くの新卒者にとって頭を悩ませる問題となっている。だが多くの学生が就職難を嘆く一方で、仕事に就こうとしない卒業生の数が密やかに増えている。大学時代の専攻を深めようとする一部の学生を除けば、相当数の学生が家でブラブラすることを選び、就職しようとする意欲を持たずにいる。衣食住は全て親頼みだ。

 こうした一群の出現に少なからずの経済学者や社会学者が関心を持ち、この現象を社会的資源を浪費させ、同時に社会の負担を増加させるものだとみた。そして、この一群に対して「傍老族」(親に寄りかかる者たち)という呼び名が生まれた。

 就職して2年になる大卒者の話によると、彼女の在学当時の同級生の間でも仕事に就かないという現象が一般的で、卒業後2年を経てもなお無職のままだという。こうした同級生たちについてこの女性は、

「あれは仕事がみつからないんじゃなくて、みんな社会人になりたくないってこと。親の方も経済的に余裕があるから、急いで仕事に就く必要もないし。中には親に言われて何かの課程に参加したり、外国語や別の専門を学んでいる人もいるけど、これは充電みたいなものでしょ」

 同窓生の見方に比べて、親の気持ちは随分違うようだ。ある「傍老族」の母親は息子について心配で仕方がないといった様子で語る。

「うちの息子は卒業してから一日中ブラブラしているんですよ。いくつか仕事を試してみたんですけど、あれが不満だこれが不満だで。いまは毎日インターネットをするか長電話するか、それでなければ外に遊びに出かけてますよ。同じクラスの子たちが社会人になって1年ちょっと、みんな頑張っているのに……。本当に心配なんですけど、息子は一向に慌てる様子もなくて」

 ■就職浪人のケースも

 「傍老族」はここ数年増加する傾向にあり、特に北京や上海などの大都市ではこの現象が顕著になっている。いくつかの大学の就業指導センターにあたってみたところ、今年の新卒者のうち就職先を確保した学生は70%。残り30%の学生のうち、少なくとも1割の学生がしばらく就職活動をしない意向だという。

 しかし一部の大学の在学生たちは、現在大学側が発表している就業率はある程度水増しされたものだと証言している。学校側は新卒者の就職率には神経質になっており、就職先のない学生はは大学の意向で雇用契約(訳者注・形式だけ)を結んで、あとは家でゴロゴロしているというのだ。このケースも含めれば、「傍老族」が新卒者に占める割合はより高いものとなる。

 中国人民大学労働人事学院の2004年における新卒者約120名のうち、就職しなかった者は18名。このうち何人かは出国する予定(訳者注・留学など)だが、しばらく就職活動を行うつもりが全くない者も何人かいる。「何年か待てば仕事も探しやすくなる筈」というのが「傍老族」の一般的な考え方のようだ。

 だが雇用する側は、「傍老族」という特殊な一群について厳しい見方をしている。

「『傍老族』なんて要らないですよ」

 とは、某社の孫社長。会社側が求人に際して第一に敬遠するのが、新卒時に就職活動に力を入れない、自由で散漫なこの種の大卒者だという。

 北京地下鉄科学研究所の人事部門に勤める董氏は、

「そういう卒業生は就職活動に対する積極さに欠けていて、就職しても楽ばかりしたがって苦労を嫌う」

 と話す。大学4年生は早くから就職に備えておくべきで、充電期間なんて言っている人は自分に自信がないだけ、というのが董氏の見方だ。また、ある程度働いたら留学する計画で、腰かけのつもりで就職しようとする者もいるが、そういう人を採用すれば、会社に人的コスト面での損失をもたらすだろう、とも指摘している。

 ■背景には富の偏在という歪んだ経済成長

 「傍老族」とて、いつまでも親に頼っていられる訳ではない。北京市朝陽区人材交流センターの陳氏は、数年後にはこの一群がいくつかに枝分かれするだろうと予測する。一部の「傍老族」は留学に出され、あるいは親の力で就職する。そのどちらでもない者は、長期間社会から離れてしまっているため、仕事を探そうにも思うような就職先は見つからないだろう、というものだ。

 少なからずの学者は、「傍老族」という現象が出現した主な原因は、収入格差が広がるばかりの、富が偏在するという歪んだ成長にあるとみている。恵まれた家に育った若者は働かなくても衣食住に不安を感じることがなく、しかも小さいころから贅沢三昧で育てられ、それに慣れてしまっている。就職したとしてもその収入では従来通りの消費生活を維持するには足りない。それならいっそ、ということで親のスネをかじり続ける。これについて中国社会科学院社会学研究所の樊平・研究員は、

「『傍老族』はたいてい経済的条件のいい家庭に育っているから、両親の稼ぎに頼っても衣食に困らない生活を続けることができる。社会の中で一部の人の富が急速に成長し、その家庭あるいは家族のライフスタイルに影響を与えるまでになっている。『傍老族』現象はそれを示すものだ」

 と指摘。「こういう人たちは仕事に就くか、就かないでいるかを選択する機会、条件そして資産がある」とした。

 一方で別の見方をする専門家もいる。「就職しない大学生」という現象には就職難と大学側の学生募集枠拡大という背景もあるので、大袈裟に騒ぐべきではない、というものだ。

 中国人民大学労働人事学院の易定紅・副教授は、「傍老族」の出現とその層の拡大はごく正常な現象だとする。一般に有名校の学生は仕事条件に対する期待感と要求が高めで、特に本科生の募集枠が拡大されて以降、就職市場における求人数が新卒者の需要に追い付かなくなっている。このため、恵まれた家庭に育った学生が仕事に就かないケースも増えているのだという。

 ではもし働かないままの生活を続けていく「傍老族」が出ればどうなるのだろうか?樊研究員の見方は次のようなものだ。

「もし家庭の経済的状況が変化するか、子供の躾に対する親の考え方に変化が起きれば、『傍老族』も自分から、あるいはやむを得ず、社会での競争や生存するための環境に適応しようとするようになる」

 樊研究員はまた、そのことが社会の不安定要因を増やすことにはならないが、そういう家庭では価値観についての考え方の違いが際立ち、激しくぶつかり合うようなこともあるだろうとの考えを示した。

 http://finance.sina.com.cn/xiaofei/shenghuo/20050222/10061373572.shtml

 ――――

 とうとうニートまで出てきました。記事の指摘する通り、富の偏在、拡大する一方の貧富の差が最大の背景でしょう。大学の募集枠拡大に求人数が追い付かず、構造的就職難を生んでいるのも原因、という指摘もあり、色々考えさせられます。

 ひとつだけ記事に不足を言うとしたら、数字があまり出てこないところでしょうか。可処分所得がどのくらいの家庭になると「傍老族」を養えるのか、そのあたりへのアプローチが欲しかったところです。……でもまあ新現象を取り上げた記事ですから贅沢を言うのはやめて、経済学者・社会学者の研究発表を待つことにしましょう。

「傍老族」が就職すればたぶんパラサイト・シングルになりそうですね。いま風の言葉を使えば「傍老打工仔」てな感じでしょうか。「打工仔」は広東語ですけど、「新華網」あたりでも普通に使われているので北京語に定着したようです(ああ嘆かわしい)。

 ――――

 それにしてもニートが出現するのですから驚きですね。中国も豊かになったものです。ごく一部だけは。


コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )





 ここ数日、香港・台湾メディアは「台海問題」で大賑わいです。ええ、例の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で日米の「共通戦略目標」に台湾海峡問題が盛り込まれたという一件。賑わうに値する大ネタではあります。

 ただ香港と台湾はそれぞれ伝統的なスタイルを反映して騒ぎ方が異なっています。香港は中国同様に反日基調、台湾は歓迎ムード中心、といったところでしょうか。

 中国はまだ脊髄反射の段階で、例えば孔泉・外交部報道局長のコメントや日米に反発する新華社電などを国内各メディアが使い回しています。

 使い回すといってもあくまでも脊髄反射の記事ですから、この問題についてどういう姿勢で臨むか、その点で党上層部の腰が定まったという印象はまだありません。このニュース、チナヲチの観点からはもうちょっと時間を置いて眺めてみたいところです。

 という訳で、今回は時節に背を向けて一見悠長な、しかしやはり見逃すことのできない話題です。

 ――――

 標題の「格差」とは貧富の差のことで、当ブログでも取り上げたことのある問題です(※1)。貧富の差といえば、まずは都市と農村との格差。一方で、都市の中でも収入に格差があり、それが基本的に拡大する傾向にあることは周知の通りです。

 で、その「貧富の差」が最近は大学にも持ち込まれているという話題……すでに旧聞に属するネタですが、『中国青年報』が取り上げています。

 ●貧富の差が直撃、揺れる「象牙の塔」
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2004-09/06/content_943964.htm

 これによると、

 ■学生同士の付き合いは経済条件で決まる。
 ■貧乏学生はクラブ活動になかなか参加できない。
 ■貧乏学生は自分を卑下するなど心理的な影響が出ている。

 ……とのこと。

 ――――

 それ以前の問題として触れておかなければならないのは、学費の一部が個人負担となったことで、貧困家庭にとって大学入学はいよいよ狭き門となっていることです。

 前にも書きましたが、秀才であっても経済的な理由で進学を諦めるケースが相当あるようです。ニュースとして記事になったものでいえば、進学させるために親が営利誘拐に走ったり、保険金を子供の学費に当てようと自殺を図ったり、村の俊才を何とか進学させようと村人たちがカンパ活動をやったり。

 ……ところが、幸いにして入学できたとしても、キャンパスでまたまた貧富の差に由来する壁が貧乏学生の前に立ちはだかるという訳です。

 ――――

 ■学生同士の付き合いは経済条件で決まる。

 要するに貧乏学生は貧乏学生同士、金持ち学生は金持ち同士で友達付き合いをするということです。上記の記事によると貧乏学生の毎月の生活費は100-150元。これに対し金持ち学生は毎月1000元以上の生活費を親から与えられます。

 携帯電話、PC、デジタルカメラといった金持ち学生の必須アイテムは、もちろん貧乏学生には全く無縁のものです。「可処分所得」がこれほど違えば、ライフスタイルに差が出ない方がむしろおかしいですね。女子大生ならば化粧品やファッションでも別世界ということになるでしょう。この壁を突き破って付き合ってみても、「購買力」の違いもさることながら、まず話が合わないのではないでしょうか。

 ――――

 ■貧乏学生はクラブ活動になかなか参加できない。

 「クラブ活動」の原文は「学生組織」、最近の大学を知らないのでこの訳語が適切かどうか自信がありませんが、同好会やサークルのようなものかと思います。

 貧乏学生がその種の活動に参加出来ないのもおカネの問題です。どんな内容の同好会ないしサークルであれ、付き合い上、お茶代ぐらいは必要になるでしょう。そういう最小限の必要経費すら捻出できないので、指をくわえて見ているしかないということになります。

 記事によると、いわゆる貧乏学生は内陸地区及び農村、または都市の低所得層の出身だそうです。金持ち学生はといえば、政府や金融機関の官僚や私営企業主を親に持つ学生が多いということです。

 ――――

 ■貧乏学生は自分を卑下するなど心理的な影響が出ている。

 同じ学生同士でこれほど差がついてしまうと、そうなるのも無理のないことでしょう。貧乏学生といっても実感としてのイメージが湧かないかも知れませんが、実例を挙げますと、

 ●交通費がないため旧正月に帰省できない大学生、7000人に
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/05/content_2549375.htm

 このほか、貧乏なためアルバイトで水商売をするしかない女子大生、生活費捻出のためアルバイトでシシカバブ(羊肉の串焼き)の屋台を出して奮闘する学生、そして食費を浮かすために残飯漁りをする女子大生のニュースもありました。

 一方で金持ち学生は自分のクレジットカードまで持っている優雅さで、むしろカード地獄が懸念されているくらいです。相部屋の学生寮を嫌って校外に部屋を借りて住んだり、そこで恋人と同棲したりというケースまであります。

 この差は一体何なのでしょう?

 ――――

 何だか学内で階級闘争が勃発しても不思議ではないように思います。

 今回はちょっと雑になってしまい申し訳ありません。このテーマはもう少し資料を揃えて、本腰を入れて取り組むつもりです。


 ――――


 【※1】貧富の差拡大を裏付け――浙江・北京レポート(2005/01/11)
     広東省では中流意識が台頭(2005-01-12)
     今年は失業問題が熱い!?(上)(2005-01-13)
     今年は失業問題が熱い!?(下)(2005-01-14)


コメント ( 24 ) | Trackback ( 0 )





 毎日中国国内メディアの報道に接していると、ときどき、胸の悪くなる記事というものにぶつかります。

 その大半は日本に関する報道や評論なのですが、記事というには余りに悪意剥き出しで、その醜悪さと水準の低さは、「反日」というより「病的な嫌日」というべきものかも知れません。ええ、記者の資質如何ではなく、医学で扱うべき範疇に属するのではないかと。

 糞青が反日サイトでわめくなり、私のようにブログのような場を使って床屋の政談をするのとは違います。公器です。新聞は民度の反映とも言われますが、結局はそういうことなのでしょうか。

 民度民度で一刀両断にするのもどうかと思いますけど、華人圏で仕事をしていて痛感したのは、プロの仕事として認められる水準は、民度に比例するのかも知れないということです。私の属している仕事世界だけでなく、これは多くの業界に当てはまるのではないでしょうか。

 言うまでもなく、「胸の悪くなる記事」というのはそれを書いた記者の資質を疑えば済むことではありません。その記事を紙面に載せることを許したデスクがいて、デスクにそうさせるマスコミの編集方針があって、さらにマスコミにそういう編集方針を選択させる(強要する)政治体制と社会環境がある、ということになります。そういう政治体制や社会環境をとりあえず許容しているのは、やっぱり民度ということになるのかなあ、と思ったりします。

 ――――

 前置きが長くなりましたが、実は「胸の悪くなる記事」よりもひどいものがある、ということを言いたいのです。人間なら人格、国家なら「国格」とでも言うべきでしょうが(中国語ではそうなります)、一読すると胸が悪くなることをすっ飛ばして、いきなりその「国格」に呆れて物が言えない、一種絶望的なものを感じさせる記事です。

「ダメだこりゃ」
「これは救いようがないね」

 口に出せばそんなところでしょうか。最近、うっかりそういう記事にぶつかってしまいました。

 ●国内最大規模を称するハッカー組織「中国紅客聯盟」が解散を宣言
 http://news.xinhuanet.com/it/2005-02/18/content_2589594.htm

 『中国青年報』に出た記事を「新華網」が転載したものです。短い記事なので粗く訳してしまいましょう。

 ――――

 ●国内最大規模を称するハッカー組織「中国紅客聯盟」が解散を宣言

 国内最大規模、かつ最も古い歴史を持つと称する世界ランキング5位のハッカー組織「中国紅客聯盟」が、このほど解散を宣言し、ホームページも閉鎖した。

 「紅客聯盟」の創始者は公開書簡において、「紅客聯盟」はずっと名前だけの組織で実態がなく、もう存在する必要がなくなったと指摘。また、技術面で「紅客聯盟」を支えていたのはわずか3人に過ぎなかったと明かす一方、メンバーも激情に突き動かれる年齢でもなくなり、以前のような闘志を持てなくなったと表明。また、その活動に触発されたり、また活動内容を新鮮に感じる人もいなくなった、としている。

 これに対し、中国社会科学院新聞/放送研究所の閔大洪・インターネット/デジタルメディア研究室主任は2月12日、「中国ハッカーの熱い時代に終幕――『中国紅客聯盟』解散に寄せて」と題された文章をブログチャイナ(博客中国)に発表。この文章によると、1998年から2002年にかけて、中国ハッカーは海外に対し6回にわたる大規模な集団的攻撃をかけている。そのいずれもが当時の政治的事件を背景にしたもので、愛国主義及び民族主義的気分に基づいた反応だった。

 閔主任の文章はこれについて、「理性の角度からみれば、ハッカーによる攻撃行為の一切は責められて然るべきものだ。だが感情の角度からみれば、中国ハッカーの6度にのぼる攻撃にはいずれも理由があり、『そっちが手を出さなければこっちも手を出さない。だが手を出してきた者に対しては必ず反撃する』という姿勢を強烈に体現したもの」と指摘している。

 「中国紅客聯盟」は2000年12月31日に成立し、一時は会員数が8万人を突破。その65%は大学生で、責任者は今年21歳になったばかりだという。

 http://news.xinhuanet.com/it/2005-02/18/content_2589594.htm

 ――――

 上述した通り、この記事はまず『中国青年報』で掲載され、それが「新華網」に転載されました。いつも触れていることですが、『中国青年報』といえば共青団(共産主義青年団・ユース共産党のようなもの)中央の機関紙であり、共青団系列の人脈に連なる胡錦涛総書記の、いわば広報誌。記事ひとつひとつに胡錦涛が目を通してはいないでしょうが、胡錦涛の意に沿わない記事はまず掲載されないでしょう。それを転載した「新華網」は国営通信社・新華社の電子版です。

 そしてこの記事。ハッカーの行為を全否定することなく、むしろ肯定しているかのような印象を与えます。共青団中央と国営通信社という看板を背負っている以上、これは記者の価値観のみによるものではありません。記事文中に「中国紅客聯盟」という名前が出て、その活動に中性的ないし好意的な評価を与えたことは、「中国紅客聯盟」が事実上お上公認の民間組織となったことを意味するものです。もっとも組織自体は解散してしまいましたから、この記事はお上による解散へのはなむけ(今まで良く頑張った、というお褒めの言葉)ということになるのでしょうか。

 問題は、この記事が閔主任の「中国ハッカーの熱い時代に終幕――『中国紅客聯盟』解散に寄せて」なる文章から引用して、このハッカー組織が6度にのぼる攻撃を行ったことを認めていることです。これって遅ればせながらの「犯行声明」じゃありませんか?そして共青団中央(胡錦涛系列)と国営通信社はこの記事で「犯行」を半ば評価している。これは一体どうしたことでしょう。

 ――――

 「6度にのぼる攻撃って何?」という疑問については、基本的に中国ハッカーに好意的なスタンスに立っている閔主任の「中国ハッカーの熱い時代に終幕――『中国紅客聯盟』解散に寄せて」が画面写真つきで詳しく説明してくれます。

 実は『中国青年報』-「新華網」と転載された上の記事には、この閔主任の文章そのものへのリンクも張られています。全く至れり尽せりです。そのリンク先も「新華網」内です。要するに、国営通信社は閔主任の文章を掲載している以上、その内容を否定していない、または肯定している、ということです。もちろん文中で言及される「6度にのぼる攻撃」も含めてです。

 ●「中国ハッカーの熱い時代に終幕――『中国紅客聯盟』解散に寄せて」(閔大洪)
 http://news.xinhuanet.com/newmedia/2005-02/18/content_2590831.htm

 「6度にのぼる攻撃」は下記の通りです(攻撃対象国/年次/抗議内容)。

 [1]インドネシア(1998年・現地華僑排斥暴動)
 [2]米国(1999年・在ユーゴ中国大使館誤爆事件)
 [3]台湾(1999年・李登輝氏が「二国論」を発表)
 [4]日本(2000年・南京なんたら事件に関する最高裁での敗訴など)
 [5]日本(2001年・小泉首相の靖国神社参拝)
 [6]米国(2001年・米偵察機と中国戦闘機の接触事件)

 ――――

 実は「中国紅客聯盟」の解散については2月8日に香港の親中紙『香港文匯報』が報じたのを目にして「おやおや」と思いました。「サイバーテロを容認するんかい>香港の親中勢力」というところです。

 ところがそれから10日ばかり経って、今度は胡錦涛筋(中国青年報)と国営通信社(新華社)がこの有様です。改めて言わせてもらいます。

 中国はサイバーテロを容認するんかい。それじゃテロ支援国家と同じだな。

 ……実際には容認どころか褒めてさえいる訳ですが。

 ――――

 さてチナヲチのオタとしては、なぜこの種の文章がこの時期に出てきたのか、ということを考察する必要がある訳ですが、はっきり言ってよくわかりません。

「中国の事象に無理に整合性を求めてはいけません。わからないところはわからないでいいんです」

 という大学時代の恩師の言葉に従うまでです。

 ただ国内向けのメッセージだろうなとは思います。「サイバーテロを容認」なんて文章、外国には恥ずかしくて見せられたもんじゃないでしょう。

 国内向けであれば、尖閣諸島に対する日本側のアクションに何ひとつ対応できない中国政府への国民(というより糞青)の批判を、少しは鎮静させようとしたものでしょうか。胡錦涛としては保釣運動(尖閣奪回運動)の民間組織が現場へ船を出すようなことは避けたいところでしょうから、そういう動きは断固として阻止する代わりに、先にこの記事で機嫌をとっておこうとするものでしょうか。……あるいは国内向けでさえなくて、実は胡錦涛自身の鬱憤晴らしだったりして。

 やっぱり、よくわかりません。



コメント ( 12 ) | Trackback ( 0 )





(「上」の続き)

 さて後半に入ります。前回紹介した李怡氏の文章に対する若い世代の反応から、標題にあるように、香港人の眼に映る「中国」なるものの一例を垣間見てみようと思います。

 ――――

 最初に種明かしをしておきますと、香港に「GAF」というサイトがありまして、そこの「雑談板」(正しくは「清談館」)に先日、李怡氏の文章をコピペしたスレが立ち、それに様々なレスがついた、その様子を紹介するものです。

 ですから深い議論などを期待してはいけません。その代わり、特別な政治的意識を持たない、ごくフツーな香港の若い世代の声を割とよく反映していると思います。

 とはいえこの「雑談板」は、そういう連中が連中なりに政治や社会を語る場としても使われていて、時事問題を評するスレも立ちますし、例えば一昨年の歴史的な「七一大遊行」(50万人デモ)では、OFF会のように時間と場所を約束して集合し、デモに参加したりもしました。

 香港には「2ちゃんねる」のような軸になる巨大掲示板がないため、趣味などを主題とする掲示板にそれぞれ「雑談板」がついていて、そこで時事問題が語られたりします。

 ――――

 で、「李怡專欄」スレの話です。

 http://www.gaforum.org/showthread.php?t=108809

 まず前回紹介した文章がコピペされていて(前回の和訳文はかなり端折っているので、原文にあたりたい方はここで全文を確認するといいかと思います)、その後にトピ主のコメント、そしてレスがついていきます。

 それではトピ主のコメントから。問題意識の強いタイプのようです。ちなみに頭につく数字はは便宜上のレス番号です(全てのレスを訳出した訳ではありません)。

 ――――
#1

李氏の書いたことをやや膨らませて言えば、こういうことじゃないかな。

大陸(中共)が今日のようなモラルハザードを招いた首魁、そして創始者がいずれも毛沢東であることは、まずは争えない事実だと。そして現在の道徳の崩壊ひいては滅亡、といった状況は、数十年という長い時間を経て形成された。

それは、中共が政権を樹立して、毛沢東がその初代として金の椅子に座ったことに始まり、現在の四代目までの間に形作られた「天下は自分のためのもの」という考えを持つ、銃口によって守られた利益集団(連中はいまだに一党独裁を堅持している)によって形成されたといっていい。奴らは自分たちの腐敗と反動統治を維持するために、道徳を捨て去り権謀のみを考える。目的のためには手段を選ばないってことだね。

だから、大陸のモラルハザードのような局面を救って再構築することを相変わらず連中に任せ、現在の政権と制度が『自己改善』することを期待するのは、『縁木求魚』(木によりて魚を求む=無駄なこと)ってことだ!中共の体制側にだって、話の通じる道理のわかる人もいる。でもそういう人たちは何もすることもできなくて、タイタニック号が沈むときに鐘を叩いていた、ああいう役割を演じることしかできない。

 ――――
#2

今日読んだよそれ。きっといちばん怖いのは……そういう状況をおかしいと思わなくなることだろうな。

 ――――
#3

しょうがないよ。いまの中国は五千年の文化を土台にしたもんじゃ全然ないから。もう一回革命を起こさない限り希望はないね。

 ――――
#4

>内地で車に乗ったことのある人には常識だが、ドライバーが最も長じているのは、
>クラクションを鳴らすことと前の車を追い抜くこと。一方で歩行者や同乗者の安
>全に留意する意識は欠けているのが一般的だ。

これはホントそうだね。先月旅行で北京に行ってきたけど、車はホント無茶苦茶。道を渡るのに気を付けないと危ない。

 ――――
#5

>>4
俺も北京に行ったことがあるけど、市内のドライバーは交通規則をよく守っていると感じたな。15年前の深センに比べれば随分よくなってるよ。お前まさか、赤信号でも車は曲がってくるっていうこと、知らない訳じゃないだろ?

個人的には作者のいうモラルハザードに同意。昔の中国人には惻隠の情があったし、義理人情もあったからな。いまの大陸人は、もうカネのためなら何だってやるから。まあこれは何十年も貧乏してたのが急に金持ちに成り上がった後遺症だろうな。

 ――――
#6

香港の50-60年代の映画でさ、呉楚帆の「ああこれは人が人を食べる社会……」って台詞で始まるやつ、あれを思い出したよw

 ――――
#7

>>5
俺も大陸で仕事するとき、車に乗るといつも運転手に言ってる。「急がなくていいから、ゆっくり走れ」って。でもあいつら全然言うこと聞かない。センターラインはみ出したり、突然ターンしたり。

大陸ではさ、ハンドルを回せてアクセルを踏めれば運転ができるってことになるからな。免許のテストのときだって、教官が代わりにハンドル握ってやることとかあるし。

おまいら大陸で車に乗ったときは絶対眠るなよ。

 ――――
#8

>>2
また炭坑事故起きたしな……。

 ――――
#9

>>8
すごい事故が起きてもさ、自分ではあまり何とも思わない。これって考えみたら怖いよね。
今回の阜新炭坑の事故もさ、新聞をちょっと見て、それだけ。

 ――――
#10

>>9
それにしても、どうして中国の炭坑だけあんなに危ないんだ?

 ――――
#11

>>10
貧乏だと命の値段も安くなるんだよ。

 ――――
#12

大陸は開発されていないところばかりだからな。
だから食品加工とかエネルギー採掘とか運送業とか、何でもやるだけで急成長ってことになる。さすがは「宇宙強国」w

 ――――
#13

>>9
もうとっくに麻痺してるよ。大陸は毎月必ず何かの大事故が起きてるから。

 ――――
#14

>>5
そうそう。ホントあいつらいつ曲がってくるかわからないから、驚かない方がおかしい。
でもあいつらホントいつもクラクション鳴らしてばかりだよな。うるさすぎ。

 ――――
#15

>>12
大陸ってホントそんな感じな。中央も地方も何でも外国と競争したがって。大きさとか数とか高さとか長さとか。
輸出はすごい伸びてるよな。全世界の経済が衰退している中で大陸だけまだ伸びてる。
でもそれでもまだ貧乏人が山ほどいて、労働者の待遇も良くならないし。
あと安全とか環境保護の意識まるでないし……。

 ――――
#16

何か怖いな……おれ大陸でこういう事(炭坑事故)が起きても何も感じない。
何とも思わなくなってる……。

 ――――
#17

大陸人は目的を達成するためには手段を選ばない。
あの有毒食品とか粗悪品とかだけみてもわかる。

 ――――

 李怡氏の文章からすれば非常に皮相なレスに終始しているようでもありますが、大陸の中国人に対する香港人の感情が垣間見れて、個人的にはなかなか面白いと思います。

 あと「体育板」に飛んでみるのもいいかも知れません。

 ●スレ一覧
 http://www.gaforum.org/forumdisplay.php?f=22

 ●「サッカー日本vsシリア」スレ
 http://www.gaforum.org/showthread.php?t=107923

 ――――

 なお香港紙『明報』(2005/02/15)が、香港市民に対して公民教育委員会が実施したアンケートの結果を紹介しています(※1)。「祖国意識」「国民意識」の浸透ぶりを確認する調査だったようです。

「あなたは××人?」
 ●中国人(25%)
 ●香港の中国人(23.3%)
 ●香港人(21.2%)
 ●中国の香港人(19.2%)

 中国返還から今年で8年になりますが、香港人における「中国人意識」はまだ半数にも達していません。「中国国民」という意識は15-19歳が最も低かったそうです。また「愛国意識」に関する調査では、

「中央政府を批判するのは非愛国的と思うか?」
 ●思う(12%)
 ●思わない(64%)

「大陸の民主と人権を促進するため、大陸に圧力をかけるよう外国に求めるのは非愛国的と思うか?」
 ●思う(18%)
 ●思わない(57%)

 こういう意識の市民が「一国家二制度」の名によって一党独裁制の下で呼吸せざるを得ないというのは、悲劇でしょうね。まあ30年もすれば広州同然になっているでしょうが。……あ、これはあくまでも「中共がぶっ倒れない」という前提の上で、ですけど(笑)。


 ――――


 【※1】http://hk.news.yahoo.com/050214/12/19f95.html



コメント ( 13 ) | Trackback ( 0 )





 かつて香港に『九十年代』という月刊政論誌があったことを御存知の方はいるでしょうか。

 同誌は大学時代(図書館に入っていました)以来、廃刊になるまでずっと私の愛読誌でした。編集長は香港の有名な政治評論系コラムニストであり、著名なチャイナウォッチャーでもある李怡氏。私が現地に住んでいたころは地元紙『明報』でもコラムを書いており、『九十年代』とともにその独特な観察と分析を堪能したものです。

 当時、政論誌では他にいまなお健在な『争鳴』や『開放』(いずれも月刊)も買っていました。あと通勤ルートが『香港文匯報』社屋前を通っていたので、毎日のように立ち寄っては『人民日報海外版』を買ったりしていたものです。加えて新聞スタンドでいくつかの新聞を購入。これらがチナヲチの資料となり、香港時代の私の余暇を充実させてくれました。

 ――――

 さて李怡氏ですが、その後『九十年代』に幕を引いたのと相前後して、香港における最大手紙の『蘋果日報』(Apple Daily)へと活躍の場を移し、同紙の名物コラムとして中国・香港・台湾に関する政治評論を連載、現在に至っています。私は『蘋果日報』(電子版)を購読しているのですが、「香港でいちばん売れている新聞」「反中的なスタンス」という理由もさることながら、李怡氏のコラム「李怡專欄」(※1)があるというのも大きな魅力です。

 その「李怡專欄」に最近(2月15日)、「道徳淪葬」(モラルハザード)という標題の一文が出ました。その文章の内容を紹介しつつ、香港の若い世代がこれにどういう反応を示したか、というのが今回の主題です。長くなりそうなのでどうやら前後半の2本立てになりそうです……と最初に言っておきます。

 では以下にその文章を。かなり端折っています。

 ――――

 ●李怡專欄:モラルハザード(『蘋果日報』2005/02/15)

 旧正月期間中、香港人にとって最も忌むべきニュースは、桂林と北京でそれぞれ発生した交通事故に、いずれも香港人が巻き込まれたことだろう。

 近年、内地(大陸=中共)の自動車販売は凄まじい急成長を遂げており、各省、各市は道路網の整備に力を入れている。しかし汚職の横行により多くの道路で手抜き工事が行われるため、路上の至る所にドライバーにとっての陥穽が存在している。加えて運転免許の濫発(湖南省の長沙では3000元払えば講習を受けなくても免許がもらえるという)、そして車のメンテナンス軽視、これらの全てが交通事故が頻発する原因となっている。

 もちろん、より重要なのは内地のドライバーの運転態度だ。内地で車に乗ったことのある人には常識だが、ドライバーが最も長じているのは、クラクションを鳴らすことと前の車を追い抜くこと。一方で歩行者や同乗者の安全に留意する意識は欠けているのが一般的だ。歩行者が道を渡るのを見れば車を停める、という外国でよく見られる光景なぞ、内地においてはおとぎ話に等しい。

 昨年のことだが、内地のある道路で1台の車が人を轢き殺し、死体はさらに後続車からも次々に轢かれてプレスされたようになり、「人間煎餅」になってしまった、という恐るべき事件があった。最初に人を轢いた車が被害者を顧みることなく走り去り、続いて現場に通りかかった1台1台の車も、みな何事もなかったかのように死者あるいは負傷者の体を轢き潰していったのである。何という世界だろう?これが人間の生活する場所なのか?西側の多くの国では、犬一匹、リス一匹をはねただけでも車を停めるというのに。

 内地のドライバーが際立って人でなしなのだとは思わない。私が懸念するのは、中華民族全体が、本来あるべき道徳と良心の崩壊の淵に立っているのではないかということだ。

 最近、北京の『経済観察報』主筆である許知辺氏の文章を読んだ。「未来の中国に対して最も心配なことは?」と彼は文中で問いかける。答は金融危機ではなく、三農(農村・農民・農業)問題でも、環境汚染でもない。「道徳と良心が徹底的に崩壊した結果を、中国は如何にして受け止めるべきか」なのである。

 1979年以来の中国の経済的発展は誰もが認めるところだ。だがこの発展は実質上、「少しも利己的でなく、ひたすら他人に尽くす」という不正常な超人的価値観を否定した代わりに、極端な利己主義の台頭を招くこととなった。競争原理によって経済発展を促進させる一方で、市場における弱肉強食という残酷な一面を全く規制することなくはびこらせてしまった。

 こうした金銭至上主義の残酷な力、そして政治面での全体主義という残酷な力、この両者が中国人の精神世界を挟み撃ちにしたのである。政治面での全体主義は権力崇拝を招き、虚言と欺瞞を作り出した。市場における金銭至上主義は、中国の伝統文化における優秀な一面など、いかなる無形の、しかし価値あるものをも否定した。上記2種類の力が結合することで、政財界の癒着、公私混同、汚職などが深刻化の一途をたどっている。

 元来、中国人の伝統的な精神文化は、世界でも稀な包容力に富んだものだった。歴史上、モンゴル人や満州人による侵略、あるいはイスラム教文化やユダヤ人の移入などに見舞われても、最後にはそれらを中華民族に同化させた。

 抗日戦争の時期、中国は現在に比べ遥かに貧しく後れていた。戦乱の中で人民は住む場所を失って流浪したが、どの地域へ流れても、そこに住む人々からは温かく迎えられたものだ。一切が権力と利益によって左右される現在、もし再び戦乱が発生するとすれば、人々の道徳や良心が失われたこの状態で、抗日戦争時のような「温かさ」を期待できるだろうか?

 いま香港では民政事務局によって、特定のニュース番組が始まる前の時間帯に中国国歌を流すことが強制されている。「中華民族到了最危險的時候」(中華民族は最も危険なときを迎えた)という部分を聞くたびに、私はその歌詞に深い共鳴を覚えるのだ。道徳と精神文化についてみれば、中華民族はまさに最も危険なときを迎えている。ひとりひとりが利己的に、ただ私欲を満たそうと獣のような叫び声を発しているからだ。誰もがみな他人の血と肉を以て自らの宮殿を建てようとしている。上に掲げた歌詞がそういう状況を映し出していると考えてみれば、これほど現実に適したものはないだろう。(完)

 ――――

 イスラム教?ユダヤ人?それに「戦乱」は全て日本との戦いによって起きたものか?などツッコミたい部分もあるでしょうが、枝葉末節は流してやって下さい。とりあえず、同じチャイニーズ、しかも陸続きでありながら、香港人は大陸の中国人に対し外国人ないしは別人種に等しい違和感、異質さを感じていることがわかるかと思います。

 李怡氏は文化大革命の中核を担った紅衛兵世代ですが、これを読んだ若い世代(たぶん中学生から20代後半)はどういう反応を示したか、これを後半で某BBSの某スレを引用しつつ、眺めていきたいと思います。

 という訳で、とりあえずハーフタイムです。
(「下」に続く)


 ――――


 【※1】ちなみに日本でもそうですが、「李怡專欄」のようにコラム名に筆者の名をそのまま掲げるというのは「有名ブランド」であり、掲載誌の売りのひとつであることの証です。コラム自体に別の名前がついていても、読者が筆者の名前で「××專欄」と呼びならわすことがあります。これも名物コラムであることの証明であり、コラムニストの勲章といえるでしょう。


コメント ( 11 ) | Trackback ( 0 )





 いやいや中国では本当によく人が死にますね。コロコロと死にます。コロコロと死ぬことを前提に国家が成立し、運営されているのではないかと思わせるほどです。

 少なくとも経済活動に関してはそうでしょう。「できるだけ低賃金」「頑固に搾取」が中国経済の売りですし、成長の原動力でもあるのですから。実際、外資の多くもそれを目当てに進出しているのです。限界まで絞るだけ絞る。そして不慮の事故死は織り込み済み、ということです。

 ソフトやハードの至らないところは、惜しみなく人命を投入してカバーする。これが毛沢東以来の伝統、人海戦術の神髄ってなものです。人民解放軍は中越戦争あたりで懲りて以来この伝統とは決別したようですが、経済・社会の最前線では、未だにこの戦術一辺倒なのです。

 ――――

 お察しの通りです。2月14日、遼寧省・阜新孫家湾炭坑で爆発事故が発生し、現時点までですでに210人の死亡が確認されています。炭坑事故としては建国以来最大規模とのことです。

 温家宝がまた地味なジャンパーを羽織って現場に出かけて行って、取材陣の前で遺族の肩をギュッと抱き締めてウソ泣きするのでしょうか。今度は死者数が50人ばかり多いですから、涙を流さないとマズいでしょう。目薬用意!……目薬用意宜候。

 こんな物言いは……そりゃ不謹慎でしょうとも。死者210人と聞けば一応「ええっ」と驚いてあげるのが礼儀というものです。でもチナヲチをしていると感覚が麻痺してしまって、正直これがなかなか難しいのです(※1)。

 香港紙『明報』が最近5年における大陸(中共)の「鉱山事故Top10」を紹介しています(※2)ので、最近の例を拾ってみましょうか。ちなみに順位は死者数に拠っています。

 ●遼寧省・阜新孫家湾炭坑爆発事故(2005/02/14・死者210名・第2位)
 ●陜西省・銅川家山炭坑爆発事故(2004/11/28・死者166名・第3位)
 ●河北省・沙河鉄鉱石採掘現場火災(2004/11/23・死者61名・第9位)
 ●河南省・新密大平炭坑爆発事故(2004/10/20・死者148名・第4位)
 ●重慶市・天然ガス田中毒事故(2003/12/23・死者243名・第1位)

 ――――

 ご覧の通りです。それに別に鉱山事故だけじゃありません。以前触れたように、104人を満載したダンプカーの横転崖下転落事故で死者55名なんてケースがあります(※3)。そのときに紹介した数字をもう一度並べてみましょう。

 ●昨年1-11月における炭坑事故件数は3413件、死者は合計5286人(※4)。
 ●昨年の生産活動中の死者は合計13万6000名余、1日平均373人が労災で死亡(※5)。

 まだあります。

 ●広東省、帰省ラッシュの11日間(01/25-02/04)で交通事故6602件、死者335名
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/08/content_2560292.htm

 ●浙江省、旧正月期間中(02/05-02/14)の交通事故は6051件、死者182名
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/16/content_2583889.htm

 鉱山事故なども含めた全国統計速報では、

 ●旧正月期間中(02/09-02/15)の死傷事故、全国で45件・死者398名
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/16/content_2582817.htm

 どうです?……なんて胸張ってみても仕方がないんですけど、冗談でなく、人命軽視は中国経済・社会に欠くことのできない「仕様」のように思われてなりません。

 ――――

 さて今回の炭坑事故、中国国内ではまたまた報道統制が敷かれているようで、炭坑側は「新華社の記事を使え」と取材拒否。そして事故に関する一連の経緯と後を絶たぬ大惨事に、ネット上では怒りと怨嗟の声が一斉に上がったようです。が、そこは中国、即座に削除職人が登場して大掃除完了。報道が制限されてweb上で話題にすることも御法度、というのは趙紫陽氏死去のときと同じです。

 香港各紙の報じるところによると、炭鉱夫の賃金は正社員が日給60-70元(人民元、以下同)、出稼ぎ農民とみられる臨時雇いは日給30-40元。この臨時雇いの炭鉱夫も今回の犠牲者に含まれている(30余名)のですが、請負業者(口入れ屋)と結んだ契約は、

「死亡事故での補償金は2万元、支給後は業者側は一切関知せず」
「旧正月期間中に出勤しなければ即解雇、並びに罰金1000元」

 となっており、デフォといえばデフォな内容なのですが、死亡補償は20-30万元というこの業界の相場からすれば、さすがに過酷すぎます。口入れ屋は農民を舐め切って、その無知に付け入ったとしか言いようがありません。

 ちなみに中国の石炭生産量は全世界の約3割を占めているのですが、全世界の炭坑事故死者における比率は実に約8割だそうです。別の言い方をしますと、中国の炭鉱夫一人当たり平均年間石炭産出量は321トンで、この水準は米国の2.2%、南アフリカの8.1%にしかならないそうです。それなのに死亡率は米国の100倍、南アフリカの30倍(※6)。要するに生産効率が滅茶苦茶低い上に現場の安全環境が劣悪で死亡率がバカ高い。ということで、

「ソフトやハードの至らないところは、惜しみなく人命を投入してカバーする」

 を地で行っている訳です。ここもやはり驚くべきところなんでしょうが、炭坑事故は死者数が多い分クローズアップされるだけで、実際には中国経済・社会の各面において、程度こそ違えど本質的には全く同じというような事象がごく当たり前に存在しているのではないでしょうか。

 ――――

 ところで、これだけ事故が続けば担当閣僚の責任問題に発展するかも知れませんね。

 前例は一応あります。一昨年に中国肺炎(SARS)を隠蔽したことを理由に、当時の張文康・衛生部長が更迭されているのです。ただこの張文康は江沢民のお気に入りで、その更迭は江沢民派の手足を削いでいくという権力闘争の側面もあったといわれています。ですから「一応」の前例です。とはいえ、相次ぐ事故で死者数は比較にならない程多いですから(中国肺炎ほどの国際的インパクトには欠けますが)、クビ切りが行われても不思議ではありません。

 ただ、関係責任者一同のクビを切って、温家宝がウソ泣きをすれば済むという問題ではないでしょう。ネット世論が騒いだのも正にその点ではないかと思うのです。でも、叩かれたその点こそが中国の売りである以上、胡錦涛政権は言論統制を以て市民の口を塞ぐしかない訳です。

 同時に、そういう「売り」を担う人々がいなければ、自分たちがインターネットやら何やらといった「物質文明・精神文明」を享受できないということに、ネット世論は気付いているのでしょうか。

 それにしても、中共当局にとって都合の悪い事件が頻発し、ひと波またひと波と続く報道管制&言論統制。そろそろ危険水域ではないでしょうか。いい加減ガス抜きをさせないとシャレにならぬ事態に立ち至りそうですが、「反日」はもう使えませんし、一体どうするのでしょうか。

 いや実は胡錦涛の方だって、鬱屈を散じたいでしょう。例えばテレビ演説などで、

「うるさい黙れ黙れ。人命軽視は仕様だ。中国はこれで食っているんだからグタグタ文句言うな」

 とでも怒鳴ることが出来れば、随分気持ちが楽になるでしょうに。


 ――――


 【※1】念のため言っておきますが、感覚が麻痺してしまっているのは、あくまでも中国の事故に対してのみです。

 【※2】http://full.mingpaonews.com/20050216/16gaz.gif

 【※3】当ブログ「これも一種の人海戦術?」(2005/01/08)

 【※4】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/14/content_2333249.htm

 【※5】http://www.chinanews.com.cn/news/2005/2005-01-08/26/526041.shtml

 【※6】http://full.mingpaonews.com/20050216/gaa2r.htm


コメント ( 15 ) | Trackback ( 0 )





 事態が動き始めたようです。

 とりあえず、前回末尾の【続報】でお伝えした通りです。北京など中国国内各所で15日に行われた「保釣運動」(尖閣奪回運動)のデモについて、なぜか沈黙を守っていた中国国内メディアですが、翌16日(今日)朝になって関連報道が出てきました。

 わらわらと出てきた訳ではありません。記事3本を国内メディアが使い回しています。要するに一種の報道統制が敷かれている訳です。

 ――――

 ●北京の現場報道(新京報)
 http://news.sina.com.cn/c/2005-02-16/02535842730.shtml

 ●国内含む内外各地での抗議行動を伝えるニュース(中国青年報)
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/16/content_1032322.htm

 ●今回の日本側のアクションに対する署名論評(中国青年報)
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/16/content_1032297.htm

 ――――

 気になる点は、そりゃいくつもあります。

 まずはデモから報道まで時間がかかり過ぎていること。これって一日近く寝かせて置く必要のあるネタ?……ええ、その必要のあるネタなんです。多分その間に中共は党上層部での意思統一を図っていたのだと思います。

 上層部において意思統一がなされたらしいことは、各紙(電子版)が例外なく上の3本の記事を使い回していることからうかがえます。ただ、本来こういう重要なニュースは新華社が仕切るところです。昨秋の日中首脳会談のときがそうだったように、です。

 中国国内ではいま現在、炭坑事故で大騒ぎなのですが、ここでは炭坑側が取材拒否に出たのが問題になっています。「原稿は新華社電をそのまま使ってくれ」とのことですが、炭坑側による取材拒否の是非は措くとして、重大ニュース、あるいは政治的に大きな意味を持つネタは、そういう習わし、中国語でいう新華社電での「統一發稿」なのです。

 ところが、今回は新華社ではなく、北京の地方紙である『新京報』、そして胡錦涛の広報紙たる『中国青年報』がマスター版になりました。これはどうしたことでしょう。

「党内の意思統一が胡錦涛主導で、その思惑にほぼ沿った形でなされたことを示すもの」

 と言い切ってしまいたいのですが……まあいいでしょう。当ブログは素人による出鱈目な解釈がウリですから、そういうことにしておきます。

 ――――

 まだまだあります。北京をはじめ内外各地で行われた抗議活動に関する報道が素っ気無いことです。別の言い方をしますと、ネタの割に記事が短く簡潔にまとめられています。糞青(自称愛国者の反日教信者)どもにしたら簡潔にまとめられすぎで物足りないのではないでしょうか。

 いや、糞青どもは耳目を塞がれていますから素直に喜んでいるかも知れませんね。でも主要紙を見れば一目瞭然なんですけど、香港では「北京の活動」、または「内外各地の活動」にはより多くの紙面が割かれているのです。

 例えばですよ。

 ●昨日(15日)の『明報』(電子版)

 http://hk.news.yahoo.com/050215/12/19fti.html
 http://www.mpinews.com/content.cfm?newsid=200502151502ca21502c
 http://www.mingpaonews.com/20050215/gde1r.htm
 http://hk.news.yahoo.com/050214/12/19fco.html

 ●今日(16日)の『香港文匯報』

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0502160016&cat=002CH
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0502160017&cat=002CH
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0502160018&cat=002CH
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0502160019&cat=002CH

 他紙も昨日から沖ノ鳥島問題などとの合わせ技で力を入れて報じています。電子版だとむしろ昨日に大きく報じて、今日は炭坑事故に戦力が集中されています。中国国内メディアのように、昨日午前に起きたデモをその日のうちに報じない電子版こそ異常なのです。

 ――――

 それはともかく、こうして比較してみますと、中国国内の関連報道は出足が遅い上に簡潔すぎて、しかもトーンが低い。

「このネタで市民が盛り上がってしまうと困る」

 という胡錦涛政権による配慮が働いているように感じられます。趙紫陽氏が死去して間もない時期です。運動が勢いを得て拡大するうちに「打倒中共」にテーマがすり替えられてしまうかも知れない、という懸念がまずあるでしょう。その一方で、諸般の事情に鑑みて、

「いま尖閣諸島の帰属問題で真正面から日本とぶつかるのはちょっと……」

 ということもあるのではないでしょうか。「保釣運動」自体が盛り上がることも困る、ということです。政府の弱腰を叩かれることにもなりますし。

 ともあれ、「盛り上がらないように」という胡錦涛政権の目標は、思わぬ助太刀もあって概ね達成されつつあります。助太刀とは言わずもがなの炭坑事故です。

 ――――

 さて、最後に『中国青年報』の署名論評です。改めて記事を出しておきます。

 ●今回の日本側のアクションに対する署名論評(中国青年報)
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/16/content_1032297.htm

 この記事、最近の中共には珍しく変化球です。原題を訳しますと、

「魚釣島で騒ぐ日本、真の狙いは台湾に」

 てなところでしょうか。まずは一年で最もおめでたい旧正月の元日に日本政府が今回のアクションを起こしたことを難じ、

「これは中国の領土主権に対する厳然たる挑発と侵犯である」

 と批判しています。続いて過去一年を振り返り、

「教科書問題、靖国神社参拝、東シナ海資源紛争、民間の対日戦後賠償訴訟など数多くの問題において摩擦が発生した」

 としています。中国人犯罪とかアジアカップとか中国原潜による領海侵犯は当然スルーです。

「そして今回、日本は中華民族にとって最も祝うべき日に騒ぎを起こした。その隠された真意は何か?日本の最大の目的は、東シナ海情勢に緊張をもたらすことで中国の統一という大業を阻もうというところにあるのだろう」

 と、いきなり話題が飛びます(笑)。

 ――――

 そこからはもう一気呵成です。

「日本はアジアの親分になりたいのだ。だから中国が台頭することを押さえ込むのが戦略的目標であり、そのために現在中国の復興を阻む最大の存在である台湾統一を阻もうと色々画策しているのだ。例えば中国を脅威と明記した新防衛大綱然り、六カ国協議が再開されそうなところで持ち出した北朝鮮への経済制裁然り、中日首脳会談の直後に行われた李登輝へのビザ発給然り……」

 話は完全に尖閣問題からシフトしています。でもシフトさせるのが主題であり狙いですから(と私はみています)。文章はこの後さらに、

「3月の全人代(※1)で『反分裂法』(※2)が審議されることを睨んで、日本はその直前のこの時期に今回のようなアクションを起こした。中国が反発して東シナ海情勢を緊張させたりはしないだろう、という読みによるものだ。中国が動けば安保が発動してこの地域に米国が介入するから、中国にとっては台湾問題の解決がいよいよ困難になる」

 と続きます。まだありますよ。

「日本の今回の行動には、中台双方がいざというときに『抗日』でどれほど団結するかを試してみたという側面もある。憂慮すべきは台湾外交部が『三者による平和的会談』での問題解決を訴えたことだ。これでは『一中一台』あるいは『二つの中国』を認めることに等しい。日本の仕掛けた陥穽に自ら落ち込むようなものではないか。どちらも『龍的伝人』(中華民族)なのだから領土問題には団結して当たらないといけない。日本はすでに中国の統一という大業に介入している。これからも日本にとって必要なときに必要な手を打ってくるだろう」

 結語も近いのですが、ここでちょっと話柄を転じてきます。

「日本が魚釣島の問題で挑発してくるのは、人々の視線をこの方面へと逸らすことで、小泉首相の靖国神社参拝がもたらした深刻な影響を小さくしようという狙いもあるのだ」

 そしてフィニッシュ。最後の台詞を格好よく決めて、栄光への掛け橋だぁ、てなもんです。

「今回の行動が旧正月の元日に行われたのは偶然ではなく、日本は狙ってやっているのだ。旧正月期間中は中国メディアの多くが休むし、インターネットを見る人も少なくなる。だからこの時期を選んで、今回の行動のもたらす影響を最小限にとどめようとしたのだ。しかし、この時期に難癖をつけてくることは、いたずらに中国人民の憤慨をかき立てることにしかならない」

 ――――

 何だか勢いに乗って最後まで書いてしまいました(笑)。いつものことですが、翻訳はかなり粗いので(かなり端折ってますし)当てにしないで下さい。

 結局、尖閣問題の論評かと思ったら、実は台湾問題に重点が置かれているんですね。国内及び海外で抗議活動が行われたことにも全く触れられていません。あるいはちょっと前の時期、例えば9日の日本側の行動を受けてすぐ書かれたものなのかも知れません。尖閣問題は刺身のツマにすぎない、重要なのは中国による台湾統一で日米が介入してくるのを阻むことだ、というところでしょうか。

 視線を逸らせる云々とありましたが、むしろ中共こそ尖閣問題から別の方向に注意を向けさせるべくこんな文章を出してきたのではないか、という印象を受けます。「台湾問題こそ重要」、とは「今は尖閣で騒ぐな」というメッセージにも読めるのではないでしょうか。これは帰属問題は時機が来るまで棚上げしておきたい、という思惑と同時に、糞青など民間組織による先走りを防ぐためでしょう。例えば香港の団体は今回の件を受けて、

「また船を出すつもりだ。(中港台の)どこから出発しようと、上陸できれば我々の勝利だ」(※3)

 なんてことを言っています。また上陸して日本の警察に逮捕されれば中共が困ってしまうということを考えていません。これだから珍獣は可愛いのですが、胡錦涛としては、そういう馬鹿が走り出すのだけは何としても抑えたいところでしょう。

 一方で、中共上層部はこの文章の内容で意志統一がなされたのでしょうから、

「台湾問題こそ重要。だから今は尖閣で騒ぐな」

 というのは、こういう事態にフラストレーションが高まり、脊髄反射しかねない軍部に向けられた配慮、という一面もあるかも知れません。とにかく、「尖閣」で真正面から日本とやり合うことを避けているようにみえるのです。

 ――――

 それにしても不思議なのは、純然たる日本国内の事柄に対してどうして中共はこうも騒ぐのか、ということです(笑)。靖国問題もそうですが、まことに不可解としか言いようがありません。日中間には如何なる領土問題も存在していないのですから、領有権も何もあったものではないでしょう。

 無用の内政干渉は怪我のもとですよ。胡錦涛クン、わかりましたか?

 おい王毅、お前もだ。……そして温家宝はまたまたウソ泣きの準備(笑)。


 ――――


 【※1】全国人民代表大会。中国の立法機関です。「日本の国会に当たる」とは口が裂けてもいいません。だって人民代表なんて言っても、普通選挙で選ばれた訳ではありませんから。

 【※2】詳細な内容はまだ公開されていませんが、台湾独立に向けた動きを強く規制し、いざというときに武力行使することを法律で保証するもの、とされています。

 【※3】http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0502160019&cat=002CH

 ――――


 【追記1】うっかり書き忘れていました。今回は各地で抗議行動が行われるなど、印象として「反日度」が高まっているようにもみえますが、胡錦涛政権から発せられる言辞で判断する限り、その姿勢は李登輝氏訪日直前ほど硬化していません。「反日度」は当時より低いです。(2005/02/17/00:56)

 【追記2】人民解放軍の機関紙『解放軍報』(2005/02/16)に「党の指導は絶対だ。軍は党の指導に従い、党の後をついて歩いていくのだ」調の署名論評が出ました。どうやら胡錦涛政権、少なくとも今回の件については、軍部を従わせることに成功したようです。(2005/02/17/06:38)

 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2005-02/16/content_138740.htm


コメント ( 14 ) | Trackback ( 0 )





 いやあ面白いです。王毅も面白いけどこいつらの方がもっと面白いですね。ええ、尖閣奪回を訴える「保釣運動」の連中です。

 日本のマスコミも報道していますが、北京や上海、香港など各地でそれぞれ参加者数十人による「デモめいたもの」、つまり当ブログで言うところの「なんちゃってデモ」が行われたようです。李登輝氏訪日の一件以来ですねえ。

 ――――

 先陣を切ったのは香港です。親中派政党である「香港民主建港聯盟」(民建聯)が14日、日本総領事館にデモをかけました。

 ●尖閣灯台問題 香港で親中派政党が抗議デモ(毎日新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050215-00000003-maip-int

 ●日本の釣魚島「灯台」管理に抗議 香港民主建港聯盟(人民日報日本語版)
 http://www.people.ne.jp/2005/02/15/jp20050215_47596.html

 参加人数は『毎日新聞』が「約100人」と報じていますが、『人民日報日本語版』だと「50名」。ここは当然主催者発表(笑)を尊重すべきでしょう。という訳で、参加者50名。

 ――――

 ざっくりと言ってしまうと、香港のこのデモは「有権者へのアピール+北京の指示」でしょう。特に前者に重きが置かれているのではないかと思います。

 というのも民建聯は親中派ですから、民主化のキーワードであり香港市民の多くが求めている「全面普選」(行政長官選挙及び立法会議員選挙全議席での普通選挙制導入)に賛同することが許されません。つまり中共万歳の嫌われ者。

 ですから一昨年の区議会議員選挙では民主派に記録的な惨敗を喫して党首が引責辞任。昨年の立法会議員選挙でも改選議席の一部に割り振られた直接選挙枠では敗北しています。このため、香港人の誰もが反対しないであろう「保釣運動」に走って人気取りを狙ってみた、というところでしょう。

 さらに言えば、香港にはいい歳こいてロンゲをやめないため「長毛」と呼ばれている騒動屋的活動家・梁国雄氏がいます。香港の民主化で騒ぎ、六四(天安門事件)の名誉回復を求めて騒ぎ、中共の一党独裁も批判し、「保釣運動」を含む反日活動にも従事。

 ホントに騒ぐだけしか能のない男ですが、この「長毛」が昨年の立法会議員選挙の直接選挙枠に出馬したところ、何とトップ当選。これで学習して、民建聯も「長毛」の真似をしてみた、ということもあるでしょう。愛国なんざ二の次でとにかく次回選挙をにらんだ活動。糞青(自称愛国者の反日教信者)と違ってさすがは香港、利害得失による「保釣運動」なのです。

 ――――

 お次は北京。こちらは15日の午前に日本大使館へデモを行いました。日本発の報道によると参加人数は「約40人」(共同通信)、「50人近く」(ロイター通信)、「約70人」(毎日新聞)……と幅があります。50人前後なら日本野鳥の会のメンバーでなくても数えることができるでしょう。寒いのはわかりますがちゃんと仕事をしてほしいものです。

 でもこの人数だと苦労したのはカメラマンでしょう。あまりにショボい絵だと使ってもらえませんから、苦心惨憺して「たくさん人がいる」ようなアングルを狙わないといけません。この点については各社とも及第点以上だと思います。

 素人の写真と比べてみれば一目瞭然です。

 ●主催者による北京での活動風景写真集。
 http://photo.163.com/openalbum.php?username=yuchenenycn&_dir=%2F6422518

 たぶんプロの眼でみれば使える写真は1枚もない筈です。もう少し頭を使ったらどうだ糞青。しかし抗議文を渡すために門内に入ろうとする1枚に映っている公安(警察)のお兄さん、エラが張った小泉首相でしょうか。それとも草薙?

 抗議文を手渡す写真がないのは日本大使館が休日だからです。前回の李登輝氏訪日に抗議する「なんちゃってデモ」の際もそうでした(正月休み)。中国のデモは届け出制ではなく、公安局に申請して許可を得なければなりません。このあたり無用の摩擦を避けようとする胡錦涛政権の配慮が見え隠れしているようでもあります。

 あと、日の丸が焼かれている写真が1枚もないことにも留意すべきです。

 ――――

 主催者の中核である「民間保釣聯合会」のBBSによると、このほか中国国内では上海、長沙(湖南省)、そして広州で抗議行動が実施された模様です。下はいずれも写真つき。

 ●上海
 http://www.cfdd.org.cn/bbs/dispbbs.asp?boardID=2&ID=9479&page=1

 ●長沙
 http://www.cfdd.org.cn/bbs/dispbbs.asp?boardID=43&ID=9474&page=1

 ●広州
 http://www.cfdd.org.cn/bbs/dispbbs.asp?boardID=35&ID=9482&page=1

 広州では紙に書いた日の丸が踏み付けられたり焼かれたりしています。踏みつけにしている写真はいかにも中国人らしく即物的でわかりやすいです。これも病的な自尊心&コンプレックスの発露、そして民度の反映なんでしょうねえ。そして最後に満足そうな笑顔とVサインによる記念写真。実に可愛いものです。

 それにしてもどの場所も参加人数が少なすぎます。糞青はやっぱり口だけなんですね。

 ――――

 さて今回の標題、「なんちゃってデモ」がなぜ「幻」なのかといえば、少なくともこのブログを書いている時点(15日22時すぎ)では、中国国内では全く報道されていないからです。

 関連報道は「民間保釣聯合会」のBBSにも貼られている『法制日報』の記事のみ。これは大手ポータルの新浪網(www.sina.com)、捜狐(www.sohu.com)そしてtom.comなどに転載されたものと同じです。

 ●新浪網
 http://news.sina.com.cn/c/2005-02-15/13115840965.shtml

 ●捜狐
 http://news.sohu.com/20050215/n224296768.shtml

 ●tom.com
 http://news.tom.com/1002/3291/2005215-1856152.html

 いずれも『法制日報』からの転載ですから、内容はtom.comがちょっと端折っている以外はみな同じです。

 で、この記事の内容ですが、主として外電と「民間保釣聯合会」ニューヨーク支部?責任者のコメントに頼ったもので、「ニューヨークと香港そして台湾で抗議活動が行われる予定」という情報以外はこれまでの経緯などでお茶を濁し、具体的な活動内容については何も書かれていません。

 北京など「国内でもやる予定」という情報は全く出ていませんし、当然ながら「国内でもやった」というニュースも記事には含まれていません。

 記事の更新時間からすれば何とか間に合わせられるタイミングだと思いますし、掲載せよという上からの意向があれば更新時間を遅らせても織り込むところでしょう。要するに「掲載するな」という声が天から降ってきたということです。

 という訳で、現時点においては国内各所の活動は全て「なかったこと」にされています。

 ――――

 なお大手ポータルが転載した『法制日報』の記事ですが、ざっと見たところ「新華網」(新華社)、「人民網」(人民日報)、「中青在線」(中国青年報)、「解放日報」(電子版)それに「解放軍報」(電子版)などといった中共系の「大手機関紙」には一切出回っていません(私の見落としかも知れませんが)。前回の「なんちゃってデモ」は国内メディアも一応揃って報道したんですけどね。

 その代わりに比較的大きな扱いになっていたのがこの記事。何だか意味ありげですよ。

 ●昨年の貿易統計、日本は中国にとって最大の輸入相手国である地位をキープ
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-02/15/content_2579275.htm

 さてさて、これは中共の腰が砕けてしまっているのか、上層部での意見調整に時間がかかっているのか、それとも単に旧正月期間で対応が遅れた?日本が動いた当日(9日)に外交部の孔泉報道官が脊髄反射していますから、お正月云々は関係ないでしょう。

 李登輝氏訪日に対する反応では、まず脊髄反射があって、そのあと散々恫喝的言辞を弄し、王毅にもひとさし舞わせて、その挙げ句にようやく「なんちゃってデモ」、というプロセスでした。

 それが今回は脊髄反射からいきなり「なんちゃってデモ」ですから、随分と手数を省いてきたものです。しかも国内に対しては報道を制限。国内の活動を「なかったこと」にしている点では、趙紫陽氏死去のときよりも厳重な報道管制です。

 どうしちゃったんでしょう?……ともあれ盛り上がって参りました。



 ――――


 【続報】「なんちゃってデモ」が中国国内でも今朝(16日)報道されました。「なかったことに!」なんて標題ですみません。しかも感嘆符付きで(笑)。

 ●新浪網(sina)と捜狐(sohu)は『新京報』の記事を転載。こちらは現場報道です。
 http://news.sina.com.cn/c/2005-02-16/02535842730.shtml
 http://news.sohu.com/20050216/n224298649.shtml

 ●そして、胡錦涛の広報紙たる『中国青年報』が尖閣問題で署名論評です。tom.comが転載。
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/16/content_1032297.htm
 http://news.tom.com/1002/20050216-1857079.html

 どうでもいいことですが、どちらの記事も旧正月の元日に日本政府が動いたことを根に持っているようです。随分悔しかったのでしょう(笑)。

 署名論評は「ほほう、そう来ましたか」という印象で要精読です。

 ただ、一晩で党中央の意見がまとまってかくなったのか……つまり中国国内メディアがこれで足並みを揃えるのかどうかは、もうちょっと観察してみないとわかりません。

 ともあれ私は仕事の方も片付いたので寝ます。悪しからず。(2005/02/16/09:34)



コメント ( 11 ) | Trackback ( 0 )





 風水や占いの話題を前回出したばかりですが、

「ただ最近、中学生から大学生にかけて占いが流行していることに、当局はちょっと神経を尖らせているようです」

 と書いたらそれを裏付けるかのような報道が出て参りました。占い関連の広告・携帯情報サービス禁止だそうです。

 今日付(2月14日)の香港紙『太陽報』がそう報じています。BBCの中国語版(電子版)によるニュースを下敷きにしたものです。……いや、BBCを下敷きにした台湾・中央社の報道を『太陽報』がほぼ転載したもののようです。でも記事には中央社なんて一文字も出てきませんね。転載というよりパクリ疑惑。まあ香港ではよくあることですが。

 ――――

 ●運勢広告、内地で突然禁止に(太陽報)
 http://the-sun.com.hk/channels/news/20050214/20050214020619_0001.html

 ●中国が占い広告を放送禁止に 新浪網に大打撃(中央社)
 http://tw.news.yahoo.com/050213/43/1hsdb.html

 ●中国が占い広告を禁止 新浪網の業績に痛手(BBC)
 http://news.bbc.co.uk/chinese/simp/hi/newsid_4250000/newsid_4251500/4251527.stm

 ちなみに「内地」とは中国国内(香港・マカオ含まず)のことです。

 ――――

 要約するのも面倒くさいので『太陽報』の記事を訳してしまいましょう。

 ■運勢広告、内地で突然禁止に(『太陽報』2005/02/14)

 胡錦涛国家主席が提唱する科学的発展観を根づかせるべく、国家広播電視総局(国家広電総局)はこのほど、ラジオやテレビで星占いや運勢に関する情報サービスや広告を正式に禁止するとの通達を出した。中国国内の大手ポータルサイト新浪網(www.sina.com)はこの措置が経営を直撃し、今年第一四半期の経常利益が24%低下する見通しだ。

 胡錦涛は科学的発展観を提唱

 BBC中国語版(電子版)の報道によると、国家広電総局は1月末にこの通達を出し、全国のラジオ・テレビ局が「ラジオ・テレビ向け広告は科学を尊重すべきであり、迷信や偽科学を宣伝することがあってはならない」との規定を遵守するよう求めた。この通達は「姓名、人生、生年月日、新しい1年などの運勢を解説する携帯電話向け情報サービスやチャット等の類の広告をテレビ・ラジオで放送することを一律禁止する」としている。

 この通達は胡錦涛国家主席が提唱する科学的発展観を周知徹底させるために出されたとみられている。胡錦涛国家主席は先ごろ開かれた中央工作会議の席上、「科学的発展観に符合することには何でも全力で取り組むこと。符合しないものについては躊躇することなく改めること」と語り、中国共産党を挙げて科学的発展観に沿った思想と行動を徹底するよう求めている。

 この禁令は携帯電話ユーザー向けに運勢関連の情報サービスを提供しているサイトには大きな痛手となる。大手ポータルサイト新浪網はその筆頭格で、消息筋によると、同社の株価はこのニュースによって一時20%急落したという。同社は今年第一四半期の経常利益がこの禁令によって24%減少し、年間での業績にも影響する見通しだとしている。2004年における同社の売上高は2億米ドル。このうち半分以上が携帯ユーザー向けの運勢情報サービスによるものだった。

 http://the-sun.com.hk/channels/news/20050214/20050214020619_0001.html

 ――――

 前回書いたように、風水や占いは中共によって早くから「封建的迷信」と認定されたまま、今なお建前上は御法度ではあります。しかし「易経」を生んだ中国人が運勢を気にせずにいられる訳がありません。文化大革命などの政治運動華やかりし頃は「紅」「衛」「軍」などの名前をつけることが流行しましたが、時代が変わったことにより、「封建的迷信」の禁令が次第に緩み、伝統的風習が頭をもたげるようになってきていました。

 「時代が変わった」とは、社会主義がお題目に過ぎなくなり、中共の威信が地に落ち、一方で改革の深化による競争原理(歪んだものではありますが)が機能する時代になったということです。占いがもてはやされるのは、やや極端に言うと、「勝ち組」になるために運も味方につけようというところでしょうか。

 例えば台湾や香港では一般的ですが、生年月日+出生時間によって決まる陰陽五行(金木水火土)のバランス「八字」から人生を占い、バランスが悪ければ名前に使う漢字を選ぶことで少しでもフォローして、運を開こうとする伝統的な風習があります。台湾の陳水扁総統は五行のバランスでいうと水が欠けているため、名前に「水」を持ってきたといいます。胡錦涛も水を生むとされる「金」(錦)と「水」(涛のさんずい)が名前に入っているところをみると、あるいは「八字」に水(たぶん「陽の水」である壬)が欠けているのかも知れません(笑)。

 ――――

 まあ陳水扁や胡錦涛の「八字」はともかく、新浪網のケースが示すように、占い(星占いも含む)は若い世代を中心に流行して……というより生活に密着したアイテムになっていました。これがガラリと一変して禁止令が発せられたのです。対象は広告や情報サービスなどですが、民草には政治学習を通じて「科学的発展観=占い禁止」が徹底されるのではないでしょうか。

 この「ガラリと一変して」とは政治運動が頻発した時代の中国ではよくあることでした。だから中国人は改革・開放政策が進んでもタンスの一番下に人民服(中山装)を仕舞っておいて、油断なく万一に備えているのだ……1980年代にはそんなことが冗談で言われたものです。それが当時は必ずしも冗談ではなかったということは、例えば古い映画ですが『芙蓉鎮』(※1)のラストからうかがえたものです。

 いつも書いているように「強権政治・準戦時態勢」志向(私見)の胡錦涛政権からすれば、こういう統制は自然な流れともいえるのですが……「科学的発展観」とは「GDP信仰」、つまり効率よりも規模を重視する風潮(※2)へのアンチテーゼと理解していたのですが、それが占いにまで及んだことに驚いています。

 ――――

 それにしても、胡錦涛の政治手法の古臭さを思わずにはおれません。実は今日の私は大学時代に想いを寄せていた同級生が結婚したという風の便りに、遥かな遥かな過去を思い出してちょいとばかりブルーな気分(笑)なのですが、胡錦涛のやっていることは、ちょうどあの時代(ざっと20年ぐらい前)に保守派が発動した政治キャンペーン、例えば「精神汚染」「反ブルジョア自由化」「社会主義精神文明の強調」(物欲やカネに傾斜する風潮に対する思想引き締め)などを彷佛とさせるものです。

 「中国の特色ある社会主義」といういわば土着路線を掲げる中共なのですから、占いのような中国人の伝統的風習はうまいこと取り込んで消化してしまえばいいのに……と思うのですが、そこまで寛容になれるほどの余裕はないようですね。

 どうせなら旧正月も「旧暦に基づく風習は封建的迷信」とかいって禁止してほしいところです。それならあの艱難のカタマリとしか言いようのない年末進行も1回で済むので大助かりというものです。

 さてさて、次は何が槍玉に挙げられるのでしょうか。「情人節」(バレンタインデー)だったりして。


 ――――


 【※1】『芙蓉鎮』は文化大革命に翻弄されるある小さな町の人間模様を一組の男女を中心に描いた名作です。ラストは文化大革命が過去のものとなり、改革・開放政策に転じて明るさの戻った町の風景。ところがそこに、「運動了!」(政治運動だぞ!)とがなり立てて歩き回る男が現れます。文革で狂ってしまった元党幹部なのですが、その声に暗い過去が胸をよぎり、人々の表情が思わず曇る(またあんな政治運動があるかも知れない)、というところで終わっています。

 【※2】「効率はいくら無視しても成長率が高くなればいい」、つまり規模の拡大を至上とする考え方。「大躍進」以来の伝統と言ってもいいです。いまなおその考え方が根強いのは、幹部の業績評価において、これまでは効率よりも成長率が重視されてきたからです。



コメント ( 15 ) | Trackback ( 0 )





 旧正月期間中ということで日頃から疑問に思っていることを書きたいと思います。……いや別に大したことではないのですが、私と同じ疑問を呈した文章が先ごろ「新華網」に出ましたので、無駄話(いつもそうですが、今回はいつにも増して)を承知の上で触れてみようかと。

 本当の「旧正月」はいつなのか、ということです。

 ――――

 最近のコメント欄で触れましたが、私の知人に風水師がいます(私は蔭で敬意を込めて風水先生と呼んでいます)。知人と言ってしまうにしては親しい間柄なのですが、私の親と同じ世代なので友人と呼ぶには余りに失礼、というひるみがあります。

 この人は大陸で生まれたものの、国民党系の家庭に育ったため新中国成立後に香港へ脱出、兄弟はみな台湾にいます。私が転居するといつも図面で風水を診てアドバイスをしてくれます。現在の拙宅も風水はよくないのですが、色々措置を講じてもらって何とか差し支えない状態(風水先生談)にしてもらいました。

 いまは知りませんが、私が香港にいたころは国民党系の実業家によるクラブのようなものがあって、毎週火曜日だったか、とにかく週一回昼食会を開いて歓談する会に、風水先生に連れられて私も参加させてもらったことがあります。クラブに入ったところで青天白日旗とともに孫文の大きな写真が掲げられてあったのが印象的です。このとき隣の席に座って色々話したお爺さんが、後日「ミス香港」の審査員としてテレビに出ていたのでぶったまげました。

 さてこの風水先生、蒋一族に何らかの縁があるようで、李登輝氏が副総統を務めていたときの直属の上司が逝去した後、依頼されてその墓地に関する風水鑑定を南京で行っています。日本の「Dr.コ×」といったまがい物などとは格も力量も違うのです。墓地の件は残念ながら大陸に埋葬することはかなわず、最近になって蒋介石以下みな台湾に葬られることが決まったようですが。

 ――――

 風水師というのは住宅、オフィス、店鋪から墓地に至るまでの風水鑑定をやります。その際に個人の運勢鑑定も併せて行われます。

 風水先生の説明を私が理解したところによると、風水がいい、というのは例えば住宅ならそこに住む個人(世帯主)と住宅の相性がいい、ということです。オフィスや店鋪であればその場所のトップとの相性、墓地選定であれば故人との相性のいい場所や墓地自体のつくりなどを鑑定することになります。

 オーナー企業(香港や台湾には多いです)と年間顧問契約を結んで、オーナーの運勢をもとに経営の方向をアドバイスしたり、意見を求められて回答したりもします。いずれにせよ、万人に通用する「いい風水」というものは存在せず、ある人にとっては「最悪」である風水の住宅が、別のある人にとっては「最高の相性」ということも珍しくないそうです。

 ですから、よく日本のテレビでやっているような、「リビングに黄色の物をおけば云々」とかいうのは、まあウソの範疇に入る物言いかと思います。

 ――――

 要するに風水を診る際には個人の運勢も占う必要があるということです。行われる占いは『易経』に発する中国伝統のものですから、全て旧暦でみていきます。やや具体的にいうと、占われる人の生年月日と出生時間を旧暦に換算して特定のテンプレートに従って記入すべきことを記入し、それを基に一生を占っていくのです。

 で、その運勢を占う際、例えば「今年の運勢」「来年の運勢」というときの「今年」「来年」も旧暦に基づくのですが、この世界における「年の初め」とは旧暦の1月1日ではなく、立春からスタートするのです。……ようやく本題に入ってきました。

 旧正月は中国語で「春節」と呼ばれますが、「春の節目」とは二十四節気でいう立春のこと。ですから本来なら旧暦の1月1日ではなく、立春を元日としてお正月を祝うべきもので、以前の中国はそうしていた筈です。いつから旧暦の1月1日になったのかは知りません。

 今年の立春はいつになるのか……「萬年暦」という西暦・旧暦対照表のような本がありまして(※1)、それを見れば一発なのですが、年末進行を終えたばかりの私の机の回りは仕事関係の資料が見苦しく散乱したままになっていまして、ちょっと出てきません。

 ――――

 それから、元日恒例の午前0時へのカウントダウン。日本でもやりますが、旧正月の中国・香港・台湾でもテレビではお馴染みの光景です。

 で、私はこれにも異義申し立てをしたいのです。旧暦における時刻は十二支により、2時間単位で分けられています。子、丑、寅、卯、辰、巳……1日の初めになる「子時」は、午後11時から午前1時です。つまり厳密には、カウントダウンをするなら午後11時で行うべきで、午前0時ではない、ということになります。

 旧暦に則った旧正月なのだから、旧暦なら旧暦で、伝統に徹底しないと変てこりんではないでしょうか。旧暦の立春の子時、つまり立春前日の午後11時が、本来の「春節」であり、一年の始まる瞬間なのです。

 ……という内容のことを、『北京青年報』の記事が私に代わって論じてくれています。

 ●立春それとも旧暦の元日――中国の新年は一体いつ?
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/09/content_2563768.htm

 ――――

 ちなみに、旧暦はOKの中国においても、そこは中国共産党、占いや風水は「封建的迷信」として未だに御法度です。

 もっともそれは建前上のことで厳禁という程ではなく、香港や台湾の企業が大陸に進出する際、風水を診てほしいという依頼が上記風水先生のところにはよく来るそうです。中国国内の企業からも求めがあるそうですが、値切り交渉をしてくるのが煩わしいので受けないとのこと。

 ただ最近、中学生から大学生にかけて占いが流行していることに、当局はちょっと神経を尖らせているようです。日本でいうコックりさんのようなものも行われて、それにまつわる殺人事件なども起きています。

 急激な社会の変化の下で育った若い世代。彼/彼女らが占いにすがろうとする背景には何があるのか、と考えさせられます(はい紋切り型一丁)。


 ――――


 【※1】この「萬年暦」は便利というより面白いです。私の持っているものは1800年から2100年までのカレンダーが旧暦に対応していて、例えば「坂本竜馬が暗殺された日のお月さまはどうだったのか」とか、「第三次ソロモン海戦の際の月齢はいくつだったのか」などという楽しみ方もできます。香港だと市場(街市)で間違いなく売っています。台湾なら書店、あるいはお寺が多いですからどこかの門前町に行けばあるのではないでしょうか。中国についてはちょっとわかりません。


 【追記】このテーマについては風水先生に尋ねれば他にも色々教えてくれると思うのですが、電話をするといつも「床屋の政談」になって、中共の悪口と香港社会の問題などで非常に話が合い盛り上がってしまうので、つい聞きそびれてしまいます。ちなみに風水先生は国民党系ですがなぜか陳水扁総統支持・独立支持です。小泉首相の靖国神社参拝については「社禝」という単語を使って「国のために命を捧げた人に感謝を捧げ敬意を払うのは当然のことだ」と言っています。



コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )





 旧暦の1月1日に当たる2月9日、旧正月で新年を祝う中国にとっては日本の元日のようなもので、一年で最もおめでたい日ということになります。

 日本は一衣帯水の隣国として最近は手を抜かなくなりましたから(笑)、こういう縁起のいい日に御祝儀を出すことを忘れたりはしません。ええ、尖閣諸島の話です。台湾人ノービザ認可(期間限定)との合わせ技で素敵なお年玉となっています。

 ――――

 このニュース、皆さんはもう御存知でしょうから説明の要なしと認む、としますが、一応備忘録として、日本側の報道(タイトルのみ)を並べておきます。

 ●尖閣・魚釣島灯台の所有権、国に移転へ(読売)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050209-00000205-yom-pol

 ●魚釣島の灯台、国に移管(産経)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050209-00000025-san-pol

 ●<魚釣島>政治団体が設置した灯台を国有財産に(毎日)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050209-00000126-mai-pol

 ●<魚釣島>灯台の国有化受け、正式に管理・運用開始(毎日)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050209-00000130-mai-pol

 ●魚釣島の灯台は国有財産 中国の反発は必至(共同)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050209-00000201-kyodo-pol

 出ました。「中国の反発は必至」という紋切り型ですね。しかしタイトルにまで使うとはさすが共同通信です。

 ――――

 『日本経済新聞』が伝えた細田官房長官のコメントがふるっているのですが、事実なんでしょうか?

 ●官房長官「国の魚釣島灯台管理、日中関係に全く問題ない」(日経)
 http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20050209AT3L0906Q09022005.html

 「そういうこと(尖閣諸島に領有権争いがあるという見方)を報道で提起することが、
先方にも楽しみを投げ掛ける面もあるので、しっかりと対応していただきたい」

 某巨大掲示板風に言えば「おまいら燃料投下もほどほどにしとけよ」ってなところでしょうか。「投げ掛ける」と言われて浮かぶ言葉はやはり「釣り」しかないでしょう(笑)。

 ――――

 ●尖閣諸島・魚釣島の灯台管理 政府、実効支配を強化(産経)
 http://www.sankei.co.jp/news/050210/morning/10pol002.htm

 ●尖閣諸島の灯台、政府所有に 所有者が放棄、中国は反発(朝日)
 http://www.asahi.com/politics/update/0209/010.html

 ●<町村外相>「尖閣諸島に日中の領土問題ない」(毎日)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050210-00000024-mai-pol

 ●外相「日中間に領土問題なし」・魚釣島問題で見解(日経)
 http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050210AT1E1000210022005.html

 ●25日販売の海図に灯台記載=魚釣島領有改めて主張-北側国土交通相(時事)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050210-00000996-jij-soci

 ●「灯台管理は国内の問題」 尖閣諸島で外相が中国に反論(朝日)
 http://www.asahi.com/politics/update/0210/006.html

 マスコミどころか、外相自らが燃料を投下しているようですね(笑)。「日中間に領土問題なし」。一言でピシャリと決めてくれました。GJ!

 ――――

 お年玉をもらえば感謝してみせるのが礼儀です。という訳で、中国はすぐに反応しました。脊髄反射です。

 ●魚釣島:中国がコメント「日本の行為はすべて不法で無効」(毎日)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20050210k0000m010122000c.html

 孔泉・外交部報道局長「魚釣島とその付属諸島は、中国固有の領土である。日本がとった一方的な行為は、すべて不法で無効である」(9日夜)


 中国側の原文(新華網)はこちらです。3本ありますが内容はほぼ同じです。

 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/09/content_2565505.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/09/content_2565560.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-02/09/content_2565603.htm

 孔泉外交部報道官も元日から引っ張り出されて大変ですね。翌日(10日)は北朝鮮問題でまた仕事。

 ●中国は六カ国協議の継続を希望(2005/02/10/22:29)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/10/content_2569065.htm

 記事が出た時間と内容の簡潔さからみて、これまた脊髄反射、つまり中国は北朝鮮から事前に相談を受けていなかったという印象です。

 ――――

 さて本題の台湾です。別に大した動きがあった訳ではないのですが、日本のマスコミがフォローしていないようなので、こちらで拾った記事を並べておきます。

 ●台湾外交部:釣魚台(尖閣諸島)は中華民国固有の領土
 http://tw.news.yahoo.com/050210/39/1hnz2.html

 呂慶龍・外交部報道官のコメントは、

 (1)釣魚台は中華民国固有の領土。これは我々がこれまでずっと主張してきたところだ。
 (2)日本には日本の見方があり、つまり釣魚台の主権については争議が存在する。これについては話し合いを通じて解決したい。
 (3)右翼団体が管理していた釣魚台の灯台が日本政府の手に移ったことは、今後日本と前向きに話し合いをする上での助けとなるだろう」

 ……と、領有権を主張しつつも非常にソフトな対応です。

 ――――

 もちろん民間で尖閣奪回運動(保釣運動)を行っているトンチキ(保釣人士)は大陸(中共)と香港のみならず台湾にもいます。

 ●台湾・金介寿氏、魚釣島に抗議船を出す可能性も
 http://hk.news.yahoo.com/050210/12/19ca2.html

 この金さん、台北県議員ということです。大陸、香港の有志と共同行動に出る可能性もある訳ですが、その際は五星紅旗と並んで青天白日旗を掲げることができるのでしょうか?甚だ疑問です。先に台湾を主権国家として独立させることをお勧めしたいですね。

 ――――

 ●李登輝・前総統「台湾の領土ではない」――釣魚台問題で
 http://tw.news.yahoo.com/050210/39/1hok3.html

 押し掛けた記者に対しての問答。

 李氏「釣魚台?おいおいまたその話?もう十何回も言っているじゃない」
 記者「主権は台湾にない、ということですか?」
 李氏「うんうん」

 他にも再訪日についての受け答えがあって面白い記事です。

 ――――

 最後に現実的な解説記事を。

 ●ノービザ認可と釣魚台、微妙な台日関係
 http://tw.news.yahoo.com/050210/44/1ho95.htm

 ノービザによる台湾人の日本入国を期間限定で許可する法案の成立と、尖閣灯台問題は同じ日のニュースなんですね。でも日本は李登輝氏の来日を実現させたり、愛知万博期間中のノービザ許可が決まったりと、対日関係は目下非常に良好な状態にある。だから外交部はソフトな反応にとどめたし、その姿勢は正しい。いま重要なのは釣魚台が誰のものかではなく、ノービザ恒久化を実現させることだ、という趣旨です。

 ――――

 ちなみに香港の新聞の論調は大陸の姿勢に足並みを揃えています。『明報』の解説記事を出しておきます。

 ●日本の釣魚台実効支配進む――中国は強力に反撃すべきだ
 http://hk.news.yahoo.com/050209/12/19c4q.html

 でもこれは口だけのポーズだと考えておくべきでしょう。香港は世論としては「尖閣諸島は中国のもの」という気分があるものの、実際に運動している人はあまり多くありませんし、市民の強い後押しを受けている訳でもありませんから。

 ただ中国返還後のモロモロで香港社会にはある種の閉塞感が漂っており、これが充満したときの憂さ晴らしとして「保釣運動」が盛り上がる(中国には楯突けないため)可能性はあります。これは1996年に前例があります(※1)。

 以下は余談です。

 香港人といえば、サッカーワールドカップ最終予選の「日本-北朝鮮」が行われた日(2月9日)、香港では旧正月記念イベントとして、「ブラジル-香港」戦が催されました。結果は7-1でブラジルが香港代表を公開処刑。でもサッカー好きの多い香港人はブラジル代表のゴールシーンをたくさん見られたことに加え、香港も1点取ったことで概ね満足していたようです。ロナウドは遠征自体に参加しませんでしたが、ロナウジーニョは出場して活躍。でも地元ラジオによると、チケットが1500香港ドルと高すぎたため満員にはならず、ダフ屋が泣いていたとか。

 ――――


 【※1】当ブログ「香港で経験した『保釣運動』の馬鹿さ加減」(2004/08/04)


コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )





 きょう2月9日は旧暦の元旦で、いわゆる旧正月(春節)の元日(初一)ということになります。

 という訳でみなさん、「新年好!」「恭喜發財!」

 萬事如意、身体健康、工作順利、龍馬精神、歩歩高升、青春常駐、一本萬利、大吉大利、花開富貴、大展宏圖、心想事成、従心所欲、老少平安、萬事勝意、事事如意……。

 数々の四字熟語?は縁起ものですから、「新年好!」とか「恭喜発財!」のあとに相手と競い合うようにどんどん言っていくので自然に覚えてしまいました。まだまだあるとは思いますが。

 ※ちなみに香港で「新年好!」は使われません。使うと大陸者認定(粗野で無知で低能で礼儀知らずでセンス悪で貧乏で汚くて臭い)ですから御注意を(笑)。

 ――――

 さて旧正月記念におめでたい話を、と探してみたのですが、これがなかなか見つかりません。

「胡錦涛が貴州に行って新年を迎えた」

 なんて、ああそうですか、てな感じで別におめでたくもありませんしねえ。

 まあそれでも苦心惨憺してようやく探してきました。おめでたい話。

 ――――

 ●広東省、帰省ラッシュの11日間で交通事故6602件、死者335名
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/08/content_2560292.htm

 (前略)
広東省公安庁交通管理局が明らかにしたところによると、帰省ラッシュのスタート(1月25日)から2月4日にかけて、広東省内の道路で発生した交通事故は合計6602件にのぼり、死者335名、重軽傷者は2996人に達した。事故死者数は前年同期比で10 %減少し、死者3名以上の交通事故数も9件と、やはり前年同期比で10ポイントの減少となった。

 帰省ラッシュの開始以来、広東省では雨模様の天気が続いたため視界が悪く、路面もスリップしやすくなっていた。春節(旧正月)直前には乗客制限オーバーのバスやスピード違反、それにトラックによる乗客輸送、また無免許運転などといった違反行為が急増する地区も出て、事故の頻発を招いていた。

 ――――

 旧正月早々に縁起の悪いニュースを、と言うなかれ。確かに旧正月期間中に使うべきでない縁起の悪い言葉はあります。「死」「禍」「病」「劫」なとはNGワードですね。あと「滅絶支那豬」も(笑)。

 しかしこの記事、この記事はいいニュースであり、警察当局の自画自賛記事なので「おめでたい」のです。

 いかに335名が死のうと3000人近くが負傷しようと(その一部は恐らくもう鬼籍に)、役人にはお構いなし。

「前年同期比で10 %減少」
「前年同期比で10ポイント減少」

 なんだから成績は上がった、万歳!ということになるのです。

 それにしても、中国人の命はあくまでも安っぽく扱われていますね。ま、江沢民のいうところの「社会主義市場経済」に照らせば、需給バランスのなせる業(供給過剰)なのですから仕方ありません。

 ちなみにこれは自動車事故であって、交通管理局の管轄外である鉄道や船の事故などは含まれていません。

 ――――

 他にも北京周辺のニュースとして、

「爆竹を鳴らそうとして五体が吹っ飛んだ男」
「ロケット花火?が花火屋に飛び込んで誘爆が誘爆を呼び、七色の光を放ちつつ店鋪がスパーク……ではなく大爆発」

 などもありますが、これは「おめでたい」訳ではないので自粛しておきましょう(笑)。


 ――――


 【追記】ちなみに前回のコメント欄にも書きましたが、「粗野で無知で低能で礼儀知らずでセンス悪で貧乏で汚くて臭い」という大陸人評は香港人によるもので、私ではありません。念のため(笑)。だいたい20歳前半から上の香港人には「大陸仔」にそういうイメージがあるようです。「最後の香港人」といえる世代かも知れませんね。いまの小中学生は北京語も割と話せますし国歌も歌えます。こいつらはもう駄目です(笑)。



コメント ( 11 ) | Trackback ( 0 )



« 前ページ