日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 週末なんだから少しはいたわってくれよー、と中共に言いたいです。上海市のトップ決定!という大型人事のニュースが飛び込んで来ました。

 私は金曜日に急にまとまった仕事が入ってたくさん中国語を書かされて原稿料を荒稼ぎできたのですが、その他色々なことがあっていまはとても疲れています(前回参照)。今回はプロの方々に少し働いて頂きましょう。それでは皆さん、ドゾー。



 ●上海市の新トップ、浙江省書記の習氏に 新華社報道(asahi.com 2007/03/24/22:25)
 http://www.asahi.com/international/update/0324/019.html

 中国共産党は、汚職事件への関与の疑いで解任された上海市トップの市党委員会書記のポストに、浙江省党委書記の習近平氏(53)を任命することを決めた。国営新華社通信が24日伝えた。昨年9月に陳良宇・前市党委書記が市社会保障基金の不正流用事件をきっかけに解任された後、党委書記の職務を代行していた韓正・市長についてはその代行を解いた。
(後略)


 ●上海市トップに習近平氏、汚職の混乱立て直し(読売新聞 2007/03/24/21:20)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070324i113.htm

 (前略)
習氏の任命は、昨年9月に政治局員の陳良宇・同市党委書記(当時)の解任を招いた同事件に一応の幕引きを図り、混乱した上海市を立て直して、今秋の第17回党大会を円滑に開く環境を整える狙いがある。習氏は、党長老の一人だった習仲勲・元副首相(故人)の息子。福建省長を経て、2002年11月から上海に隣接する浙江省の党委書記を務めた。次期党大会で政治局入りが有力視される“若手”実力者の一人。


 ●上海市トップに習近平氏=「ポスト胡」の若手指導者-汚職の混乱立て直しへ・中国(時事通信 2007/03/24/22:45)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007032400299

 (前略)
上海市では昨年9月に陳良宇党委書記(当時)が汚職事件で解任。胡錦濤党総書記(国家主席)は、実務派の習氏の就任で、江沢民前総書記につながる「上海閥」を抑え、汚職事件で混乱した上海市の立て直しを図る。胡氏は今後、今年秋の第17回党大会に向け、若手指導者を抜てきし、権力基盤を固める方針だ。習氏は「ポスト胡」時代を担う若手指導者。父親は党長老だった故習仲勲元副首相で、「太子党」と呼ばれる高級幹部子弟の代表格とされる。約17年間にわたり福建省で勤め、同省長などを経て2002年11月から浙江省党委書記。上海市党委書記就任で党大会では党政治局(現在24人)入りが確実になった。上海市党委書記代理を兼任していた韓正市長も近く交代する予定。


 ●中国:上海市新書記に習氏 胡体制強化へ浙江省から(毎日新聞東京朝刊 2007/03/25)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/archive/news/2007/03/25/20070325ddm007030069000c.html

 (前略)
習氏は02年11月に浙江省党委書記に就任。党長老の習仲勲元副首相(02年死去)の息子という高級幹部の子弟ではあるが、福建省を中心に地方行政官としての経験を積んできた。「ポスト胡錦濤」の第5世代を担う若手指導者の一人として注目されている。上海市は長らく、江沢民前国家主席を中心とする「上海閥」が中心となって、上海の政治を動かしてきた。しかし、昨夏、78年の改革・開放政策が始まって以来、最大の汚職事件が発覚。腐敗撲滅で党の求心力強化を狙う胡政権は若手の抜てきで政治体制の刷新を図る。


 ●上海市トップに習近平・党委書記 政治局入り確実に(Sankeiweb 2007/03/25/00:47)
 http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070325/chn070325000.htm

 (前略)
習氏は、副首相などを歴任した故習仲勲氏の長男で、同じ党長老子息の曾慶紅国家副主席や薄煕来商務相らと近いとされる。高級幹部の子弟を意味するグループ「太子党」の代表格の一人でもあり、アモイ市長、福建省長などを経て2002年から浙江省党委書記に就任した。文化大革命中、陝西省に下放されて農業に従事した経験もあるため、農村対策に熱心なことで知られる。胡錦濤指導部が今回、清廉実直とのイメージをもつ習氏を、汚職にまみれた最大都市のトップに据えたことは、官僚の汚職に対する胡総書記の毅然とした姿勢を示す狙いもあるようだ。



 率直な感想は「やっぱこれ民族戦争。トップ人事に垣間見えたは上海魂?」と、標題そのまんまです。

 私は消息筋とか裏情報とかいうものを持っていませんから、楽屋裏のことはわかりません。驚いたのは、上海市のトップに起用されたのが胡錦涛直系の「団派」(胡錦涛の出身母体である共青団人脈)ではなく、アンチじゃないけど親胡錦涛派かどうかは怪しい「太子党」(二世組)だったということです。

「そこまで根深いのか。やっぱり政争じゃなくて戦争なんだなこれは」

 と戦慄めいたものが走りました。……いや、楽屋裏の事情がわかりませんから勝手に驚いて戦慄しているだけなんですけどね。要するに下衆の勘繰り。

 その勘繰りを続けることにします。

 ――――

 「戦争」であることは陳良宇をひっ捕えるまでの段取りの緻密さと、陳良宇拘束後には芋づるの上海脱出を防ぐために武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)までが動員されて警戒に当たったという物々しさ、そして陳良宇拘束で混乱するかも知れない事態を収拾するために中央から特使がわざわざ派遣されたという異常さ、さらに党中央紀律検査委員会の特別チームが余罪や連座者摘発のため「進駐軍」として上海に大挙乗り込んだことによります。

 ●陳良宇失脚!世継ぎ消滅で上海閥はお家断絶の危機。(2006/09/25)
 ●恭順宣言に進駐軍そして戒厳令――揺れてます上海。・上(2006/09/27)
 ●恭順宣言に進駐軍そして戒厳令――揺れてます上海。・下(2006/09/27)
 ●続上海:安定団結?政変進行中だからそれは無理。(2006/09/28)

 むろん、次世代を担うプリンスとされていた陳良宇の失脚で上海閥が壊滅的打撃を受けたことが最大級の衝撃。「政界に激震」なのです。

 ただ、この事態の本当に深刻なところはそういう政争レベルの話ではなく、「北京人vs上海人」といったような、あたかも異民族同士の戦争という色彩を帯びていた点にあるのではないか、と勝手に戦慄した次第です。

 ――――

 中国本土の反日サイトとか天下国家を語る掲示板をのぞくと、発言上のルールを箇条書きしたものが必ずあります。「やってはいけないこと」が羅列されているのですが、その中にしばしば見かけるのが、

「特定の地方を誹謗中傷したり攻撃してはいけない」

 という一項。その「特定の地方」というのは往々にして「上海」なのです。中国国内では日本文化の受容度が高いという点で反日サイトの槍玉に挙げられたりするのですが、それ以前に「上海人」というのはどうも中国国内での受けが良くないようで。

 上海人自身に上海=都会でお高くとまって排外的で、よそ者を田舎者扱いするような傾向は以前からありました。

 私が上海に留学していた当時(1989~1990)は中国人大学生の学費がまだ政府負担でしたから、実家の経済力で付き合いがはっきり分かれるとか喧嘩するということはまずなくて、「北方人vs南方人」とか「上海人vs非上海人」という反目による取り組みがよくみられたものです。中国人学生は1部屋8人ですから、きれいに色分けされて喧嘩が起きたりしていました。

 北京人と上海人のライバル意識を表現する言葉で、

「京派」(北京風味・北京気質)
「海派」(上海風味・上海気質)

 という単語も古くからあります。

 ――――

 陳良宇失脚によって「おれにも累が及ぶかも」と戦々恐々とした面々が官民ともにたくさんいたことでしょう。その線引きをするための「進駐軍」投入であり、ビクビクした空気を抑えるための特使派遣だったのだと思います。

 ただ、それとは別に、陳良宇の評判がいかに悪かったとしても、外部から進駐軍がやってきて独立王国めいた秩序を解体していくことに上海人として反発する意識、理非を超えてこれは許せないと思う意識が一斉に頭をもたげたのではないかと。

「よそ者 vs 上海人」
「京派 vs 海派」

 といった、陳良宇治世下における汚職横行の是非をすっ飛ばして噴出した感情です。いわば上海魂。これは胡錦涛をはじめとする中央の計算外だったように思います。

 トップの陳良宇が失脚した後は、ナンバー2である韓正・市長が市党委員会書記代理を兼任することで穴を埋めました。この韓正は胡錦涛直系の「団派」で、要するに上海閥の牙城に胡錦涛が打ち込んだくさび役ながら、内偵支援を別とすれば陳良宇失脚までポストプレーが十分に機能した形跡はありませんし、失脚後の人心掌握を務める上でも役不足だったようです。

 この線から眺めてみると、ひとつだけ腑に落ちることがあります。上海閥のひとりで最高意思決定機関の党中央政治局常務委員に名を連ねながら、健康不安説に加え陳良宇失脚で党中央政治局常務委員としての扱いを停止された観がある黄菊・副首相の不可解な行動です。

 ●上海に居座る黄菊&世界を不幸にするWHOトップの誕生。(2006/11/09)

 陳良宇失脚後ほどない昨年10月末から2週間、黄菊は上海を離れませんでした。あるいは「上海魂」を慰撫するためだったのではないかと。

 党中央政治局常務委員には呉邦国など他にも上海閥の現役指導者がいますけど、すでに干された状態にある黄菊なら上海に置いておいても目立たず、憶測を呼ぶとしても「やはり黄菊は干されている」といった解釈に落ち着きます。

 ――――

 この黄菊、当ブログでは、

「政治的に心電図ピー状態」

 と丁寧な扱いをされていますけど(笑)、さきの全人代(全国人民代表大会)や全国政協(全国政治協商会議)をみても、黄菊が健康不安説に加え政治的にも「心電図ピー状態」であることが改めて明らかにされたと思います。

 ●哀れなるかな黄菊、地元で「人民裁判」に。(2007/03/09)

 このエントリーでもふれましたが、全人代における「人民裁判」の前日である3月6日に、現役上海閥の筆頭格である呉邦国・全人代常務委員長が上海市代表団の分科会を訪れて改めて「人心慰撫」を行っているのです。

 その慰撫される「人心」とは陳良宇失脚で動揺する上海市当局幹部や富豪とされ、私もそう考えていたのですが、実はそうではなく、「よそ者に荒らされたことに怒る上海人」をなだめるのが目的だったのかも知れません。

 そして、「進駐軍」「よそ者」を具現化した存在として理屈を超えて恨まれていたのが韓正・市党委員会書記代理(市長)だった、という見方はどうでしょう。

 ――――

 胡錦涛としては、対外的なアピールも含めて、上海市トップの後釜には「団派」の有力者を据えたかったことでしょう。これ以上わかりやすい勝利宣言はないからです。いわば「上海占領宣言」。

 韓正は元々市長ですから、いきなり上海のトップになるには早すぎます。今回のパフォーマンスに胡錦涛がダメ出ししていなければ、恐らく省か自治区のトップ、……高評価ならたぶん経済的に重要な沿海部のどこかの省の党委員会書記を務めてから直轄市のトップないしは党中央入り、というのが妥当な線だと思います。

 実際、韓正が上海市長から転出し、後任に安徽省のトップである郭金龍・省党委員会書記が収まる、とのロイター電が香港では流れています。新華社もそれを暗示するかのように、郭金龍の長々とした演説記事を配信しています。お別れセレモニーだったのかも知れません。

 ●「ロイター通信」(2007/03/24/16:57)
 http://hk.news.yahoo.com/070324/3/24bdd.html

 ●『明報』電子版(2007/03/24/17:00)
 http://hk.news.yahoo.com/070324/12/24bd5.html

 ●「新華網」(2007/03/24/10:04)
 http://news.xinhuanet.com/local/2007-03/24/content_5889594.htm

 このロイター電及びそれを引用した『明報』電子版によると、上海市のトップに起用された習近平は上海閥との反目がなく、市長就任が噂される郭金龍は江沢民との関係が良好とのことです。

 もし韓正も異動となるのなら、次にどんなポストを与えられるかにも注目ですね。

 ――――

 胡錦涛としては、対外的なアピールも含めて、上海市トップの後釜には「団派」の有力者を据えたかったことでしょう。……と改めて強調しておきます。

 しかし、予定外だった噴出する「上海魂」の凄まじさに「団派」を起用することを控え、

「アンチじゃないけど親胡錦涛派かどうかは怪しい『太子党』」

 を陳良宇の後任に持ってこざるを得なかったのではないでしょうか。ちなみに「太子党」というのが「団派」や「上海閥」といったようなまとまった政治勢力なのかどうか私は未だに疑問に思っているのですが、「太子党」から起用するなら習近平、というのは妥当な人選です。上海のトップになることで、報道にあるように党中央政治局委員への昇格も内定。

 ただこの習近平、沿海部のポストを歴任している点で外資中毒の上海を任されることには適しているでしょうが、クリーンだとか農政に熱心というのはどうでしょう。少なくとも当ブログでは習近平治世下の浙江省で環境汚染を原因とする深刻な農民暴動が起きたのに当局は武力弾圧して税収源である公害企業の側に立った、というケースを複数紹介しています。

 ●21世紀型農民暴動。(2005/07/01)
 ●またですよ21世紀型農民暴動。(2005/07/20)

 私は示威的な意味も込めて上海トップは「団派」、とすれば江沢民の生地・楊州を管轄下に含み、陳良宇率いる上海閥の牙城に隣接していた江蘇省のトップ、李源潮・省党委員会書記あたりが昇格人事としても妥当だから白羽の矢が立つのではないかな、と根拠もなく漠然と思っていました。

 ポスト胡錦涛と噂される次世代「団派」の筆頭である李克強・遼寧省党委員会書記に次ぐ存在が李源潮だとされています。それが上海のトップでないなら中央入りして党中央政治局委員、うまくいけば飛び級で党中央政治局常務委員にまで登り詰めるのかも知れません。

 ――――

 ともあれ、「太子党」ということに私は異様さを感じました。胡錦涛直系のホープを後任にあてることができないほどの反発がいまなお上海に残っているのでしょう。

 「揺れている」のではなく「荒れている」のです。陳良宇を潰すほどの剛腕ぶりをみせた胡錦涛も、「上海魂」には我意を通せなかった、といったところではないかと思います。

 プロの皆さんが指摘されている「混乱立て直し」ではあるのですが、「混乱」の源は汚職ではなく上海人意識なのではないかと。「太子党」を起用したことから、少なくともこれは一種の妥協人事であり、「胡錦涛が毅然とした姿勢を示した」とは、私には感じられません。




コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )





 きょうは土曜日ですよね?週末ですから少し弱音を吐かせて下さい。ちよっと時間の感覚が変なんです。確か木曜に上京してきた高校時代の友人(サウンドール系……って誰も知らないですよね)と食事して、お土産とか言ってコピーしたYMOのバンドスコア(公的抑圧)をどっさり渡されました。それだけでも目の毒なのに、ついちょっとのぞいてしまったところ、

「Ad lib→」
「Repeat 6 times」

 なんて書かれている8小節、つまりアドリブ合計48小節が目に飛び込んできました。頭の8小節しか譜面化されていないのを見てしまうと、また昔の血が騒いで残り42小節を耳コピしたくなるじゃないですか。いやもちろん20年以上前に耳コピして譜面にしてあるんですけど生憎それは実家の物置。しかもコピーされた楽譜のドラムパートに打ち込み用のパターン番号まで書いてあるのです仆街!

 それで友人と別れてから危うく近くの楽器屋に寄りそうになったのを我慢して、打ち込みソフトを売っている秋葉原を通らないようにして何とか帰宅しました。

 でもダメです。「いきものがかり」をマクブクから流しているのに、頭の中は「The End of Asia」で坂本龍一がギターにかぶせたソロの旋律が耳コピしろ譜面化しろとガンガン鳴っています。

 仕方がないので渇を癒すべく「雅虎香港」(Yahoo!香港)へ飛ぶ前にバッグから楽譜を取り出してみたら、分厚い紙の束の中からCDがポロリ。吊~!それが友人のオリジナル(テクノ系)&コピー(YMO)の作品集なんです。こっちは機材からソフトまで買うのをひたすら我慢しているのに、

「ネットで送ると重いから焼いておきました。御笑納あれ」

 なんてメモまでついています。何たる鬼畜(怒)。

 ――――

 それでも時間ですから「コイスルオトメ」とかを唱和しつつ教授のアドリブに抵抗して香港・台湾・中国と日課の記事漁り。それが終わればブログの時間なのですがもうオンガクですっかり消耗していて書く気力がありません。そこでちょっと串刺して反日サイトに飛んでときどきやっている「ぶひ」活動(ブックマーク参照)。面白いもので、中国語を書くと楽しくなってくるのでようやくサカモトが頭から消えて、朝になったので床に就きました。

 ところが。そのあと3時間ばかり寝たら恩師からの電話で起こされて、ひとしきり話して受話器を置いたら眠れなくなってしまいました。恩師の話は世間話でも内容が警抜で気を抜けませんし、ときどきマンダリン(純正)が唐突に混じるので油断できないのです。

 それが金曜の午前で……それからいま現在まで寝ていません。金曜日にと用意しておいたブログの題材があったのですが、もう体力がなくて書けませんでした。すみません。

 そのあとは確か食事をして風呂に入ってから出かけて床屋で散髪してもらって、いつもカットしてくれる自称尊王攘夷派の「尊攘さん」と周恩来の次の首相は誰だったかを二人で考えてみたのですが名前が思い浮かびません。それじゃ四人組の名前はということになったのですが、江青、姚文元、張春橋……まで言えるのに、もう一人がどうしても出てこないのです。髪はサッパリしたのですが二人とも気分は不完全燃焼で次回の宿題ということに。

 そのあと帰宅すると昼間なのに急な仕事が入って日本語と中国語をたくさん書かされて、気付いたらもう夜で記事漁り。そのとき突然四人組の残り一人が王洪文だと気付いて膝を打ったのですが時すでに遅しです。記事は結構豊作でホクホクしながら作業を終えてさあ寝ようと思ったら、信濃の先輩が出張で上京しているのを思い出しました。

 上京といってもお江戸ではなく田無という武州の地味なところに来ていて、木曜夜にその旨メールをもらって、土曜に帰るから午前中にまだ行ったことのない靖国神社に行ってみたいというのでそりゃいいですね是非お供させて下さい高田馬場から東西線で九段下ですよ一緒に海軍カレー食べましょう零戦みながら。……みたいなレスを送ったのです。

 それじゃもう寝る時間ないじゃん、てことでつい友人が焼いてくれたCDを聴いてしまったら良く出来ていてもう悔しくて悔しくて含家�!そういう勢いのまま前回のエントリーに頂いたコメントにレスをつけたので乱筆というかネジが数本飛んでいるかも知れません。諒とされたし。……と時間なので出かけてきます。m(__)m

 ――――4時間――――

 それで今回のお題なんですが週末なのに固い話で、固い話ですけど週末ですから中身はそれほどありません。胡錦涛政権の「中央」としての実力は如何に、てな感じです。

 「諸侯」と呼ばれる各地方勢力に対して、胡錦涛政権は一体どれほどの拘束力を持っているのか。それをわかりやすくテストする機会が登場しました。

 ●政府機関の建設した庁舎や研修センターの実情を監察部が調査・整理に(新華網 2007/07/23/15:33)
 http://news.xinhuanet.com/lianzheng/2007-03/23/content_5887318.htm

 というもので、要するについ地味に隠れてしまった前々々回のエントリーに光が当てられることになりました。

 ●地方政府はやりたい放題、の一例。(2007/03/20)

 地方当局が近年建設した政府庁舎や研修センターなどについて監察部が査察のメスを入れ、違法行為は厳しく処罰し、その中でも象徴的なケースはさらしものにするとのこと(笑)。

 そうです。あのホワイトハウスめいた御殿やなんちゃって天安門や竜宮城や斬新なデザインの会議室や政府庁舎、さらに庁舎とは無縁としか思えない人造湖や緑地、どうもあれら極端に分不相応な建築物が血祭りに上げられる可能性がきわめて濃厚。

 その証拠にこの記事にはその斬新な会議室&緑地の写真が添えられており、「地方政府はやりたい放題」で紹介したトンデモ写真集(笑)へのリンクも張られています。胡錦涛のヤル気を反映してか、新華社も万全の態勢で臨んでいるという訳です。

 ――――

 しかし胡錦涛はああした地方当局の贅沢三昧な庁舎や宿舎を取り壊すことができるのでしょうか。「写真集」まで引っ張ってきているので何らかの形で鉄槌を下すつもりだと思われますが、果たして胡錦涛つまり中央政府の威権をそこまで及ぼすことができるのか、どうか。

 上記エントリーで写真に添えた説明を読んでお気づきの方も多いかと思いますが、あれらトンデモ施設の中には中央政府に次ぐ行政レベル、つまり直轄市・省・自治区はひとつも含まれていませんでした。いずれもそれより下級部門である「市」や「区」や「県」や「鎮」そして都市部の最末端である「街道」などです。

 これはある意味非常に象徴的です。大型人事や世代交代が行われる第17回党大会を今秋に控え、胡錦涛はその直系人脈である「団派」(胡錦涛の出身母体である共青団人脈)や親胡錦涛系の有力な若手幹部を直轄市・省・自治区のトップ(党委員会書記)やナンバー2(市長・省長・自治区主席)に続々と送り込み、中央の権威強化及び自派閥の勢力拡大に余念がありません。

 ところが、果たしてそうした胡錦涛系のホープたちはその任地において、管轄区域をしっかり仕切ることができるのか、という問題にぶつかります。

 所詮は雇われトップですから、地元のボスに丸め込まれたり神棚に祭り上げられたりして、下級部門に手出しができないようにされてしまう可能性があるのです。実際、「写真集」が示す下級部門の贅沢三昧は、直轄市・省・自治区当局レベルによる統制が十分に及んでいないことを示すものに他なりません。

 それを潰すことができるのか胡錦涛?……と疑問を投げかけることで今回の主題は完結するのですが、ついでに言っておくと、今回の査察は監察部が直々に全国各地を回るのではなく、各地方当局の監察機関が査察の実行者となる、という話のようです。

 それじゃ従来通り中央の威権は及ばないのでは?という感想が浮かびます。でも「写真集」でいわば名指し批判を行っているのですから、吊るし上げられた地方当局はただでは済まない……筈です。たぶん。

 ――――

 ちなみに今回の査察の対象には政府庁舎や研修センターだけではなく、地方当局者の公費による不必要な飲み食いや視察と称した物見遊山、また意味不明の派手なイベント開催、特権を利用した不動産購入及び不当な収入(家族も含む)なども含まれています。

 タイミングでいうと、権力を利用して懐に入れた資産が物権法の施行によって「私有財産」として法的に保護されるのを防ぐ目的もあるでしょう。

 ただし、疑問なのは査察の本気度です。そもそも地方当局の監察部門自体が「写真集」にあるような豪華庁舎に入っているのでは?

 全国各地で形だけの査察が続出しそうな気配ですが、それを逐一ねじ伏せて押さえ込む力量が中央政府にあるのかどうか。胡錦涛の腕っぷしが試されているといっていいでしょう。

 ところで周恩来の次の首相は誰なのでしょう?私はともあれ就寝しますので、目覚めたらきっと正解のコメントをどなたかが入れて下さっていることでしょう。それだけを楽しみにとりあえず寝ます。

 夢に温家宝が10年着古したジャンパー(自称)着用で出てきそうな悪寒。朱鎔基なら大歓迎ですけどあの人は音痴だから歌と胡弓(二胡)だけは勘弁。李鵬?李鵬なら鳥フル生卵で瞬殺です。

 ちなみに今回の記事文中で何回か「ピー」が鳴ったようですけどたぶん気のせいです。






コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )





 世間的には祝日のようですから、それに安んじて書くとしましょう。

 温家宝・首相の訪日日程が固まりつつあるようですね。

 ●温首相訪日日程は来月11~13日(Sankeiweb 2007/03/17/11:21)
 http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070317/chn070317001.htm

 【北京=野口東秀】中国の温家宝首相が4月11日から13日の日程で訪日することが分かった。日中外交筋が明らかにした。温首相は11日午後、日本に到着後、直ちに安倍晋三首相との首脳会談に臨む。
(後略)

 ――――

「日中外交筋が明らかにした」

 とあるように、正式発表はまだ行われていません。一部では、

「元々11~15日の予定だったのが短縮された」

 という報道もあったようです。きのう(3月20日)に開かれた外交部報道官定例記者会見ではこれを否定するとともに、現在は日中間で内容を詰めている最中だ、とのことでした。

 ●「新華網」(2007/03/20/20:18)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-03/20/content_5873055_1.htm

 ――――

 農村訪問とかテレビで市民と対話するとかいう企画があったようですが、全部流れてほしいですね。まあテレビに出たところで温家宝の「親民総理」芸が日本の民度に通用することはないでしょうけど。

 農村訪問という企画にはちょっと笑ってしまいました。温家宝はよく田舎の貧乏な農村なんかを10年着古したジャンバー(自称)を羽織って訪問し、農民と親しく語り合ったりして庶民の人気取りをしていますけど、もしかしてあの感覚で、日本でも同じことをやって通用すると思っていたのかなあ、と。

 日本の農村をなめちゃいけませんよ。でも空気の読めない地元民から「あんた誰?」扱いされたり、抱き上げた幼児に「おじーちゃん、お口くさーい」とか言われる光景も見てみたいですね(笑)。

 許せないのは国会演説が予定されていることです。国会は全人代(全国人民代表大会)とは違うんですよ。同じ立法府であっても、日本の国会議員は普通選挙制という民意の洗礼を受けているのです。

 そういう場所で一党独裁国家の首相に演説させるというのはどういう了見なのか。どうにも納得できません。

 どうしてもやるなら床にバナナの皮を敷いておくとか落とし穴を設置するようにして下さいな。あと与党議員総ボイコットとか。とにかく温家宝のメンツを潰す方向でよろしく。

 ――――

 で、今回の訪日について本当に日程が短縮されたのであれば、一部の報道にあるような「従軍イワノフ」問題が原因とする説、これには短絡的すぎて私は賛同できません。

 本当に短縮されたのなら、これは歴史問題とは直接関係がないと思うんです。わかりやすくいうと、これは外患(歴史問題)ではなく内憂によるもの。要するに国内の政治事情を反映したものではないかと。

 この1年ばかりで色々なことが起きています。

 ●中国調査船が尖閣諸島海域で事前通告なしの海洋調査活動。
 ●米空母戦闘群を中国潜水艦が追尾。
 ●香港人の自称活動家による尖閣上陸計画に呼応するかのような東海艦隊の実弾射撃演習。
 ●弾道ミサイルによる衛星破壊実験。
 ●中国調査船が尖閣諸島海域で事前通告なしの海洋調査活動。
 ●退役中将による中国の新しい歴史教科書批判。
 ●沖縄県知事による尖閣諸島視察計画に対する反応。

 これらの出来事には共通点があります。事態が明るみになった際の中共政権の対応が周章狼狽したものだったか、第一声までに変にタイムラグがあったこと。あるいは中共系メディアの中で報道しようとする動きと報道させまいという動きが存在した形跡がみられること。

 「沖縄県知事による尖閣諸島視察計画」については最も敏感であるべき人民解放軍機関紙『解放軍報』が一貫して沈黙していますし、外交部報道官定例記者会見にも出てきません。

 ――――

 中国共産党上層部及び軍部の中にある種の「不一致」があるのではないかと感じさせます。要するに一枚岩ではないということです。どうも対外強硬派が政権を引きずっている、あるいは足を引っ張っているという印象を受けます。

 温家宝訪日に対しても、あるいは反対意見があったのではないかと。ただ安倍晋三・首相の訪中に対する答礼として訪日しないことには日中関係がまた怪しくなります。新幹線とか省エネ技術とか、喉から手が出るほど欲しいものにも手が届かなくなるかも知れません。

 だから中共史上最も頼りない最高指導者・胡錦涛は日程短縮で妥協したのではないかと。……別に根拠なんかありませんけどね。ただちょっと気になるのは、

「日本の与党幹事長が温家宝訪日の成功を保証」
「日本政府は温家宝訪日を極めて重視」
「安倍首相が温家宝訪日を成功させねばならないと表明」

 ……なんていうニュースが中共メディアで最近毎日のように流されているんですよ。ああいうニュース、一体誰に聞かせるために流しているのかなー、なんて考えさせられたりするのです。

 ――――

 ただそれだけ。祝日ゆえの雑談気分で下衆の勘繰りをしてみただけのことです。




コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )





 きょうはもう1本。今回は笑われるのを承知で。

 えーと先月でしたか、旧正月直前の超繁忙期に年甲斐もなく「いきものがかり」というバンドの音楽に癒されている、ということをつい書いてしまいました。

 ●戯れ言。(2007/02/04)

 その「いきものがかり」がこのほどファーストアルバムを発売したので、臆面もなく御紹介する次第です。当人は「楊枝削り」のつもりはなく、かといって「布教活動」というほどのこともないので「雑談」扱いにしておきます。


桜咲く街物語
いきものがかり, 水野良樹, 島田昌典, 江口亮, 湯浅篤, 田中ユウスケ, WESTFIELD
ERJ

このアイテムの詳細を見る


 私は10年ばかり日本を離れていたので、東京に戻ってみたらその間のミュージックシーンの変化についていけず古い音楽ばかり聴いていました。ところがふとしたことで森山直太朗の「さくら」に出会いました。旋律も歌詞もツボで震えがきました。

 若い世代でも桜を題材にすると変に神妙で真摯な楽曲になるんだな、やっぱり日本人にとって桜は特別なんだなー、中共の日本研究者どももそのあたりを取っ掛かりにして考察していったら面白い何事かがみえてくるかも知れないのに。……などと考えていたら、今度は「いきものがかり」の「SAKURA」です。

 ――――

 「SAKURA」は私の中では森山直太朗の「さくら」に劣るのですが、別に「小田急線の窓に今年も桜が映る」からではなく、やはり神妙で真摯な印象を受けたのでともあれシングルを買ってみました。

 すると「ホットミルク」という収録曲にハマってしまいまして、じゃあ他のシングルも聴いてみようと思いあれこれ買ったところ、今度はオッサンのくせに「コイスルオトメ」という曲が心に沁み入ってしまいました。そして心待ちにしていたアルバムがとうとう発売された次第です。

 初めて聴く曲にも私好みのものが多くて、買ってよかったなーと思いつつ毎日飽きることなく聴いています。

「KIRA★KIRA★TRAIN」

 というのがいちばん沁みました。こういうシチュをこういう言葉で、しかもこういう旋律に乗せて表現できるのかと、免疫のない私は衝撃を受けてしまいました。

 ――――

 大いに意を強くしたのは、この「いきものがかり」がストリートミュージシャン上がりだということです。以前中国のアニメについて書いたときふれましたけど、やっぱりレベルが高くて多彩で広範なアマチュア層が業界(プロの世界)の強さを支えているんだなあと再認識させられました。

 ●アニメ・コミック産業の振興?無理無理無理無理・上(2006/07/19)
 ●アニメ・コミック産業の振興?無理無理無理無理・下(2006/07/20)

 アマチュアといえば昔一緒にオンガクしていたYMO好きの友人から教えてもらったのが以下の作品。

 http://players.music-eclub.com/?action=user_song_detail&song_id=152625
 http://players.music-eclub.com/?action=user_song_detail&song_id=117205

 趣味でここまでやっちゃう人がいるからすごいなー、と感じ入った次第です。

 その友人とは先月22年ぶりに再会を果たし、近くまた出張で上京してくる際に会う約束をしているのですが、楽譜(バンドスコア)とかを色々お土産に持ってきてくれるそうなので、戦々恐々としています。いや、煽られて本当に作曲ソフトとかに手を伸ばしてしまったらどうしようかと。打ち込みをやるだけでも当ブログ更新の危機ですから。

 ちなみに配偶者(香港人)に聴かせてみたところ、「戸川純の方がいい」とのこと。それはそれで個人的には嬉しいのですけど……。




コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )





 全人代(全国人民代表大会=立法機関)が先日閉幕したばかりです。過去に反対派の抵抗から何度も流産していた「物権法」がようやく成立し、例によって「科学的発展観」と「和諧社会」が強調されてお開きになりました。

 「科学的発展観」というのは「規模よりも効率を重視しろ」というもので、いくらGDP成長率が高くても実になるカネの使い方でなければ意味がないから無駄遣いはやめろ、という意味。これに「緑色GDP」(環境保護にも留意しろ)というパッチが当てられます。

 「和諧社会」は「調和のとれた社会」ということ。この「科学的発展観の徹底」及び「和諧社会の実現」を大目標に掲げている点が胡錦涛政権のオリジナルなのですが、江沢民時代にやりたい放題やってしまったため、胡錦涛や温家宝でなくても、つまり誰がトップになってもこれ以外に選択肢がない、という袋小路状態で採り得る唯一の政策といえるかと思います。

 限られた資源を有効に活用し(科学的発展観)、約30年に及ぶ改革・開放政策、特に江沢民時代を経て残された「負の遺産」、具体的には不平等、不均衡、様々な格差といったものを是正しよう(和諧社会)、それから乱開発による環境汚染を何とかしよう(緑色GDP)、ということです。

 あとは「法治の徹底」も今回の全人代では声高に叫ばれましたね。建国して60年近く、しかも21世紀という現在にあって未だ法治が実現していないことこそ「中国の奇跡」だと思いますけど(笑)、まあそれは措きましょう。問題はいくら法制が充実しても法治が徹底していないと何の意味もないということです。

 庶民の私有財産を保護してくれる筈の「物権法」も司法が行政(というより、その上に座る中国共産党)からの干与を避けられないようではその有効性が危ぶまれます。結局はいままでの改革・開放政策下で「勝ち組」となった既得権益層がこの法律をタテに新たな汚職や利権で潤うだけではないか、と私は案じています。

 ――――

 私有財産を認め保護する「物権法」については「社会主義・共産主義のタテマエが崩れる」という根強い反対意見があり、それゆえこの法律が成立するまでに時間を要しました。その論議自体とても価値あるものではありますけど、基本的に私の頭の中では、

「中国=一党独裁国家」

 であり、中国を社会主義国と思ったことはありません。前にも書きましたが、

「中共が自分で社会主義をやっているというのだから社会主義国なんだろ(笑)」

 というスタンスですから、当然ながら社会主義のタテマエが云々という議論には全く興味がありません。「物権法」の導入で社会にどういう化学変化が起きるか、ということにのみ関心があります。



 そもそも物権法自体がイデオロギーの問題でもあるのです。1990年代前半なら「姓社姓資」論争(社会主義的な政策といえるかどうか / 資本主義的な政策ではないか?)になるところでしょう。そういうイデオロギーを掲げたぶつかり合いはトウ小平が1992年初めの南方視察(南巡講話)でその「姓社姓資」論議を封印し、「とにかく改革・開放」という潮流をつくり上げて以来のことかと思います。

 ●全人代、今年はちょっと面白いかも。(2006/03/03)



 と以前ふれましたけど、1992年当時と違うのは、「物権法」反対派には理屈があっても政治勢力としての実力は無いこと。要するに「口だけ達者」であって、以前のように「改革派vs保守派」によるイデオロギー論争が権力闘争に発展するということはまずない、ということです。

 実際、今回は全人代を前に温家宝・首相が「社会主義初級段階論」を持ち出して反対派に対して予防線を張りました。南巡講話が「姓社姓資」論議を封印したのと同じ効果を狙ったものだと思います。そしてその全人代では「物権法」案に修正意見が出るなどそれなりに揉めた形跡はあるものの、採決をとったら賛成票が圧倒的多数でした。

 この法律が「効率重視」を呼びかけなくてはならないほどムダ遣いが多く、「調和」を呼号せざるを得ないほど「不調和」で、しかも「法治」を強調しなければならないほど「人治」が浸透していておまけに一党独裁制、という中国社会にどういう作用を及ぼすのか。……という点について私は興味津々なのです。

 ――――

 そうでなくても中国社会には、

「上有政策,下有對策」
(中央の定めた政策が地方レベルでは骨抜きにされてしまう)

 という言葉があるほどです。……で、「物権法」の効果が出るのはまだ先の話でしょうから、今回は別のケースでもって「上有政策,下有對策」の実例を示そうと思います。まあ闇炭坑の存在なども典型例ではありますが、それよりもビジュアルの方がインパクトがあるでしょう。

 中央によるチェックが届きにくい地方政府の末端に近いレベルになると「やりたい放題」だという具体例をまとめた画像記事を国営通信社・新華社がこのほど配信したので紹介します。

 ●「新華網」(2007/03/19/07:36)
 http://news.xinhuanet.com/lianzheng/2007-03/19/content_5864338.htm

 ――――

 ●御殿としか思えぬ鎮政府庁舎(重慶市)

 ●近づいてみると天安門もどきが出現(重慶市)

 ●区政府庁舎敷地内につくられた人造湖(河南省)

 ●区政府の会議場と公園と見まごう緑地帯(河南省)

 ●職員10名の部門でこの庁舎(山西省)

 ●その部門の職員用住宅(山西省)

 ●県レベル政府でこの豪華庁舎(雲南省)

 ●その豪華庁舎の正門がこれ(雲南省)

 ●県政府庁舎の内部(浙江省)

 ●県レベル市政府の豪華庁舎(山東省)

 ●市政府庁舎は宮殿(安徽省)

 ●都市部の最末端機関である町会レベルの街道弁事処(重慶市)

 ●これまた立派すぎる県政府庁舎(河南省)

 ――――

 どうしようもない、としかいいようがありませんね。身分相応に身分不相応なことをしている、といったところでしょう。

 なるほど胡錦涛も「無駄遣いはやめろ」と言いたくもなるでしょう。これに加えて特権ビジネスやら何やらがあるのですから、暴動も起きる訳です。

 このやりたい放題の「官」とそれを怨嗟する「民」との間の距離が臨界点に達したとき、中共の統治制度は崩壊することになるでしょう。

 すでに村落のような最末端ではそういう「立ち腐れ」、つまり「官」と「民」が抜き差しならぬ対立関係に発展してしまったケースが一部でみられます。

 枝葉末節においてはすでに枯れ始めている部分がある、ということです。




コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )





 うひょひょ。

 いやいや標題の通りです。やっちゃいましたねー。

 忙しいのはわかりますけど、これは大ポカ。減俸処分くらいにはなるかも知れません。

 ――――

 全人代(全国人民代表大会=立法機関)が昨日(3月16日)閉幕して温家宝が毎年恒例の首相による締めの記者会見を行いました。もちろん一応全文読みました。……感想ですか?

「まっこんなとこでしょ」
「出ました一党独裁節」
「はいはいワロスワロス」

 てなところです。「十一五」(第11次5カ年計画)の初年度で「和諧社会」(調和社会)の構築が強調された昨年に比べれば目新しさや見所が減るのは自然なことでしょう。

 ……と流したいところですが、あにはからんや仏紙『ルモンド』の記者から「ピー」扱いの爆弾質問が飛び出しました。

「もうひとつの質問は、中国の元首相で共産党の元総書記だった趙紫陽の本が最近香港で出版されたことについてです」

 温家宝の取り巻きどもの背筋を一斉に冷や汗が走ったことでしょう(笑)。ちょうど早めの昼食でテレビの会見中継を観ながら仕出し弁当を食べていた胡錦涛が思わず箸を落とした、という消息筋情報はありませんけど。

 ――――

 趙紫陽。……趙紫陽といえば天安門事件(1989年)での失脚劇。そして趙紫陽で失脚劇で天安門事件といえば、皆さん御存知のあの写真です。失脚が確定的になった趙紫陽が天安門広場に集まっている大学生たちを見舞い、

「申し訳ない。私は来るのが遅すぎた」

 と涙をにじませて語りかけた場面を捉えたあの写真。ハンドマイクを手にした趙紫陽の右隣にいるのは他でもない温家宝です。

 当時の温家宝は趙紫陽の腰巾着ではありませんでしたけど、ポストは趙紫陽の下僚であり、招来有望な若手の改革派として知られていました。民主化運動に対しても比較的寛容だったとされていますが、本当のところはわかりません。

 ただ同じようなスタンスとみられていた先輩格の胡啓立や田紀雲が趙紫陽失脚後に干されたのと異なり、温家宝は見事な政界遊泳術でもって首相にまで登り詰めました。

 ――――

 いまは「胡温政権」などと呼ばれていますが、私のみるところ温家宝は胡錦涛・国家主席とは微妙に距離を置いているような印象です。同じ方角へ歩いているようでも入れ込み方は胡錦涛ほどではなく、状況が悪くなったらトンズラするための退路を常に確保しているポジショニング。政治手法も異なります。

 一方で炭鉱事故の遺族の肩を抱いてウソ泣きしたり、子供を笑顔で抱き上げてみせたり。いずれも報道陣がいないとやらない限定芸ですが、幸い中国の民度は低い。これで「親民総理」とソツなく庶民の人気取りをしているのです。実にいやらしい。

 ……そういう温家宝のキャラを思うとき、私はいつもあの写真を思い出すのです。目を潤ませて学生に必死に呼びかける趙紫陽の右隣で、緊張感のカケラもない間の抜けた表情で、

「あのー私、たまたま隣にいますけど直接関係ありませんから」

 とでも言いたげに立っているあの姿。何といいますかあの……キリがないのでこのくらいにしておきますけど。

 ――――

 ともあれ、

「もうひとつの質問は、中国の元首相で共産党の元総書記だった趙紫陽の本が最近香港で出版されたことについてです」

 という『ルモンド』の記者による爆弾質問の続きをば。

「彼はその本の中で、中国がもし近代化を実現したいなら、台湾のような民主を実現する政策が必要だ、台湾も以前は独裁統治という状況だったが、いまは民主と多党制を実現している。……と指摘しています。この元総書記の談話についての見解をお伺いしたい」

 ……というものです。冷や汗をかかされた温家宝の取り巻きどもは揃って椅子から飛び上がって棒立ちでしょう。

 「趙紫陽の本」とはいうまでもなくあの
『趙紫陽軟禁中的談話』。当ブログで再三激賞・推奨しているために私を「布教者」呼ばわりする人までいます(笑)。……違いますよ。そもそも私は趙紫陽のファンかも知れませんけど信者ではありませんから。

 単に日本の書店が販売していないのと、中共の走狗のような書店に儲けさせたくないのと、そして何よりも非常に価値のある本だと思ったので皆さんに読んでほしい一心で。……ええそりゃ「アニメンタリー決断」を買うためという動機もほんの少しはありました。すみません。m(__)m

 ――――

 そんなことより爆弾質問の件です。全人代閉幕記念の首相記者会見、というオフィシャルな場ではNGワード間違いなしの「趙紫陽」に加え、台湾がどうしたこうしたはいよいよ禁句。

「あなたが言う香港で出版された本と私がいま話したああした観点の間には何の関連もないと私は思います。私はその本を読んだこともありませんし」

 と温家宝はスルリとかわしたのですが、NGワードであることには違いありません。……ということで、国営通信社・新華社をはじめ中共系メディアが会見後に報じた一問一答からはこの部分は削除されてしまいました。

 ただ会見を生中継していたテレビだけは削除しようがありませんでした。政治的には画面がいきなり「裸形で交歓する男女」に切り替わる以上のインパクトです。放送事故といったところでしょう。

 日本でも報道されていますね。



 ●中国首相会見の趙元総書記関連質疑 政府系ネットが削除(asahi.com 2007/03/16/22:45)
 http://www.asahi.com/international/update/0316/016.html

 (前略)
記者会見をネットで文字中継した中国政府系サイト「チャイナネット」が、89年の天安門事件で失脚した故趙紫陽元総書記に関連した質疑を削除し、ネット中継を一時中断した。

 質問したのは仏紙ルモンドの記者。2月に香港で出版された趙氏の発言録に「中国の現代化のためには台湾のような民主化が必要」とあることについて「どう評価するのか」と尋ねた。

 温首相は中国の掲げる「社会主義民主政治」について一般的な見解を述べるにとどまり、「香港での出版と私の見解は関係なく、私はその本も読んでいない」と答えた。

 このやりとりの直後、同サイトのネット中継が約30分間にわたり中断。趙氏に関連した部分が削除されて再開された。
(中略)

 温首相は天安門事件当時、趙氏の秘書役にあたる共産党中央弁公庁主任として、一緒に天安門広場を占拠した学生を見舞ったことがある。

 ――――

 ●中国首相:趙紫陽元総書記の証言集へのコメント避ける(毎日新聞 2007/03/16/21:42)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20070317k0000m030114000c.html

 (前略)
会見を実況中継した中国中央テレビなどはこのやりとりを放送したが、新華社通信などのネット版は削除した。




 朝日もなかなか意地悪ですねー。最後の一段落は余計でしょう。ひょっとして温家宝が嫌いなんでしょうか(笑)。もっとも、この最後の一句を加えたことで「爆弾質問」の可燃度の高さが余すところなく表現されたともいえますけど。

 で、テレビの実況中継は放送事故ですから別として、中共系メディアは問題の部分を一斉削除。中国国内の報道はもちろん、香港では親中紙『大公報』電子版による速報はもとより、『明報』電子版までが削除後の「修正バージョン」を掲載しました。『星島日報』ともども、「趙紫陽」削除の一件にもふれていません。堕ちたものです。

 そんな具合ですから香港の親中紙としては筆頭格の『香港文匯報』が掲げた「全文」もどうせ……と思いつつ念のために目を通してみたところ驚倒しました。何と何とノーカット版ではありませんか。「ピー」の部分までしっかり収録されています(笑)。

「本紙記者が録音したものに基づいて整理した」

 と記事の冒頭にあります。いつも通り楽して新華社電を使えばよかったのに、変に張り切ってオリジナル記事にしたのが裏目に出てしまったようです。おいたわしや。

 電子版の方がいまもノーカット版を掲載していますから、紙面もそのままでしょう。あっと気付いたときには印刷を終えていたのだと思います。……いや、電子版がいまもノーカット版のままですから、ひょっとしてまだ気付いていないのかも。

 ●『香港文匯報』(2007/03/17)
 http://paper.wenweipo.com/2007/03/17/CH0703170009.htm

 ちなみに上の『ルモンド』記者と温家宝のやりとりはこのノーカット版に拠っています。

 ――――

 ちょっと真面目な話をしますと、今回の記者会見で温家宝は政治制度改革の必要性を強調しており、『東方日報』(2007/03/17)など、それに注目した香港紙もありました。実際、温家宝いわく「二大改革」として、

 ●市場化を目標とする経済制度改革の推進。
 ●民主政治の発展を目標とする政治制度改革。

 と、政治改革を経済改革と並列させました。ただし、政治制度改革には「推進」という単語がついていませんでしたけど。……いや、中共政権は伝統的にこういう手法で政治的意図や含意を表現するものですから、一応勘繰ることが必要なのです。

 勘繰りといえば、政治制度改革は汚職撲滅の点からも必要だという問答もあり、質問者(中国中央テレビ記者)が「陳良宇」(汚職嫌疑で失脚した上海閥のプリンス)という固有名詞を使ったのに対し、温家宝はその回答でこの固有名詞を出すのを避けました。これも温家宝流の政界遊泳術なのかも知れません。

 で、政治制度改革なのですが、これは温家宝が「ちょっと言ってみただけ」ですから本気にしてはいけません。開明派であることをアピールするためのポーズだと私は思います。最高指導者である胡錦涛はそこまで踏み込んでおらず、「党内民主」の強化を唱えるのが精一杯だからです。

 過去の党大会で最も開明的な方針を示した第13回党大会(1987年)で当時総書記だった趙紫陽が提起した「党政分離」(党による行政への干与を禁じる)、この言葉が出て来ない限りは本気度は限りなく低く、やるとしても人員合理化とか実質を伴わない汚職摘発機関を政府に新設するといった程度でしょう。

 そもそも「諸侯」と呼ばれる各地方勢力をどう縛り上げてその暴走を食い止めるか、というマクロコントロール強化が至上課題である現在、「分権化=中央政府による拘束力低下」となる施策に踏み切れる訳がありません。

 ――――

 ついでに言うと、現段階で「党政分離」を掲げて本気で政治制度改革に着手すれば、中共政権は間違いなく潰れることでしょう。

 この荒療治を外科手術に例えるなら、患者である中国社会は「和諧社会」を唱えなければならないほど「不調和」で、様々な不平等、不均衡、格差といったものが浸透して全国各地で暴動が頻発するほど状況が悪化しており、要するに手術に耐えられるだけの体力がもはやありません。

 やるのなら趙紫陽が総書記だった段階で、経済改革と並行して断行するべきだったと思います。惜しまれるのは、先に経済改革上の重要な施策(価格改革)に着手したところスーパーインフレが発生して社会が混乱し、未成熟な制度のスキを衝いた官僚による汚職も蔓延したため、政権運営の主導権が趙紫陽ら改革派から李鵬など保守派の手に移ってしまったことです。

 その半年余り後が天安門事件で、趙紫陽をはじめ政治改革に本気だった面々は失脚したり干されたり逮捕されたりして潰滅。後を継いだ江沢民は開明性に乏しいうえ飛躍した着想を生む能力に欠けていました。ソ連や東欧などの共産党独裁政権がバタバタと崩壊していった時期でもあり、政治改革は忌避され、忌避されたまま20年近くを中国は走ってしまいました。

 その片肺飛行のツケが現在の「不調和」です。趙紫陽時代と比べると既得権益層という抵抗勢力がすっかり足場を固めてしまっていて、それゆえに弱者による暴動が頻発しています。

 この段階で何事かをやるとすれば、まずは不平等、不均衡、格差の上に乗っかることで潤っているこの既得権益層を潰すことでしょう。抵抗勢力を討伐するには「強い中央」であることが不可欠となり、いきおい民主化や分権化の方向へ進むことになる政治制度改革は墓穴を掘るようなものなのです。

 ――――

 これはもう胡錦涛政権が発足する前から当ブログで再三指摘していますが、トウ小平・江沢民による「負の遺産」である既得権益層を潰すことが使命である胡錦涛には、「強権政治・準戦時態勢」による抵抗勢力解体という荒療治しか選択肢はありません。

 そして実際に胡錦涛政権は内政面においては様々な形による統制強化を実施し、開明派体制を期待していた中国内外の知識人たちを失望させました。

 晩年の趙紫陽も『趙紫陽軟禁中的談話』においてこの胡錦涛の非開明的で古臭いスタイルをこき下ろし、

「これではゴルバチョフの二の舞で既得権益集団に潰されることになる」

 と指摘しています。……が、私はこの見方には賛同しません。既得権益集団を潰さなければならないから、だからこそ「非開明的で古臭いスタイル」である「強権政治・準戦時態勢」が必要なのだと私は思います。

 趙紫陽には酷ですが、時代が違うのです。『趙紫陽軟禁中的談話』を読んでいると趙紫陽が最後まで錆びていなかったことがわかるのでファンとしてはとても嬉しいのですが、軟禁生活だっただけに現状把握の点では不自由な面があったのだと思います。

 ……いや、そういう環境に置かれてもなお冴えていたからさすがは趙紫陽、というべきでしょうけど、語りすぎるとまた「布教者」にされてしまうので、この辺で(笑)。

 ――――

 【余談】本題とは直接関係ありませんけど、温家宝の訪日計画が5日間から3日間に短縮されたという報道が出ていますね。これは事態が香ばしくなってきた証なのでしょうか?……だとしたら「好戯在後頭」(wktk)ですねえ(笑)。




コメント ( 13 ) | Trackback ( 0 )






 目下のところ、福岡の総領事館から抗議が行われたことを伝えている親中系媒体は「大公網」(香港の親中紙『大公報』電子版)のみです。

 ●「大公網」(2007/03/13/17:20)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/03/13/ZM-705229.htm

 ●「大公網」(2007/03/14/01:36)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/03/14/YM-705413.htm

 2本目の記事では福岡総領事館が3月6日にすでに抗議を行っていたことが報じられています。これが中国国内に転載されていくのか、どうか。

 全人代・全国政協の開催中ですから、転載された場合「本気度」の低い弱腰抗議という情けなさにネット世論はもとより人民代表レベルで事件の波紋が広がる可能性もあります。訪日を4月に控えた温家宝・首相にとっては望ましくない光景でしょう。



 ……と前回書いて様子見態勢に入ろうとしたら、待つまでもなく中国国内メディアがぶあーっとぶちまけてくれました。千鳥足の酔漢がビクビクッと背中を震わせたと思ったら路上に勢い良く麻婆豆腐をまき散らしたような感じです。……ビジュアル優先ですみません。

 上記「大公網」からの転載ではありませんでしたが、よりオフィシャルに近い形で、中共系通信社・中国新聞社が東京発の記事を「大公網」の6時間後に配信しました。

 ●「中国新聞網」(2007/03/14/07:51)
 http://www.chinanews.com.cn/gj/ywdd/news/2007/03-14/890664.shtml

 簡潔な内容ながら、この記事も中国の駐福岡総領事館が3月6日に仲井真弘多・沖縄県知事に抗議したことが書いてあります。また視察は「悪天候」による「延期」であるとして、
「きっとまだ展開するよこの話題」感を漂わせています。原文が「天気不良」と悪天候をカッコ付きにしているのは、中国側の圧力に仲井真知事が屈したのだ、という含意でしょう。

 この報道が間を置かずに地方サイトや大手ポータルに転載されていきました。

 ●「広西新聞網」(2007/03/14/08:46)
 http://news.gxnews.com.cn/staticpages/20070314/newgx45f745f2-992961.shtml

 ●「新浪網」(2007/03/14/08:49)
 http://news.sina.com.cn/w/2007-03-14/084911408986s.shtml

 ――――

 もうひとつ、海外の親中系ニュースサイト「星島環球網」は中国側が2度の抗議を行ったこと、視察は「天候不良」による「延期」であること、さらに仲井真知事はまだ視察について積極的であることが強調されています。記事タイトルも、

「中国が2度警告、沖縄県知事は釣魚島視察を延期」

 と、尖閣ツアー中止が事実上中国からの圧力によるものだという点がより強調されています。

 ●「星島環球網」(2007/03/14/08:56)
 http://www.singtaonet.com/euro_asia/200703/t20070314_489144.html

 この記事は台湾外交部からも抗議が出たことに言及。中国国内メディアだと、

「台湾外交部」

 とカッコ付きにして正統性がないことを表現するのですが、海外サイトであるせいかカッコで括ってはいません。……ただしこれを転載した中国国内サイト「中国金融網」も転載であるためか台湾外交部がカッコ付きではありませんでした。政治的引き締めが強い時期だとこれだけで懲罰モノなんですけど。

 ●「中国金融網」(2007/03/14/11:10)
 http://war.zgjrw.com/News/2007314/War/609671281600.html

 ――――

 それから「中国新聞社」ないしは「星島環球網」をアレンジしたらしきものや、きょう(3月15日)には短い解説記事なども登場。

 ●「浙江在線新聞網站」(2007/03/14/09:19)
 http://world.zjol.com.cn/05world/system/2007/03/14/008245494.shtml

 ●「tom.com」(2007/03/14/14:44)
 http://news.tom.com/2007-03-14/0021/24299008.html

 ●「南方報業網」(2007/03/15/09:14)
 http://www.nanfangdaily.com.cn/southnews/hqsy/200703150075.asp

 ●「新浪網」(2007/03/15/09:28)
 http://news.sina.com.cn/w/2007-03-15/092811418069s.shtml

 ――――

 そして決め手がこの記事。

 ●日本の右翼知事、釣魚島「視察」計画を延期(中国青年報 2007/03/15)
 http://zqb.cyol.com/content/2007-03/15/content_1699981.htm

 胡錦涛の御用新聞がとうとう動きました。同紙日本特派員によるオリジナル記事、しかも「右翼知事」という刺激的なタイトルです。視察がカッコ付きなのは
「視察という名目ながら実は別の企図が……」という意味かと思われます。

 この記事によると、福岡総領事館の抗議は沖縄県と外務省の両方に対し行ったことになっています。

「なんで?沖縄の領土でしょ?」

 という仲井真知事の名言も収録。悪天候による視察キャンセルについては「延期」であることと視察に仲井真知事がなお積極姿勢であること、また、

「中日関係はいま正に改善と発展の重要な時期にある」

 として視察は延期ではなく中止してほしい、という福岡総領事館のコメントも掲載しています。最後には南京虫事件がどうとか従軍イワノフ(露助かい)がどうとか右翼分子がどうとか書いた挙げ句、

「これは日本政府が現在の中日関係という大局を重視して、自衛隊と沖縄県にひそかに圧力をかけたものだ」

 という「分析人士」(誰だよ)のコメントを結語にしています。

 ――――

 他ならぬ『中国青年報』が最もラディカルな記事を掲載した、というのが興味深いです。……とまでしか現段階では言えません。「流れ」をつくり出そうという意図があるならば、この記事が果たす役割は大きいでしょう。すでに大手ポータルの「新浪網」などに転載されています。

 この日の『中国青年報』(2007/03/15)は他に対日戦時賠償訴訟について報じる一方で、菅直人を持ち上げる記事や中国でデザインを教える日本人女性といった友好ネタも絡めています。バランスをとっているつもりなのかも知れません。

 ちなみにこちらも動向が気になる人民解放軍機関紙『解放軍報』はいまなおスルーの完全無視状態。その代わり日本側の従軍イワノフに対する動きや日本と豪州の安全保障面での協力強化には国営通信社・新華社電を転載して敏感に反応していますから、時勢に背を向けているという訳ではないようです。

 軍主流派の拠点たる『解放軍報』が時事問題に無関心ではない、ということです。それだけに「尖閣ツアー」に関しては不気味に沈黙していることにこそ意味があるのかも知れません。ちなみに下は日豪協力の記事。

 ●「中国軍網」(2007/03/14/22:47)
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2007-03/14/content_762829.htm

 ――――

 で、木曜日ということで外交部報道官による定例記者会見が行われました。来るか尖閣問題……と注目していたのですがこれには全く言及なし。ただ中国人強制労働に対する対日戦時賠償訴訟には「中日間で取り交わされた3つの政治文書」の筆頭である「日中共同声明」を持ち出して、

「(日中両国の)いずれも当該文書(日中共同声明)が言及している重要な原則と事項について一方的な解釈を行うべきではない。司法の解釈も含めてだ」

 と日本側を牽制してみせました。「日中共同声明」を引っ張り出すというのは事態の格式がかなり高いことを示唆していると思います。ただこれは裁判に向けたものだけなのか、あるいは光華寮訴訟を含む台湾問題をも視野に入れたものなのかは不明です。

 ●「新華網」(2007/03/15/20:42)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-03/15/content_5852795.htm

 ただいえることは、何らかの「気運」を高める意図が中共政権にあるとすれば、それは尖閣問題だけでなく、従軍イワノフや対日戦時賠償訴訟や光華寮訴訟や安保面での日豪連携強化、といった一連の懸案事項がワンセットになっているようにみえる、ということです。

 端的に表現するなら、温家宝・首相の4月訪日を前に友好ムードを演出することに神経質になっていた中共政権が、今度は逆に硬質な対応へ変化する気配をみせている、といったところでしょう。そういう中で上の『中国青年報』(くどいようですが胡錦涛の御用新聞)が過激な記事を出した、というのは、

「いい加減その作り笑いはやめろ」

 という対日強硬派ひいては軍主流派の声に胡錦涛が押されているか、あるいは屈したことを示すものかも知れません。

 ――――

 ……という訳で、サッカーでいえばいきなりサイドチェンジし大きく展開しての攻勢、というのが現時点における印象です。東シナ海ガス田紛争でも新たな事態が発生したようですし、こうして日中関係の雲行きが香ばしくなってきたところで必要なのは、やっぱり「尖閣ツアー」断行という極上燃料。火の手が上がればもっと色々なものがみえてくる筈です。

 仲井真知事、どうか中共政権の期待をいい意味で裏切ってやって下さい(笑)。




コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )





 続編を早々と決めて準備していたのに、沖縄県知事の尖閣諸島視察は悪天候により中止となりました。orz

 ――――

 ●沖縄知事、尖閣諸島視察延期…「悪天候のため」
 http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_07031353.htm

 沖縄県の仲井真弘多知事は、13日に予定していた同県石垣市・尖閣諸島の自衛隊機からの上空視察を、悪天候のため延期した。知事は「日程を調整し、早期に実施したい」としている。
(中略)視察を巡っては、在福岡中国総領事館(福岡市)が「尖閣諸島は中国の領土」などとして中止を要請していた。これに対し、知事は「尖閣は沖縄の県域」としていた。ただ、知事周辺には沖縄と中国の交流への影響を考慮した慎重論もあり、今後、視察を行うかどうかは不透明な面もある。

 ――――

 残念ではありますが、当の仲井真知事が、

「日程を調整し、早期に実施したい」

 ……となおも視察に意欲をみせているのでヘタレた訳ではないと思います。……たぶん。文末の、

「今後、視察を行うかどうかは不透明な面もある」

 が気にはなりますけど、前日に「視察に行きますか?」と取材陣に問われて「イエース!」としっかり応えた知事を信じたいところです(というかあの意気軒昂ぶりにすがりたい)。

 視察空域の天候がわからないので何ともいえませんが、単に飛ぶことと視察を目的とした要人を乗せて飛ぶのでは「悪天候」の基準も変わってくるでしょう。

 まして尖閣諸島となれば、中共政権の動きが最近剣呑さを増しているだけに、あるいは独断専行で向こうの空軍機が悪戯を仕掛けてくるかも知れませんから、不測の事態を考えて単機で飛ばせる訳にはいかないと思います。

 悪天候であればその「不測度」も高くなるでしょうから、妥当な判断とみていいのではないかと。……報道を素直に読めばそういうことになるでしょう。

 ――――

 この件に対する中国側の姿勢は消極的です。

 沖縄県知事が尖閣諸島などを視察するという報道は、可燃度の高いニュースでありながら初動から遅れ気味でした。

 日本国内でニュースになったのは3月5日午後でしたが、香港では『明報』電子版が約1日遅れの6日夕方に報道(03/06/17:30)。中国本土からもアクセスできるであろう親中系ニュースサイト「星島環球網」がこれにほぼ足並みを揃えています(03/06/16:45)。

 ネット媒体でしかもネタがネタなのにまる1日もの時差が出るのは不思議ですけど、日本国内での扱いが小さかったことによるものなのでしょうか。

 ともあれこの「星島環球網」の報道を中国国内の地方サイトが引き写し、それを大手ポータル「tom.com」などが転載(03/06/19:34)。そして翌7日午前に中共系通信社「中国新聞社」が国内向けにも記事を配信しました(03/07/08:57)。

 ●極上燃料?沖縄県知事が自衛隊機で尖閣諸島視察へ。(2007/03/07)
 ●「尖閣視察」に中共メディアが何だか変。また綱引き?(2007/03/08)
 
●鳴謝 >> dongzeさん

 ただいずれの報道も「沖縄県知事が3月13日に自衛隊機で尖閣諸島を視察する」という内容を報じただけで、私の知る限りではこれに対する中国側の反応を伝えたものはありません。

 心待ちにしていた外交部報道官による定例記者会見(3月8日及び13日)にもこれに関連した質疑応答はなく(あったとしても掲載されていないので「なかったこと」扱い)、質疑応答のないまま現在に至っています。

 ちなみに人民解放軍機関紙『解放軍報』は初動期から現時点に至るまで一切スルー。

 ――――

 ところでこれは報道管制なのかどうか、中国国内メディアは報じていないようですが、実際には中国政府からの抗議がありましたね。

 ――

 ●尖閣視察予定通り 県「中国主張に根拠ない」(琉球新報 2007/03/12/16:02)
 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-22050-storytopic-3.html

 仲井真弘多知事が13日に予定している尖閣諸島の上空からの視察に対し在福岡中国総領事が中止を申し入れていることについて、県は12日午前の3役会議で、当初の方針通り上空からの視察を実施することを確認した。
(後略)

 ――

 ●知事きょう尖閣視察 中国が再度中止申し入れ(琉球新報 2007/03/13/09:45)
 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-22057-storytopic-3.html

 (前略)
尖閣諸島視察計画をめぐっては、在福岡中国総領事館が6日に、武亜朋総領事名で中止を求める申入書を県に送付。12日にも電話で中止の申し入れがあった。

 ――――

 抗議に動いたのが東京の中国大使館ではなく福岡の総領事館、抗議した相手も日本政府ではなく沖縄県のようですから、えらく本気度の低い抗議です。

「まあ穏便に、事を荒立てずにいきましょうや」

 といったところでしょう。その一方でいわゆる「従軍慰安婦」問題や民間の対日戦時賠償訴訟については色々やかましいことを言っています。こちらではいくら事を荒立てても「不測度」が低いからでしょう。具体的には軍部の電波系対外強硬派に連なる現地部隊が独断専行に及ぶ恐れは限りなく低いのです。

 ところが「尖閣諸島」となると話は違ってきます。「国家の安全と統一を実現する」ことが人民解放軍に与えられた「神聖なる使命」ですから、「不測度」は一気にレッドゾーン突入です。目下のところ、福岡の総領事館から抗議が行われたことを伝えている親中系媒体は「大公網」(香港の親中紙『大公報』電子版)のみです。

 ●「大公網」(2007/03/13/17:20)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/03/13/ZM-705229.htm

 ●「大公網」(2007/03/14/01:36)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/03/14/YM-705413.htm

 2本目の記事では福岡総領事館が3月6日にすでに抗議を行っていたことが報じられています。これが中国国内に転載されていくのか、どうか。

 全人代・全国政協の開催中ですから、転載された場合「本気度」の低い弱腰抗議という情けなさにネット世論はもとより人民代表レベルで事件の波紋が広がる可能性もあります。訪日を4月に控えた温家宝・首相にとっては望ましくない光景でしょう。

 ――――

 慰安婦の一件では一党独裁制のいわば基地外国家を相手に毅然とせず腰が定まらない観のある安倍政権に物足りなさを覚えます。

 それでも一応オーストラリアと同盟してみせるなどして中共政権を神経質にさせてはいますし、弾道ミサイルによる衛星破壊実験や軍拡路線や不透明な国防予算といった話題を温家宝相手に蒸し返すこともできます。

 いざとなれば温家宝の帰国後ほどないタイミングで李登輝・前総統に来日してもらうことも可能かも。……ってやっぱり何か物足りないですね。orz

 とはいえ現場はちゃんと働いているようで、例の東シナ海ガス田紛争、あの日中中間線付近に位置した中国の天然ガス採掘施設付近を海上自衛隊の対戦哨戒機P-3Cが連日のように飛び回っていて煩わしくてかなわん、あれは中国を監視しているのに違いないといった報道が流れたりしています。

 ●「人民網」(2007/03/12/09:23・画像あり)
 http://military.people.com.cn/GB/42969/58519/5460616.html

 まあ上記「大公網」の報道が国内に流されることで何らかの化学変化が起きて、作り笑顔で握手している観のあるいま現在の日中関係に少し活を入れてほしいところです。あとは光華寮訴訟で台湾側が喜ぶような審判が下されることですね。沖縄県知事も今度はちゃんと視察汁。

 ――――

 ところで本題とは全く関係ありませんが、ちょっと時間的余裕ができたのでDVDを飽きるほど観て(前回参照)、それから中共政権下のブログめぐりを楽しんでいたら妙な話題にぶつかりました。

 F4やワン・リーホン(王力宏)らとともに「台流」の主軸を担うひとりであるジェイ・チョウ(周杰倫)が何やら中国本土で叩かれているのです。

 http://blog.sina.com.cn/u/4a0db719010009nr
 http://happy00k2.blog.sohu.com/12549854.html
 http://blog.sina.com.cn/u/493a3e18010008qb

 いちばん上のブログが「ヤフーの掲示板で知った」と書いてありそのリンクが張られていたのですが、飛んでみたらすでにリンク切れ。噂になっているのは「インタビューでの信じられないやりとり」でして、以下にポイントだけ粗く訳しておきます(「記」=記者、「周」=ジェイ・チョウ)。

 ――

 記「大陸をどうみますか?」

 周「僕が大陸をどうみるかなんてことじゃない。そんなこと全く僕とは関係ないことだ」

 記「でも私たちも大陸に属しているじゃないですか。私たちが中国人ではないとでも?」

 周「そんなことは自分に聞いたらどうだ!(語気強まる)何度言えばわかるんだ?僕は台湾人であって、大陸人ではない。僕たちの祖父母はかつて日本人だったことをしっかり覚えておけ」(インタビュー強制終了)

 ――――

 詳細を知りたい方は上記3つのうち真ん中のブログ(風雲天下)を読むなりエキサイト翻訳にかけるなりして下さい。真偽不明の噂なのですが(私には嘘っぽくみえます)検索をかけてみると相当広がっているようで、

「ジェイ・チョウならそう言いかねない」

 という気分が中国のネット世論の方にも元々あったような様子です。

 私には何だかよくわからないんですけど、事情通の方がいたら解説して下さい。当ブログにも登場してくれているので不肖御家人は温家宝を人糞プカプカの珠江に叩き込むくらいの勢いで応援しています。頑張れジェィ・チョウ!

 ●お祖母さん孝行の話。(2006/02/09)

 ――――

 ……ほらこの通り、尖閣ツアーが中止になったものですから話が締まらなくて困ります。知事さん次はよろしく頼みますよ。直掩機としてF-22戦闘機1コ小隊が随伴すればいい絵になると思います(笑)。




コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )





 標題、年甲斐もなく失礼しました。しかもカナーリ古いし。m(__)m

 それはともかく、私のようにサラリーマンではあっても自宅を仕事場にして遊軍のような仕事をしていますと、突然トラブルに見舞われてキリキリ舞いさせられることもありますが、逆に唐突に時間が空いてしまうこともあります。

 突然休日。うれしいですねえ。それも2連休!日本側が年度末で構ってくれないのです(笑)。寝たいだけ寝て、記事漁りをして、それでもまだ時間があります。……そこで以前ポツポツと買ったもののまだ観ていないDVDをまとめて観ました(映画館で観たものもあります)。

 私が観る映画なんざ戦争映画に決まっています。『二百三高地』『連合艦隊』『大日本帝国』を続けて観るとあおい輝彦とか夏目雅子とか丹波哲郎が複数の映画に登場するので混乱してしまいます。児玉源太郎が東条英機になっていたりして(笑)。

 そのあと『出口のない海』を観たら『大日本帝国』の中隊長(三浦友和)と『連合艦隊』のヒロイン(古手川祐子)が主人公の両親で、『連合艦隊』の主人公のひとりで『二百三高地』では乃木の次男坊だった永島敏行が回天の教官でした。

 ……あ、申し遅れましたが今回は単純な楊枝削りですから、お相手をして下さらなくても結構です(笑)。

 という訳で独断と偏見の結果をば。ちなみに最近観たもの限定です。


 ――――


◆先頭集団

●『出口のない海』

出口のない海

ポニーキャニオン

このアイテムの詳細を見る

 個人的に最近観たものの中では一番よかったです。回天という兵器についての描写が実に詳細で驚かされました。それからベタなストーリーは私の急所ですし(笑)。


●『男たちの大和』予告編

男たちの大和 / YAMATO

東映

このアイテムの詳細を見る

 予告編に騙されることを初めて学習しました。orz


●『俺は、君のためにこそ死ににいく』予告編

出口のない海

ポニーキャニオン

このアイテムの詳細を見る

 中共政権ではすでに話題作扱い(笑)という期待の新作です。『出口のない海』が予告編を収録していました。鳥濱トメさんの回想に基づいているようなので、まず外すことはないでしょう。トメさんを演じるのは岸惠子ですし、「制作・総指揮石原慎太郎」ですし。……知覧ですから陸軍の特攻隊でしょうけど、『零戦撃墜王』の岩本少尉にグラマンをバタバタ撃墜してほしい。……無理ですかねえ。少しは溜飲を下げさせてほしいのですが……。


 ――――


◆第二集団(古い作品ですが先頭集団に僅差)

●『月光の夏』

月光の夏

ポニーキャニオン

このアイテムの詳細を見る

 ベタに弱い私のツボを見事に衝かれました。『二百三高地』で乃木を演じた泣き顔日本一の仲代達矢がイイ!です。

●『月光の夏』(絵本版)

ピアノは知っている―月光の夏

自由國民社

このアイテムの詳細を見る



●『氷雪の門』

 一般に流通していないDVD?でもこれは絶対に外せません。靖国神社の遊就館の売店ならまだ売っているかも知れません(参考記事)。


 ――――


◆第三集団

●『二百三高地』

二百三高地

東映

このアイテムの詳細を見る

 AMAZONのレビューにもありましたけど、『プライベートライアン』のようにCGを使ってリメイクしてほしいです。それよりも観たいのはもちろん日本海海戦。


●『空軍大戦略』

空軍大戦略

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

このアイテムの詳細を見る

 名作バトル・オブ・ブリテンです。


●『バルジ大作戦』

バルジ大作戦 特別版

ワーナー・ホーム・ビデオ

このアイテムの詳細を見る

 有名なドイツ軍によるアルデンヌの反攻作戦。上の『空軍大戦略』同様、台湾で買ったままになっていたのを偶然発見して狂喜しつつ鑑賞。


 ――――


◆第四集団

●『ローレライ』

ローレライ

ポニーキャニオン

このアイテムの詳細を見る

私が詳しく知らなかった潜水艦の内部がよくわかりました。あと米駆逐艦の前投型対潜兵器とはああいうものだったのか、と納得。


●『連合艦隊』

連合艦隊

東宝

このアイテムの詳細を見る

『男たちの大和』より大和がよく出来ていました。一粒で二度オイシイ金田賢一、と言ってみるテスト。


●『大日本帝国』

大日本帝国

東映

このアイテムの詳細を見る

 映画館で観たときより劣化してみえました。サイパン戦が悲惨。


 ――――


◆途中棄権(ラストまで一応観ましたけど)

●『硫黄島からの手紙』

 栗林中将のいいところがすっぽり欠落していました。


●『男たちの大和』

 良かったのは予告編だけでした。


 ――――


◆今度買います

●『アニメンタリー決断』

アニメンタリー決断 DVD-BOX

竹書房

このアイテムの詳細を見る

天佑と神助により配偶者が来月、香港へ1週間ほど里帰りすることになりました。千載一遇の好機逸すべからず。なーに買ってしまえばこっちのものです♪


 ――――


 先刻連絡がありどうやら3連休になりそうです!『春秋五覇』とか『戦国七雄』でも観ようかと思います。




コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )





 久々に来ました大規模暴動。しかも4日連続の官民衝突です。

 ●旧正月のお屠蘇気分も抜けないうちに……というか旧正月期間に掟破りのバス料金大幅値上げが行われたのが原因。
 ●しかも値上げ抗議に対してバス会社が暴力をチラつかせた威嚇ともとれる横柄な対応。……民衆さらに憤激。
 ●横柄なのはそのバス会社が地元当局の党幹部による特権ビジネスだから。……民衆の怒りはさらにエスカレート。
 ●さらに党幹部のサイドビジネスだからなのか警察が早々に出動。……民衆の怒り頂点へ。

 ……という絵に描いたような具沢山な筋書きで官民衝突が発生。しかも暴動は昨日(3月12日)まで4日連続して発生し、現在も未だ事態は終息していない模様です。

 ――――

 現場は湖南省は永州市の芝山区。事件の発端は旧正月期間中、地元のバス会社・安達運輸公司がバス料金を勝手に大幅に引き上げたこと。珠山鎮と零陵区を結ぶバス路線(約30km)の料金が従来の6元からいきなり10元に値上げされたのです(15元説もあり)。

 それがいつのことなのかは不明ですが、旧正月期間に実施されたため地元民の怒りを買うこととなりました。「旧正月期間中における公共交通機関の料金値上げは不可」という通達が出されていたからです。

 安達運輸公司はそれを承知の上で値上げを断行。……という厚顔さには理由があって、実はこのバス会社、永州市の常務副市長と交通局長という地元党幹部2名による特権ビジネス。むろん土地の者なら誰でも知っていることです。交通局長が大株主ですからこのバス路線は当然ながら安達運輸公司の独占区間、ということも民衆の怒りを呼んでいました。

 権力を後ろ盾にした横暴かつ禁令を破っての料金値上げに地元住民は不満を募らせ、3月9日午前にはついに珠山鎮のバスターミナル前にわらわらと民衆が集まって抗議集会。禁令破りのバス料金引き上げが直接的な原因ですが、上述したような党幹部による特権ビジネスへの憤懣が以前から鬱積していたこともあるとのこと。

 さらに永州市はこのバス会社だけでなく官民癒着のケースが多い上、不自然な物価の引き上げといった悪政が以前からまかり通っていたこともあり、積もり積もっていた民衆の不満と怒りがバス料金値上げで沸点に達してしまったといったところでしょう。

 ――――

 衝突はこれに対し警官隊が過敏に反応してしまい、集まった民衆を追い散らそうとする中で暴力がふるわれたことによって発生しました。警官に殴打される住民が出たのを見た民衆が反撃に転じたのです。こうなるといつものことながら、数に優る民衆が怒りの勢いで警官隊を押し返し、警察車両やバスを焼き打ちする騒ぎとなりました。

 翌3月10日も民衆が引き続き屯集し、その人数は1万人にまで膨張。ところがそこに安達運輸公司の経営者がチンピラまがいの数十名を引き連れて出現したため現場はたちまち険悪な雰囲気に。しかもこの経営者、権力という後ろ盾がありますから強腰です。よせばいいのに、

「おれが2000万元出してお前ら珠山鎮の人間を皆殺しにしてやる」

 と挑発したことで群衆が煽られ、住民側の人数がさらに膨れ上がってたちまち暴動へとエスカレート。近くに停車していた安達運輸公司のバス1台を炎上させました。

 この火は駆けつけた消防隊によって直ちに消し止められましたが、同夜には防暴警察(機動隊)100名余りが珠山鎮に出動。これが空気をいよいよ険悪なものにしたのか、11日には住民側も過去最高の2万人以上を動員し、一触即発のにらみ合いとなりました。

 均衡が破られたのは正午ごろのことです。防暴警察が鎮圧行動に移り、鉄製の警棒を振るって民衆を殴打して回り、次々に身柄を拘束。

 これに対し住民側はレンガや石を投げて応戦、警察署のガラスが割られるなどしたものの、負傷者十数名が出て病院に収容されました。その中には学生4名が含まれていて(2名説も)、うち中学生1名は殴打による負傷が元で病院で死亡したとのことです(足を切断されたのが死因との説も)。

 ――――

 官民衝突は昨日である3月12日にも発生。珠山鎮の役場前での白兵戦となりましたが、警官隊は警棒だけでなくスタンガンも加えられて装備が強化され、さらに午後には増派された武装警察(武警=内乱鎮圧用の準軍事組織)も駆けつけて合計1700名余りの兵力となり、住民側を駆逐して厳戒態勢に。付近を通りかかっただけの市民も殴打されるなどした模様です。

 目撃者によると、この4日間に及ぶ暴動で警察車両7台、バス8台が焼き打ちされたそうで、住民側の抵抗もなかなか激しかったことをうかがわせます。

 この事件に対し、湖南省当局は同省管轄下のメディアに向けて報道禁止を発令。住民がテレビ局や新聞社に電話して事件を報じてくれと訴えても「祟りが怖いから」と断られたそうです。報道NGは「兩會」(全人代&全国政協)期間中だけに過敏な対応となったという一面もあるでしょう。

 という訳で、事件の経緯は例によってタレ込みサイト「博迅網」や法輪功系ニュースサイト「大紀元」、また米国系中国向けラジオ局RFA(亜洲自由電台)などによって報じられることとなりました。

 ――――

 ●「博迅網」(2007/03/12)
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/03/200703121213.shtml
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/03/200703122126.shtml

 ●「RFA北京語」(2007/03/12)
 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2007/03/12/yongzhou/

 ●「RFA広東語」(2007/03/12)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/03/12/china_riot/

 ●「大紀元」(2007/03/12)
 http://www.epochtimes.com/gb/7/3/12/n1643767.htm

 「大紀元」が焼き打ちに遭って転がされた黒焦げの警察車両などの写真を多数掲載しています。

 ――――

 以前お伝えしたホテル炎上暴動も党幹部の特権ビジネスとそれを隠れ蓑にした不埒な悪行三昧が原因でしたが、今回もそれに似たケースといっていいでしょう。党幹部のやりたい放題ぶりに、庶民は「官匪」としか表現しようのない憎悪を常日頃から抱いていることが改めて実証されてしまった形です。

●党幹部の悪行三昧に民衆激怒!四川でホテル燃えてます。(2007/01/20)

 今回の安達運輸公司の大株主に永州市の党幹部である常務副市長と交通局長が名を連ねていた件、元々あったバス会社が党幹部に賄賂を贈って籠絡したものか、党幹部が資金流用などで会社を設立させるなり大株主になるなりしたのかは不明ですが、中国全土いたるところでこうしたケースが数え切れないほど存在しているのでしょう。

 私はいま全人代で審議されており成立の可能性が高い物権法の導入には「ないよりマシ」という消極的賛成派ですけど、庶民がつましい生活を重ねてようやく蓄えたひと握りの資産が同法によって私有財産として保護されるのと同時に、党幹部が特権ビジネスで不正に得た財富、例えば今回のバス会社の株などもまた合法的な私有財産として認められ保護されてしまうことになります。

 そういう不条理を防ぐには党外に強力な権能を有する汚職摘発機関を設けることが必要かと思われますが、如何せん一党独裁制の下では実現しようがないでしょう。それゆえ胡錦涛も「社会主義栄辱観」だとか綱紀粛正を口やかましく言うだけで、あとは党中央紀律検査委員会の尻を叩くくらいのことしかできないのです。

 別に意識してキャンペーンを張っている訳ではありませんけど(笑)、現代中国社会が抱える問題の多くは、つきつめてしまうと一党独裁という制度に行き着くことになります。

 とはいえ、それなら民主化して多党制にして普通選挙を導入すれば救われるのか、と言われると、それはそれでウーンと首をひねらざるを得ないのですが。




コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )





 前回の「中国は一党独裁。ただそれだけ。」の補足のようなものです。書かでものことをわざわざ書くというのは粋ではありませんが、野暮を承知で手短に書いておきます。

 どうせ私は粋筋ではありませんし、いまは御家人を称していても元をたどれば田舎侍の水戸っぽ(厳密には「ひたちびと」)。久慈川の水で産湯を使い、みかの原で遊び、春は神峰に咲き誇る桜を愛で、夏は水木や久慈浜で水練に励み、……ってこんなことを書いているから無用に長くなってしまうのですね(大反省)。

 ――――

 閑話休題。日本と中国では体制が違うという点を再認識すべきではないか、ということです。

 「体制が違う」「政治制度が違う」ということ自体は多くの人が言及するところですが、

「日本は資本主義国で、中国は社会主義国」

 だから体制が違う、というのは大間違いです。正しくは、

「中国は中国共産党による一党独裁制たけど、日本はそうではない」

 ……です。日本は一党独裁制ではありません。普通選挙制で多党制で、どの政党にも政権党になる機会があります。国民は間接的または直接的に国家指導者を選ぶことができる(日本は前者)、という点も欧米諸国や台湾と同じです。

 ところが、中国は違います。「なんちゃって野党」が8つばかりありますが、これらが与党になる機会は絶無であることは憲法によって保障されています。もちろん普通選挙制ではありません。現在の最高指導者である胡錦涛はもとより、中共政権そのものが民意の支持を得て政権を成立させた訳ではありません。

 国共内戦で国民党に勝利して、国民党を台湾に追っ払って中国大陸を独り占めしただけのことです。

 ――――

「体制が違う」

 とは、

「中国は一党独裁制だけど、日本はそうではない」

 ということです。「社会主義」というのは前回、私に桜肉三昧を御馳走してくれた先生が喝破された通り、

「中国が自分は社会主義だと言っているのだから社会主義なんだ」

 というだけのこと。仮にその実質が本来の社会主義から完全に離れてしまったとしても、中国共産党が、

「これぞ中国の特色ある社会主義」
「社会主義の初級段階だからこうなんだ」

 と言い続けている限り、自称であれ社会主義国なのです。あとは学者がその是非を心ゆくまで議論すればいい訳で。

 ――――

 くどくなりますが、日本と中国の体制が違うというのは、資本主義と社会主義ということでは断じてありません。

「中国は一党独裁制だけど、日本はそうではない」

 ということです。上海の摩天楼に幻惑されがちですが、中国は一党独裁という本質において、北朝鮮と何ら変わるところはありません。

 別の言い方をするなら、北朝鮮がちょっとオシャレな格好をしてみせたのが中国です。

 いざとなればやることは同じですし、実際に現在の中共政権は国際社会において、北朝鮮よりはるかに大きなスケールで、同じようなことをやっているのではないでしょうか。

 ――――

 いや、実はちょっと不安になりまして。

 ……というのは、私よりひと回り若い世代がそろそろ大学の非常勤講師や専任講師、早ければ助教授クラスになりますけど(サラリーマンなら中間管理職?)、この世代は1989年の天安門事件当時は小学生で、事件を体感していませんし、リアルタイムに事態を認識できた人は希有でしょう。

 そこら辺が怖いな、と。

 1992年にトウ小平が南巡講話を発表して改革再加速・改革当然の大号令がかかり、イデオロギー論争に終止符が打たれます。そこから中国経済は基本的に右肩上がりで成長してきたのですが、私よりひと回り若い世代は、だいたいそのあたりから中国と付き合い始めている筈です。天安門事件を知りませんから、中共の本質とか価値観について鈍いところがあっても不思議ではありません。

 中共がその本質を誰にでもわかる形でありありと示してみせたのは、天安門事件が最後です。私は文化大革命を体感していませんし、反右派闘争や大躍進のころはまだ生まれていません。ですからそれらの出来事については体験談を聞いたり本で読んだりするのみですが、それらの政治運動で中共が示した本質は、私が体感した天安門事件と寸分違わぬものでした。

 現在もそれが変わっていないことは、私にはわかります。文化大革命を経験した中国人の知人も、反右派闘争や大躍進をくぐり抜けてきた恩師をはじめとする70歳前後かそれ以上の世代の人たちも、中共は現在に至るまで全く変わっていないという点において、少なくとも私の周囲では認識が一致しています。

 ――――

「北京五輪キャンセル&経済制裁 or 台湾併呑、どっちを選ぶ?」

 と問われたときに迷いなく後者を選択するのが中国共産党の価値観です。むろん、そういう究極の選択を迫られることのないよう中国は上手に立ち回ろうとするでしょうけど、もし、そういう二者択一を突きつけられたとき、躊躇することなく後者を選択するのが中共政権というものです。

 そこのところを理解していないと物事を見誤りますし、隣国である日本は大損ひいては惨禍をこうむることになります。対中外交を考えるに際しては、「相手は一党独裁国家」ということをまず念頭に置く必要があり、一党独裁国家を遇するにふさわしい付き合い方をしなくてはなりません。

 これらのことは、研究者が中国の知識人たちと多少接触したくらいで実感できることではありません。むしろ中国問題には素人で中国語も片言程度だけど、現地の第一線で中国人労働者を率いて苦労している在留邦人の方が理解できるかも知れません。

 せめて、以上があくまでもチナヲチ(素人の中国観察)であり、嫌中とか反中共といったこととは全く別の次元の話であることをわかって頂ければ幸いです。




コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )





 日曜日ですので雑談いきます。

 最近しばしば思うこと。私は大学に通った経歴を持ちながら、学問をすることはついになかったなあ、という反省です。

 中国語という技術、それも「時事評論の読み書きができるようになる」という一点豪華主義に特化し(もちろん会話はできて当たり前ですけど)、そのためのノウハウとその方面、つまり中国の政治・経済・社会に関する知識を仕入れただけの大学生活ではなかったか、と。

 その知識も系統立ったものではなく、恩師や教員や中国人留学生の友人たちから教えてもらった断片です。まあ私自身、系統立った学びごとがどうも苦手で、片言隻句から何事かを察する、ということを好む傾きがありましたし。

 で、そういう各方面から得た様々な断片を総合して私の頭の中にイメージされた中国は「社会主義国」ではなく「一党独裁政権」というものでした。社会主義というのは統治の方便上掲げているだけだろう、と。

 反右派闘争とか大躍進とかそのしっぺ返しともいえる大飢饉とか文化大革命、そういうものについての個人的体験ばかり周囲から聞かされていたので、自然とそう思うようになっていました。

 ――――

 1980年代後半のころです。当時の中国は改革・開放政策を進めながらも、教条主義的ともいえるマルクス馬鹿の保守派がそれなりに力を持っていて、ときに反撃して改革派の要人を失脚させるなどしていました(例えば当時の胡燿邦・総書記)。改革派にも夢見がちな部分がありましたが、保守派はいまの言葉でいえば「空気読め」といった浮世離れした集団にみえました。

 生真面目なイデオロギーの争いという点では利権が見え隠れしがちな最近の政争に比べれば健康的だったといえるかも知れません。でも結局は一党独裁政権の内部でごちゃごちゃやっているだけではないか、と当時の私の目には映っていました。そもそも政権自体が民意の洗礼を受けて誕生した訳ではありません。どうしても「社会主義国」とは思えませんでした。

 これが後に上海に留学して民主化運動から天安門事件、またその後の極端な政治的・経済的引き締め政策を体感する破目になったことで、「中国は一党独裁」という見方がより強固なものとなり、

「中共政権はつまるところ『中共人vs中国人』」(官vs民)

 という認識に固まっていきます。

 「中国=一党独裁」という先入観を抱いたまま留学しましたし、中国語を時事問題を語ることに特化させていたせいか、上海にいたころは雑談となるとついそういう話題に落ちてしまいます。ですから友人たちもそれ相応の顔ぶれになりました(笑)。

 民主化運動のときはもちろん、引き締め政策下でも学生リーダーたちが訪ねてきては色々な話をしてくれましたし、民主化運動に積極的だった先生が授業が終わって教室から出ようとした私を呼び止め、私の掌に電話番号と住所を書いた紙片をそっと握らせて、

「ここでは何の話もできない。私の家に来てくれ。いろいろ話そう」

 と言われたりしました。

 ――――

「中国は社会主義?馬鹿言っちゃあいけないよ」

 ということも片言隻句から得たものでした。

 留学前の話です。中国にカクマツジャクという当時すでに物故していた有名な作家がいましたが、私の大学の経済学部で、第二外国語の中国語の授業をその息子さんが非常勤講師でやっているということを知りました。

 私は自分の学科とは常に距離を置いていて、むしろ経済学部に友人が多くいました。親しく教えて下さる教員もまた然りで、その筋からそのことを耳にしたのです。私の学科の連中はほとんど知らなかったでしょう。

 私は常々書いているように大学時代は極めて不遜な学生でしたから、これは食い付くに限ると思い、ただその目的のために経済学部のその授業を履修しました。

 第二外国語の中国語などは入門編のようなもので、おまけに教員も学生もあまりヤル気がありません。そういう授業でテキストでも音読させられれば、こちらは本職ですから当然目立ちますし、回を重ねるごとに目をかけてもらえるようになりました。

 別の学部なのにわざわざ履修しているということと、経済学部の先生の口添えもあったのだろうと思います。

 で、思惑通りというか話を聞かせて頂けるようになり、ある日「飯でも食いに行こうか」と放課後、桜肉三昧の店へ連れて行ってもらい、ガンガン酒を飲みながら色々な話を聞かせてもらいました。

 私は酒の旨さがわからないのですが、幸い飲めば酒量はある方です。ところが先生もそれに付き合ってどんどん飲むのでこりゃあ相当なオヤジだと思いました(笑)。

 ――――

 帰路は二人で肩を組むようにしてフラフラと駅まで歩きました。

「御家人君。ゲーテだよ。大学生なんだからゲーテぐらい読んでいなくちゃだめだ(ういっ)」

「先生、ゲーテや中国語なんかどうでもいいです。それよりピアノを教えて下さいピアノを(くはー)」

 といった感じで酔っ払いそのものです。

 「片言隻句」はもちろんそうなる前の、駅前にある桜肉専門店まで大学からバスに乗っているときに先生の口から出た言葉でした。

「先生、中国は社会主義国だと称していますが、ああいう段階の踏み方でも社会主義といえるのでしょうか?」

 と私がふと尋ねると、先生はフンと鼻を鳴らして、

「御家人君、中国が自分で社会主義と言っているんだから社会主義国なんだよ」

 と一言。それで私は何かを頓悟したようです。

 ――――

 それからは「中国の特色ある社会主義」とか「社会主義初級段階論」といった言葉に接しても、

「方便方便。要するに資本主義めいたことをやりたいがためにひねり出した屁理屈だろ」

 と笑い飛ばす悪い癖がついてしまいました。そういうものを学問的に探求する立場でもなかったので気楽なものです。

「まあ中国が自分で社会主義だって言っているんだから社会主義国なんだろ。その本質は一党独裁で、民意に拠っていないあたりは歴代王朝そのものだけどな。だいたい今さら法治国家の実現を、なんて言ってるしw」

 てな感じです。いま胡錦涛や温家宝が唱えている「和諧社会」(調和のとれた社会)なんて悪い冗談にしか思えません。呵々と笑いながらおいおいシャレだろそれ?とツッコミを入れつつ、中共政権がとうとうそういう悪い冗談を真剣に言うほかない袋小路状態に陥ったことを少しばかり複雑な心境で眺めています。

 少しばかり複雑なのは、私にとって「懐かしいひとたち」がいまなおそこで生活しているからです。

 ――――

 ……以上は今年の全人代(全国人民代表大会=立法機関)の最大の見所である「物権法」の審議が開始されたことを念頭に置きつつ閑話として書き散らしたものです。

 「物権法」は公有制を揺るがすものとして根強い反対意見があり、過去に何度も制定が見送られたイワクツキの代物です。実際に「中国の特色ある社会主義」のあり方を探求する学者レベルでは大問題でしょう。

 前にも書いたように「物権法」そのものについては『産經新聞』中国総局の福島香織記者がやっているブログ
「北京趣聞博客(ぺきんこねたぶろぐ)」が実に見事に解説していますが、その福島記者も指摘している通り、中国は未だに法治国家ではなく、法治国家でないために法律そのものも保障されない可能性があります。

 http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/

 2004年に中国で開催されたサッカーアジアカップで中国が日本に負けた腹いせに中国サポーター?が日本公使の公用車の窓ガラスを叩き割りました。2005年春の反日騒動では北京の大使館に暴徒が投石し窓ガラスが割られたりしまた。これらは中国の法に照らしても立派な刑事犯罪の筈ですが、いずれも犯行現場に多数の警官が居合わせながら逮捕者が出ることはついにありませんでした。

 党が国家の上に立ち、党による政治的な善悪の価値判断が法制を超越してしまう中共政権下で「物権法」が議論されているのはまことに生真面目な風景というほかなく、ある種のユーモアさえ感じます。私は学者ではありませんから、まあ頑張って下さいというのみです。

 個人的印象でいうなら、庶民の権益が保護される方向へと一歩踏み出すという点で評価できると考えています。過去に当ブログで飽きるほど紹介してきた強制的な土地収用問題などについて、「官」にとっては余計な手続きが必要になりますから。……ただし法律より党の価値判断が優先されるお国柄です。「物権法」が通ったら通ったで、きっとその法律をタテにした新手の利権や汚職が生まれることになるでしょう。

 そういう汚職行為を摘発する機関が国家部門にも設立されることになるそうですけど、他の部門同様、どうせその汚職摘発機関にも党委員会が設置されることでしょう。例えば四川省のトップは四川省長ではなく四川省党委員会書記。北京市のトップも北京市長ではなく北京市党委員会書記。

 ――――

 だから今回のタイトル通り、「中国は一党独裁。ただそれだけ」なのです。「和諧社会」が呼号されるのは「官vs民」という対立軸(または官及び官と結託した民vs庶民)が来るところまで来てしまったからでしょう。「物権法」の制定で中国の社会主義がどうなるというのは学者の議論にすぎません。

 一党独裁制という本質、そしてそこから生じる「官vs民」という対立軸を何とかしない限り、中国は袋小路から抜け出すことはできないでしょう。

 まあ、その一党独裁制に終止符が打たれる、というのも浮世離れしたおとぎ話ですけど。




コメント ( 14 ) | Trackback ( 0 )





 仕事なのか晒しageなのかよくわかりませんけど、久しぶりに面白いものをみました。

 黄菊の話です。皆さん御存知でしょう。当ブログいわく「心電図ピー状態」の黄菊。中共の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員にして副首相。現役指導部の堂々たる一員で、先代最高指導者・江沢民の抜擢で中央入りしたバリバリの上海閥です。

 ところが最高指導者が胡錦涛へと代わって上海閥への締め付けがじわじわと強まり、昨年にはとうとう上海閥の次代を担うとされていた陳良宇・前上海市党委員会書記(政治局委員を兼任)が汚職嫌疑で失脚。お世継ぎ消滅の上海閥は事実上「御家断絶」です。黄菊や呉邦国ら現役の指導者が引退すれば有力な跡継ぎがいないのですから、強大な政治勢力たり得ません。

 しかも黄菊には陳良宇事件で連座するかも、という噂が。元々すい臓ガンを患っているとされ、健康に問題のあった黄菊は、これによって政治的にも健康面でも「心電図ピー状態」。党中央政治局常務委員でありながら、昨年1月以来、その常務委員が集まる席に姿を見せることが少なくなり、重病説も流れました。

 そして陳良宇事件で政治的にも「心電図ピー」です。党中央政治局常務委員として「出られない」というより「出してもらえない」と思われるケースが増え、最近では常務委員が揃うイベントを欠席するのが半ば常態化。

 かといって公の場に全く姿を現さない訳でもなく、政治的格式としてはショボいイベントにポツリポリと出席しては演説したりしています。要するに、黄菊はもはや実質的に「常務委員」扱いをされていないということでしょう。

 ――――

 現在開催中の「兩會」でも、3月3日に幕開けした「全国政協」(全国政治協商会議=「なんちゃって野党」など菲共産党政治勢力の集まりだが50年前に形骸化された)では開幕前日の記者会見で、

「黄菊は開幕式典に出席するようだ」

 と発表されたのに、フタを開けてみたら欠席です。

 ●「新華網」(2007/03/03/08:03)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-03/03/content_5794541.htm

 ●「新華網」(2007/03/03/17:15)
 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/03/content_5796736.htm

 では5日開幕の「全人代」(全国人民代表大会=立法機関)ではどうなのか?前日に行われた記者会見では、失脚した陳良宇が参加しないことは明らかにされました。ちなみにこのとき陳良宇は「陳良宇同志」と呼ばれ、「同志」がついていることで現在もまだ党籍を剥奪されていないことが明らかになっています。

 ●「新華網」(2007/03/04/11:35)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-03-04/113512424796.shtml

 ――――

 そして5日当日。全人代開幕を告げる人民大会堂のひな壇には……ワーオ!(F先生すみません)胡錦涛や温家宝をはじめ、呉邦国、賈慶林、曽慶紅、呉官正、李長春、羅幹……と並んだ党中央政治局常務委員の中に、久しぶりに黄菊の姿を見ることができたのです。

 ●『明報』電子版(2007/03/05/09:10)
 http://hk.news.yahoo.com/070305/12/22ypv.html

 ただし久々の「常務委員」扱いもここまで。温家宝が猿でも書ける「政府活動報告」を行ったこのセレモニーを最後に、黄菊の名前は国営通信社・新華社による全人代・全国政協報道から姿を消します。

 ●人大杉と一党独裁、猿でも書ける「政府活動報告」。(2007/03/06)

 ちなみに「猿でも書ける」とは先代の江沢民が中国の政治・経済・社会を袋小路に引っ張り込んでしまったため、胡錦涛政権にはフリーハンドの余地が少なく、もはや政策上の選択肢がないという意味。温家宝を嘲っているのではありません。

 ――――

 「姿を消した」というのは記事に名前が出て来ないという意味です。例えば新華社電によると、全人代開幕日には党中央政治局常務委員が分科会に顔を出しています。胡錦涛はチベット自治区、呉邦国は安徽省、賈慶林は北京市、曽慶紅は江西省、といった具合です。

 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/05/content_5804846.htm
 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/05/content_5804889.htm
 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/05/content_5804916.htm
 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/05/content_5804996.htm

 翌6日には黄菊に対する「放置プレイ」がいよいよ目立つようになります。新華社電によれば、胡錦涛、呉邦国、賈慶林、曽慶紅、温家宝、呉官正、李長春、羅幹といった他の常務委員はそれぞれいずれかの分科会に出席しているのに、ただひとり黄菊だけが何もしていません。いや、何かしていたとしても、記事に名前が出ないので「なかったこと」扱いなのです。

 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/06/content_5810179.htm
 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/06/content_5810201.htm
 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/06/content_5810327.htm
 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/06/content_5810288.htm
 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/06/content_5810289.htm

 そして3月7日。新華社電子版の「新華網」、そのトップページのメインニュースにも、主要ニュース一覧である「要聞」「時政」ページにもやはり黄菊の名前はありませんでした。

 ――――

 ただ、上海市代表団の分科会に関する記事はありました。

 ●韓正「上海は社保事件の教訓に学び権力の濫用防止に努めよう」(新華網 2007/03/06/22:04)
 http://news.xinhuanet.com/misc/2007-03/06/content_5810179.htm

 韓正は胡錦涛の子分で上海市長。要するに陳良宇が独裁者として仕切っていた独立王国・上海に胡錦涛政権が打ち込んだくさびです。当初はよほど肩身の狭い思いをしたでしょうが、陳良宇の失脚で「党委員会書記代理」というポストを兼任することになりました。

 ワンポイントリリーフとはいえ上海市のトップです。韓正は中央の胡錦涛政権や党中央紀律検査委員会の支援を受けつつ、独立王国の解体を推進。そして今回は上海市代表団を率いて全人代に登場し、7日の分科会で記事標題のような演説を行ったのです。「社保事件」とは他でもない、陳良宇とその仲間たちによる汚職嫌疑。

 この事件で地元幹部はどこまで摘発の手が及ぶのか、自分は大丈夫なのかと戦々恐々としていたようです。このため前日である6日には上海閥の呉邦国・党中央政治局常務委員(全人代常務委員長を兼任)がわざわざ分科会に現れ、上海が中国においていかに重要な都市かということを説いた上で、胡錦涛の掲げる「科学的発展観」に言及。

「科学的発展観を以て経済・社会発展の全体を統御しろ」
「中央の期待に応えるよう望む」

 と指示。要するに「成長率至上主義」で「効率や環境保護を軽視しがち」な江沢民イズムは捨てろ、黙って中央の言うことに従え、ということです。ただ呉邦国はそうやって説教を垂れた一方で、

「上海の幹部の陣容は総じていえば良好だ」

 と一言。たぶん呉邦国が一番言いたかったのはこの言葉でしょう。恐らく含意は、

「もうこれ以上新たな摘発はないから安心して仕事に励め」

 ということであり、それを示唆したものかと思われます。韓正ではまだ力量不足で、人心掌握が徹底していなかったのかも知れません。

 ――――

 その呉邦国発言の翌日が上述した上海市代表団の分科会における韓正演説です。

「(陳良宇が引き起こした)社保事件の教訓に学び、権力の濫用防止に努めよう」

 と、事件再発を断固防ぐために開かれた政府になろうとか胡錦涛路線でしっかりやっていこうなどと気合いを入れ直しています。……陳良宇弾劾のニュアンスを含みつつも、ただそれだけの内容です。記事には韓正以外には誰も登場しません。

 ところが。実はこの会議に黄菊が参加しているのです。党中央政治局常務委員にして副首相という要人なのに、報道には名前が出て来ないというのはやはり「放置プレイ」というか。……実に徹底しています。

 この事実を最初に報じたのは地元上海の大手メディアのひとつ「東方網」です。ポンポンポンと速報3連発。

 ●黄菊が上海代表団の審議に参加(東方網 2007/03/07/18:38)
 http://sh.eastday.com/qtmt/20070307/u1a265766.html

 ●黄菊、上海代表団とともに天下国家を談じる(東方網 2007/03/07/18:40)
 http://sh.eastday.com/qtmt/20070307/u1a265767.html

 ●胡錦涛・呉邦国・温家宝・賈慶林・黄菊がそれぞれ分科会の討論に参加(東方網 2007/03/07/21:20)
 http://news.eastday.com/c/20070307/u1a2667846.html

 ――――

 さらにやはり地元の大手メディアである「解放網」(『解放日報』電子版)も報道。

 ●「社会発展と民生改善の重視を」黄菊が上海代表団の審議に参加(解放網 2007/03/07/23:29)
 http://www.jfdaily.com/gb/jfxww/xinwen/node1218/node17403/userobject1ai1604648.html

 翌日には『解放日報』(2007/03/08)の1面にドーンと出ています。

 http://epaper.jfdaily.com/html/2007-03/08/node_4105.htm

 ところが党中央の機関紙『人民日報』(2007/03/08)だと扱いが違ってきます。一応1面ではありますが、レイアウトや添付写真の有無などを比べてみれば一目瞭然。同じ「常務委員」でも動静が伝えられなかった曽慶紅を別とすれば、黄菊だけが仲間はずれです。

 http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2007-03/08/node_17.htm

 全人代オフィシャルサイトは「仲間はずれ」にはしなかったものの、記事が掲載されたのは8日になってから。

 http://www.npc.gov.cn/zgrdw/common/zw.jsp?label=WXZLK&id=360191&pdmc=110102

 解体されつつある独立王国とはいえ、上海にはやはり北京とは異なる独特の気分や秩序感覚、そして中央への対抗意識のようなものが今なお根強いのかな、と考えさせられました。……ただし『解放日報』も独自報道を許されず、新華社電をそのまま使うよう強要された模様です。

 ――――

 ところでこの黄菊登場で現場ではハプニングがあったようです。本来なら取材を許されている記者団が締め出しを喰らったようで、これについては香港紙の『蘋果日報』や『明報』だけでなく、親中紙の『大公報』まで憤懣やる方ないといった調子の記事を出しています。よほど腹が立ったのでしょう。

 ●『大公報』(2007/03/08)
 http://www.takungpao.com/news/07/03/08/ZM-702290.htm

 どうして取材陣を締め出したのかは謎です。黄菊の病み衰えた姿を公にしたくなかったのではないかという憶測もあるようですけど、私はむしろ、いかに「仲間はずれ」にされているとはいえ、黄菊が実質的な吊るし上げを喰らう様子を外部に見せたくなかったのではないかと思います。

 上海閥が独立王国然としていたころはブイブイ言わせていた黄菊が陳良宇事件での連座を噂されるまでになり、今回の分科会出席では、

「大局第一」
「国家に奉仕しろ」
「官民癒着や権力濫用による腐敗行為を撲滅しろ」

 などと言わされています。その同じ会議で現在の上海市トップで胡錦涛派の韓正が陳良宇弾劾の色彩を帯びた演説を行い、

「(陳良宇が引き起こした)社保事件の教訓に学び、権力の濫用防止に努めよう」

 と「社保事件」の菲を鳴らしているのです。直接断罪されている訳ではないにせよ、陳良宇の同類ともいえる黄菊にとっては一種のイジメであり、メンツ丸潰れとなる「人民裁判」だったのではないでしょうか。

 「心電図ピー状態」のところで要らぬ電気ショックを施されているようなものです。黄菊は安楽死を望んだでしょうに、胡錦涛はその半ば亡骸と化した黄菊の身体をなお政治的に利用した、といえるかも知れません。

 私にとっては、その方が私の中にある胡錦涛のイメージとぴったり符合するのですけど、実際のところはどうなんでしょうね。




コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )





 いやーそうなんです。ちょっと変なんですよ中国国内メディアが。

 前回お伝えした沖縄県知事が自衛隊機で3月13日に尖閣諸島などを視察するという話の続きなんですけどね。

 降って湧いたような出来事が意外なスパイスになるかも知れません。ともあれ13日の視察に、というより13日の視察に対する中共政権の反応に期待しましょう。内部では報道管制に対する突き上げもあるでしょうし、中央宣伝部は13日まで我慢できるのかなー。

 との一段を結語にしたところ、あにはからんや翌日にあたる昨日(3月7日)の朝イチに中共系の華僑向け通信社・中国新聞社がニュースにしてしまいました。おいおい報道管制じゃねーのかよ。それとも中央宣伝部がヘタレた?まさか、ひょっとして当ブログが火付け役とか……などという余太はともかく、まずそのニュースを。ちなみに「釣魚島」ってのは日本名「魚釣島」のことです。

 ●日本の沖縄県知事が軍用機で釣魚島視察へ、隠された企ても?(中国新聞網 2007/03/07/08:57)
 http://www.chinanews.com.cn/gj/ywdd/news/2007/03-07/885299.shtml

 ――――

 記事は外電総合といった感じです。沖縄県の仲井真弘・知事が来週水曜日に自衛隊の輸送機で尖閣諸島を視察すると。日本の一部メディアはこの行動について外交面で波紋を呼ぶ恐れがあると指摘した、と。いわゆる
「中国の反発は必至だ」ですね。

 まず訂正すべきは知事の名前。「仲井真弘多」が正解です。それから視察予定日は来週火曜日であって水曜日ではありません。カレンダーを知らない・読めないというのは、たぶん社会主義初級段階ゆえのことなのでしょう。……この記事では、

「よくあの地域は沖縄のものだ、油(石油)は沖縄のものだという話はあるが、どうやって採るのか。実際の距離感が分からないので見てこようと思う」

 という仲井真知事の談話がそのまま引用されています。前回紹介した『琉球新報』の記事が引用されているようです。

 ●知事、尖閣を上空視察へ(琉球新報 2007/03/05/16:00)
 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-21857-storytopic-3.html

 仲井真知事のコメントはどこか頼りなげですけど、「自衛隊機」で「沖縄県知事」が「尖閣諸島視察」となれば、軍部、特に「核戦争の熊さん」人脈?の電波系対外強硬派にとっては極上燃料となっても不思議ではありません。

 ……と私は書いたのですが、中国新聞社の記事によるとこれは、

「口を濁すことなく領土と石油資源という敏感な問題に直接言及した」

 ということになるようです。まあ電波系対外強硬派にとってはそういうことになるでしょう。

 ――――

 それからこの記事によると、

「沖縄県知事が視察にあたって民間機を使わず、わざわざ航空自衛隊に輸送機の使用を申請したことについて、一部の分析員は『隠された企図がある』と感じている」

 とのこと。……いや、だからさー、

「民間航空機で行けないことから、県が航空自衛隊に協力を求めていた」

 という『読売新聞』(2007/03/05/20:40)の記事は読まなかったのかよ自称「分析員」ども。……ともあれこの記事によると、

「歴代沖縄県知事は外交問題化するのを避けるため一貫して尖閣諸島の視察を行わずにいた」

 ……とのこと。それに対し、

「仲井真弘の決定は数十年の『沈黙』を破るものであり、このため日本内外の注目を集めている」

 いや、だから誰だよその「仲井真弘」ってのは?記事の扱いと分量(前回参照)からすると日本国内では注目を集めているとはいえないし、香港も『明報』だけが電子版でまる1日遅れて報じただけだし、そもそも肝心のお前ら中共系メディアなんか注目どころか沈黙してたじゃん(笑)。

 ――――

 この中国新聞社による配信記事は突っ込みどころ満載です。まず内容は上述した通り。それから報道のタイミングも微妙ですね。速報した訳でもなく、日本側の報道を約2日間寝かせてからの配信。報道管制が破られたにしては間が悪い、というより全人代(全国人民代表大会=立法機関)開催中であることを考えると、中央宣伝部の陥落ないしは変節が早過ぎるように思います。

 さらにいえば、実は報道管制がまだ続いているような観があるのです。……とは、中国新聞社が配信したこの記事は同社電子版にはメインニュースのひとつとして並んだものの、可燃度が高い筈のこのネタが、中国国内メディアからはほぼ完全に無視されているからです。

 標題の「何だか変」とはこの奇妙な対応ぶりのことで、みんなからスルーされた中国新聞社が完全に浮いちゃっているじゃないですか。「沖縄県知事」が「尖閣諸島視察」、しかも「自衛隊機で」ですよ。本来なら「猫まっしぐら」な筈なのに、中国国内メディアは沈黙を以て配信記事に報いたのです。

 ただ「中国国内メディアからは
ほぼ完全に無視されているのです」と前述したように、この配信記事を掲載した奇特なメディアがひとつだけありました。私の調べた限りですから他にもまだあるかも知れませんけど、新華社や『人民日報』『中国青年報』『解放軍報』それに大手ポータルのニュースサイトには全く出ていません。

 で、配信記事を唯一使ったのが上海の著名夕刊紙『新民晩報』の電子版「新民網」でした。

 ●日本の沖縄県知事が来週軍用機で釣魚島を「視察」へ(新民網 2007/03/07/09:50)
 http://news.xmnext.com/world/opinion/2007/03/07/275963.html

 ――――

 標題がちょっと変わっているだけで記事本文は配信記事そのままです。ただそれに加えて尖閣諸島問題に関する豆知識や過去の経緯などを追加しています。ねちっこいですね。もちろん内容は中国外交部ソースで中共史観に則った「尖閣諸島は中国の領土」論です。

 さらに粘着なのは専門家にコメントさせていること。上海国際問題研究センター編集室主任で日本問題専門家とされる陳さんを引っ張り出してきました。この陳さん、

 ●唐突な感じだ。沖縄県知事の行動は一部の日本の右翼分子から支持される以外にどんなメリットがあるのか?
 ●温家宝・首相の4月訪日を控えたこの時期を選んで釣魚島問題で挑発行動をとるというのは不適切だし、日本の国益にも合致しない。
 ●これは中日関係に悪影響を及ぼすことになる。同時に右翼勢力が日本の政界において一定の力を有していることの表れでもある。

 と首をひねりつつ、

「ここ数年来、日本は釣魚島が日本領土であることを主張してはきたものの、こういう一方的に問題を激化させるような挑発行為はほとんどみられなかったのだが」

 と、最後まで首をひねっています(笑)。せっかくだから他の中国国内メディアがスルーしまくりなのと、「新民網」だけが配信記事を掲載したのはなぜか、ということについても解説してほしかったですねー。

 ――――

 上海や寧波(浙江省)はいわば尖閣諸島から「最寄り」ということで上海紙の「新民網」が報じたのかも知れません。……が、上海のメディアとしてはより大手である「解放網」や「東方網」は完全にスルーしているので「最寄りだから」説は崩れてしまいます。

 「新民網」にはたまたま「糞青」(自称愛国者の反日信者)がいた、というのも説得力に欠けるでしょう。大雑把にいって30歳以下は江沢民による反日風味満点の愛国主義教育を全身に浴びて育った世代ですから、多かれ少なかれ反日傾向の強いスタッフはどこのメディアにもいる筈です。

 ●中国の「新しい歴史教科書」問題・上 :愛国主義教育。(2007/02/26)

 その糞青で思い出して中国の代表的反日サイトのひとつでもある「中国民間保釣連合会」に行ってみたら、さすがは「保釣」(尖閣防衛)運動の総本山、掲示板にスレが立っていました。しかもスレ一覧の先頭に固定されています(笑)。スレが立ったのも3月6日の20時50分。

 http://www.cfdd.org.cn/bbs/viewthread.php?tid=45679&extra=page%3D1

 中国新聞社による記事配信よりも早く、記事の内容も異なっています。どこがソースなのかちょっとわかりません。レスの中に中国新聞社電をコピペしたものがありますが、まあ糞青の掃き溜めですから、

「ミサイルをぶっ放せ!」
「そうだ発射だ!」

 といったお決まりの脊髄反射型一言レス、そしてこれもセオリーですが、

「中国政府は何をしているのだ?」

 という声がありました。

 ――――

 ただ、これはあくまでも「民間組織」の掲示板の上でのことです。通信社を含む中国国内メディアが2日間沈黙していたのを中国新聞社が唐突に記事にして、ところがそれで報道解禁かと思いきや掲載したのが「新民網」だけ、というのが可燃度の高いニュースだけに「何だか変」です。

 掲載したところと掲載していないところがある、という点では今年1月の弾道ミサイルによる衛星破壊実験報道にやや似ています。今回の標題に「また綱引き?」と掲げた所以です。

 ●衛星破壊ミサイル実験:当局もメディアもちょっと変。・上(2007/01/21)
 ●衛星破壊ミサイル実験:当局もメディアもちょっと変。・下(2007/01/21)

 当時のように掲載された記事が削除されるような荒技は使われていない模様ですが、このニュースを報道させて燃え上がらせたい向きと、そうなるのを回避したい向きがあるのではないかと思います。後者は、

「中国政府は何をしているのだ?」

 という声がネット世論なり党上層部なり軍内部から出るのを防ぎたい……まあ胡錦涛サイドですね。

 ――――

 現時点まででいえば、その「燃え上がらせるのを回避したい向き」つまり胡錦涛政権がメディア合戦で対外強硬派ないしは「これをお題目に胡錦涛の足を引っ張りたい政治勢力」を圧倒しているといったところです。

 まあ、3月8日以降の中国国内メディアの動きを眺めてみないと確たることはいえませんけど。

 何だか妙な展開になりつつあることは確かです。続報待ちですね。

 ちなみに、何だか妙なので前回は「日中関係」だったカテゴリーを今回は「中国観察」に変えてみました。




コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )





 ひょっとして釣り?とか言ってもシャレになりませんね。尖閣諸島は中国名が「釣魚台」ですから(笑)。

 ともあれ「いまさら」観はありますが一応日本側の報道を。

 ――――

 ●知事、尖閣を上空視察へ(琉球新報 2007/03/05/16:00)
 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-21857-storytopic-3.html

 仲井真弘多知事は5日午前、米軍の射爆撃場となっている久場島(黄尾嶼)と大正島(赤尾嶼)を含む尖閣諸島周辺や東シナ海の油田海域を自衛隊機で13日にも上空から視察する考えを明らかにした。仲井真知事は記者に対し「よくあの地域は沖縄のものだ、油(石油)は沖縄のものだという話はあるが、どうやって採るのか。実際の距離感が分からないので見てこようと思う」と動機を話した。
(後略)

 ――

 ●尖閣諸島を初視察へ=13日にも自衛隊機で-沖縄知事(時事通信 2007/03/05/18:56)
 http://www.jiji.com/jc/zc?key=%c0%ed%b3%d5&k=2007030500727

 沖縄県の仲井真弘多知事が日中両国が領有権を主張する尖閣諸島や周辺海域を上空から視察する予定であることが5日、分かった。天候などに問題がなければ自衛隊機を利用し、13日に実施する。
(中略)中国側が反発する可能性もある。

 ――

 ●沖縄県知事、尖閣諸島視察…13日に自衛隊機で(読売新聞 2007/03/05/20:40)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070305i112.htm

 沖縄県の仲井真弘多知事が、中国や台湾も領有権を主張している同県石垣市・尖閣諸島を自衛隊機で視察することになった。今月13日を予定している。沖縄県知事が尖閣諸島を視察するのは初めてという。実情把握と、在日米軍に提供している射爆場の視察が目的。民間航空機で行けないことから、県が航空自衛隊に協力を求めていた。
(中略)同諸島周辺の大陸棚に石油資源が埋蔵されている可能性があるとの調査結果が1969年、公表された後、中国、台湾が領有権を主張した。東シナ海の天然ガス田開発を巡っても、同諸島北側海域での日中共同開発案が浮上している。

 ――――

 香港では『明報』電子版の「明報即時新聞」がまる1日近く遅れて報じています。

 ●沖縄県知事、初めて釣魚台へ(明報即時新聞 2007/03/06/17:30)
 http://hk.news.yahoo.com/070306/12/2354j.html

 中国国内メディアが報じた形跡は、目下のところなし。報道管制が敷かれている可能性が高いです。

 例えば昨日(3月6日)開かれた李肇星・外相の記者会見で、香港の有綫電視(CATV)の記者から「慰安婦」問題を切り出されたときも李肇星は模範回答を示したのみで多くを語らず、全体的に温家宝・首相の4月訪日に向けた友好ムード醸成が念頭にある模様。

 「日中国交樹立35周年」とは言っても「盧溝橋事件70周年」とか「南京虫事件70周年」へと流れることはなく、昨年みせたようなお得意のアドリブ突入はありませんでした。

 ●李肇星外相会見雑感――あれは医学が扱う問題。(2006/03/09)

 「反右派闘争50周年」「大躍進70周年」が登場せず、開幕したばかりの全人代(全国人民代表大会=立法機関)の焦点とみられている「物権法」の具体的内容にふれる報道も全人代記事そのものとしてはほとんどみかけないように、「沖縄県知事、自衛隊機で尖閣諸島視察へ」はNG扱いなのではないかと思います。

 ――――

「よくあの地域は沖縄のものだ、油(石油)は沖縄のものだという話はあるが、どうやって採るのか。実際の距離感が分からないので見てこようと思う」

 と言う仲井真知事のコメントはどこか頼りなげですけど、「自衛隊機」で「沖縄県知事」が「尖閣諸島視察」となれば、軍部、特に「核戦争の熊さん」人脈?の電波系対外強硬派にとっては極上燃料となっても不思議ではありません。

 何といっても「国土の安全と統一を実現する」のが人民解放軍の「神聖なる使命」ですからねえ。ここの「統一」には台湾だけでなく尖閣諸島も含まれていることは言うまでもないことです。

 知事の視察が全人代を狙ったものとは思えませんけど、胡錦涛にとって騒いでほしくない連中が騒ぎかねないネタが最高のタイミングで投入されたことは確かです。あるいは知事の背後に軍師がいたのか(笑)。

 胡錦涛風味の「新しい歴史教科書」を退役中将が激しく批判した「李際均論文」でひと揺れあったばかりですから、これでまた軍内部の足並みが乱れる可能性はあります。

 ――――

 降って湧いたような出来事が意外なスパイスになるかも知れません。ともあれ13日の視察に、というより13日の視察に対する中共政権の反応に期待しましょう。内部では報道管制に対する突き上げもあるでしょうし、中央宣伝部は13日まで我慢できるのかなー。




コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )



« 前ページ