日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 世界の亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長が昨日28日午後に亡命先の米国から来日しました。慶事であります。

 ラビアさんに対しては、中国当局が7月5日のウルムチ事件の黒幕だとかテロリストだとか懸命にレッテル貼りをしていたのと関係があるのかどうかはわかりませんが、日本のマスコミはラビアさんが来日したことに関しては大方スルーか短信で報じたのみでした。

 とはいえ、短いながらも味のあるニュースがなかった訳ではありません。『産経新聞』電子板が掲載した共同通信電などは簡潔ながらもポイントを押さえていて唸らされました。



 ●中国でNHK放送が中断 カーディルさん来日報道で(共同通信→MSN産経ニュース 2009/07/28/21:28)

 中国で28日、ウイグル人亡命組織「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席の訪日を報じていたNHKの海外放送が中断された。カーディルさんの訪日をめぐっては、中国外務省が27日、日本政府に対し「強い不満を表明する」との談話を発表していた。

 一方、中国政府は28日、カーディルさんの訪日に合わせ、新疆ウイグル自治区ウルムチ市内で5日に起きたウイグル族による大規模暴動を記録した日本語版のビデオ「7・5暴力事件とラビア氏」を日本メディアに配布。カーディルさんらによる「統制と画策」の下、暴動が発生したとあらためて非難した。



 ●ラビアさんが来日した。
 ●NHKの海外放送が中国国内ではそれを報じた部分のみ放送が中断された。
 ●中国はラビアさんの訪日に不満表明。
 ●だからかどうかは知らないが、来日に合わせてわざわざ日本語のプロパガンダビデオを日本メディアに配布。
 ●ビデオの内容に言及している部分で「統制と画策」とカッコ付きで報じたことで、中国当局の姑息さと愚昧さをさり気なくアピール。

 ……と、簡潔ながらも具沢山で要所を締めているあたり、プロの仕事だなあと感心せずにはおれませんでした。

 ――――

 中国はラビアさんを極悪人扱いしているだけでなく、上の記事にあるように今回の来日に対しても外交部が「強い不満」を表明しています。



 ●日本政府によるラビアの来日許可について(人民日報日本語版 2009/07/28/10:14)
 http://j.people.com.cn/94474/6711925.html


 外交部の秦剛報道官は27日、世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長が日本を訪問して反中分裂活動を行うことを、日本政府が頑として許可した件についての記者の質問に答えた際、日本政府への強烈な不満を表明した。

 ――日本政府がこのほど、ラビア(ラビア・カーディル議長)の来日を許可し、ビザを発給したことについて、中国としてコメントは。

 私たちは日本政府が中国側の度重なる厳正な申し入れを顧みず、ラビアが日本を訪問して反中分裂活動を行うことを頑として許可したことに、強烈な不満を表明する。(編集NA)



「強烈な不満」
「度重なる厳正な申し入れ」

 などと、一見すると強腰のようでもありますが、私に言わせればこの程度ならソフトな御対応ということになります。敢えて下品に一発かますと、これは一見硬そうなようでいて実の伴っていない「フニャ××(ピー)声明」。

「強烈な不満」

 といっても抗議する根拠が中国ローカルで国際社会において通用するものではありませんし、

「度重なる厳正な申し入れ」

 を日本側のどの部門に対して行ったのかすら明記していません。大使や公使を呼びつけたとも書いていませんし、下っ端相手の抗議としても北京大使館の名前すら挙がっていないません。小泉純一郎・元首相が靖国神社を参拝する度に出していた抗議声明同様、国内向けのポーズという色彩が強いように思います。

 例えば、李登輝・元台湾総統の来日時(2004年)に出ていた抗議声明に比べれば反発度はずーっと低いレベルということができます。ついでにいうと、近年において中国の対日批判で最も反発度が高かったのは、意外かも知れませんが森喜朗・元首相が2003年12月に台湾を訪問した際に出た外交部声明。

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう日本側に要求する」

 というものでした。この「『中日共同声明』など」云々が出てくると、剣呑なものということができます。まあこれにしても、

「政治的文書の基本原則を遵守するよう求める」
「政治的文書の精神に反する……」
「政治的文書に違反する……」
「政治的文書を踏みにじる……」

 ……など、これはこれで色々なランク付けがあるのですけれど。

 ――――

 ところで、ラビアさんが来日した昨日28日は火曜日で、外交部報道官定例記者会見が開かれる日(毎週火曜・木曜)と重なることから、より踏み込んだ声明が出されるかも知れないと期待していたのですが、中国外交部のウェブサイトで調べたら21日(火)を最後に夏休みに入っており、会見もお休み。

 なるほど道理で秦剛が早手回しに談話を発表したのか、と合点した次第。ラビアさんは今日29日の午後に日本記者クラブで記者会見を開くことになっていますから、その内容次第で声明第二弾が出て来るのかも知れません。

 ともあれ、ラビアさんは来日した訳で、要するに日本政府が「中国側の度重なる厳正な申し入れを顧みず」ビザを発給したことになります。GJ!と言いたくなるところですが、有り体は法に則って粛々とビザを発行した、要するに当然の事務処理をこなしただけのことですから、ここはツンデレで「まずは及第点」くらいにしておくのがいいでしょう。

 あれこれ気兼ねして遠慮して、中国の反発に屈して筋を曲げていた時期もありましたから、改善されたということはできるかも知れませんけど。

 ただここで強調しておきたいのは、中国側の不満表明を顧みずに日本政府が筋を通したことに、……要するに単に日中間の腕相撲に勝った勝ったと捉えて快哉を叫ぶのは、些か浅薄ではないか、ということです。

 というのも少なくとも江沢民時代以来、中国当局による対日批判は往々にして、その折々における中国の国内向け政策や政争を色濃く反映したものだからです。

 前者(対内政策)の例では反日風味満点の愛国主義教育などがあり、後者のケースとしては、表向きは首相の靖国神社参拝や歴史教科書への内政干渉、また日本の常任理事国入り反対というお題目でありながら、実はアンチ胡錦涛諸派勢力がそのお題目を強く唱えることで、胡錦涛政権を揺さぶりひいては倒閣を狙ったのが本質、という事例を挙げられます。2005年春の反日騒動がその典型例ですね。

 ですから今回の反発度もラビアさんの日本における活動内容にもよりますが、基本的には中国の国内事情、具体的には胡錦涛政権の指導力によってレベルが決まることでしょう。中国がどこまで「萌え」てくれるかは、アンチ胡錦涛諸派の頑張り次第、ということになると思います。

 ――――

 で、そのアンチ組の蠢動や如何に、ということになるのですが、目下のところは『人民日報』系列の電波系基地外反日紙『環球時報』が独りで騒いでいる状態。

 その記事が「新浪網」など大手ポータルのニュースサイトに転載されたりはしていますが、国営の新華社通信や胡錦涛の広報紙『中国青年報』などは外交部声明を掲載した程度で基本的には抑制されており、ウェブ上で接する限り、一部メディアで報道されているほど「反日大合唱」という空気ではありません。

 「ネット世論に反日気運」という報道もありますが、基本的には『環球時報』電子板である「環球網」での「ラビア氏来日は中日関係を損なうと思うか?」というネット投票を土台にしたものです。

 現時点ではこのアンケート、「損なうと思う」が1万9249票で90.8%という圧倒的な勢いを示しているものの、電波系反日基地外紙サイトにわざわざ飛んできて投票するのですから、これはよほどのコアユーザー。しかも数日前から行われているネット投票なのに、投票総数が2万票をちょっと超える程度ですから、余り当てにはできません。

 むろん、2005年春の反日騒動のときのように、いきなり火の手が上がることもあるのですが、あれはあれでメラメラするまでにかなり入念な仕込みが行われていましたし、当時は新華社も煽る側に回っていました。

 そして「ネット署名→街頭署名→反日デモ→反日暴動」というプロセスで事態が拡大していきました。これは聖火リレーでのフリーチベットでメラメラした昨年春の対仏排撃運動もほぼ同じ手順を踏んでいますから、ひとつの目安として参考になると思います。

 要するに、ネット署名が始まるようだと背後にアンチ胡錦涛諸派の暗躍があり、表面的には反日気運の高まりではありながら、実質的には政争ムードが濃くなるということです。それゆえ「胡錦涛政権の指導力次第」ということになる訳で。

 ――――

 最後に御存知の方も多いでしょうが、ラビアさんの日本滞在が早めに切り上げられることになったため、講演会の内容に変更が生じています。念のために講演会実行委員会のプレスリリースを掲げておきます。



 ●講演会の内容変更のお知らせ - Tuesday, July 28, 2009
 http://www.uyghurcongress.org/jp/News.asp?ItemID=1248747152


 この度は「ラビア・カーディルさん講演会」へのご参加をお申し込みいただき、誠にありがとうございました。

 ところで、この講演会につき、やむを得ない事情が発生し、以下のような事態に立ち至りましたので、謹んでご連絡申し上げます。

 7月31日、米国議会・下院外交委員会が急遽、「ウルムチ事件」に関する非公開ミーティングを開催することになり、ラビア・カーディルさんの見解と証言を求めて参りました。この会議には、これまで下院に於いてウイグル問題を積極的に取り上げてきた民主党議員で「国際組織、人権及び監視委員会」のデラハント委員長や、共和党のローラバッカー氏が参加します。そして、ウルムチ事件について下院がどのような態度を示すか決める重要な席になるとのことです。

 彼女は当然、日本訪問を理由に断ることを考えましたが、米国議会開催期間の最終日を使って(アメリカ議会は8月1 日から暫く夏期休暇で開催されません)、「ウルムチ事件」を取り上げ、事件への米国の姿勢を明確に示して欲しいという考えは、多くの在米ウイグル人が抱いている「希望」でもあり、そこでの証言を断るということは実に重い結果を予想しなければならないことでもありました。

 そこで当実行委員会としては、誠に遺憾ではあるものの、このラビアさんの苦衷を察し、下院ミーティング出席のための30日朝の米国への帰国を認めることといたしました。

 ただし、30日夜の講演会は主催者としての責任も考え、以下のように内容を変更して開催することといたしました。

 �ラビアさんには予定していた講演の内容を、29日に長時間のメッセージビデオという形で収録してもらい、当日はそれを会場で流して講演に替える。

 �ラビアさんのご主人であるシディック・ハジさんには日本に残ってもらい、当日はラビアさんの代理として挨拶とお話をしてもらう。ちなみに、ご主人は学者であるとともに、かつて中国の監獄に政治犯として9年も収監された経験をもつ運動家でもあり、ご自身の体験とラビアさんについて、ウルムチ事件について、大変有意義なお話が伺えることと確信致します。

 以上、講演会主催者としてこのような事態に大変責任を感ずる次第ですが、何卒このような事情をご理解いただき、ご容赦たまわりたく、お詫び申し上げる次第です。

 なお、その上で、できることなら当日も何卒ご参集をたまわりたく、誠に厚かましいお願いとは存じますが、併せてお願い申し上げる次第です。


 ラビア・カーディルさん講演会実行委員会

 2009年7月28日



 講演会はいつでもできることですから、ここは米下院議会の案件を優先するのが妥当なところでしょう。今回は生の講演会にはならないのが残念ですが、長尺のビデオメッセージも準備されることですし、日本記者クラブでの会見もありますし、政治家と接触する予定もあるともいわれています。

「私の国の困難な思いと、今回の虐殺の詳細について、私は日本国民と日本政府に伝えたい」

 と日本メディアの取材で語ったラビアさん。短い日本滞在ながらも、内容の濃いスケジュールとなることを期待しています。





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 ウイグル人はその故地を、中共政権によって強制収容所に変えられてしまった。

 ……という印象が、強く残りました。日本ウイグル協会が主催する緊急シンポジウム「ウイグルで何が起きているのか?」に出席しての感想です。

 今日のウイグル、チベット、内モンゴルは明日の台湾であり、明後日の日本である。……との危機感も、再認識させられました。

 コア層のコア層によるコア層のためのシンポ、というべき内容で、平素からウイグルをはじめ中国情勢に留意している人にとってはサプライズに乏しい面があったかも知れませんが、パネリストの方々に間近に接し、直接語りかけられると、テーマについての問題意識や感慨もまた新たになります。

 個人的には意義深く非常に良いイベントでした。





 ウイグル人はその故地を、中共政権によって強制収容所に変えられてしまった。

 ……との感想を改めて掲げておきます。



「ウイグル人はすでに自分の地域で二等市民になっているんです」

「職場を奪われ、自由を奪われ、自分の行動が自分の考え方で自由にできない、それが全てです」

「ウイグル人は現地で、命だけは自分のものとして持っていますけど、それ以外の文化、宗教、全部、全てが中国、つまり政府や漢人によって奪われているんです」



 ……とは、今回のメインキャストで日本ウイグル協会会長・世界ウイグル会議日本全権代表のイリハム・マハムティさんが当ブログのインタビューに際して語ってくれたことです。今回のシンポジウムでは、イリハムさんをはじめ各パネリストがこの点を強調し、また中共政権の覇権主義に警鐘を鳴らしました。

 ウイグル人の直面している苛酷で悲惨な状況は、すでにチベットや内モンゴルにおいても現出していること。

 台湾では対中融和路線を掲げる馬英九・総統が国民党主席にも選出され、中国のカネとヒトに呑み込まれそうな形勢にいよいよ拍車がかかりそうであること。

 そしてこうした状況は、日本にとっても、決して他人事ではないこと。民主党が掲げる諸政策を観じれば、総選挙による政権交代が行われた場合、その危険性はいよいよ高まることでしょう。

 他人事では、ないのです。

「ウイグル地域やチベットだと警察は何かあると5分もかからずにやって来る。降って湧いたように多数の警官や武装警察が駆けつけてくる。しかし6月26日に広東省の玩具工場で起きた漢人によるウイグル人暴行事件では、警察は5時間後にようやくやって来た。しかも漢人の暴行を眺めるばかりで制止しなかった」

 とイリハムさんは今回のシンポジウムで語っています。これをパネリストの一人である西村幸祐さん(ジャーナリスト・チャンネル桜キャスター)が受けて、

「日本でも去年の長野で、聖火リレーのときに同じことが起きたではないか。日本の警察官は中国人たちの横暴を眺めるばかりではなかったか」

 という趣旨の発言を行いました。まことにその通りであって、「他人事ではない」ことが、すでに日本でも起きているのです。

 ――――

 中共政権によるウイグル統治60年の歴史をイリハムさんの発言から拾ってみると、次のようになります。



 ●60年前に中国の軍隊がウイグル地域(東トルキスタン)に入ってきた。

 ●中国の軍隊はウイグル地域を軍事的に制圧した。

 ●制圧完了後、進駐軍の一部が新疆生産建設兵団として屯田兵のような形で同地に残留した。

 ●新疆生産建設兵団がまず手をつけたのは、工業ではなく農業だった。

 ●新疆生産建設兵団はウイグル人から最も好適な農地を奪い、さらに水源を奪ってその付近を開拓した。

 ●ウイグル地域の農業は地下水ではなく、山からの雪解け水に頼っている。

 ●このため新疆生産建設兵団の駐屯地はいずれも山の近くにある。

 ●水源を奪われたウイグル人の農民は、新疆生産建設兵団から水を買わざるを得なくなった。

 ●やがて新疆生産建設兵団は工業建設に着手した。

 ●中国は「各職場において地元少数民族の占める比率を65%以上とすること」との法律を定めた。

 ●これによって多数のウイグル人が職を得ることができた。当時はウイグル地域へ定住しようという酔狂な漢人(漢族=中国人)などいなかったから。

 ●しかし文化大革命での下放運動を契機に、中国当局による植民政策(漢人の強制移住)がどんどん推進された。

 ●漢人が激増した結果、ウイグル人は職を奪われ、「65%雇用」の法律は有名無実化した。

 ●貧困のため売血に走ったウイグル人たちが同じ注射針を使ったことにより大量のエイズ感染者が出現した。

 ●事態を打開しようと当局に善処を求めるウイグル人は「民族主義者」として弾圧された。

 ●2000年からはウイグル語で教育を行う自由が奪われた。いまではどんな僻村でも中国語教育が強制されている。

 ●2006年から「就職斡旋」という名目でウイグル人女性を中国本土へ連行し、漢人のやらない低賃金の仕事をやらせるようになった。

 ●連れていかれた女性は15~25歳の未婚の処女のみ。これは明らかな同化政策としてウイグル人の反発を呼んだ。



 こうして蓄積された民族の怒りが、6月26日の広東省の玩具工場で発生した漢人によるウイグル人暴行事件で頂点に達します。

 ウイグル人はこの事件を、インターネットで知りました。YouTubeに出回り、日本のテレビニュースでも使われた、あの暴行映像です。しかもこの映像は撮影者が漢人であるばかりか、一方でウイグル人を暴行した漢人たちを英雄扱いし、ウイグル人を軽侮し罵倒する言論が中国国内の掲示板にあふれ返ったといいます。

 この情報に接して驚愕したウイグル人は、怒りを秘めつつも事件の真相を説明してくれるよう地元当局に請願し、その回答を待ちました。5日間待っても回答がないため、ネットを通じて集まったウイグル人大学生が、ウルムチ市でデモ行進を実施したのです。

 「官逼民反」という中国語があります。「官」による横暴が極限にまで達したとき、追い詰められた「民」はその成否を問わずに蹶起する、という意味です。

 ところが、ウイグル人学生たちによるこのデモは、「蹶起」ではありませんでした。中国の国旗である五星紅旗を掲げ、ウイグル人も同じ中国国民として漢人と平等に扱ってくれ、そして事件の真相を説明してくれ、という意思表示だったのです。

 このデモに他のウイグル人も合流し、膨れ上がったデモ隊が政府庁舎のある人民広場へ入ろうとしたとき、その前に立ちはだかった治安部隊が群衆に実弾射撃を行い、また装甲車をデモ隊に突入させてウイグル人を次々に轢き殺していったといいます。

 ……が、当ブログが以前指摘したように、その現場を捉えた「流出画像」「流出動画」が現在に至るまで出て来ないため、全ては想像するしかありません。

 ――――

 想像の根拠となりそうなものはあります。

「7月7日未明時点で公安部門は暴力・破壊・略奪・放火の容疑者としてすでに1434名を逮捕。このうち男性は1379名で、女性は55名」

 という新華社電です。

 ●「新華網」(2009/07/07/08:40)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-07/07/content_11664971.htm

 当局発表ということになりますが、これは当ブログでしばしば指摘しているように、尋常な数字ではありません。中国当局はデモ隊を暴徒に置き換えていますが、その総勢は3000名とも1万名ともいわれます。

 異常ではありませんか。「1434名」という数字の多さと、逮捕劇の迅速さ(たった丸一日)が、です。

 デモ隊が3000名とすればその半分、1万名としても参加者の15%が逮捕されているのです。官民衝突があったとすれば、治安部隊が懸絶した武力、例えば密集した強力な火力でウイグル人を圧倒しない限り、短時日にかくも高い比率の逮捕者が出ることは考えられません。

 ここからさらに想像することもできます。「1434名を逮捕」というこの1434名の中に、治安部隊による武力鎮圧での負傷者はもちろん、実は死者数も計上されているのではないか、ということです。

 ――――

 シンポジウムが始まる前に、唯一冷房のよく効いていた喫煙室にて偶然、イリハムさんと連れションならぬ連れモクをする格好になりました。

 イリハムさんによると、いまウルムチでは武装警察が令状なしでウイグル人の住まいを家宅捜索しているのだそうです。実質的な戒厳令状態といったところでしょう。

「銃器を所持しているかも知れないから」

 という理由で、武装警察がウイグル人女性の「身体検査」を行う、というセクハラも横行しており、怖くてとても外出できない状態だ、とのこと。

 また最悪の場合、「流出」や連携成立を恐れる当局がウイグル人から携帯電話を強制的に回収し、中のデータを全て消去してから返還するという措置すらとられるかも知れない、ということでした。

 自民族の土地が強制収容所になってしまう怒りと悲しみと恐怖。他民族による苛酷な統治を受け動物のように扱われ、せめて人間としての尊厳を求めんとするや、待っているのは容赦ない武力弾圧。

 それが正にいま、ウイグルで起きていることなのです。

 ――――

 パネリストの一人である横浜桐蔭大学教授・チベット文化研究所所長のペマ・ギャルポさんが、

「こうして見渡すと、大体いつも集会にお見えになる同じ方々で、喋る人たちも同じで」

 という意味の話をして聴衆の笑いを誘ったあと、

「本当はこの話を、ここに来ていない人たちに聴いてもらうべきだと思います」

「だからこそ、ここにいる人たちは、他の人たちにどんどん情報発信していかなければならないのです。今日のシンポジウムの意義のひとつも、そこにあります」

 と語っていたのが印象的でした。

 質疑応答を終えて閉会の挨拶に際し、イリハムさんに最後の質問として「日本人と日本に望むことは何か?」という問いかけがなされました。

「日本人に望むことは、貴重な一票、良い人を国会に送って、日本を本当に変えてくれる方々を選んでほしいということです。国会が変われば政府が変わって、私たちの運命に関心を持つ政府になってくれる。そうすれば私たちのいまの状態は必ず、早めに改善されるだろうと私は思っています」

 というのが、イリハムさんの回答でした。

 ――――

 余談になってしまうかも知れませんが、今回のシンポジウムでは、先日当ブログにトラックバックを打って下さった西村幸祐さんに初めてお目にかかり、ご挨拶させて頂くことができました。西村さんからは温かい言葉で励まして頂き、身の引き締まる思いがしました。

 また、西村さんはやはり今回のパネリストでチャイナウォッチャーである拓殖大学客員教授の石平さんに私を引き合わせて下さいました(西村さん、ありがとうございました)。石平さんからは、

「互いに頑張って、中共にとっての『大毒草』をあちこちで育てましょう」

 という激励の言葉を頂きました。かくなっては、不肖御家人も相勤めなければなりません。

 ……そして、ここまで読んで下さった皆さんも、もはや御同朋であります。

 一人ひとりそれぞれが、「大毒草」の輪を広げていこうでは、ありませんか。





 余談の余談です。会場では多彩なウイグル関連グッズが販売されていましたが、その中で一冊の本に目が留りました。平積みにされているものが、どんどんさばけていくのです。

「中国、発禁の書!」

「ウイグル文学初の邦訳」

「『中国の火薬庫・新疆ウイグル』は、なぜ独立を求め続けるのか?その原点を描いた壮大な歴史小説。封印された物語がここに甦る!」

 ……といった帯の文字が目を魅かずにはおれません。


 
英雄たちの涙―目醒めよ、ウイグル
アブドゥレヒム・オトキュル
まどか出版

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「ウイグル人の怒りと悲しみの理由が、これを読めばよく理解できます」

 という説明にも誘われて、迷わず購入しました。

 「ウイグル文学」ということが、何よりもまず魅力的。養生に努めつつ、じっくりと読んでみるつもりです。








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★★★ウイグル人の苛酷な境遇を知る上での必読の良書3冊★★★


中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧 (文春新書)
水谷 尚子
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中国の狙いは民族絶滅―チベット・ウイグル・モンゴル・台湾、自由への戦い
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 何やらウイグル三昧で食傷気味だ、というお叱りを受けそうですね。

 しかし、日本のメディアにかつてこれほどに「ウイグル」という単語があふれたことがあったでしょうか?

 この好機を逃すとまた忘れ去られてしまうことになるので、日本人のため(将来を考えると断じて他人事ではないのです)、ウイグル人のために、当ブログはできる限り、まあ私の士気と体力が保たれている間はこの問題を追いかけたいと考えています。もちろん、他の話題にも目配りしていくつもりですけど。

 騒乱の発生したウルムチ市は圧倒的な軍事力によって表面上は事件が沈静化した感があります。ところがそれに取って代わるかのように、今回の事件を政局にしようとする動きが出始めているようにみえます。「ウイグル三昧」とはいいながら、政争というか権力闘争というか、そういう動きが垣間みれるようになったことを無視する訳にはいきません。

 ひょっとすると、舞台はウルムチから北京(中国政界)に移りつつあるのかも知れません。

 前回紹介したように、事件に関する当局発表を覆すような動きが出始めていることは要注目です。当局が「死者は現時点で197名」と発表し、7月5日のデモ隊への発砲については一切言及していなかったのに対し、あろうことか中国国内メディアから、

「7月8日時点で死者は200名以上」

「散発的な銃声が聞こえた」

 という、ちゃぶ台を引っくり返すようなルポが飛び出しました。前回紹介した『中国新聞周刊』の報道がそれに当たります。

 ――――

 なぜ当局発表に敢えて異を唱える記事が差し止められずに活字になったのかは目下のところ不明です。しかし今回のような大事件の場合、中国国内メディアは国営新華社通信から配信される記事を引き写すのが、しきたりといえば、しきたり。当局発表についてはなおさらのことです。

 ところがそれがないがしろにされてしまったのですから、これは政治的意図を秘めた記事ということを考えざるを得ません。

 こうなると当局発表の信憑性がますます疑われることになるのは必定。政治的な側面でいえば、当局発表を出した政治勢力に対し、反対勢力がそれを突き崩すような動きに出ている、ということになります。

 仮に当局発表が限りなく頼りない最高指導者・胡錦涛サイドから出されたものだとすれば、『中国新聞周刊』による報道はアンチ胡錦涛諸派が足を引っ張ったもの、要するに胡錦涛イジメということになります。差し止められなかったのは、仕切り役である党中央宣伝部がゴーサインを出した、ということになるでしょう。

 で、中国国内で『中国新聞周刊』がいうなればスクープをモノにした、という異例の事態まで話が進んだ訳ですが、今度はこれに続いてまたまた新展開。

 当局がいままで沈黙していた7月5日のウイグル人によるデモ隊と治安部隊の衝突状況において、実は治安部隊が発砲していて死者が出た、ということが新たに地元当局者によって明らかにされたのです。



 ●暴動でウイグル族12人射殺 中国、自治区幹部が認める(共同通信 2009/07/19/00:32)

 【ウルムチ18日共同】ロイター通信によると、中国新疆ウイグル自治区のヌル・ベクリ主席は18日、ウルムチ市内で5日に起きた大規模暴動に参加したウイグル族のうち12人を警官が射殺したことを明らかにした。

 ウルムチでは13日に傷害事件を起こしたウイグル族2人が警官に射殺されているが、暴動参加者の射殺を当局者が認めたのは初めてとみられる。主席は空中に向けた威嚇射撃を無視してウイグル族が住民を襲うなどしたためで「当然の行為」だったと語った。

 12人のうち3人は現場で死亡、残りの9人は病院への搬送途中や搬送後に死亡したという。(後略)



 この報道、厳密にはロイター通信、シンガポールの親中系華字紙『聯合早報』、そしてトルコの通信社による共同取材によって明らかになったものです。

 ●『聯合早報』(2009/07/19)
 http://www.zaobao.com/special/china/cnpol/pages2/cnpol090719.shtml

 取材を受けたのが新疆ウイグル自治区のトップである王楽泉・同自治区党委書記ではなく、ナンバー2のヌル・ベクリ自治区主席というのも何となく気になります。これは邪推の極みというべきものですが、今後何日か様子をみて、王楽泉が公の場に出て来なくなったのであれば、またまた下衆の勘繰りに取りかからなければなりません。

 ともあれ、自治区政府主席が正式な取材の場で語ったことですから、これが現時点でのオフィシャルということになります。……とりあえず、

「7月8日時点で死者は200名以上」

「散発的な銃声が聞こえた」

 という『中国新聞周刊』の報道のうち、後者については「追認」という形で当局が情報を開示したことになります。この「当局」にしても、地元当局が先走りしているのか、あるいは党中央の支持に基づいて地元当局が新ネタを披露したのかも興味をそそられる部分です。

 現在、ウルムチ市は外地からどんどん増派された治安部隊によって実質的に戒厳令状態にあります。「実質的に」というのは正式な戒厳令が布告された訳ではないので、行政は治安部隊ではなく自治区政府によって従来通り行われているという意味です。

 ただし、それは形の上だけのことで、イニシアチブは治安部隊が握っているのかも知れません。……その治安部隊がどの政治勢力の影響下にあるか、ということも重要であるように思います。

 ――――

 いずれにせよ,一昨日の『中国新聞周刊』と昨日の「発砲した」発言で、ウイグル人云々とは別に、中国政治における何事かがにわかに剣呑さを増しているといった印象です。その感触に間違いがなければ、引き続き何らかのサプライズが飛び出してくる可能性があります。





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 さてさて。妙な二ユースが流れてきました。……しかも中国国内メディアから。

 共同通信がいち早く報道しています。



 ●「暴動3日後200遺体以上」 中国誌報道、発表数上回る(共同通信 2009/07/17/19:20)

 【北京17日共同】中国の時事週刊誌「中国新聞週刊」最新号(7月20日号)は、新疆ウイグル自治区ウルムチ市内で5日に起きた大規模暴動で、3日後の8日に葬儀所で200人以上の遺体を見たとする漢族住民の遺族の話を報じた。

 中国当局は6日、死者数を140人と発表。その後、度々修正し、中国メディアは17日、197人になったと伝えた。早い時期から200人以上の遺体が葬儀所にあったとすれば、当局が意図的に死者数を抑えて公表していたことになる。

 200人以上の遺体を見たと語ったのは、暴動で死亡した漢族の男性の母親。8日午後、遺体が安置された葬儀所に行き1体ずつチェックし、計200以上の遺体を見た後、自分の息子の遺体が見つかったとしている。

 これに対し、中国の通信社、中国新聞社は17日、暴動の死者数が同日、197人となり、暴動による直接的な経済損失が6895万元(約9億5千万円)に上ったと報じた。(後略)



 おおお!……という訳で武者震いしつつ調べてみたところ、該当記事にたどりつきました。



 ●死者楊全紅(中国新聞周刊 2009/07/15)
 http://news.sina.com.hk/cgi-bin/nw/show.cgi/768/3/1/1200020/1.html

 極度不安的等待持續了60多個小時,7月8日下午4點,楊全紅的家人接到政府工作人員的電話,通知他們去認領尸體。

 因為不想讓欒興燕受到過于強烈的刺激,楊全紅的母親親自到殯儀館去辨認尸體。母親一個一個地翻看,
看了兩百多號,在一具面目模糊的尸體前停頓了下來。



 ……と、共同電の通り、死者の母親は200人以上の遺体をひとつひとつ確認していった挙げ句、ようやく息子の亡骸を見つけたということになっています。

 そしてやはり共同電の通り、現時点における中国当局が発表した死者数は197名ですから、国内メディアで足並みが揃っていないことになります。

 さらにさらに。同誌の別の記事の中にはもう一点、7月5日の騒乱に言及したもので見逃せない描写がありました。これです。



 ●風暴眼中二道橋(中国新聞周刊 2009/07/15)
 http://news.sina.com.hk/cgi-bin/nw/show.cgi/768/3/1/1200017/1.html

 騷亂發生時,張紅梅把一大群避難的人拉進了自己的店鋪,有維族,也有漢族。卷簾門拉了下來,還是聽得到凌亂的脚歩聲和
零星的槍聲。



 ウイグル人向け紳士服を扱う漢人(漢族=中国人)女性商店主が、騒乱を避けて逃げ込んできた漢人とウイグル人を店に入れて慌ただしくシャッターを下ろして難を逃れた、というものです。ただし、シャッターの向こうからは乱れた足音と「零星的槍聲」が聞こえてきた、と。

 この「零星的槍聲」とは「散発的な銃声」という意味なのです。7月5日に発砲があった、というのは当局発表では全く言及していない、いわば「新事実」。

 しかもこの記事はその手前に執銃警官が付近を巡回しており、強い日差しを浴びて黒光りする銃身が異様な雰囲気を漂わせていた、との記述があります。描写からして、手にしていたのはピストルではなく、長めの銃身を持つ自動小銃か突撃銃の類でしょう。原文は以下の通り。



下午五六點鐘是新疆日照最強烈的時候,秦一岩偶爾探頭望出去,看到有警察在帶槍巡邏,烏黒的槍管折射著明亮的日光。這氣氛有點異樣,不過秦一岩沒想到事態有多嚴重。



 この記事だけを読むと、その後にすぐ「散発的な銃声」ですから、発砲したのが治安部隊という印象を読者に与えることになります。

 これではいよいよ足並みが乱れていることになるではありませんか。

 混乱している?……というより、何やら政争の気配を感じてしまったりするのですが。

 特にこれ、週刊誌ですから、送稿から活字になるまでの間に新聞よりも時間があり、関係部門から「待った」が入る余裕が十分あった筈です。

 ところが、差し止められずに記事になってしまっている。しかも一部の内容が上記の通り、当局発表と大きく食い違っている。

 こうなると、どうも何らかの政治的意図があるように思えてなりません。とりあえず当局発表に異を唱える内容、ということにはなりますから。……むろん、邪推ですけど。

 怪しいなあこれは怪しい。……と思いつつ、取り急ぎ速報まで。


 ――――


 最後に改めて、今回の事件に際しての必読の良書3冊を紹介しておきます。「民族差別」「経済格差」などで片付けている日本のマスコミ報道では知ることのできない、民族浄化ともいうべきウイグル人が受けてきた悲惨な境遇を知ることができます。

 この中で特に核実験問題は今回マスコミが全くふれていないものですが、中共政権はウイグル人の土地(ロプノル付近)で40回以上にも及ぶ核実験を1996年まで行っています。これによるウイグル人の被曝とその後遺症は言及するまでもないことですが、シルクロード観光で現地を訪れた日本人も被曝している可能性があることを指摘しておきます。

 それから、放射性物質が黄砂とともに風に乗って日本へ飛来してきていることも。


中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧 (文春新書)
水谷 尚子
文藝春秋

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中国の狙いは民族絶滅―チベット・ウイグル・モンゴル・台湾、自由への戦い
林 建良,テンジン,ダシドノロブ,イリハムマハムティ
まどか出版

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中国の核実験─シルクロードで発生した地表核爆発災害─〔高田 純の放射線防護学入門〕
高田 純
医療科学社

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 広東省の玩具工場における漢人(漢族=中国人)によるウイグル人殺害事件について、新疆ウイグル自治区ウルムチ市にて真相究明を請願するウイグル人のデモ隊に治安部隊が実弾射撃などを行い騒乱に発展、多数の死傷者を出した事件が発生してから、もうすぐ2週間になります。

 中国は当ブログのいう「六四モード」、つまり圧倒的な軍事力で現地を制圧しておいて当局が思うように事を運ぶ一方、中国全土に対しては「ウイグル人による暴動で漢人に多数の死傷者が出た」との印象操作を執拗に繰り返しています。

 具体的には、現地においては民族衝突の芽を排除する一方、暴動嫌疑などでウイグル人を拘束するなど、ウイグル人を抑圧する形での「治安回復」が行われている模様です。

 これに対し、いわれなき差別を受けるウイグル人には事件で大量に増派されてきた「進駐軍」を前に、口にはできぬ憤懣が蓄積されつつあり、一方ですでに多数派を構成している漢人の側でも、ウイグル人に対する抜き難い憎悪が強まっているようにみえます。

 割れてしまった鏡は、もう修復することができません。現地の事態はもはやそこまで進んでしまっているように私には思えるのですが、如何でしょうか?

 さらにいえば、前回指摘した通り、中共政権はその国是から、強圧的な手法で、腕ずくで少数民族を黙らせる以外にもはや選択肢は残されていません。ただし、強圧的な手法が招くリスクを極力回避すべく、当局は当初より一貫して、

「『ウイグル世界会議』をはじめとする内外の分離独立・テロリスト勢力の煽動によるもの」

 と今回の事件を位置づけ、民族衝突という色彩を極力薄めようとしています。見え透いた三文芝居のようでもありますが、国際世論やイスラム諸国がウイグル人への同情・支援に回らぬ限り、この通らぬ道理も通ってしまうことになるのです。

 しかし、中共政権がより恐れているのは、民族衝突を発端に中国国内で「漢人vs漢人」という状況が現出することかも知れません。

 ――――

 中共政権と「世界ウイグル会議」の間で展開されている情報戦は、いまのところ中共政権側がイニシアチブを握っており、「世界ウイグル会議」は対応が後手後手に回っているように思います。

 典型例として挙げたいのは、御存知アルカイダの一件です。



 ●アル・カーイダ系組織が中国人標的…香港紙(YOMIURIONLINE 2009/07/14/13:26)

 【香港=竹内誠一郎】香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは14日、国際テロ組織アル・カーイダと関係するグループが、中国新疆ウイグル自治区ウルムチの暴動でイスラム教徒が多数死亡したことへの報復として、北西アフリカで中国が展開する開発事業やそこで働く中国人労働者を標的としたテロを画策していると伝えた。

 同紙によると、アルジェリアを拠点とする「イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ」が報復を呼びかけている。英国の民間情報会社「スターリング・アシント」が、同組織からの指示を察知したという。アル・カーイダ系組織が、中国を直接威嚇するのは初めてとみられる。



 「英国の民間情報会社」というものの信憑性もさることながら、『サウスチャイナ・モーニングポスト』(南華早報)も英字紙とはいえ、著名なチャイナウォッチャーであるウィリー・ラム(林和立)氏を解雇するなど、中共政権の「植民地」と化した香港において生き残るべく親中色を強めていることを覚えておくべきかと思います。

 さらにこの「アルカイダ」の一件の直前である13日には、ウルムチ市でウイグル人男性2人が治安部隊によって射殺されています。当局報道によれば、「犯人」たちは「聖戦」を叫んでいたとか何とか。その翌日に「アルカイダ」報道ですから、どうもタイミングが絶妙すぎるきらいがあります。

 しかも当局は「アルカイダ」報道に素早く反応してみせました。



 ●在外企業の安全守る=アルカイダの報復宣言で中国…新疆ウイグル暴動(時事ドットコム 2009/07/14/18:30)

 【北京14日時事】中国外務省の秦剛副報道局長は14日の定例会見で、新疆ウイグル自治区での暴動でイスラム教徒のウイグル族に死者が出たとして、国際テロ組織アルカイダ系の組織がアフリカ北西部で働く中国人を標的に報復を宣言したとの報道について、「関係国と必要な措置を講じ、国外の中国企業などの安全を守る」と述べた。

 秦副報道局長はこの中で、今回の暴動について「反動勢力による暴力事件で、民族、宗教、人権問題ではない」と指摘。中国政府が法に基づき対応したと強調した。



 これで「アフリカ北西部で働く中国人」が一人でも死のうものなら、当局は「アルカイダ」糾弾を「世界ウイグル会議」批判とコンボで連呼し始めることでしょう。世界で最も命の値段が安い国ですから、国家安全部あたりに働かせれば「テロ」芝居はすぐに仕立て上げられます。

 「世界ウイグル会議」は、この「アルカイダ」でも先手を打たれてしまいました。本来なら当初、中共政権から事件の元凶として名指しされた時点で、それを否定するとともに、ウイグル人に死傷者が出たことについて暴力的報復を望まない旨、世界に強いメッセージを出しておくべぎでした。

 「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席は米政府諮問機関の会合に出席した際、今回の事件を「天安門事件のようだ」と指摘したそうです。事実だとすれば、重大な錯誤を犯していることになります。

 ●亡命組織主席が中国非難 「天安門事件のよう」(共同通信 2009/07/16/08:50)

 天安門事件とは、全く異なるのです。

 ――――

 昨年3月のチベットにおける事件に際して、私は以下の記事を書きました。

 ●【チベット】「六四モード」を崩すには?【中間報告】(2008/03/22)

 この中で、もし「六四モード」を崩すことができるとすれば、それは「流出」か「変質」に拠るしかない、と私は指摘しました。

 「流出」とは、そのまんまの意味、つまり「流出動画」ということです。ウイグル人のデモは当初携帯メールなどを通じて動員が行われたようですが、治安部隊の実弾射撃や装甲車の突入といった「動かぬ証拠」が、ビデオであれ携帯動画であれ、とにかくビジュアルとして現在に至るまで全く出てきていません。

 1989年の天安門事件のときは、軍隊が民衆に発砲する映像や画像が内外のプレスによってしっかりと捉えられ、全世界に報道されました。しかし今回の事件では、それがない。これでは国際社会の支持をとりつけるのは困難にならざるを得ません。

 一方の中国側は、お馴染みのウイグル人による破壊行為やブラッディな漢人ばかりを映した動画を発信し、内外のメディアにも配布しました。

 だからといってみんなが中国の言い分を正当とするには難しいほど中国には「前科」がたくさんあります。ただ、ウイグル人が治安部隊に武力鎮圧される「証拠」が出て来ない限り、「世界ウイグル会議」側が攻勢に立つことは容易ではないでしょう。

 惜しいことです。

 ――――

 「流出」と並ぶもうひとつの要素である「変質」とは、事態が「ウイグル人vs漢人」から「漢人vs漢人」へと質的転換を遂げてしまうことです。これを現出せしめるのは「流出」以上に困難なものでしょうが、実は今回、その萌芽がちょっとだけ見られました。当局は大汗をかいたことでしょう。

 ……とは、ウルムチ市の漢人が徒党を組み、武装してウイグル人を襲撃した事件です。この過程で、武装漢人と治安部隊の間に小競り合いが発生しています。これが私のいう「萌芽」です。民族衝突が官民衝突に、しかも「漢人vs漢人」という構図に変質しているではありませんか。

 結局、この小競り合いは小競り合いのままで終息してしまいましたが、もし武装漢人側に官民衝突による死傷者が出るようであれば、

「なぜおれたちを阻むのか?」
「なぜウイグル人を守るのか?」
「なぜおれたちを弾圧するのか」

 ……という形で、漢人の怒りの鉾先は「官」へと転じかねないのです。都市暴動の様式に則るのであれば、武装漢人どもは死体を担いで自治区政府庁舎へと殺到するところでしょう。

 このように鉾先が転じてしまい、これが火種となって新疆ウイグル自治区内に拡散されることになると、あちこちで炎が上がりかねません。先日のエントリーで言及したように、新疆生産建設兵団など同自治区に暮らす漢人の間にも、暴動の噂が流れるほどの鬱屈が蓄積されており、その可燃度は決して低いものではありません。

 こうなると、もうウイグル人は埒外で、漢人世界での官民衝突へと演目が移ります。「変質」という訳です。まあ今回は不発に終わりましたが、広東省の玩具工場で起きたような民族衝突が再発したとき、治安当局の介入の仕方如何では事態が「変質」することになるでしょう。

 ――――

 ともあれウイグル人側にとって、事態を打開する上での焦眉の急は「流出」です。3000名なり1万名が参加したデモであれば、某かの映像が出てきてもおかしくないと思うのですが……。





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 ウイグルをめぐる事態について、香港紙があまり紙幅を割かなくなりました。旬なネタではなくなった、ということでしょうか。ニュースひとつひとつの粒は小さくとも、まだ日本のマスコミ報道の方が飽くことなく事件を追いかけているように思います。

 ウイグル人への武力弾圧や漢人(漢族=中国人)との民族衝突もヤマを越え、落ち武者狩りは続いているものの、事態は「戦後処理」ともいうべき段階に入ったということなのでしょう。新華社電を眺めていても、復興を伝えるニュースが目立って増えてきています。むろん、意図的なものでしょう。事件を「世界ウイグル会議」など内外の反体制勢力による陰謀が原因、とする糾弾報道は相変わらずですが。

 7月10日23時現在で「死者184名」そのうち漢族137名と発表された数字は今後も動かすことがあるのか、どうか。「世界ウイグル会議」はこれに対し、

「現地からの複数の未確認情報によると、死者数は千人とも3千人ともいわれている」

「ウルムチだけでなく、自治区西部カシュガルなどほかの地域でも死者が出ている」

 と反駁していますが、ここから先は情報戦ということになるのでしょう。

 ●「新華網」(2009/07/11/14:23)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-07/11/content_11691499.htm

 ●「MSN産経ニュース」(2009/07/11/08:04)
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/090711/chn0907110806005-n1.htm

 ●「共同通信」(2009/07/11/11:21)
 http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071101000314.html

 ――――

 ともあれ「戦後処理」モードに入ったというのは、要するに外地から治安部隊をどんどん抽出してはウルムチ市をはじめ新疆ウイグル自治区の要所要所へと駐屯させ、実質的な戒厳令状態という腕ずくの強引モードで全てを押さえ込める目処が立った、と党中央が判断したことによるものと思われます。兵力増派はいまなお続いているのかも知れません。

「武装警察、新疆ウイグル自治区に引き続き『落下傘降下』」

 というタイトルの記事が香港紙『明報』に出ました。むろんこれは空挺部隊の話ではなく、落下傘降下が行われたのでもなく、防弾チョッキに身を固めた武装警察が現地へ続々と空輸されている、という意味です。このために空の便には一時的に混乱が発生しているとか。

 ●『明報』(2009/07/11)
 http://hk.news.yahoo.com/article/090711/4/d4tk.html

 いま現在、そしてこれからも当分、こうした圧倒的な軍事力のもと、去年のチベットのような「六四モード」下の「人民戦争」路線を基本にして事後処理に当たっていくのだと思います。

 ……というより、一党独裁を堅持して現在の中華人民共和国の領土を維持・保全するという中共政権の大原則に照らせば、それ以外に選択肢がありません。あるとすれば、現地での締めつけを緩めるか強めるか、被害者などへの補助をより手厚くするかどうか、逮捕者への処罰のレベルを上げるか下げるか、といった程度でしょう。

 一方で、最高指導者に就任してから5年近くにもなるのに、未だに最高実力者としての風格が伴わない胡錦涛の、党中央及び軍部に対する掌握力・指導力の不十分さも選択の幅をいよいよ狭めている、といえるかも知れません。

 政治改革、いや「党内民主の強化」すらかけ声だけで手がつけられず、超格差社会の是正を目的とした「和諧社会の実現」というフレーズに至っては余りに高すぎるハードルということで(たぶん)NGになってしまい、改善されぬ様々な格差のため毎日全国のどこかで陳情・デモ・暴動・ストなどが発生している。……という状況に直面しているのがいまの胡錦涛政権。漢人に対しても打つ手がないのですから、ウイグル人の怒りを和らげるソフトな対応などはできない相談というものです。

 ――――

 実は中共政権、意外に結構ガタが来ているのかな。……と思わせる気配が、今回の事件で垣間見えたような気がしないでもありません。上述したように、党中央の事件へのスタンスは去年のチベットに対したような「六四モード」下の「人民戦争」とみていいでしょうが、細かいところで、しかし見逃せない差異も存在しているのです。

 まずは事件に対し党中央が下した「深刻度」の判断です。いわゆる「定性」というものですが、今回は「人民戦争」のような火を噴かんばかりの激語が並ぶことはなく、「深刻な暴力犯罪事件」で済ませました。その気になれば「動乱」さらに最高レベルの「暴乱」(1989年の天安門事件)という認定になっても不思議ではないのですが、これが意外に低いレベルで落ち着いたというのは注目していいところだと思います。

 ●共同通信(2009/07/13/09:11)
 http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071301000185.html

 「圧倒的な軍事力を背景とした」強硬路線で事後処理、という基本線は同じなのですが、「定性」だけをみると当局発表の「死者184名」にも釣り合わぬソフトさです。要するに気を遣っているのだと思いますが、問題は党中央が誰に遠慮しているのか、ということです。

 対象は、直接的には現地のウイグル人と漢人であり、しかしながら実は少数民族を含む全国民なのではないか、というのが私の考えです。民族衝突も怖いが官民衝突も怖い、だからそうしたことの火種になる要素はなるべく穏便にもみ消しておきたい。……というのが党中央の出した毅然としているようでどこか弱気な結論ではないかと。むろん、この認識が維持されるかどうかは胡錦涛の指導力にかかってくるものです。

 同じ視点から、続々と現地入りしている治安部隊が向き合う相手も、ウイグル人だけでなく、多数派を構成する漢人も含んでいることでしょう。ウルムチ市では実際に、棍棒や鉄パイプ、包丁などで武装した漢人「自警団」と治安部隊の間で小競り合いも発生しています。これは日常的に発生している官民衝突と同じ性質のものです。動機が民族対立としても、小競り合い自体は「民」の意向(ウイグル人への報復=漢人の認識)を汲んでくれない「官」との衝突ですから。

 ――――

 ところで今回の一件において、ニュースとして中国国内に報道されなかったものがいくつかあります。ウイグル人は未許可とはいえ当初は非暴力的な請願デモを行っていたこと、治安部隊がデモ隊に発砲して死傷者を出したこと、警察車両ないしは装甲車がデモ隊に突入して多くの轢死者を出したこと。……などがまず頭に浮かぶところですが、他にもまだあります。

 (1)デモを誘発したのは広東省韶関市の玩具工場で6月26日に起きたウイグル人vs漢人の民族衝突であること。

 (2)ウルムチ市の漢人が勝手に武装して「ウイグル人狩り」を行うなど暴力的行為に及んだこと。

 ……の2点が私の興味を魅くところです。(1)については、民族衝突の原因が漢人によって流されたデマであることはすでに確定しており13名の逮捕者(うちウイグル人3名)を出しています。要するにこの衝突事件については当局が幕引きを急いだ……とはいえこれがウルムチ市のデモの引き金になったということは黙して語らず、なのです。

 いや、実際には因果関係は報じられています。ただこの事件が呼び込んだのがウルムチ市のデモではなく「暴力犯罪事件」ということになっています。そしてもちろん、それはあくまでも「世界ウイグル会議」など内外の敵対勢力による陰謀が奏功したもの、ということにされています。

 ●「新華網」(2009/07/07/10:08)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2009-07/07/content_11666058.htm

 とはいえ広東省のこの事件、とりあえず、単純な民族衝突事件として扱っている訳でないことは確かです。……というのは、この記事の文末には、関係部門(たぶん党中央か国務院)が省・市の警察部門に対しこの事件への捜査をより一層強化するよう求めていることが明記されているからです。

 そしてさらに明記されているのは、捜査を強化することで、

「社会を安定させ、民心を慰撫する」

 という尋常ならぬ一節です。もちろんこれは、この民族衝突事件が「社会と民心の安定」を揺るがしかねないものだと当局(=中央)が認識していることの表れに他なりません。上述したように、幕引きを急いでいる様子でもあります。タイミング的には、ウルムチ市の事件に即応したものといえるでしょう。ビビッているのです。

 ――――

 (2)については全国で似たような異なる民族あるいは村落同士などの衝突に波及することを避けるべく当局は沈黙しているのでしょうが、実際に治安部隊と小競り合いになったウルムチ市の「自警団」への処罰が密かに行われるのかどうかが興味深い点です。黙しているとはいえ、当局は漢人のこの行為に批判的だからです。

 ……ということがなぜわかるかといえば、単独のニュースとしては扱われていないものの、当局が批判的であることが新華社電で中国国内にも配信されているからです。新疆ウイグル自治区のトップ・王楽泉・自治区党委書記が7月7日に行ったテレビ演説でこのことに言及してしまっています。

 王楽泉は「殴打・破壊・略奪・放火」といった行為が沈静化し、現地の社会秩序が安定を取り戻したことに触れたあと、

「こうした状況下にあって、区都(ウルムチ)は本来正常な社会秩序を取り戻す筈だった。しかし今日(7日)に入ってから、一部の職場の漢族従業員や民衆がそれぞれひとまとまりとなり、中には街頭に出て、本来すでに正常である筈の治安や秩序をゴタゴタに乱している。感情的になって、ウイグル族民衆と対立する者まで出ている」

「よく考えてみてほしい。もし漢族民衆がまとまって罪のないウイグル族民衆に手を出したら、これも(暴力犯罪事件と)同じように道理の通らないものであり、広範な各民族の党幹部や民衆の心を傷つけるものではないか?」

 ……と、はっきりと漢人「自警団」を批判し、ウイグル人に手を出したことも明言し、弾劾する一方で諄々と説諭を加えています。

 この記事は現在でも修正・削除されることなく普通に読むことができますから、「自警団」に対する批判もいまなお有効、ということになるのでしょう。では連中を逮捕するのか?逮捕するとすればどう裁くのか?といったあたりは、問題そのものは些末なことながら、党中央における意見対立のタネ、つまり政局になる可能性をはらんでいるといえるかも知れません。

 ●「新華網」(2009/07/07/18:23)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-07/07/content_11668718.htm

 しかしこの「自警団」跋扈の一件、テレビ演説の切れ端ではなく単体のニュースとして扱われていたら、いかに当局から糾弾されているとはいえ、全国各地で似たようなことが起こりかねません。武装した「民」のグループが無数に、わらわらと湧いて出るのです。……それ故に一種の報道規制のようなものが敷かれているのか、でもテレビ演説は後段で説諭しているからOKなのか、そのあたりはちょっとわかりません。

 ――――

 「戦後処理」という点では、治安部隊に対する論功行賞も密かな注目点といえるでしょう。あの天安門事件で旗下の野戦軍を北京に派兵して武力弾圧を断行し自ら血しぶきを浴びた楊尚昆・楊白冰兄弟は事件後、重用されました。似たようなことが今回も行われるのかどうか。

 胡錦涛の指導力が未だに不十分であることから、実質的な最高意思決定機関である党中央政治局常務委員の間で意見対立が起きる可能性がありますし、8月1日の建軍節を前に制服組を手なずけるべく昇進や昇格といった「お中元」が胡錦涛から出される時期でもあります。

 報道からわかるのは、党中央から現地に派遣された高官はいずれも治安系統の人間である周永康(党中央政治局常務委員)と孟建柱(国務委員・公安部長兼同部党委書記・党中央国家反テロリズム協調小組組長)で、いずれも胡錦涛とは比較的疎遠、というより江沢民系に近い人選だったということのみです。

 胡錦涛ペースなら上記二人のうちひとりは職能上仕方ないとしても、もうひとりには「民心の安定のため」ということで温家宝・首相か胡錦涛の腹心である李克強・副首相が現地に向かっていたのではないかと思うのですが……。

 さらにキナ臭い話をするなら、今回の武力鎮圧は今年秋に開かれるであろう党中央委員会全体会議の議事にも影響することでしょう。現地の責任者である王楽泉がどう扱われるかという問題は小事としても、制服組に対する必要以上の抜擢(=発言力の強化)が行われる可能性があります。

 より重要案件として、李克強のライバルで次世代トップを争う出世レースでは一歩先を進んでいる感のある習近平・国家副主席が党中央軍事委員会の副主席あたりに就任することになるかも知れません。

 ……こうした処遇問題も、「戦後処理」の過程で新たに浮上する中国政界の変数となることでしょう。

 四川大地震に対する救済・復興と北京五輪で一応まとまることのできた昨年と比べ、リーマン・ショックを発端とする世界的な景気後退で膨大な失業者が創出され、社会不安がいよいよ高まっている今年は同列に論じられない部分があります。

 党中央はチベット問題に対したのと基本的には同じ姿勢でウイグル問題に臨むとみられるものの、「内憂度」がひときわレベルアップしているだけに、権力闘争を含め波乱含みの展開となる可能性もあるのです。





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 ウイグル弾圧糾弾デモに昨日12日、参加してきました。

 結論から先にいうと、時間的余裕のないなか急ごしらえのデモにしては、なかなか健闘したという印象です。



満堂の胸を打ったイリハム・マハムティさんの名演説。


一連の事件の流れ(クリックで拡大)。

 
宮下公園を埋め尽くした参加者。


桐蔭横浜大学・大学院教授のペマ・ギャルポさん。

 
繁華街を行くデモ隊。


私の場合は「日本人のため>義によって助太刀仕る」。


 懸念されていた天候も晴れ間がのぞく上々な空模様。細長い形をした集合場所の宮下公園へ行くともうぎっしりと人で埋まっていて、おおこりゃ凄いぞ。……とワクワクしたら後ろの方はスカスカでちょっとガッカリ。500名には届かないな……と思っていたのですが、どんどん人が入ってきて人数が膨らんでいきました。

 デモの終盤に、最後尾にいた警官の方に人数を尋ねると、

「600人くらいだね。今回は結構集まった。途中参加の人がずいぶんいたよ」

 とのこと。1000名くらい来るかな?と期待していた私はちょっと肩透かしを喰った格好でしたが、時間がないため告知も不十分でしたし予報では雨も降りかねない天気とされていたので、上々というべきでしょうか。

 デモ隊は繁華街も通るコース取りで、とりあえずウイグル弾圧に怒っている人間がこんなにいるんだ、ということは十分に伝わったと思います。目抜き通りを進むのは、不特定多数へのアピールという点でやっぱりいいですね。以前私が当ブログにてくさした、

「1000名もの人数を擁しながらすでに2度やっているNHKへの突撃を再度繰り返して広範な一般市民へのアピールを全く優先せず、生卵を壁に投げつけてグシャリと無駄にしたような愚昧なデモ」

 とは大違いです。ああ今ここに1000名の人数がいれば、と思わずにはいられませんでした。1000名を4列縦隊にすると、沿道から見ると延々250列にもなります。その隊列が繁華街を縫っていくと、実数以上の大人数にみえるものなのです。その存在自体が大きなアピールとなり、ニュースとしては旬な話題であるウイグル弾圧問題だけに、通行人により強い印象を残せたのではないかと思います。

 ――――

 ただし急造デモの悲しさで、梯団ごとのコーラー(音頭取りの人)に善し悪しがありました。シュプレヒコールの合間合間に、

「御通行中の皆さん……」

 という形で、ウイグル人が中国共産党による民族浄化ともいえる境遇にさらされていること、マスコミがウルムチの事件を十分に伝えていないこと、実はウイグルで40回を超える核実験が1996年までに実施されていて、シルクロードに魅かれて同地を訪れた日本人観光客も被曝した可能性があること、……などを柔らかい語気と簡潔な語り口でアピールしてくれたらなあ、というのが残念な点です。

 実際にそれをやっているコーラーもいたのですが、シュプレヒコール同様の悲憤慷慨調ですし語る内容も不備が多く、沿道にはその内容が伝わっていないようでした。要するに人数ではアピールできたものの、

「え、それマジ?」

「そんなことあったの?全然知らなかった」

 といったインパクトには欠けていたように思います。……私は「piyo」さん、「dongze」さんと一緒に歩いていたのですが、写真撮影をしたりしているうちに二人とははぐれてしまい、結局最後尾でゴール。ただその分、梯団ごとの差異をみることができてよかったです。

 ――――

 あえて難じていうなら、デモの前に開かれた宮下公園における集会が来賓スピーチがだらだらと続いてやたらと長過ぎました。

 最初にマイクを執ったイリハム・マハムティさんの演説は正に魂の叫びともいえるような素晴らしい内容(文末動画参照)。感極まって泣き出す女性参加者もいるほど懸命で一途な思いを聴衆に訴えるもので大変良かったです。

 そこで出陣!となれば意気軒昂で良かったのでしょうが、そこから来賓スピーチが延々と1時間余りにも及び、「dongze」さんも「piyo」さんも私もこれには辟易。だって俺たちデモするために来てるんだぜ?てなところです。

 人間関係のしがらみとかデモにおける型のようなものがあって仕方がないのかも知れませんが、振り返ってみると出陣集会はデモの時間とほぼ等しいかそれ以上!で、デモに来た者としては何やら時間を無駄遣いしているようで士気減衰。

 イリハムさんが心を打つ本当に見事なスピーチをしたので、頼むから残りのリレートークは解散式でやれよ、といった気になりました。小学生のころ、運動会の開会式がやたら長くて毎年イライラさせられましたが、まあそんな感じです。

 ――――

 最後になりますが、現場では色々な方と接することができました。「piyo」さん、「dongze」さん、昨年長野で奮闘した「しんたろう」さんのほか、当ブログの二度にわたる電話インタビューに快く応じてくれたイリハムさんをはじめ、在日チベット人の中では見識・人格とも群を抜く存在であるペマ・ギャルポさん、TSNJ前代表で私にとっては先輩にあたる田中健之さん、その後見役ともいえるいつもダンディーな池尻泰顔さん、それから最近大車輪の活躍でこちらはただただ瞠目するばかりの「八角」さんなど、いつもお世話になっている方々に御挨拶させて頂くことができました。

 ともあれ、準備期間が短いことを考えれば今回は見事なデモだったと思います。今回得た経験値をバネに、アピールの要点をより良く沿道に理解してもらえるようなデモへと一皮むければいいな、と思いました。主催者・関係者の方々、本当にお疲れ様でした。

 実は私には外出禁止令が医者から出ていたのですが、それを破ってのデモ参加。さすがに身体にこたえました。という訳で、このくらいで勘弁させて頂きます。









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 前回紹介した中共政権によるウイグル弾圧に抗議するデモが本日、行われます。

 「渋谷駅前での街頭宣伝」「中国大使館前での抗議」「デモ」の三本立てなのですが、私は体調を考慮してデモ一本に絞ることにしました。

 本当は大使館前で中国語の発声練習でもしようかと思って文言を準備していたのですけど。

「強烈抗議中共軍警血腥鎮壓維吾爾人的和平請願活動!」

「強烈抗議中共獨裁政權在東突大力推進種族清洗政策!」

「中國中國,可憐的中國,一直以來並非是小國,但再花多少年也成不了大國!」

 ――――

 いささか支那……じゃなくて品下る物言いも実は用意してたりなんかして。でも良い子の皆さんはこういう言葉を口にしてはいけません。

「來生不做中國人,來世做豬都不做中國人!」

「中國人[o阿]中國人,男盜女娼遠不如豬!」

 ……ないとは思いますが、万一、変な中国人が近づいてきたら、

「一句話,平反六四!」

 と、一刀のもとに斬って捨てましょう。

 ――――

 集合場所の宮下公園は広いところではありませんが、そこを立錐の余地もないほどの人で埋め尽くす光景がみてみたいです。

「みんなで歴史をつくりましょう」

 などと大袈裟なことは申しますまい。

 それでも、中国国内に残してきた家族を慮って表立って活動できない在日ウイグル人たちにとっての、メモリアル・デイになるよう頑張ろうではありませんか。

 ちなみに時間的にちょっと微妙なのですが、閉店まで間があるようでしたら、私はデモ終了後に「約束の場所」で独り反省会を開くつもりです。

 ――――

 プラカード、カンバッジ、東突Tシャツは準備完了で、懸念材料は空模様のみ。

 私たちの願いが、どうか天まで届きますように。


  










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 新疆ウイグル自治区・ウルムチ市で7月5日、ウイグル人によるデモが行われ、これに治安部隊が流血の武力鎮圧を行ったことから、民族衝突事件へと発展した一件、事態は少なくとも現場においては「戦後処理」の段階に入りつつあります。

 ただし、一方では同市の人口の7割を占める漢人(中国人)が、多数派であること、また治安部隊が「寛容」であることに乗じて、ウイグル人を大勢で襲撃し袋叩きにするといった事件、いわゆる「人間狩り」が散発的に発生している模様です。





 「戦後処理」については書きたいことが色々あるのですが、もう少しネタを寝かせて状況を見極めたいという気持ちがあります。……もちろん、明日12日に控えたデモへの出撃準備と体調の調整を優先させているということも、ありますけど。

 ……てな訳で今回は週末恒例の楊枝削り。今回の事件を読み解く上で、これだけは読んでおきたいという必読の良書が3冊あります。


 
中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧 (文春新書)
水谷 尚子
文藝春秋

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中国の狙いは民族絶滅―チベット・ウイグル・モンゴル・台湾、自由への戦い
林 建良,テンジン,ダシドノロブ,イリハムマハムティ
まどか出版

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中国の核実験─シルクロードで発生した地表核爆発災害─〔高田 純の放射線防護学入門〕
高田 純
医療科学社

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 それから、改めてデモの告知をば。渋谷駅頭での街頭宣伝と中国大使館への凸が新たに加わりました。



―――― 告 知 ――――

★★★7月12日「中国政府によるウイグル人虐殺抗議デモ」★★★


 ●渋谷駅前街宣(13時30分頃から14時30分まで)

 ●中国大使館前抗議(13時頃から。麻布税務署前集合)

 ●デモ

 【集合場所】 宮下公園(東京都渋谷区神宮前6丁目)

 【日時】2009年7月12日(日)

     15:00 集合開始
     15:30 集会
     16:15 デモ行進
     16:45 解散

 【コース予定】宮下公園→電力館→渋谷区役所→神南→渋谷駅前→宮益坂下→宮下公園






 すでに有志によるプラカード用画像の制作・拡散が始まっています。



ネットプリント番号【80811852】


ネットプリント番号【83825441】


ネットプリント番号【22980310】


 詳細は日本ウイグル協会のウェブサイトを御参照下さい。こちらにも秀逸なるプラカードの図案が色々と揃っています。

 ――――

 最後に。

 皆さん、これまでに、マスコミの報道でかように「ウイグル」という単語があふれる事態があったでしょうか?

 まさに千載一遇の好機、なのです。

 このチャンスを逃すことなく、ウイグル人のため、また本質的に同じ危機を抱えている日本人のため、人数で押しまくって問題の周知徹底に努めようではありませんか。

 中国におけるウイグル人の境遇、シルクロードでの核実験、そして中共政権によるウイグル弾圧が、日本人にとって決して対岸の火事ではないことを。





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 流血の武力鎮圧から3回目の夜を迎えています。外遊中の胡錦涛が慌てて帰国する破目になった今回の一件、事態は混迷化の度を深めているかのようです。

 しかし観じ切ってしまえば、カギはタイトルの通り、多数派を形成する漢人(中国人)の暴力を当局が抑えられるか、ということになってきたように思います。

 当ブログの朝駆けインタビューに応じてくれた在日ウイグル人、イリハム・マハムティ氏が代表を務める日本ウイグル協会のウェブサイトには、8日に入ってから異様な情報が並び始めました。



 事件の簡単なまとめ。(7月8日20時30分更新)

 6月26日中国広東省で失業した漢人が流したデマがきっかけで、玩具工場で働くウイグル労働者が襲撃され多くの犠牲者が出た。
 ↓
 7月3日ウイグル人の世界組織、世界ウイグル会議がその事件に抗議するために世界同時抗議を行った。
 ↓
 7月5日中国ウイグル地域ウルムチでもウイグル人による抗議デモが行われた。中国政府は武力で鎮圧。
 ↓
 7月6日カシュガル、グルジャなどウイグル各地の都市で抗議デモが発生。
 ↓
 現在ウイグル地域では、漢人によるウイグル人への襲撃虐殺、漢人とウイグル人の衝突が起きている。



 ……と、民族衝突の事態が事件の起きた新疆ウイグル自治区・ウルムチ市以外へ拡大する一方、



 2009/07/08/11:10

 ●ウルムチの20ヶ所で漢人によるウイグル人襲撃事件が起きたが、中国政府の武装警察は来ていない。

 ●カシュガルの小学校を漢人が襲撃。20人の子供を殺害し、遺体を道路に捨てた。

 ●中国政府は生産建設兵団の中国人に武器を配りはじめた。



 ……など、多年にわたる植民政策で多数派に転じた漢人の跋扈が始まったことを思わせるニュースが出てきています。まるで6月26日の広東省の玩具工場で起きた事件を再現するかのような事態です。

 実はまずこのニュースに接して私は、事態が情報戦、心理戦、神経戦の段階に入ったのかなと思いました。昨年のチベット弾圧が「中共政権vsチベット亡命政府」という図式を印象づけたように、「中共政権vs世界ウイグル会議」といった状況が醸成されつつあるのではないか、ということです。

 ところが、上に並べたような事態が決して大袈裟なものでないことをニュース映像で知りました。


ウイグルでの中国人による人間狩り / Man hunting by Chinese



 もちろん民族衝突ですから、ウイグル人が多数派を形成する地区で立場を逆にした状況が進行していても、おかしくありません。

 ――――

 実をいうと、上海での留学経験を経た私のウイグル人に対するイメージは、当初決して良いものではありませんでした。

 現地ではシシカバブを焼く気の良いお兄さんもいましたが、一般には、いまはなきチェンマネ(FEC=外貨兌換券と人民元の闇兌換)で鮮やかなマジックで外国人を騙すのに手慣れたグループ、小犯罪集団といった印象が強く、帰国後に相識ったウイグル人知識分子に対し、失礼にも、

「正直、私がマトモなウイグル人に会ったのはあなたが初めてです」

 と言って相手を苦笑させたりもしました。もっともその知識分子も「いやそれはわかるよ、わかる」と笑いながら頷いてくれはしましたけど。

 ――――

 もちろん、歳月を重ねたいまは、そういう偏見からはすっかり自由になっています。

 逆に、現在の私はインタビューやデモやシンポジウムを通じて、イリハムさんの生真面目な姿勢に心を打たれることが多く、また中共政権による民族浄化としかいいようのない圧制に対する知識も不十分とはいえ一応あることから、自らが生まれ育った故郷を漢人に侵食されていく、伝統的な生活・文化習慣を維持することさえ許されないウイグル人を応援している立場です。

 だいたい日本における外国人犯罪でいったら、何はなくとも中国人ですし。件数で言えば少なくとも平成元年以来20年連続で在日外国人犯罪の国籍別トップの座を守って他を寄せ付けず、東京都心の生活レベルにおいては、中国人による侵食すら実感させられることがままあるほどです。

 ただし民族衝突ですから彼我の人口差が懸絶している場合、多数派の横暴がまかり通り、上述した通り地域によってはウイグル人がその立場に回る可能性もあるだろう、とは思っています。

 ――――

 しかし現実問題、例えば区都ウルムチ市の状況についていえば、多数派はあくまでも漢人であり、民族衝突となれば漢人がウイグル人を圧倒することが可能です。

 実際に上の動画のような状況が発生しており、外国メディアのカメラにそれが捉えられ、しかも本来止めに入るべき警官の姿が全くないばかりか、漢人の跋扈が黙認されている。……ということは、異常な事態が進行しつつあることを感じずにはおれません(モスクを焼かれたというウイグル人のコメントもありましたね)。

 外国のテレビクルーに現場を押さえられるくらいですから、似たようなこと……具体的には上に並べた日本ウイグル協会が発表した情報が謀略・宣伝の類ではなく、実際にいま現在、現地で頻発しているということを、個人的な見解云々を超えて考えざるを得なくなりました。

 想像を絶するような状況が、いま実際に、ウイグル人の故郷で発生しつつあるのです。


広東省の玩具工場で起きた漢人によるウイグル人への暴行事件



 今回の大事件の発端となったこの玩具工場での襲撃事件において、漢人の警官たちはウイグル人が襲撃されるのを手をつかねて眺めているばかりでした。同じことがいま、ウルムチ市で起きているとすれば、どうでしょう。

 欧米諸国などから当事者は冷静になるように、との呼びかけが相次いでいますが、実際問題、少なくともウルムチにおいては、当局の治安部隊が多数派を形成する漢人の暴虐跋扈を止めることができるか、どうか。……その一点にかかっているといっても過言ではないでしょう。

 要するに「漢人vs漢人」という図式になることを当局が厭わないかどうか、ということです。ウイグル人狩りを行っている漢人グループと警官隊が衝突するリスクを、胡錦涛以下党中央が敢えて冒せるか。もし民間人側に死傷者が出れば、前回詳述したように、事態が民族衝突とは全く別の方向へと動き出す可能性もあるのです。

 それが中共政権を根底から揺さぶる化学変化を発生させかねないことも踏まえた上で、秩序と治安回復のため、党中央が高度な政治判断に踏み切れるか、どうか。……なるほど胡錦涛が慌てて帰国する訳で、現状は昨年のチベット弾圧よりもはるかに深刻なものということができるでしょう。

 ――――

 いま私たちにできることは、そう多くはありません。その効果も多くを望めません。

 しかしながら、漢人による侵食という危機感については程度の差こそあれ認識を同じくすべき日本人として、自分たちにできることがあれば、やっておくべきではないでしょうか。

 それは、先代から受け継いだこのニッポンを、より良い形で次世代へと受け継がせる作業に等しいものだと私自身はは考えています。



―――― 告 知 ――――

★★★7月12日「中国政府によるウイグル人虐殺抗議デモ」★★★


 【集合場所】 宮下公園(東京都渋谷区神宮前6丁目)

 【日時】2009年7月12日(日)

     15:00 集合開始
     15:30 集会
     16:15 デモ行進
     16:45 解散

 【コース予定】宮下公園→電力館→渋谷区役所→神南→渋谷駅前→宮益坂下→宮下公園






 すでに有志によるプラカード用画像の制作・拡散が始まっています。



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 いまウイグル人が置かれている苛烈な状況が、決して対岸の火事でないことを私たちは認識すべきでしょう。





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 ウイグル人による抗議デモに対し治安部隊が武力鎮圧を断行したことで事態が死者156名・負傷者1080名を出す騒乱に発展した新疆ウイグル自治区・ウルムチ市での一件、日本のテレビでもニュースなどで取り上げられていますから、大略を御存知の方が大半かと思います。

 当局が大挙繰り出した治安部隊は、デモ隊に実弾射撃を行っただけでなく、警察車両(武警の装甲車?)をデモの隊列に突っ込ませて片っ端から轢き殺していったといわれています。デモ隊だけでなく近くにいた漢族(中国人)で巻き添えになった人も相当数いることでしょう。

 ただし、事件による死傷者数は死者156名・負傷者1080名という6日19時の時点の数字で止まっていますから、当局は騒乱自体の幕引きを急いでいるのだと思います。

 もっとも、デモに関与したと当局が認定したウイグル人を警官隊や武装警察が根こそぎ連行したままです。その数たるや約1500名というのですから、尋常ではありません。

 事件を受けてウルムチへと大挙屯集した海外の報道陣に対し、当局は鎮圧は一段落したとみたのか、7日に報道陣に対し恐らく強制的に「取材ツアー」のようなものを実施しました。「ツアー」なのは勝手に取材されては困るので当局にとって都合のいい場所だけを見せる、という含みがあります。

 ところが。焼き打ちされた車などが並んでいる場所を「ツアー」が撮影しているところに、噂を聞きつけたウイグル人女性約200名が集まって、連行した親族を返してほしいと涙ながらに陳情。当局もこれを持て余したのか、予定時間を切り上げて「ツアー」一行をバスに押し込み、他の場所へと移動させました。

 ――――

 もっとも、当局の頭をより悩ませたのは、地元の漢族住民がウイグル人に対抗して鉄パイプや棍棒、包丁などを手にして集まり、大通りを練り歩き始めたことかも知れません。

「やられたからやり返す。今度はおれたちが奴らをやっつける番だ」

 という剣呑な空気を漂わせての示威活動。ウイグル人が経営する商店を襲撃したという情報もありますが、ともあれ警官隊はこの連中に催涙弾を放って追い散らした模様です。ウルムチ市には万一に備えて夜間外出禁止令が出されました。

 ちなみに、「今度はおれたちがやる番だ」という空気で漢族が動き始めたということは、武力弾圧による死者の大半はやはりウイグル人、ということを感じさせます。

 ともあれ。もともとウイグル人の土地だった新疆ウイグル自治区の人口は、当局の積極的な植民政策により、いまでは漢族が過半数を占めています。手元に資料がないので確認できませんが、ウルムチ市も区都なだけに漢族人口の方が多いかも知れません。

 この漢族が動き出して治安部隊と本格的な衝突となれば、より大規模な騒乱に発展する可能性があります。日頃から虐げているウイグル人の異議申し立てに対しては叩きに叩いて根こそぎ連行すればOK。でもそういう民族衝突より「漢族vs漢族」の方が怖い、と当局は考えているかも知れません(治安部隊が全員漢族という訳ではありませんが)。

 もし漢族の不満分子が治安部隊と衝突して死者でも出ようものなら、これもこれで大変な騒ぎになりそうです。ウイグル人には虐げられてきた怒りがありますが、漢人にも当局によるウイグル人懐柔策のために我慢してきた部分があるでしょう。一端火がつけば、どういう騒ぎになるかわかったものではありません。

 ――――

 そんなことを考えていたら、今年が55周年であることを思い出しました。新疆生産建設兵団のことです。

 これはいわば植民政策の尖兵。この地域に駐屯していた人民解放軍から一部を抽出して一種の屯田兵に仕立て上げたものです。軍籍はありませんが、いざというときには軍事組織として機能するようになっています。

 その重要性から、指揮系統も国と地元当局の二元管理。「兵力」は現在約250万人です。

 この新疆生産建設兵団が今回の武力鎮圧に関与したかどうかは目下のところ不明ですが(たぶん当局は通常兵力を投入したと思われます)、実はこの組織自体が、

「こんな場所で埋もれ木になるのは御免だ」

「原籍地に帰してほしい」

 という鬱屈を日頃から抱え込んでいることは、ウイグル統治において党中央の懸念材料のひとつになっています。

 実際、その主張を行動に移して暴動が発生した、という伝聞が流れ、党中央からお偉方を派遣して慰撫に努めたこともあります。

 2005年のことですが、当時治安部隊の元締めだった羅幹と、中国における実質的な最高意思決定機関・党中央政治局常務委員のメンバーで当時は政治的にも健康的にもまだ「心電図ピー状態」ではなかった黄菊が相継いで視察に訪れています。よほど不穏な空気が新疆生産建設兵団を支配していたのでしょう。

 軍事組織としてすぐ動ける能力を持たされているだけに、漢族住民による官民衝突がこの新疆生産建設兵団に飛び火すれば、その鬱屈の鉾先がウイグル人に向けられるにせよ「官」に向けられるにせよ、党中央にとってはウイグル人の蹶起以上に恐ろしい事態となることでしょう。

 ――――

 ……で、「漢人vs漢人」という状況が現出してしまうと、前回指摘した「六四モード」下の「人民戦争」、つまり「異民族」ウイグル人(の中の敵対分子)に向け国民の怒りを募らせる、という当局の目論見がもろくも崩れ去ってしまうことにもなります。

 崩れてしまえば、そりゃもう「あらえっさっさー」であります。

 漢族住民の不満もウイグル人に対してだけではなく、例えば文化大革命期に「下放」されたまま戸籍を現地に移され、故郷に帰ることができずストレスを蓄積してきている元知識青年、それに当局の命令で強制的に植民させられた者など、「官」への恨みつらみもあって、なかなかに複雑です。

 新疆ウイグル自治区が中共政権による独裁統治にとっての火薬庫と表現されることがありますが、これは単に民族問題だけでなく、漢族住民が可燃度の高い鬱屈を抱えていることも含んでのことであるという点を、この機会に再認識しておくことは決して無駄ではないと愚考する次第。

 ●新疆はやはり不穏でした(2005/08/04)

 ●東突解放組織が中共に宣戦布告。(2005/10/01)

 ――――

 そういえば、サミットに出席すべくイタリア入りした中国の最高指導者・胡錦涛は、今回の事件を受けて予定を切り上げ、サミット開催を待たず帰国の途に就いたそうです。

 党中央が現状を非常事態と認識している表れといえますが、何を最も懸念しての急遽帰国か、また権力闘争の側面もあるのかなど、色々と邪推できそうですね。

 ●「明報即時新聞」(2009/07/08/07:12)
 http://inews.mingpao.com/htm/inews/20090708/ca30712k.htm

 余談ですが、こういうときはやはり人民解放軍機関紙の『解放軍報』だろうなあ、と記事を漁ってみたら、果たせるかな武力弾圧の翌々日である7月7日付紙面で、新疆ウイグル自治区駐屯の武装警察(新疆生産建設兵団?)が井戸を掘ったり品種改良技術を伝授したりして地元民である少数民族に感謝されている、という記事がありましたとさ。





http://www.chinamil.com.cn/site1/zbxl/2009-07/07/content_1826451.htm


 こういう「わかりやすさ」が官製報道の醍醐味。いやーたまりません(笑)。





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 新疆ウイグル自治区・ウルムチ市におけるウイグル人のデモを当局の治安部隊が武力弾圧した事件の続報です。

 最初にひとこと。今回の事件について、日本のマスコミでは「暴動」という言葉が多用されていますが、これはウイグル人に対して公正さを失した表現だと私は考えています。当初はウイグル人によるデモ行進だったのが、治安部隊による実弾射撃や装甲車両の突入などを経て、結果的に暴動のような状態になった、というのが実情ではないか、と思うのです。

 昨年3月に、チベット自治区・ラサ市で発生した事件と同じです。虐げられてきた民族の怒りが頂点に達して行われたデモ行進。それを当局が武力弾圧することによって途方もなく混乱した、悲惨な状況を現出せしめた。……私はそう思うのです。

 ――――

 今回の事態について興味深いのは、中国当局の事件に関する情報の出し方です。当初は小さな扱いで済ませようとした気配があります。

 私の記憶違いでなければ、新華社による第一報は7月5日夜に出た海外向けの英文記事で、漢族2名ないし3名が死亡した、というもの。しかしながら前回紹介した時事通信電にあるように、



 新華社通信によれば、「ウイグルの母」と呼ばれ、近年ノーベル平和賞候補として名前が挙がっている在米ウイグル人の人権活動家、ラビア・カーディルさん率いる在外ウイグル人組織「世界ウイグル会議」が暴動を主導、インターネットなどで「大きな事をしよう」と呼び掛けていたという。中国当局は「国外からの指揮、扇動を受け、国内の組織が実行した計画的、組織的な暴力犯罪」と位置付けている。

 ●新疆で暴動、死者多数=ウイグル族と警官衝突か…中国(時事ドットコム 2009/07/06/11:36)



 ……と、事件そのものは小さくまとめつつも、その首謀者をいわゆる「分離・独立勢力」とレッテル貼りをしています。こういう形で軽く流せれば万事祝着、ということだったのでしょう。

 が、ウルムチはラサ同様、外国人が多く立ち寄ったり滞在したりする観光都市です。しかもいまや携帯電話でも動画撮影が可能な時代で、情報は中国内外を問わず飛び交うことになります。

 ……ということで、事件を隠蔽することができなくなってしまいました。事件の規模も党中央の想像をはるかに超えるものだったのかも知れません。そこで7月6日未明には、事件を早くも「暴力・破壊・略奪・放火」などによる深刻な「暴力犯罪事件」と認定した記事が国内に向けて配信されています。

 ●「新華網」(2009/07/06/04:23)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2009-07/06/content_11659258.htm

 記事自体は簡潔なものながら、禍々しい画像つきの記事です。しかも、

「截止到23時30分,已有多名無辜群衆和一名武警被殺害」

 という含みを持たせた一節があることは要注目。

「(7月5日)23時30分までに、すでに多くの罪なき民衆(多名無辜群衆)と武装警察官1名が殺害されている」

 という意味ですが、市民の死傷者数を概数でも出さず「多名無辜群衆」としたところに、まだ事件隠蔽への未練が残されていることを感じさせます。要するに、含みを持たせた記事なのです。

 ――――

 しかし、結局は隠し通せなくなり、当局の失態を露わにしなければならなくなりました。そこで今度は逆に思い切った大事件扱いへと一変。被害者数も、

「死者129名・負傷者816名」

「死者140名・負傷者828名」

 と膨らんでいき、いまは6月6日19時の時点で、

「死者156名・負傷者1080名」

 に達しています。「バレちゃあしょうがねえ」という悪代官ぶりですが、中国におけるこの種の事件報道の慣例に照らしていえば、この数字は水増しされたものではなく、逆にまだ実数を相当下回る数字ということができるかと思います。

 一方で注目したいのは逮捕者数です。

「現時点で公安部門は暴力・破壊・略奪・放火の容疑者としてすでに1434名を逮捕。このうち男性は1379名で、女性は55名」

 と同じ記事で報じられています。これまた注目すべき数字といえるでしょう。デモ隊は3000名とも1万名ともいわれ未だ実態が明らかにされていないのですが、仮に3000名とすると、その半数が拘束され、残り半分の何割かは治安部隊の武力鎮圧によって死傷していると考えられるからです。デモ隊が1万人だったとしても拘束率15%というのは、尋常ではありません。

 ●「新華網」(2009/07/07/08:40)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-07/07/content_11664971.htm

 ちなみに、中国当局から首謀者扱いされている「世界ウイグル会議」がこの事件に関して6日午後にいち早く声明を出したことも、中国当局に対するプレッシャーとなったことでしょう。世界ウイグル会議日本代表・日本ウイグル協会会長であるイリハム・マハムティ氏の許可を得て以下に全文を転載しておきます。



 ●世界ウイグル会議「東トルキスタンで発生した虐殺事件に関する声明」


 中国共産党政府がウイグル人に対して行ってきた民族的差別や抑圧、そして同化政策などの結果、ウイグル地区から沿岸部の広東省のおもちゃ工場に強制移送されてきたウイグル人たちは同工場の漢民族従業員たちにより虐殺される事件が発生した。この事件で60名近くのウイグル人が殺され、100名を超えるウイグル人が重傷などを負った。

 そして今日7月5日、広東省で発生した悲惨な虐殺事件、そして長く続いてきたウイグル人に対する民族的虐殺に抗議するため、ウイグル民族がウルムチの中心地4か所に集まり計1万人が参加し、平和的なデモで自らの不満を表した。しかしこのデモは多数の警察、軍や車両の出動で武力的鎮圧を受けた。

 世界ウイグル会議が直接現地から入手した情報によると、この武力鎮圧で死亡した人は100人を超え、多数が負傷した。この中で幼い子供や女性もいた。

 酷いのは、ウルムチの人民広場、南門、ラビヤ・カーディルデパートの前、延安路、陶器工場前などのいずれのデモ場所も一律悲惨な虐殺を受けた。軍の車両下で踏み殺された。軍・警察の銃で殺された。暴力で殺された・・・・・

 我々の把握した情報では、すでに逮捕された人は1500人を超える。全ウイグル地区ですでに軍事態勢が敷かれている。一方、ウイグルのアクス県でも7月5日の夜からデモが始まっていることが分かった。カシュガルで起こっているデモについてはまだはっきりとした情報を入手していない。

 世界ウイグル会議としては、全世界の民主主義国家や国民、人権団体などがこの事件に緊急な対応を取り、ウイグルで中国軍や警察などに虐殺されているウイグル民族を助けるよう促す。国連やNATOなどが関与し、検察団を派遣し、平和秩序を守り、冷静に対応し、今でも虐殺が続いているウイグル民族を一刻も早く鎮圧軍から守るよう呼び掛ける。

 2009年7月6日

 ※翻訳:イリハム・マハムティ



 この声明にある「死者100名以上」について、

「これはウイグル人だけの数字ですか?」

 とイリハムさんに尋ねたところ、

「いえ、漢族も含まれます。混乱した状況で、興奮したウイグル人が、漢族を見て手を出したことも考えられますから」

 と率直に語ってくれたことには敬服しました。もちろん、イリハムさんのお人柄もあるのでしょうけど。

 それにしても、

「すでに逮捕された人は1500人を超える」

 という一節は新華社電と符合していて、空恐ろしいものを感じずにはいられません。



 「警官隊が群衆に向かって突然発砲し、人びとがバタバタと倒れた。道ばたには漢民族もウイグル族も関係なく、血だらけの男女が横たわっていた」。ウイグル族の男性住民(32)が発生当時の様子を振り返る。6日までに日本経済新聞記者が現地に電話取材したところ、衝突の実態や背景が明らかになってきた。5日午後7時半(日本時間同8時半)ごろ、ウルムチ市中心部に住民らが続々と集まり出し、デモ隊は数千人規模にまで膨らんだ。「ウイグルに自由を」などと叫んだ民衆は、制圧に向かった警官らにレンガや石を投げつけ始めた。街中に発砲音が響いたのは、その直後だった。

 ●中国・新疆暴動、ウイグル族に根強い不満(NIKKEI NET 2009/07/07/08:22)


 ――――

 さて、今後は事件の全容解明と中国当局がどう事態を収拾するかということが焦点となりますが、中国当局の出方については想像に難くありません。タイトルにある通り、「六四モード」と「人民戦争」路線で突っ走る、というもの。要するに昨年3月のチベットの事件に際しての対応と同じやり方です。

 「六四モード」というのは1989年の天安門事件直後に採られた措置をお手本にしたもの、という意味です。

 まずは事件区域に「結界」を張って、外国人観光客や報道陣など一切を締め出しにかかります。これが完了すれば現地情報が外部に漏洩しなくなります。その上で現地では実質的な戒厳令状態のもと大掃除が行われ、容疑者検挙と市民への政治教育が徹底的に行われます。検挙に際しては密告も奨励されることでしょう。政治教育はウイグル人を洗脳するというのではなく、政治教育を受けさせることで漢族つまり中国人への従属を再認識させる、というものです。

 「人民戦争」とはチベットでは「ダライ集団」を主敵としたように、今回は内外の「分離・独立勢力」「テロリスト」などを敵と認定して、全国民を挙げてその撲滅に努めようというものです。そのためにウイグル人の乱暴狼藉と漢族被害者の流血映像などといった編集された映像が「事件の真相」というタイトルで何度となくニュースで繰り返し全国に流され、一方で新華社など限られたメディアに取材させての「現地ルポ」たる官製報道が紙媒体・ネット上を飾ることとなります。

 ――――

 厳密にいえば中国国内向けの「結界」ともいえる「人民戦争」をも含めたものが「六四モード」ということになるのですが、武力で有無を言わさずねじ伏せる「現地向け結界」はともかく、「国内向け結界」というのは意外に効果を発揮するものです。なぜかといえば、総人口の9割以上を占める漢族にとって、加害者がウイグル人という「異民族」だからです。

 視聴者は血を流す漢族市民の姿に同族意識と「自らが世界の中心」という中華意識を激しく刺激され、被害者に同情するとともに、加害者への憎悪を燃え上がらせます。ウイグル人は中国全土に散在していますから、映像の効果次第では、それら事件とは無関係なウイグル人に迫害が及ばぬよう、当局が市民を説諭する状況も出てくるかも知れません。

 このあたりの詳細についてはすでに昨年3月のチベット弾圧で詳しくふれているので、そちらを御参照頂ければと思います。

 ●中国観察シリーズ:チベット弾圧2008

 仮に今回の事件に対し欧米諸国が激しく反発するようだと、今度はそちらに憎悪が向けられ病的なナショナリズム・愛国無罪が噴出する可能性もあります。それについては、こちらを。

 ●中国観察シリーズ:攘夷運動2008

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 さてさて。

 最後にジャーンと銅鑼が鳴ってまたまた当ブログの独自取材です。昨日も取材させて頂いた世界ウイグル会議日本代表・日本ウイグル協会会長であるイリハム・マハムティ氏に今日も朝駆けインタビュー。肩書の立場からくる制約のため慎重に言葉を選びながらも、気になる情報をあちこちに散りばめて下さいました。

 イリハムさん、外出前の慌ただしい時間のなか、快く取材に応じて頂きありがとうございます。m(__)m



 ――昨日の朝に比べて色々な状況が明らかになってきています。まずは日本ウイグル協会のホームページに昨夜の時点で声明が出ていますが、現在の状況や被害者の最新情報を。

「最新情報は昨日の時点から今まで内部と全く連絡がとれない状態です」

 ――ウルムチ以外でもデモが発生したという情報がありますが、地域は把握していますか?

「ちょっとまだわかりません」

 ――7月5日にデモを行うという計画が事前にあったのでしょうか?

「そういう情報については全くわかりません。私は組織的にやったものではないと思います」

 ――自然発生的に集まって、ということですね?

「はい」

 ――デモでウイグル人が要求していたことは何でしょう?

「前回お話ししたように、6月26日のことを政府がはっきりさせてほしい、ということだけなんです」

 ――ただ昨日は「ウイグル万歳、自由万歳」とデモ隊が叫んでいたというお話でしたね?

「はい」

 ――この「ウイグル万歳、自由万歳」というのは、どういう意味なんでしょうか?

「ウイグル人はすでに自分の地域で二等市民になっているんです。我々はあなたたちと同じ中華民族だよ、ということをアピールしているんです」

 ――自分たちは中華民族とは違う、ということをアピールしているのではないのですね?

「はい。中華民族とは違う、ということをアピールしているのではなくて、我々も同じ、平等な民族であるということをアピールしているんです」

 ――だから漢族と同じように、平等に扱ってくれ、ということですね?

「そうです」

 ――「自由万歳」というのは、どういう意味でしょうか?

「自由がほしいんです。これはウイグルだけじゃなくて、中国全土の人々みんなが自由がほしいのです」

 ――なるほど。ところで中国側の映像では、デモ隊と思われる群衆が路上を動く様子を映したあと、すぐにウイグル人による破壊行為と漢族被害者の映像に切り替わりました。その間に何が起きていたのでしょうか?

「それは私も現状を十分把握していないので、いまの段階では回答することができないんです」

 ――デモが騒乱に発展したのが先か、治安部隊が手を出したのが先か?

「警察が先に手を出したのは確実だと思います」

 ――治安部隊はデモ隊に対してどういう行動に出たのでしょうか?

「事件の全容については我々もまだ調査しなければならない部分がありまして、色々なことについて、ああなった、こうなった、と私がコメントすることは、ちょっとできないんです。共産党が我々を悪者にしている現時点では、第三者が事件の全容を明らかにしてほしいところです」

 ――昨日のテレビのインタビューでは戦車が突っ込んできたとか、そういうことをイリハムさん自身が仰っていましたが?

「そうです。それは情報提供者の話を私が伝えている、ということです」

 ――戦車が先に突っ込んだのか、発砲が先だったのか?

「それはいまのところは確認できていません。情報提供者とは30時間以上、連絡がとれない状況です」

 ――ただそうしたことが行われたことは事実であろう、と?

「事実であろう、ではなくて、実際にあったんです」

 ――新華社の最新発表では死者156名、負傷者828名となっていますが、これはウイグル人を含めた数字でしょうか?

「もちろん、ウイグル人が大勢含まれていると私たちは判断しています」

 ――実際の死傷者数はこれよりもずっと多いと考えていますか?

「私はそう考えています」

 ――あなたがテレビの取材を受けたときに「ウイグル人の怒りが頂点に達した、その表れがデモだ」とコメントしていましたが、その具体的な例を挙げて下さい。

「職場を奪われ、自由を奪われ、自分の行動が自分の考え方で自由にできない、それが全てです。ウイグル人は現地で、命だけは自分のものとして持っていますけど、他の全ては中国、つまり政府や漢人によって奪われたんです。だから怒りの頂点だと私は思って、そう話しました」

 ――チベット同様、宗教活動に対する制約、というのもあったのでしょうか?

「もちろん、もちろん。いま言ったように、ウイグル人は命だけは自分のものとして持っているんですけど、それ以外の文化、宗教、全部、全部が、奪われているんです」

 ――デモで「自由万歳」という言葉が叫ばれたというのは、そういうことを意味している訳ですね?

「そうです」

 ――中国側は当初、英文の新華社電で死者3名などと報じていましたが、その後大幅に被害者数を増やして、いまはもう死者156名と、大事件という扱いにしています。これは、当局は最初は小さな事件ということにして情報封鎖を試みたけれど、それが不可能なため、思い切って大事件として発表したということなのでしょうか?

「そうですね。当局は最初、我々が何の情報も持っていないと考えて、自信満々で死者3名という嘘のニュースを流しました。ところが残念ながら、当局より我々の方が情報を持っていて、それを当局より早く、世界に発信したんですね」

 ――ところで、今回と同じようなことが去年、チベットで起きています。そのときはチベットのラサ市を当局が封鎖して、外国人が入れないようにしてしまいましたけれども、今回、ウルムチ市に対しても同じようなことが行われる可能性はあると思いますか?

「十分に考えられます」

 ――昨年のチベットと違うのは、(1)ダライ・ラマのような世界的に著名な宗教的・精神的指導者がいないこと(2)チベットと違って海外のウイグル人組織がいくつかに分かれていること(3)イスラム教徒であるということがアルカイーダのようなテロリストを容易に想像させること(4)世界的な不景気で国際社会は中国の果たす役割に期待していること。……こうした点はチベットに比べてウイグルは国際世論を味方につけることが難しいと思うのですが、如何でしょう?

「テロ、テロというのは中国共産党のデタラメで、実際にウイグルで、ウイグル人の組織あるいはウイグル人がテロを行ったというけれども、その証拠はといえば、中国政府は何の証拠も出していない。ただ何人かが捕まって、テロリストが捕まったと言う。それで正式な裁判も行わないで、死刑判決とか無期懲役判決とかを出している。それから、中国共産党がウイグルで何をやっているかということが、いまでは広く知られるようになっています。だからまたテロということにして、それを我々のせいにして、我々をテロリストとして宣伝するやり方は、もう通用しなくなっていると思います」

 ――今日もまた朝早くから不躾な取材に応じて下さり、本当にありがとうございました。



 なお、抗議活動はカシュガルなどウイグルの他の地域にも拡大しているとの情報もあります。

 目が離せない状況が当分は続くことになりそうです。





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 大事件勃発であります。

 中国新疆ウイグル自治区のウルムチ市で昨日7月5日午後、広東省の玩具工場で先月下旬に発生したウイグル人と漢族(中国人)の衝突事件に抗議するウイグル人のデモ隊が治安部隊と衝突、死傷者・逮捕者多数が出ている模様です。

 当ブログの独自取材によると、治安部隊はデモ隊に発砲、警察車両の突入もあり、死者は警察車両にひき殺された人だけで17名に達し、今後状況が明らかになるにつれ、死傷者の数はより増えるものとみられています。

 まずは尋常でない事態であることを示唆する写真の数々をば。


 

 

 

 


 続いては日本メディアの報道をどうぞ。



 ●中国新疆でウイグル族暴動 3千人規模、2人死亡か(共同通信→MSN産経ニュース 2009/07/06/01:20)


 【北京=共同】新華社電によると、中国西部の新疆ウイグル自治区ウルムチで5日午後、住民らが通行人を襲い道路を遮断、車に火を付けるなどの暴動が起きた。香港メディアは同日、ウイグル族関係者の話として、約3千人のウイグル族がデモに参加、多数の警官と衝突し、2人が死亡、300人が拘束されたと報じた。

 中国では6月下旬、広東省韶関市の玩具工場で、同自治区から出稼ぎに来ていたウイグル族の労働者が漢民族に襲われ2人が死亡、漢民族を含む118人が負傷する事件が起きており、反発したウイグル族が暴動を起こしたという。

 今年10月に建国60周年を控え、中国政府が少数民族に対する引き締めを強めていることも不満の背景にあるとみられる。同自治区では、昨年8月、警官襲撃など北京五輪妨害を狙ったテロが相次いだ。



 その香港メディア、地元最大手紙『蘋果日報』(2009/07/06)の報道によると、ウイグル人約1万人が昨日午後5時ごろデモを行い、出動した治安部隊1000名以上と衝突。

 中国国営の新華社通信によると事件で漢族3名が死亡、20数名が負傷したとのこと。

 その新華社電に頼った時事通信の記事では、中国当局による脚色めいた内容がそのまま伝えられており、これだけでは官製報道を鵜呑みにした「反体制組織の謀略」という印象のみが残る内容となってしまっています。



 ●新疆で暴動、3人死亡=ウイグル族と警官衝突か-中国(時事ドットコム 2009/07/06/06:00)


 【北京6日時事】中国国営新華社通信は6日、新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで5日午後に暴動が発生し、漢族の一般市民3人が死亡、20人以上が負傷したと報じた。警察当局が民衆を追い払い、暴徒を逮捕。暴動は鎮圧されたと伝えている。現地では、多数の車両が放火され、建物が破壊されたもようだ。

 新華社通信によれば、「ウイグルの母」と呼ばれ、近年ノーベル平和賞候補として名前が挙がっている在米ウイグル人の人権活動家、ラビア・カーディルさん率いる在外ウイグル人組織「世界ウイグル会議」が暴動を主導したという。

 暴動の原因や規模など詳細は明らかになっていないが、AFP通信は5日、日本にいるウイグル人活動家の話として、約3000人のウイグル族住民が約1000人の警官と衝突したと報じた。



 これに対し前掲『蘋果日報』は、

「警官隊は電気警棒を使い、空に向けて威嚇射撃を行った。少なくともウイグル人2名が死亡し、300名が逮捕されたと聞いている」
「夜11時になっても400人以上のウイグル人がデモを行っており、事態はまだ沈静化していない」

 といったウルムチ市住民の話を紹介。ウルムチ市公安局は電話取材に対し「ノーコメント」の一言で、同局のウェブサイトには、

「ウルムチ市の治安は安定しており秩序も保たれている。市民はデマを信じないように」

 との一節が出現。ただし「デマ」が何を指すかは言及していない、と報じています。また、新疆ウイグル自治区のトップである王楽泉・自治区党委書記が事態を鎮めるべく直接指揮をとっており、同市の企業や商店には3日間の営業停止が命じられたとの情報も。

 同じ香港紙の『明報』によると、デモ参加者は3000名。警官隊約1000名との衝突で少なくとも2名が死亡し負傷者多数、また300名が拘束され、市内の商店には今日(6日)は休業するよう当局から指示が出た、となっています。

 いずれの報道も指摘しているのは、6月下旬に広東省の玩具工場で発生したウイグル人と漢族の従業員同士の衝突事件が今回の抗議活動の直接的な原因となっている、ということ。また建国60周年を控えて、当局による治安の引き締め強化も遠因との観測もあります。

 広東省の工場における民族衝突事件はこちら。



 ●中国の工場でウイグル族と漢族が衝突、2人死亡(YOMIURI ONLINE 2009/06/27/18:48)

 【香港=竹内誠一郎】香港紙の明報は27日、中国広東省韶関市の香港系大手おもちゃ工場で26日に、新疆ウイグル自治区から雇用された少数民族ウイグル族と漢族の従業員同士が衝突し、ウイグル族の2人が死亡、双方の計118人が重軽傷を負ったと報じた。

 明報によると、工場の従業員は約8000人。ウイグル族約600人が採用された5月から、女性従業員への乱暴などの事件が相次ぎ、ウイグル族の仕業と見なした一部の漢族が宿舎を襲った。経営者は明報に対し、「衝突は生活習慣の違いが主な原因」と説明した。



 ……ここまででも大きなニュースということになりますが、問題はいずれの報道も、概ね本日未明時点での情報に拠っているということ。情報も錯綜している模様です。

 そこで当ブログは最新情報に接するべく、世界ウイグル会議日本代表・日本ウイグル協会会長であるイリハム・マハムティ氏に電話取材を試みました(イリハムさん、夜討ち朝駆けで申し訳ありませんでした)。

 すると驚くべきことに、治安部隊はデモ隊に実弾射撃を行ったうえ、警察車両がデモ隊に突入。轢死者だけで少なくとも17名に達しているとのこと。また銃撃による死傷者などについては、今後時間の経過とともに明らかになっていくだろう、ということでした。

 一問一答は以下の通りです。



 ――まずお伺いしたいのは、ウイグル人が抗議行動のようなことをしているところに、中国当局の治安部隊が警官隊や警察車両を出したということですね?

「そうです」

 ――警官隊による発砲もあったということでしょうか?

「そうですね」

 ――これは威嚇射撃ですか?それとも人間に向けて直接……?

「一番最初はもちろん空に向かって。みんなに解散するよう警告したんですけれども、解散しなかったんで、そのあとは人間に対して発砲したんです」

 ――それから警察車両などが、ウイグル人をひき殺したと?

「そうです。17人が死亡しました」

 ――17人!

「それは車の下に下敷きになって死んだ人だけで17人です」

 ――発砲とか、衝突による死者とは別、ということですね?

「はい」

 ――香港の新聞とか日本のニュースでは死者は2名となってますけれども?

「それは昨日夜の10時くらいの話なんです」

 ――だんだん状況が明らかになっているということなんですね?

「そうです」

 ――抗議活動に参加したウイグル人は何人くらい?

「それも現時点でははっきりした数字は出て来ないんですけど、お昼までには出てくると思います」

 ――香港の新聞によると、最初ウイグル人がデモをしていたところに、漢族つまり中国人のグループと衝突して喧嘩になって、そこに警察が出てきたという形なんですけれども?

「そういう話は一切ないです」

 ――そうすると、ウイグル人が抗議活動をしているところに警官隊が出てきた、ということでしょうか?

「そうです」

 ――多くのニュースは6月下旬に広東省の工場で起きたウイグル人と漢族の衝突事件、これが原因だとしていますけど?

「そうです」

 ――直接の原因はその事件ということですね?

「だいたいの情報はその通りです」

 ――ウイグル人が抗議活動で「民族差別反対」とか「民族浄化反対」といった横断幕を掲げていたという報道もありますが?

「そんなことは言っていません」

 ――そうすると抗議活動というのはどんな形で?

「みんなで集まってウイグル万歳とか自由万歳と唱えた、それだけです」

 ――なるほど。あの青い東トルキスタンの旗が掲げられたということは?

「ありません。そういう話はないです。みんなが持っていたのは中国の旗です」

 ――朝早くから取材に応じて頂き、誠にありがとうございました。



 ともあれイリハム氏のコメントにあるように、事件の詳細は続報待ちということになります。

 取り急ぎ速報まで。





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 楊枝削りでございます。今回は珍しくテレビゲームなどを少々。

 ただし、いずれも並の作品ではありません。見事なまでに遊ぶ人を選ぶゲームであります。……ええ、楊枝削りにならないものばかり取り揃えてみました(笑)。


鈍色の攻防 32人の戦車長 廉価版

シャングリ・ラ

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空母戦記

アンバランス

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グローバルフォース 新・戦闘国家

ソニー・コンピュータエンタテインメント

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PANZER FRONT bis.

エンターブレイン

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 業界の隅っこに一応在籍してはいるものの、私にはこれだけで十分なのです。

 「サカつく3」がなければプレステ2すら不要。

 欲をいえば「レイブレイサー」の筐体がほしいですね。あのゲームにはずいぶん投資して、対戦に燃えました。

 香港在住時代、各地のゲーセンを回っては「Yeah! It's a new record!!」を刻み付けていったものです。


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 ともあれ、As title なのであります。わかる人にはわかるでしょう。私は勝ち組。





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