日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 あのー『香港文匯報』さん、親中紙筆頭格のあなたのところが、

「陳良宇は予想以上に重罪かも」

 などと特集を組んだりしていたんで、こっちも「粛清」イベントとして非常に期待していた「党中央紀律委員会第7次全体会議」、1月9日に開幕したと思ったら翌日に閉幕してしまったんですけど。

 あれだけ期待を持たせておいてスカですか?まあ会議の全容が公開されている訳ではないのでしばらく様子を見ることになりそうですけど……。

 その『香港文匯報』の昨日(1月11日)の報道によると、その公開されていない部分で胡錦涛・総書記と会議進行役の呉官正・党中央政治局常務委員が陳良宇事件に言及しているそうです。消息筋によれば胡錦涛と呉官正はそのときいずれも「陳良宇同志」と述べていたそうで、だとすれば「同志」がつく以上、現時点で陳良宇はまだ共産党員であり、処分されるとしても士分待遇の切腹であって斬首ではない、ということになります。

 ●『香港文匯報』(2007/01/11)
 http://www.wwpnews.net/news.phtml?news_id=CH0701110013&cat=002CH

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 こういうときに香港時代の初期にひとりチナヲチ(中国観察の真似事)をやっていたころが懐かしくなります。例えば、

「いや、こういう場合、公に発表されるのは×週間くらい先になるものなんだ」

 というような、この種の会議のしきたりを教えてくれる恵まれた環境にあったからです。香港紙の中国面担当の記者やプロのチャイナウォッチャーからは当たるも八卦の消息筋情報を教えてもらったり、政論誌の編集長に電話で質問してそういう「しきたり」を勉強できたりしました。

 私が図々しかったということもありますが、商売敵ではないのでそこはオープンなのです。親中紙の副編集長と会ったり電話したりして話を聞いたり、編集部の資料室に案内してもらったこともあります(書架に並んでいたのはバックナンバーだけでした)。

 音信不通のまま十年余を過ごしてしまったのと向こうの顔ぶれがほとんど変わっているので(というかいまも中国畑に残っているのは1人だけ)、当時のネットワークを活用できないのが残念です。もちろん、中共の植民地化が進む香港ですから、再活用すると本業の雇用主に迷惑をかけるかも知れない、という理由もあります。

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 さて、陳良宇の処分内容は未だ不明のままですが、その没落を象徴する出来事が上海で起きました。「上海の星」という世界最大規模の観覧車建設プロジェクトが中止になり、その敷地にオフィスビルを建てることになったのです。

 この観覧車は高さ200m、直径170m、合計1080席という完成すれば世界最大となるもので、上海のシンボルにしようと上海市のトップだった当時の陳良宇が主導して進めたプロジェクト。

 実際には「上海のシンボル」というよりは陳良宇治世時代を象徴する意味合いの濃い、中国語でいう「面子工程」(指導者の顔を立てたり業績を示す目的で行われる箱モノ建設プロジェクト)だったようで、その建設中止は皮肉にも逆の意味で象徴的なニュースとなりました。

 ●「新浪網」(2007/01/05/06:43)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-01-05/064310928170s.shtml

 ●「新華網」(2007/01/11/15:39)
 http://news.xinhuanet.com/local/2007-01/11/content_5593766.htm

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 このほか、

 ●一人っ子は全国で1億人近く
(それでも当局の出生率抑制基準をはるかに上回っている)
 ●新生児の性別比は拡大する一方
(2020年には20~45歳の男性人口が女性より3000万人前後上回るとのこと)
 ●国家目標:総人口のピーク値は15億人前後
(もう達成目前だったりして)

 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-01/11/content_5594473.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-01/11/content_5594468.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-01/11/content_5594488.htm

 ……といったニュースなどに興味をひかれましたがキリがないので本題に入ります。

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 誰もお気付きでないかと思いますが、左サイドの「CATEGORY」欄に最近「大学生」という項目を新設しました。私が上海に留学していた時代(1989~1990年)と余りに違う現在の大学生事情に無関心でいられないというのが第一の理由。また大学生にまつわる問題の少なからずが往々にして社会問題の縮図のようなもの、ということもあります。これまで「争議・暴動etc」に入れていた学生の騒動事件も「大学生」に引っ越しました。

 10年以上やっていなかったチナヲチを再開して驚いたのは、大学の数が桁違いに増えていることでした。記憶が不確かなのですが、私の留学時代の中国の大学進学率は数%、多くても10%には届いていなかったと思います。ところがいま記事漁りをしていると聞いたこともない大学が続々。ホワイトカラーに対する需要が高まったため、ということでその理由は説明できるでしょうが、経済面の「中央vs地方」同様、大学設立・拡大に際しても中央のマクロコントロールが機能せず、予定を遥かに上回るペースで増え過ぎてしまったようです。

 学生の数が増えれば質が落ちることは自然な成り行きです。私の留学時代の中国人学生はまさにエリートで、就職は国家による統一分配方式から職業選択の自由が実現するまでの両者が混在した過渡期にありましたが、専攻に応じた職場に回されればほとんど即戦力となるような粒揃いでした。

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 然るに現在は……言うまでもありません。まずオーバーペースの大学増設で新卒者の数に求人数が追い付かず、毎年新卒者の3割~4割が「卒業即失業」と相成ります。しかも学生と企業の双方に以前の「大学生=エリート=即戦力同然」というイメージだけが残っているため、学生側も企業側も期待過剰で高望みするケースが続出。

 結局失業者になりたくない学生が現実に妥協することになりますが、その給料が出稼ぎ農民と同程度だったりしてプライドを傷つけられたりしているようです。

 プライドを持てるほどのレベルかよお前らは、と私は思ったりします。出稼ぎ農民は学こそないものの、畑仕事をしていますから、左官や大工にすぐなれなくても、肉体労働者としての即戦力になれる分だけ雇用者にとっては新卒者より頼りになるのです。

 もちろん「エリート」と呼ばれるにふさわしい優秀な大学生もいるでしょうけど、たぶんその比率は私が留学していた当時の大学進学率と大差ないのではないでしょうか。

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 「大学生=エリート」という意識は親にもあるでしょう。しかも一人っ子政策ですから進学できる条件を子供が持っているなら何としても大学に通わせてやりたい、と考えるのが親心です。

 ところが現在の大学は「ホワイトカラー工場」であって「エリート養成機関」ではありませんから、国家も「教育の産業化」という方針を打ち出し、学費や寮費、教材費などを全て学生側が自己負担する制度に変わっています。

 「産業化」とは要するに大学を企業化するということです。大学側にとっては、以前のように国が丸抱えしてくれない独立採算制になるものの、うまくやればガンガン稼ぐことができるようになります。それで大学がサイドビジネスを始めたりするのはともかく、大学生から様々な名目をつけて費用をむしり取る「亂收費」が問題化するようになりました。

 この「亂收費」に堪忍袋の緒が切れた学生たちが大学構内を破壊して回る学生暴動が発生してもいます。私の留学時代の中国人学生は民主・自由・人権といった普遍的な価値を求め、形而上の理想を求めてデモに立ち上がりましたが、当世の学生は「亂收費」で生活が逼迫した挙げ句の決起です。理想よりパンを求めているという点において、状況は深刻化しているというべきなのかも知れません。

 一方、学費自己負担となれば貧乏な家庭の子供が大学に進学できない、といった悲劇が生まれます。たとえ進学できても仕送りが少ないため旧正月休みに帰省する旅費もなく、女子大生が水商売のアルバイトをしたり残飯を漁る学生まで出現する一方、裕福な家の子が貧乏組の10倍もある潤沢な仕送りで消費生活を謳歌する、といった状況が出てきています。……まあこういった事例については過去に色々書いているので「CATEGORY」欄の「大学生」を御参照下さい。

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 今回はその当世大学生活を数字で捉えてみよう、というものです。南京財経大学の公共管理学科が昨年11月末から新入生183名(2006年9月入学者)を対象に、支出に対する書面及び聞き取り調査を実施し、その結果をまとめたものが『中国青年報』に紹介され、それを「新華網」(国営通信社の電子版)が転載しています。

 ●「新華網」(2007/01/10/08:10)
 http://news.xinhuanet.com/edu/2007-01/10/content_5586166.htm

 それによると、1人当たり平均の年間支出額は、

「学費4700元、教材費・寮費2500元、生活費4000元、通信費(電話など)500元、交通費500元、その他諸経費500元」

 ……で合計
1万2700元ということになりました。日本円だと約19万6000円ですから大した額に感じられないかも知れませんが、中国庶民の生活水準に照らせばシャレになりません。

 米ドル換算で約1630ドル、これは2005年の中国の1人当たり平均GDP(1702.8ドル)に近い数字です。もう少し適切な比較を行いますと、

 ●都市部1人当たり可処分所得(2005年)=1万493元
 ●農村部1人当たり純収入(2005年)=3255元

 ……ですから、
「大学生1人当たり平均年間支出額=1万2700元」というのは都市部住民1人当たり可処分所得を上回り(1.2倍)、農村部1人当たり純収入に比すれば実に3.9倍もの金額となります。農民の家庭が子供を大学に進学させるのが如何に難事かがよくわかります。中国社会の貧富の格差がキャンパスにまで持ち込まれるのもさもありなん、といったところでしょう。

 実はこの種の調査は以前、北京・天津でも行われていて当ブログでも昨年初めに紹介しましたが、当時(大学生1人当たり平均年間支出額=1万287.5元)に比べると、現在の状況はより深刻になっているようです。

 ●当世大学生事情――現実社会に一線画して物欲まみれ?(2006/01/26)

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 教育の機会は均等に与えられるべきです。……というのは義務教育の話であって大学はその範囲外になります。ただ都市部と農村部の収入格差がかくも広がり、大学生にかかる費用もこれほど高額になると、期せずして農村出身の秀才が排除され、いきおい地域間格差をいよいよ広げることになります。

 そして前述したような就職難。「卒業即失業」を避けるためには理想を大きく引き下げて現実に妥協するか、国家が奨励しているように都落ちして農村部の公務員になるか。……余裕のある家庭なら大学院への進学や海外留学、そしてニートという選択もできるでしょうし、実際新卒者で研究生試験に臨む者の多くは「就職のためにもっといい学歴を得たい」ということが理由になっているようです。

 ●「新華網」(2006/01/10/10:52)
 http://news.xinhuanet.com/edu/2007-01/10/content_5587642.htm

 ただ日本でも似たようなものですが、「就職のため研究生に」というのは泥沼にはまるようなものではないでしょうか。理系は専攻によりけりかも知れませんが、文系であれば20代後半~30代前半の浮き世離れした青二才、頭でっかちで即戦力になり難い手合いを企業が喜々として迎え入れるとは考えにくいです。

 中国青少年研究中心の発表したレポートによると、現在中国の都市部では総計1400万人の失業者(及び就職・再就職待ち)がおり、そのうち30%前後は35歳以下の若い世代とのことです。農村部の余剰労働力の規模はこれを遥かに上回るそうです。

 ●「新華網」(2007/01/10/19:29)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-01/10/content_5589439.htm

 要するに、一粒種だからと散々苦労して子供を大学にやっても、卒業後も引き続きスネをかじられる親が中国にもたくさんいるということです。

 ちょっと物騒にいえば、そうした連中は街のチンピラ同様、暴動予備軍でもあります。都市暴動が起きて武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)が出動しこれを鎮圧、騒いだ連中を片っ端から逮捕して調べてみたら、意外にみんな高学歴者だった、なんてことがあるかも知れません。

 高学歴のプータローにしてはちょっと世間ずれした軍師が登場して、予備軍を組織化して蹶起、なんてことになったら面白いのですが。……臥龍さん、そろそろお時間じゃありませんか?(笑)




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 久しぶりに暴動ネタいきます。参加者約5000名という近来稀にみる規模、しかも舞台は河南省・鄭州大学を舞台にした血沸き肉躍る学生大騒乱です。

 現場をより正確にいうと鄭州大学所属の升達経貿管理学院。発端はよくある話なのですが、同学院の学生も鄭州大学の卒業証書をもらえるという話だったのに、それが不可能になった、というより不可能であることを学校側がひた隠していたのが発覚し、学生側がブチ切れた模様です。

 統廃合などの際に似たようなトラブルに至ることがしばしばあるのですが、同学院のような大学に付属するような学校は正規の大学(一類)とみなされず、ワンランクダウンの「二類」とされて本科卒業生とは扱わない、という通達が国家教育部つまり中央から2003年に出ていたのに、同学院はこれを隠し続け、新入生募集に際しても、

「鄭州大学卒業生(一類=正規の本科卒業生)として扱われる」

 と学生募集資料に書いていました。ところがここに来て同学院卒業生は鄭州大学卒業生ではなく、「二類」の「なんちゃって学士」扱いの卒業証書になることが発覚。「騙された」と学生が激怒するのは無理もないでしょう。

 本科大学生のつもりで学んできたのに、という思いもありますし、大学生1年間の総支出額は農民の平均年収の3倍にも達するといわれます。「苦労して仕送りしてくれている親に申し訳ない」という気持ちにもなるでしょう。

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 香港紙『明報』と『太陽報』、そして反体制系タレ込みサイトとして名高い「博訊網」の報道によると、事件発生の引き金となったのは6月15日、学校側が卒業証書に関する隠匿があったのを発表し、升達経貿管理学院の卒業生は「二類」扱いになる、と明らかにしたこと。

 http://hk.news.yahoo.com/060618/12/1ovv9.html
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20060619/20060619022635_0000.html
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/06/200606160214.shtml

 騒ぎ(というか暴動)はその夜に起きました。6月15日午後11時ごろ、学生宿舎(中国の大学は基本的には全寮制)の学生たちが申し合わせたかのように一斉に騒ぎ始めたのです。恐らくどこか1棟の学生が騒いだのが全体に波及したのだと思いますが、宿舎の窓ガラスが次々に割られ、ビール瓶やポットが地上に投げ落とされてパリーンパリーンと断続的な音を響かせます。

 その絶え間ない破砕音にいよいよ怒りをかき立てられた学生たちは消火器やテレビから洗濯機まで投げ落とし、中には興奮して自分のデスクトップPCを窓から放り投げる者も出現。逆に絶望した女子大生が飛び下り自殺をしようとして慌てて周囲から止められる一幕もあったそうです。そうした中でさらに消火栓が破壊されて噴き上がる水柱。正に阿鼻叫喚の図ですね。

 ほどなく誰が用意していたのか旧正月に鳴らす爆竹があちらこちらでババババーンと弾け、火薬臭と爆煙が辺り一面に漂うなか、ついに学生たちは宿舎から飛び出し、一群の暴徒と化してキャンパス内の施設を次々に襲撃。駐車してあった乗用車はボコボコにされたうえリアウィンドウを割られるなどして大破し、自転車もひん曲げられ、売店なども破壊される有様。「飛び散るあーせと、煙の中に、あのころのー俺がーいたー」(古過ぎ)とか歌っていたらぶん殴られそうです。

 日付が変わった16日午前1時には学生たちが事務棟前に屯集する形となり、「鄭州大学の卒業証書を返せ!」と叫びつつ、校門が破壊され、学校創設者の像は燃やされ、事務棟と図書館もボロボロにされたようです。キャンパス内の窓ガラスというガラスはもう1枚残らず割られたとのこと。夜の校舎窓ガラース壊して回った……というオザーキの歌を地で行く展開です。しかも暴徒は5000名。

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 このあたりから情報が錯綜して状況が把握しにくくなるのですが、その後、学生たち数千名がいくつかの隊列に分かれてとうとうキャンパスを飛び出し、街をデモ行進した模様です。……といっても暴徒化していますから秩序も何もあったものではなく、行く先々で破壊行為が繰り返されました。学生の群れ同士が合流したりして騒ぎは大きくなる一方。

 その状況下で公衆電話や街灯はもちろん、銀行やスーパーマーケット、レストランまでが手ひどく破壊され、スーパーと電器店では略奪行為もあったようです。通報を受けて駆け付けた警官隊には多勢を恃んでお約束の投石攻撃でこれを撃退。学生たちの間からは湧くような歓声が上がったことでしょう。

 このあと今度は手強い武警(武装警察=準軍事組織)が出動してきたこと、それに学生らも騒ぎ疲れたのでしょう、午前3時ごろ、大声で叫びつつ三々五々に大学構内へと戻っていきました。

 とりあえず生々しい現場写真をどうぞ。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/06/200606182307.shtml

 騒ぎはこれで収まったかと思いきや、17日から学生たちが事務棟前で座り込み、18日時点でも炎天下のなか座り込みが続けられているとのこと。続報に期待、というところでしょう。

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 この学生暴動で考えさせられた点がとりあえず2つあります。

 まずは学校側が学生募集や入学手続きに際して「二類」の卒業資格しかもらえないことを隠し、鄭州大学卒業生(一類)として扱われることを明記していたこと。要するに学生をペテンにかけた訳ですが、詐欺に及ばねばならない事情があるとすれば、それは一人っ子政策に伴う少子化でしょう。

 この十年ばかりの間に乱立した大学の間で学生争奪戦が激化しているということです。しかも「教育の産業化」という美名のもと国からの補助を大きく削られて独立採算制を強いられた学校側は、学生が定数通り集まらなければ経営の危機。それで事実を隠していたのですが、教育部の通達後に入学した学生が卒業シーズンを迎えたため、隠し通せなくなったということでしょう。

 もちろんこの問題は卒業生だけではなく1~3年生にも関わってきますから、全校生徒がブチ切れ、とうとう参加者約5000人という空前の学生暴動に発展した訳です。

 もう一点は、事件が深夜に発生したため地元当局は幸運だったということです。社会状況の悪化を常々指摘している当ブログですが、失業問題や貧富の格差拡大などに加え、なるほど都市暴動にはそういう火種もあるのかと目からウロコが落ちた次第。

 仮に今回、学生たちが勢いに乗じて街に繰り出したのが白昼だったとすれば、すでに暴徒化している学生たちに同調したり便乗したりする市民がわんさか湧いてきたことでしょう。そしてより大規模な破壊行為や略奪、ひいては焼き打ちなどが行われることになった筈です。そして大規模な官民衝突。

 もし暴徒の中に機をみるに敏な軍師がいるとすれば、暴れつつ「反日」の御旗を急ぎ掲げて暴徒たちにも唱和させ、暴動の性質をすり替えようと試みたかも知れません。昨春の反日騒動におけるプチ暴動は政治的に断罪されていませんから、暴徒たちにもお咎めはなし。私が軍師の立場にいれば必ずそうすると思います(笑)。

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 それにしても改めて思うことですが、都市暴動にはこういう火種もあったのか、と勉強させられた事件でした。上述したように「二類」卒業証書にまつわるトラブルはあちこちで起きていますから、また似たようなケースが現出するかも知れません。そのときは是非デーゲームでよろしく、とお願いしておきましょう(笑)。


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 当時の手ざわり、これを土台にしてつい眺めてしまうから驚倒する訳で。……いや、中国の大学生の話です。

 『中国青年報』といえば時節柄、週末の折り込み版?である「氷点」が当局よって廃刊になった、というニュースがまず思い浮かぶのですが、その前に大学生活に関する数字がまとめて出てきたのでそちらを先に御紹介します。

 ……ええ、これも『中国青年報』発の報道で、「中国通信社」(華僑向け通信社)を経て「新華網」(国営通信社の電子版)に転載された記事を私は拾いました。

 ●北京・天津地区の大学生、1年間の消費額は農民年収の3.5倍に
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-01/23/content_4087604.htm

 この記事によると、天津市の最高学府ともいえる南開大学の「学生課題組」(ゼミみたいなもの?)が北京・天津地区の主要大学を対象に「大学生消費状況」と銘打ったアンケートを実施したそうです。

 北京大学、北京理工大学、北京外国語大学、中国人民大学、南開大学、天津大学、天津師範大学、河北工業大学の8校の学生にアンケート調査を行ったところ、約9500名の有効回答があった、というから大したものです。

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 で、その結果判明したのは、

 ●北京地区の大学生1人当たりの平均月間消費額は615.7元
 ●天津地区の大学生1人当たりの平均月間消費額は440.0元

 という数字です。改めて念を入れておきますが「月間消費額」、生活上、1カ月にこれだけのカネが必要になっているということです。アルバイトの機会に恵まれる学生もいるでしょうが、一般的には親からの仕送り額に等しいとみていいかと思います。……これがどのくらいのレベルに相当するかを都市住民及び農民の収入に照らしてみますと、

 ●都市部1世帯当たり月間平均収入の33.7%(北京)、24.1%(天津)
 ●農村部1世帯当たり月間平均収入の56.6%(北京)、40.4%(天津)

 ……とまあ、なかなか大層な数字です。都市部住民にとっての負担も軽くないですけど、農村部住民であれば収入の約半分が仕送りに消えていくということになります。

 ところがこれはあくまでも「月間消費額」で、学費や寮費は含まれていません。それを含めて北京・天津両地区における大学生の年間平均支出額を出してみると、実に
10287.5元に達します。それを2004年の統計でみてみると、

 ●都市部住民1人当たり平均年間可処分所得(9422元)の1.1倍
 ●農村部住民1世帯当たり平均年間純収入(2936元)の3.5倍

 となって、記事タイトルの「3.5倍」がここで出てくる訳です。大学生を1年間養うのに農家の年収の3.5倍が必要、というのは以前から指摘されているとはいえ、やはり異常だとしか言いようがありません。

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 消費性向についてみてみると、この調査結果によれば「大多数の学生が基本的な生活費に消えていく」としており、他愛がありません。数字でいうと、

 ●食費+生活必需出費=513元(北京・天津両地区の1人当たり平均額)

 ということで、特に農村部の学生はこの分の支出だけでほとんど残らないようです。

 ただ当然のことながら、親がお金持ちグループが存在し、キャンパスを闊歩しています。質朴な生活を送る貧乏学生を尻目に潤沢な仕送りで消費三昧。ノートパソコン、MP3プレーヤー、デジタルカメラなどは最低限の装備に過ぎません。それから携帯電話。金持ち同士の競争意識のようなものもあって、新機種を追い求めて3年間に携帯電話を6台も買い替えた学生がいるほどです。

 恋人ができるといよいよ支出額は増えます。全体の1.5%がそのために毎月500元以上使っているとのことで、これは金持ちグループなのでしょうが、程度の差こそあれ金持ち学生でなくても出費は増えるでしょう。

 食事を含めたデートでの出費、携帯使用料のほか、誕生日やクリスマス、バレンタインデーのようなイベント支出(プレゼントなど)、それに服をペアルックで揃えるなど馬鹿になりません。大抵は男が払うものなので、この「恋愛費」によって「財政赤字」に陥る者も少なくないとのこと。男子学生の恨み節が聞こえてきそうです。

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 この調査はなかなか行き届いており、具体的に家電製品の保有率まで弾き出しています。それによると、

 ●ウォークマン(40.5%)
 ●テレビ(12.9%)
 ●PC(48.9%)
 ●デジカメ(28.7%)
 ●携帯電話(74.7%)
 ●CDプレーヤー(21.4%)
 ●MP3プレーヤー(45.5%)

 とまあ、みんなそれなりに持っているんだなあという感じです。MP3が約半数というのは意外でしたが、国産の廉価品でも売っているのでしょうか。最後に「資産運用」については、

 ●貯金する習慣がない(29.6%)
 ●やっても続かない(36.3%)
 ●考えたことはあるが実行していない(13.7%)
 ●定期的に貯金している(20.4%)

 ……とのことでした。

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 で、私は最近中国に行っていませんし、行っても香港経由で広州や深センあたりを徘徊するぐらいで、大学をのぞいたりもしません。それ故に伝わってくる報道で大学・大学生の変貌ぶりを知り、びっくりしてしまうのです。ええ、野暮な言い方をすりゃあ浦島ってやつです。当ブログのエントリーでいうなら、

 ●キャンパスにも蔓延する「格差」(2005/02/21)
 ●ニート出現。(2005/02/22)
 ●卒業即失業、それが嫌ならド田舎へ行くかニートになるか。(2005/07/12)
 ●21世紀型学生運動。(2005/07/02)
 ●21世紀型学生運動がデモに発展!?(2005/07/19)

 といったニュースに対して、当時の手ざわり、これを土台にしてつい眺めてしまうから私はいちいち驚倒してしまう訳です(笑)。

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 私のいう「当時」とは1989-1990年ですから随分昔のことです。留学したつもりが前半戦は民主化運動が勃発して連日嬉々としてデモ隊に加わって練り歩き、後半戦は政治・経済の引き締めと思想的な締め付け、それに民主化運動の落ち武者狩りなどを全身に浴びて過ごした日々でした。隔世の観もむべなるかな、でしょう。

 当時の中国人学生は学費・寮費が無料で、大学進学率も1割あるかどうか、という限られた俊秀のみに門戸が開かれていた時代です。クリスマスやバレンタインデーなんてイベントもありませんでしたから、学生たちは質朴そのもの。学生寮はひと部屋8人、「北方人vs南方人」や「上海人vs非上海人」また「都市住民vs農村出身」などで反目して喧嘩することはあっても、金持ちかどうかで付き合いが分かれることはまずありませんでした。

 当時は留学生食堂が別に設けてあって、私たちは普段そこで食事をしていたのですが、中国人学生は体育館ほどの広さがあって、細長いテーブルだけが無愛想に整然と並んだ学生食堂、ここに「犬皿」と私たちが呼んでいた器ひとつを持って行き、ご飯をよそってもらった上におかずを載せてもらって食べていました。

 この学生食堂、夜中も側面の大扉を開けたままの吹きっさらしなので冬はかなり寒かったと記憶していますが、夜間は消灯時間までこの場所が中国人学生によってびっしりと埋まり、雑談することもなく、予習・復習に黙々と打ち込んでいました。選ばれた連中だけに真面目だしハングリーさもある、さすがだ、とこちらは感心することしきりでした。

 冬になるとその学生食堂の一角に山のように石炭が積み上げられ、その隣にこれまた山のように白菜が積み上げられます。いや、実際中国人学生のいない時間帯にそこで缶蹴りをやれたほど立派に盛り上がっていました(笑)。消灯時間後の人気が途絶えた真夜中に、寮を抜け出してきた仲のいい中国人学生たちと寒い寒いと言いながらそこで色々な話をしたのはいい思い出です。

 ――――

 惜しいことです。

 全寮制という建前ゆえに情報の共有や意思統一、そして組織化が素早く行われるうえ、学生は全国各地から集まってきていますから同じ地区の他大学とはもちろん、他都市の大学との連携も可能。名門大学だと学生の中に高級幹部の息子などがいて意外な機密情報が容易く手に入ったりもします。

 そのうえ気鋭の若手教授などが知識人らしく理論的指導者になったりしますから、草の根からの政治運動を興す上で大学ほど都合のいい環境はないのです。実際、五四運動以来、その種のムーブメントの多くは大学生を主役に行われてきました。

 翻って現在の大学生。程度の差はあれこうも物質に恵まれ、物欲も持ってしまっていてはもはや骨抜き同然、農村暴動など社会問題に対して敏感に反応することはできないでしょう。仮に一部の学生が問題意識を持っていても、それが共有され、その問題意識で意思統一が形成されることはないのだろうと思います。

 私が経験した1989年の民主化運動のあと、「結局、市民を動かすことができなかった」という反省が学生たちの間で行われました。然るに現在、都市でも農民でも庶民が立ち上がっているというのに、皮肉にも大学生は別世界で知らんぷり。……その線を狙って「教育の産業化」(学費や寮費の有料化)が行われた訳ではないでしょうけど。

 まあ愚痴はよすとして、です。今回の調査結果で改めて明確になったのは、人口比なら全体の6割7割を占める「多数派」の農村から大学生を出せなくなってきている、ということです。

 卒業後に即戦力となるかどうかはともかく、進学率も高くなった現在の中国の大学生は、事実上ホワイトカラー予備軍=オフィスの兵隊候補といった役回りを振られている訳ですが、それが都市住民に限定されつつあるのです。現在の制度下では、自然にそういう成り行きをたどることになるでしょう。奨学金制度の充実などといった小手先の施策では到底変えることのできない流れです。「調和社会」でしたっけ。何とも空疎な響きを伴う言葉ではありませんか。



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 最近の中共を眺めていておや?と思った動きがありました。大したことではないかも知れませんが、そこはまあ日曜日ということで御勘弁を。

 主人公は張保慶・教育副部長(1998年4月より現職)です。日本でいえば文部科学省次官、といったところでしょうか。もう免職扱いになってしまったので前副部長というのが正確です。先月末にその旨が中国国内メディアに流されました。

 ●「新華網」(2005/10/28)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-10/28/content_3695522.htm

 張保慶を教育部副部長より免ずる、
と公報ですから簡潔に書かれています。

 張保慶は定年である60歳を超えたので免職自体は筋が通っています。ただ、ある意味とても有名で評判のいい官僚だったために余波を呼ぶことになるのです。

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 江沢民時代に「教育の産業化」という名目のもとに大がかりな大学改革が行われました。私のチナヲチ空白期に起きた出来事だったので詳しくは知りません。ただ教育改革ではなく大学改革であり、称して「教育の産業化」です。

 要するにこれからは大学も自力更正しろ、ということでしょう。独立採算制に移行したのかどうかはわかりませんが、基本的には国はもう余り面倒をみないから自活しろ、ということだと思います。

 私が留学していたころの中国人学生は、基本的に学費がタダでした。宿舎や食事といった賄いも多くが無料か、とびきり安値で済んでいたと思います。以前の国有企業と同じで、赤字は中央ないし地方当局が面倒をみるという形だった筈です。

 だから大学は留学生を呼び込んで外貨を巻き上げることに必死でした。大学の外資導入ですね(笑)。私も「外資」のひとりだった訳です。

 ところが、江沢民時代になって「教育の産業化」が打ち出されました。中国人学生の学費も無料でなくなり、賄いや教材費、維持費などで大学が学生からカネをむしりとることができるようになります。経営能力の劣る大学は淘汰される、という競争原理が持ち込まれた訳です。

 それでも度が過ぎなければよかったのですが、淘汰されると聞かされれば目の色が変わります。しかも銭ゲバ中国人。あれこれ名目をつけて学生から料金を徴収する風潮が一般的になりました。いわゆる「乱収費」の問題です。余りに度が過ぎるので学生が暴徒と化した事件が起き、それがデモに発展したという情報も流れました。

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 それ以上に問題となったのは、低所得層、特に農民や都市の失業者の家庭からは大学生が出にくくなってしまったことです。もちろん、学費をはじめ諸費用を負担できないからです。詳細は既報しておりますので御参照頂ければと思いますが、何でも
大学生1人を1年間通わされるのにかかる費用が農民の平金収入の3年分だそうです。

 でも親兄弟は一族を代表する秀才が出たのですから、何とか大学に通わせてやりたいと思う。ですから事件も起こります。

 これも以前ふれましたが、大学生になった妹にノートパソコンを持たせたいと盗みに走った兄、企業経営者を営利誘拐して子供の学費を捻出しようとした父、それから自分に生命保険をかけて自殺し、その保険金で娘を大学に通わせようとした母子家庭の母親。幸い自殺未遂に終わりましたが、この母親は甲斐性がなくてゴメンね、と娘に泣いて謝ったそうです。

 しかも貧富の格差が仕送りに反映されますから、大学に入れたとしても金持ち組と貧乏組では天と地の差ということになります。貧乏組は毎月100-150元、金持ち組は1000元以上。これでは消費性向から何から違ってきますから、まさに別世界。友達付き合いが分かれてしまうのも自然なことでしょう。

 パソコン、携帯、ファッションから女子大生なら化粧品に至るまで、金持ち組は消費社会の先端をゆく存在です。クレジットカードまで持っています。かたや貧乏組は慎ましい生活を送ることになりますが、それだけならまだしも、旧正月のある冬休みに帰省できなかったり、水商売のバイトをしたり、ひいては節約のため残飯をあさったりという例も報じられています。

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 この状況をみれば憤慨せずにはおれないでしょう。その代表格が張保慶・教育部副部長(当時)だったのです。早くからこういう状況に陥ることを見通していたのか、張保慶は江沢民時代から「教育の産業化」に公然と異を唱え、大学の「学費高過ぎ」「諸経費取り過ぎ」を事あるごとに批判してきました。

 ●大学の学費水準の安定を、これ以上の値上げは許さず――教育副部長(経済参考報2004/11/11)
 http://jjckb.xinhuanet.com/www/Article/20041111151455-1.shtml

 「学費水準の安定を」の「学費」には諸経費も含まれており、記事本文ではやはり「乱収費」の問題が語られています。標題にある「教育部副部長」というのが張保慶です。

「北京の大学生一人当りの生活費は毎月300元(人民元、以下同)。それに学費や帰省旅費ほか諸経費など4000元前後が加わり、1年で1万元以上になる」

 とし、現在の国情(国民の収入水準)に照らせばこれは高すぎる水準で、金持ちしか大学に通えないというなら、これは共産党国家の教育ではない、と指摘しています。

 また、8月に開かれたある記者会見で張保慶は一部の地方政府や大学、銀行が国家の奨学金制度を実行していないとし、その地区を名指し批判もしています。それによると未だに400以上の大学がこの制度を実施していないそうです。

 別の機会には、

「私と妻の収入を合わせても、子供ひとりを何とか大学にやるのが精一杯だ」

 とも語っています。自分の身をかばわずに直言・諌言を繰り返す党官僚に、民衆は拍手を惜しみませんでした。

 ●香港紙『太陽報』(2005/10/30)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051030/20051030025658_0000.html

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 その張保慶が免職されたことが、社会に波紋を広げました。定年退職とはいえ、実際には60歳を超えても退職しない党官僚もいるからです。

 その空気を拾い上げて、マスコミが動き出しました。香港紙『蘋果日報』(2005/11/05)によると、南京市の地元紙『現代快報』は、

「剛直で直言を厭わない教育官僚だった」
「民衆が注目するスター官僚だった」

 と張保慶を評価し、

「その免職の真の原因について公衆には知る権利がある、政府はそれにちゃんと応えるべきだ」

 とまで踏み込んでいます。

 ――――

 私がおや?と思ったのは、『人民日報海外版』(2005/11/04)までがこの動きに同調し、張保慶を取材した記事を大きく掲載。張保慶が「教育の産業化」だけでなく、農村部で小・中学校への就学率が下がっていることを指摘し、実際に現地を視察。原因は貧困にあるとして、

「新たな文盲を生み出してはならない」

 と訴えたと報じています。これを「新華網」(国営通信社電子版)が間髪入れずに掲載しているのも興味深いところです。

 ●自らのスタイルを貫いた張保慶――前教育部副部長インタビュー(新華網 2005/11/04/07:42)
 http://news.xinhuanet.com/edu/2005-11/04/content_3728177.htm

 さらにその日の「新華網」には張保慶に関する北京紙『新京報』の古い記事も並べてありました。異例のことです。

 ●張保慶教育部副部長が直言、中国の教育界にはびこる五大問題(新華網 2005/08/30/15:11)
 http://news.xinhuanet.com/edu/2005-08/30/content_3422181.htm

 これは上述した記者会見のようで、海南省、天津市、黒龍江省、内蒙古自治区、青海省、寧夏回族自治区、甘粛省、新疆ウイグル族自治区が名指し批判されています。

 ――――

 異例とも異様ともいえる免職後に流れたマスコミの張保慶礼讃報道は、張保慶がいかに庶民に慕われていたかを示すものですが、同時に「免職は政治的しがらみの結果ではないか」という民衆の疑念を反映したものであり、マスコミもまたそれに同調したということもあるでしょう。『蘋果日報』(2005/11/05)によると、ネット世論も「免職」に反発したようです。

 江沢民時代から教育部副部長だった張保慶、「教育の産業化」に断固反対の姿勢を貫いた訳ですが、当初の上司で「教育の産業化」を推進したのが陳至立・教育部長(当時)でした。上海閥と目される人物です。そもそもこの改革自体が新たな腐敗の温床を生むものではないかという見方があり、実際に諸経費徴収や「高いくせにマズい学生食堂」などを通じて大学当局の横領疑惑が取り沙汰されてもいます。

 今回はどう話を結んだらいいのでしょう。免職後の張保慶報道に、私はマスコミの良心や庶民の意思をみた思いがしました。ただ、『人民日報海外版』や「新華網」といった最大手までが足並みを揃えたというのは、単なる愛惜ではなく、政治的な色彩もあるのではないかと勘繰りたくもなるのです。



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 先日、中国政府が大学新卒者に対する西部(内陸部)ないし末端組織、貧困地区への就業を指導・奨励する運動に本腰を入れ始めたと紹介しました。

 「卒業即失業、それが嫌ならド田舎へ行くかニートになるか。」(2005/07/12)

 その話題をフォローする記事を集めて目を通していたのですが、同じ教育問題でも刺激的な話題が飛び込んできました。前回のコメント欄で「kolgo13」さんが御指摘のニュース、香港発の共同通信電です。某巨大掲示板にもスレが立っています(東亜)。

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 ●中国で学生15万人が抗議 天安門事件以来と香港誌(2005/07/19/17:50)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=HKK&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2005071901003502

 【香港19日共同】香港誌「動向」7月最新号によると、中国江西省で6月末、同省内28大学の学生ら計15万人が、各地の役場前などで大学幹部の腐敗に抗議するデモを一斉に行った。(中略)
 同誌によると、学生らは、学費が絶えず値上げされる一方、幹部が正規の給料以外に地元の平均給与を倍以上上回る手当を受け取っているなどとして6月26日からデモや集会、ビラ配りを開始。北京大や上海の復旦大など他地域の170大学から運動を支援するメッセージが寄せられた。

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 これは内容にしても時期的にも、当ブログの「21世紀型学生運動」(2005/07/02)の後日談のようです。ただその内容を考えれば「後日談」というより「発展型」ともいうべき凄みがあります。

 事実なら香港各紙の後追い報道や台湾メディアによる転載、さらに反体制系ニュースサイト「大紀元」あたりが写真付きの記事を出してくるでしょうが、現時点でその動きはありません。

「だから続報待ちですね」

 ……なんて言ってせっかく盛り上がった空気に水を差すようなことはしたくないので(笑)、とりあえず共同通信の報道に沿って話を進めることにします。

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 今回のデモは、大学幹部の腐敗や、「教材費」「設備維持費」など何かと名目をつけて料金を徴収する大学のやり方、そして値段が高いくせに不味い学生食堂に、学生側がとうとうキレたということですね。

 学生食堂にも怒りの鉾先が向けられたことを笑ってはいけません。「高いくせに不味い」というのは学食関係者が横領めいたことをしている、ということと同義に考えられているのです。学生にしてみれば、これまたお食事券ならぬ汚職事件。

 とはいえ、民主化運動とか全国に蔓延する党幹部の腐敗撲滅を訴えるとかではなく、あくまでも自分の周辺(学内)で起きる不条理に堪忍袋の緒が切れた……というあたりが、現体制や中国の現状については肯定派が多数を占めるとみられる「いまどきの学生」だなあと思い、先日のエントリーでは「21世紀型学生運動」と名付けてみた訳です。

 ――――

 ところで今回のデモ、事実とすれば天安門事件(六四事件)まで招来した1989年の全国的な学生運動以来の規模になるそうですが、どうにも迫力に欠けます。15万人が複数のグループに分かれて、各地の役所前でデモをやったということでしょう。これが烽火となるならともかく、一発芸的な騒ぎならちょっとショボいような気がします。

 28大学で15万人。この15万人も恐らく「主催者発表」で水増しされた数字だと思うのです。「21世紀型学生運動」として先日取り上げた江西省・九江学院は、本科生の数だけで3万7000人もいますから、動員力の点では迫力に欠けるように思います。

 それから九江学院の騒動もそうでしたが、6月末というのは卒業シーズンです。4年生が最後の思い出に一花咲かせた、というお祭気分もあるかも知れません。実際、九江学院の騒動に参加した4年生というのは、今までの鬱憤晴らしという動機もあったようです。

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 ただし報道の通りなら極めて刺激的なニュースです。

 ●江西省内の28大学が結束、各地の役場前などで大学幹部の腐敗に抗議するデモを一斉に行った
 ●6月26日からデモや集会、ビラ配りを開始。
 ●北京大や上海の復旦大など他地域の170大学から運動を支援するメッセージが寄せられた。

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 「28大学が結束」「6月26日からデモや集会、ビラ配りを開始」というのは、江西省内28大学の間に有志的連携が成立したことを示すものです。党の出先機関同然である「学生会」がそんなことをする筈はありませんから、1989年の民主化運動で各大学が学生会とは別に自治組織(高自聯)を立ち上げ、大学間で結束していったのと同じことが起きたことになります。

 そこに北京大や復旦大など合計170大学から支援のメッセージ、というのもただ事ではありません。ただこの170大学にそれぞれ有志的組織があってそこからメッセージが出されたのか、それともネット上の関連掲示板で、

「おれ北京大学生だけど、江西のみんなの活動を応援してるから頑張れよ」

 というような、ごく個人的な支持表明なのかよくわかりません。

 当ブログがしばしば指摘しているように、新聞や通信社は記事の行数が制限されますので、最低限のことしか織り込めません。元ネタたる『動向』の記事を読んでみればもう少し詳しい事情がわかると思うのですが……。

 仮に実際に有志的組織が各大学にあって、それが実は3~4月の反日騒動(特に日本の安保理常任理事国入り反対署名活動)を契機に生まれたものだというなら、オチにもなりますし興味深いことでもあります。「反日」のために生まれた組織が、「反政府」とまではいかないながらも、大学当局という「官」への反発を示す行動で役立っている訳ですから。

 ――――

 ところで、「学費高すぎ」「諸経費取り過ぎ」という学生の言い分が正しいものかどうか。私が今回のチナヲチを始めた昨年夏以降の報道に限っていえば、昨年11月に教育部が全国調査に基づいて、「乱収費」(何かと名目を立てて学生からカネをとる)の存在を指摘しています。

 ●一部の地方に「乱収費」減少が依然存在――教育監督調査(新華網2004/11/11)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-11/11/content_2205530.htm

 ●大学の学費水準の安定を、これ以上の値上げは許さず――教育副部長(経済参考報2004/11/11)
 http://jjckb.xinhuanet.com/www/Article/20041111151455-1.shtml

 2番目の記事でいう「学費水準の安定を」の「学費」には諸経費も含まれており、記事本文ではやはり「乱収費」の問題が語られています。教育部の張保慶・副部長は、

「北京の大学生一人当りの生活費は毎月300元(人民元、以下同)。それに学費や帰省旅費ほか諸経費など4000元前後が加わり、1年で1万元以上になる」

 とし、現在の国情(国民の収入水準)に照らせばこれは高すぎる水準で、金持ちしか大学に通えないというなら、これは共産党国家の教育ではない、と指摘しています。

 ――――

 大学生の子を持つ世帯の負担がいかに重いかについては、ちょうど今朝の香港紙『太陽報』(2005/07/19)に英国教育政策研究所なるところが最近公開した調査結果が出ているので参考にすることができます。

 http://the-sun.com.hk/channels/news/20050719/20050719020510_0001.html

 この調査によると、大学生一人当たりの学費(諸経費その他を含む)で世界ランキングを出してみると、1位は日本で11万元。続いて2位がニュージーランド、3位が英国となります 。

 でもこれは単純な金額の羅列にすぎません。実情をみるために、一人当たり平均国民収入を基準として教育費用の占める負担を比べてみると、中国がダントツのランキング1位になるそうです。中国は一人当たりGDPが1000米ドルを超えたばかりですが、そのうち農民9億人の多くが年収3000元にも達しておらず、上述したように大学生1人に年間1万元以上かかるとすれば、農民の3年分の年収を超えてしまうことになります。

「学費高すぎ」
「諸経費取り過ぎ」

 という学生の言い分もごもっとも、という訳です。ただ学生間でも実家の貧富の差に基づいた二極分化が一般化しているようですから()、その主張にもかなりの温度差がある可能性があります。このあたりも「21世紀型」と呼ぶにふさわしい風潮といえるかも知れません。

 ――――

 さて、これだけ書けば、もう口にしてもいいでしょう。

「事実なら香港各紙の後追い報道や台湾メディアによる転載、さらに反体制系ニュースサイト『大紀元』あたりが写真付きの記事を出してくるでしょうが、現時点でその動きはありません」

 という訳で、とりあえずは続報待ちですね。



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 9月入学制の中国にとっては今がちょうど卒業シーズンですね。

 なるほど道理で。……とは、教育部が中央組織部や人事部とつるんで最近、「若人よ内陸を目指せ」運動ともいうべきキャンペーンを中国国内のマスコミを使って展開しているのです。ユース共産党たる共産主義青年団(共青団)なども一枚かんでいる模様です。

 そうでもしないと「卒業即失業」となる学生が続出しかねないからですね。このキャンペーン、身もフタもなく言ってしまいますと、

「北京や上海でホワイトカラーなんて甘い夢は捨てろ。それよりも内陸部の田舎へ行くか末端組織に骨を埋めろ」

 という内容なのですが、中国のキャンペーンというのは一種の騒音公害のようなものです。関連記事が集中豪雨的に、紙面をそれ一色で埋めんばかりの勢いで出てきますから。ええ、それはもう嫌というくらいの数で。

 ちょっと前にそれらしき通知を見かけたと思ったら、本腰を入れてやり出しました。実例を御覧になりたい?……ごもっともです。

 ――――

 ●大学新卒者は末端組織を目指せ――国が指導・奨励へ
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/04/content_3174897.htm

 ●人民日報社説:末端組織に目を向け功業を為すべし
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/04/content_3174374.htm

 ●新卒者が末端組織に就職することを奨励――共青団中央と全国学聯
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/05/content_3179369.htm

 ●清華大学、新卒者の半数近くが末端組織に就職へ
 http://news.xinhuanet.com/edu/2005-07/06/content_3183138.htm

 ●安徽省、7年連続で大学新卒者4000名が農村の末端組織へ
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/06/content_3183863.htm

 ●上海の大学新卒者、400名以上が西部に就職
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/06/content_3184156.htm

 ●毎年1000名の大学新卒者を選抜、農村の幹部候補生に――河北省ケイ台市
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/06/content_3184268.htm

 ●大学新卒者による末端組織への就職を積極的に指導・奨励へ――中央組織部など
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/10/content_3199160.htm

 ●福州大学、卒業生500名以上が貧困地区に就職
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/10/content_3199388.htm

 ●石家庄鉄道学院、卒業生の60%が末端組織へ就職
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/10/content_3201005.htm

 ●「西部地区での就職」に熱を上げる――重慶の新卒者
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/11/content_3203238.htm

 ――――

 ……とりあえずこのくらいにしておきます(笑)。「末端組織=内陸部の農村」では必ずしもないのですが、外資系企業の小洒落たオフィスに比べれば遥かに地味で給料も安く、「這い上がる」ための起点として適した環境とはいえない職場です。

 まあ、わざわざ「奨励」「指導」なんて言葉が使われるくらいですから、人気のない就職先なのでしょう。上に並べた記事には「志願」なんて悲壮な言葉すら出てきます。まるで人身御供か決死隊かというところですが、実際にそういうイメージなのだと思います。もちろん「奨励」するくらいですから、「志願」者には奨学金や支度金のような御馳走がついてきます。

 で、国がここまで力を入れる、というより力づくになるのは、前述した通り、そうでもしないと「卒業即失業」となる学生が大量に出てしまうからです。

 前に失業問題()でもふれましたが、大学新卒者の就職率は昨年実績が73%。実に10人のうち3人までが、実数でいえば76万名が「卒業即失業」の憂き目に遭っています(中には卒業即留学などのケースもあるでしょうが)。

 ●大学新卒者204万名の就業を実現――来年の新卒予定者数は338万名
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/11/content_2320263.htm

 いま正にその「来年」が卒業しつつあるのですが、総数が前年比58万名増なのに対し、その分の雇用創出がなされているかといえば、答はNOでしょう。

「今年の就業圧力は例年にない強さだ」

 と厳しい表情の周済・教育部長、一応「昨年実績を下回らないこと」との目標を掲げてはいますが、各大学が就職率の水増し報告でもしてくれないと到底達成不可能な水準でしょう。ちなみに昨年の73%もかなり水増しされた数字のようです(笑)。

 ――――

 贅沢言うな大学生、と説教してやりたいところですが、恐らく中国はスケールが違うのでしょう。「格差」のスケールです。地域間格差もあれば業種間格差もあります。生涯賃金を弾いてみれば、貧富の格差も相当なものになるかも知れません。

 雇用者側からみれば、学生が己を買いかぶって高望みしているという側面が目につくのでしょうが、女子学生はもちろん、男子学生ですらも面接で好印象を勝ち取ろうとプチ整形に走ったりする御時世です。必死なのです。

 必死になるべき方向がズレているような気もしますが(笑)、その厳しい就職状況には同情してやりたくもなります。フリーターで何とかやっていける日本は、不景気だ何だと言っても経済の基礎体力が中国とは比較にならぬほどしっかりしているということでしょう。

 かつて仕事の一環として香港を例に試算してみたことがあるのですが、実家住まいならともかく、賃貸で独り暮らしとなると、時給が低すぎて話になりませんでした。現在の中国にフリーターの存在を許容するほどの余裕はあるのかどうか、これは私にはわかりません。

 ところが、そのくせ生意気にもニートがいるのです(笑)。いや冗談ではありません。これについては以前紹介したことがありますが()、最近また関連記事がいくつか出ています。これも卒業シーズンだからなのでしょう。

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 ●成人の30%が親のスネかじり――若者のニート化は誰のせい?
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/08/content_3191461.htm

 標題の通り、驚いたことに中国の成人のうち3割は親に養われているとのことです。「ニート」という単語は何種類かの意訳があり、あるいは「NEET」とそのまま使われたりもして、まだ用語としては定着していないという印象です。

 ただニートの実質を備えた若者はたくさんいるのです。親から小遣いをもらってネットゲームに熱中したり、家でゴロゴロしたりしているようです。蝶よ花よと育てられた一人っ子世代、いわゆる「小皇帝」ですから、親もつい甘くなってしまうのでしょう。

 この記事はそのニートを「要するに無職」と見立てているようで、その類型を6種類に分けています。

 (1)就職先について高望みが過ぎて「理想の職場」と出会えないままの大卒者。
 (2)就職したものの、仕事は疲れるしストレスもたまって、と言い訳して無職へとリターン。
 (3)起業家幻想型。起業意欲はあるものの目標とノウハウがなく、さりとて人の下で働くこともよしとしない。
 (4)流転型。転職を重ねた挙げ句、最後には無職に落ち着いてしまう。
 (5)依願退職者。自分の仕事をキツいと感じ、楽な仕事を求めて退職するも、結局は一番楽な無職に収まる。
 (6)学歴もなく技能もないタイプ。3K業種しか選択肢はないが、それもイヤ。無職でいいやという結論になる。

 「若者のニート化は誰のせい?」とタイトルで問いかけているこの記事は、「小皇帝」「一人っ子」という単語が後段で出てくるように、まず親の躾に原因を求めています。次に中等教育の段階で職業・技能訓練を十分に受けていないことも原因のひとつとしています。

「だからニートは仮に短期の仕事をするにしても、サービス業の中でも若い世代が担当する店員やウエイトレスのような仕事しかできない。いきおい年齢を重ねるにつれて、就業機会はどんどん少なくなる」

 ……と指摘しています。なるほどそういうものなのかも知れません。

 ――――

 国を挙げて大卒者に就職の世話をし、「失地農民」や中高年の失業者(「4050」と呼ばれています)が出口の見えない塗炭の苦しみに喘いでいる一方で、成人男女の3割が事実上ニート化している、という現実はどう理解すればいいのでしょう。

 やはりこれも「格差」をキーワードに理屈付けるべきものなのでしょうか。とりあえず隣国で馬鹿が大量生産されているのは有り難い限りですけど。

 ニートのままでいいから、ネットを駆使して同時多発都市暴動でもやってほしいものです(笑)。



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 単なる学生による暴動のような気もしますが、とりあえず世相の一面を反映した出来事ではありますので、「学生運動」と持ち上げておきます。

 江西省九江市に位置する大学・九江学院で6月25日から27日にかけて、夜間に学生多数による騒乱が連日発生し、学内の施設が破壊されたり車が焼かれるなどの被害が出ました。

 学校側はキャンパスがすでに平穏に戻っていることを強調していますが、一方で犯人探しが行われているとの噂もあり、

「そっちがそう来るなら、こっちもエスカレートしちゃおうかなー」

 ……と、より過激な行動を計画している学生たちも。学内に不穏な空気がそこはかとなく広がりつつあり、いい感じのようです(笑)。

 この事件については報道管制が行われている模様で、中国国内メディアは伝えておらず、ネット上で流れた情報も削除職人が登場して片っ端からサクサクと消去。メディアで元ネタ役を務めているのは、確認している限りでは、香港紙『明報』(2005/07/01)と反体制系ニュースサイト「大紀元」のみです。

 ――――

 九江学院は人民解放軍をバックボーンとする大学で、1981年にその前身である九江財経高等専科学校が九江市に設立されています。当時は「中国人民解放軍軍需財経高等専科学校」とも呼ばれていましたが、2002年に市内にある3校と合併し、人民解放軍、江西省、九江市による合弁大学ともいえる現在の九江学院となりました。理系・文系で合計11学部・70学科、教師約1300人を擁する堂々たる総合大学で、全国30省・市から集まった約3万7000人が本科生として学んでいます。

 「学生運動」といっても、いまどきの大学生なのですから「民主」とか「自由」なんて言葉を思い浮かべてはいけません(笑)。学生による騒ぎといえば昨年、四川省のある大学で「学食(学生食堂)で出すものが不味すぎる!」という理由で構内の自動車が燃やされた事件があります。今回はそれよりは志が高く、

「大学が何かと名目を立てて学生から費用を徴収する」

 という原因によるものです。中国語で「乱収費」と呼ばれている行為で、中国の教育界でも問題とされ、改善が急がれているものです。地方政府も似たようなことをよくやりますから、現地進出企業に勤務されていたり出張された方なら心当たりがあるかと思います。訳のわからぬ名目で税金とか費用とかが地元当局に徴収される、あれです。

 ――――

 匿名を条件に『明報』の電話取材に応じた学生によると、九江学院はここ数年、教育施設や各種設備の増設や改修といった工事をひっきりなしに立ち上げており、大学が自弁すべきその費用が、「乱収費」となって学生にシワ寄せが来ているそうです。意味不明の教材費徴収とか寄宿費や光熱費の値上げなどが、頻繁に行われてきたのだと思います。

 このあたり、遺憾ながら私にはちょっと実感が湧きません。15年ちょっと前、私が留学していたころの中国人学生の費用は学費から寄宿費まで基本的に大学側の全額負担、つまり無料だった筈ですが、その後、江沢民時代に「教育の産業化」と言われる改革が行われたようです。

 如何せんその時期はチナヲチをしていなかったので、その詳細はわかりません。とにかく費用の一部を学生が負担するようになり、そうなってから問題がわらわらと群がり出てきました。

 貧乏ではいくら頭がよくても大学へ進むのが困難となり、費用を工面するために事件を起こす親が出たり、さらには入学できたとしても、実社会で貧富の格差が拡大しつつあるが如く、親からの仕送りに1:10ほどの開きが生じ、いきおい学生同士の交遊も「金持ち組」と「貧乏組」に二極文化している()……といったものです。ある大学が「貧乏組」専用の学生寮を建設したことで、物議をかもした事件もありました。

 ――――

 さて、「大学が何かと名目を立てて学生から費用を徴収する」ことを不満に学生たちが立ち上がるに至ったのですが、これは突発的な行動ではなく、実は以前からこの問題をめぐって大学側と学生側が対立していたようです。「乱収費」への罵詈雑言と怨嗟の声が殺到していた学内のBBSが閉鎖されたことも、学生たちの反発を買ったものと思われます。……さらにもう一点、

「学食は高いカネを取るくせにそれに見合った内容ではない。劣悪すぎる」

 と、ここでもやはり学生食堂が槍玉に挙げられています(笑)。

 それやこれやでとうとうキレた学生たちが、6月25日、26日、27日の3日間、連夜の実力行使に及ぶこととなります。

 騒乱参加者は数百名とも数千名とも言われていますが、ともかく深夜0時前後から朝5時近くにかけての破壊活動です。学生寮からは魔法瓶(※1)が窓から投げ落とされてパリーンと割れる音がひっきりなしに響き、ペットボトルが飛び交い、横断幕が燃やされ、構内の公衆電話や掲示板も破壊されました。さらに構内に駐車していた車も標的となり、破壊された上に燃やされたり、仰向けにひっくり返されたり。

 かような尾崎豊の歌を地でいく状態にあって、学生たちの怒りの鉾先のひとつである「バカ高いくせに不味い学食」が見逃される筈もありません。2カ所の学生食堂に学生たちが乱入、今までの恨みとばかりに、内部は手ひどく破壊されました。学内のスーパーで商品が略奪されたりしたのは悪ノリという感じもしますが。

 ……これら連夜の騒ぎには卒業を間近に控えた4年生も多数参加していたそうですが、鬱憤を晴らしたといいますか(一種の卒リン?)、いい思い出になったでしょう。これで心置きなく巣立っていける筈です。こーの支配からの、卒業(笑)。

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 ところでこの事件は学生が動いたということもあるのでしょう、ネット上での報告が相次ぎ、いくつかの掲示板に狼藉の跡も生々しい現場写真が多数貼られたりもしたのですが、そこは削除職人が手加減することなく次々と削除してしまったとのこと。ただし削除前に保存された写真を「大紀元」で見ることができます。やはり学生運動というよりは暴徒の所業という印象を受けてしまいますが(笑)。

 http://www.epochtimes.com/gb/5/7/1/n971811.htm

 まあ暴動まがいであっても、「民主」や「自由」が叫ばれなくてもいいのです。開発事業のために耕地を強制収用される農民が補償額の余りの低さに憤り当局と武力衝突する、という典型的な農民暴動と今回の「学生運動」は、同じ根っこのように思えてなりませんので。

 後日談のようなものですが、事件に驚いた大学側や地元当局は、教師や指導員などを通じて熱くなった学生の気分を鎮静化させることに努める一方、学生に対し、今まで取り過ぎていた分の費用を払い戻したりしているようです。よほどビビったのでしょう(笑)。

 光熱費(水+電気)の取り過ぎ分として160元も戻ってきた学生もいるとのこと。北京市の定める最低賃金水準(月給)が580元、上海市と深セン市は690元(※2)ですから、160元は決して低い金額ではありません。九江学院、かなり悪辣なことをやっていたのではないでしょうか。叩けばまだまだホコリが立ちそうですね。


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 【※1】まだあのコルクで栓をするタイプのものが使われているんですねえ。うっかり倒してしまうと内部の鏡状のガラス?が簡単に割れてしまい難渋しました。私は1年間で3つくらい壊した筈です。

 【※2】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/01/content_3163251.htm
     http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-06/30/content_3156959.htm
     http://news.xinhuanet.com/employment/2005-07/01/content_3160793.htm



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 先日「棲息地その2」で質問を頂きました。

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 ●中国誤算、「民主化」若者に衝撃 連戦・宋楚瑜氏の講演
 http://www.sankei.co.jp/news/050512/kok022.htm

 【北京=福島香織】台湾野党の連戦・国民党主席、宋楚瑜・親民党主席が十一日までに相次いで北京の名門大学で講演を行った。自由主義、民主化の賛美や台湾意識を訴える内容は、学生らから強い支持があり、ネットには「国民党が中国に来て二大政党になればいい」といった反応も。
 陳水扁政権への揺さぶりが狙いの中国の筋書きによる台湾野党の北京詣でだが、中国若者の政治意識に意外なインパクトも与えているようだ。

 ……こんな動きもありますが、いかがなものでしょうか?

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 以下に私の回答を。

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 御指名にあずかり光栄です。

 この記事、私も読みました。非常に興味深い内容でした。でも大学生の中のほんの一部の、ややラディカルに走りそうな声ばかりを集めて記事にしたように思います。実際にそういう大学生はいるのでしょうが、まず多数派にはなれないんじゃないかと思います。

 ミもフタもなく言ってしまうと、「民主・自由」という言葉のハイカラな響きに気分として憧れて、一時的に酔っているだけかと。

 社会に対して問題意識があって、現状の政治制度では根本的な解決がつきそうにないと考えて強い危機感を持ち(同時にある種の不偶感もある)、その危機感に苛まれつつ試行錯誤した末に「自由・民主」へとたどり着くならホンモノでしょう。例えば一九八九年の民主化運動当時の大学生たちがそうでした。

 でも当時でさえ学生の間での温度差にはかなり幅があり、それを急進的かつ行動的な学生たちが力づくで引っ張り、かつ急き立てるようにして大きな動きへと育てていったのです。そこまで育ったのは、温度差はあれど危機感や問題意識が一同に共有されていたからだと思います。

 でもいまの大学生はどうでしょう。まず学費等を自己負担する部分があるので、学生同士に容易ならぬ貧富の差(親からの仕送りの多寡)が形成されてしまっていて、金持ち組と貧乏組では接点がないといえるような、全く異なる消費生活を送っています。当然、友達付き合いにもそれが反映されています。ですからまず団結しにくいのではないかと思います。

 それから、日本への憎悪をかき立てることで中国社会への問題意識を眠らせた江沢民の「愛国主義教育」「反日キャンペーン」のおかげで、またここ十年の中国が表面的には急成長を遂げていることもあって、大学生を含む若い世代はおしなべて現状肯定派です。心配事といえば就職問題くらいでしょう。今のままで別にいいじゃないか、という気分が大半の大学生を支配しているのではないでしょうか。政治運動を体験していないことも現状肯定の気分を補強すると同時に、社会への問題意識や危機感を生みにくくしていると思います。

 ですから、「反日」(ナショナリズム)でまとまることは可能かも知れませんが、「自由・民主」で学生を動かすことはまず無理だと思います。何事かへとつながる作用は起こるまい、起爆剤としては到底期待できない、ということです。


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 ……以上です。

「大学生を含む若い世代はおしなべて現状肯定派」
「(大学生の)心配事といえば就職問題くらいでしょう」

 という見解はいまも変わっていないのですが、ただ大学生にとって唯一の心配事であろう就職問題、これは相当深刻な模様です。共産党に対するユース組織とでもいうべき共産主義青年団(共青団)、ここの中央部門が先日、全国各地の下部組織に向けて異例の通達を発しています。

 ●共青団中央「学生の就職問題で突発的事件が発生することを断固防止せよ」
 http://www.xhby.net/xhby/content/2005-05/17/content_790334.htm

 大学生の就職や起業に対する問題を学生の身になって事細かくケアしてやれ、という内容なのですが、それがうまくいかないと「突発的事件」が起きるかも知れない、というのです。こりゃまた穏当じゃありませんね。

 「突発的事件」というのは具体的に何を指しているのか、デモや集会というより、突然キレてルームメイトを刺したり、教室で唐突に暴れ出したり、そんな気配もなかったのに自殺を図ったり、あるいは窃盗や性犯罪に……というようなケースだと思いますが、わざわざ通達が出るくらいですから「突発的事件」も頻発していて、かなり深刻な問題なのでしょう。ただ穏当でないのは「突発的事件」ではなく、就職問題の実情というべきかと思います。

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 新卒者の就職問題は某巨大掲示板風に表現すれば「人大杉」(新卒者数>就業機会)という構造的なもので、就職率100%など夢のまた夢です。昨年実績をみてみると、新卒者280万人のうち、昨年9月時点で就職できたのは204万人、就職率は73%です。簡単に言えば、卒業式が終わると約80万人が自動的に失業者(大半が貧困層)へとクラスチェンジする訳です。大学院に進む者、留学する者もいるでしょうから実数はこれを下回るでしょうが、ざっとした言い方だと10人のうち3人までが就職浪人、ということになります。

 中国の新学期は9月からスタートしますから、来月当たりから卒業シーズンに入るかと思います。今年の新卒者数はさらに増えて338万人(前年比58万人増)となる見込みで、周済・教育部長も「今年の就業圧力は例年にない強さだ」と、厳しい表情です。

 このため「西部へ行け」運動のようなことも奨励されています。経済的後進地区である内陸部では逆に人材不足で、ド田舎(島流し同然)なだけに新卒者に対する需要も高いというのです。これに応募すると奨学金制度が適用されます。

 ただ、本当に内陸部へ行けば職にありつけるのでしょうか?

 ●西部志願者の就職実績、昨年は60%に
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/27/content_2885782.htm

 「西部行き志願大学生計画全国プロジェクト弁公室」の責任者が4月27日に明らかにしたところによると、2004年度は志願者1770名に対し、その60%が同弁公室を通じて就職した、とのこと。じゃあ残りの4割は?ということになるのですが、別の部門を通じて職をあてがわれたのか、就職論人になってしまったのかは不明です。

 これと同じ組織のやっている活動なのかどうかはわかりませんが、今年の志願者数は5万人を超える、という記事もありました。

 ●新卒者5万名が西部での就職を志願
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-05/12/content_2969.htm

 この記事によると志願者数は全国で5万1994名、ただこのうち53.7%は地元の西部地区出身者です。

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 まあ、共青団中央が全国に通達を発するくらいですから、現状肯定派である大学生の間でも不穏ともいえる空気が出始めている、というところでしょうか。こればかりは現地に留学でもしていないとなかなか実感がつかめません。

 さて今年の就職率はどうなるのでしょう。昨年より新卒者の数が60万人近く増えて「人大杉」状態に拍車がかかっています。一方で経済は「軟着陸」(ソフトランディング)を目指した緩やかな減速基調ですから、就業機会が大きく増えるとは考えにくい。それゆえ昨年実績(73%)の水準に達するのはかなり難しいように思います。

 ……ただ、いまの中国経済、マクロコントロールで緩くブレーキをかけている筈なのに、それが奏功しているといった気配がなく、むしろ経済過熱を懸念する声が出ています。アルミやセメント、鉄鋼といった業種に各地が一様に入れ込んでいて、全国的にみると深刻な重複投資となっており極めて非効率。当然ながら資源争奪戦も起きて、それが価格に反映されることになります。

 これに対し国家発展改革委員会あたりから
「コストプッシュ型のインフレは絶対に起きない」という強気のコメントが出ているのですが、さあどうなることでしょう。春播きの穀物や野菜に関しては化学肥料の高騰が問題となり、各地で上限価格を設定するなど対応に大わらわでした。昨年も似たような状況で、そのために9月の穀物価格が前年比31.7%高と急騰、10月も同28.7%の上昇です。これに音を上げた年金生活者によるデモや座り込み()が発生したのも頷けるところでしょう。

 という訳で、就業機会が大きく増えるとは考えにくいながらも、どうやら経済面における中央の統制力が十分でなく、一方で各地方の開発欲求は強いままです。このため胡錦涛政権の目指すソフトランデイング(緩やかな減速)は実現せずに、経済は逆に過熱へと向かう可能性も低くありません。となれば、減速基調の影響で求人が減少する、ということもなくなります。……あ、でももし本当にそうなったら都市暴動のひとつやふたつは起きることでしょう。


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 【関連記事】今年は失業問題が熱い!?(上)(2005/01/13)
       今年は失業問題が熱い!?(下)(2005/01/14)
       キャンパスにも蔓延する格差(2005/02/21)
       ニート出現。(2005/02/22)


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 前回に引き続き大学絡みのニュースなんですが、今回は卒業後の話です。大学ネタに関しては素材が豊富で、どれから手をつけようか迷うほどです。

 日本でも報道されたニュースもあります。

 ●就職率に水増し疑惑 中国、大学生の就職難で(共同通信)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=MRO&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2005022201001607

 で、本当はこの記事を遡上にと考えていたんですけど、「就職難」つながりで資料を集めていたらもっと面白いものがあったので、今回はそちらの方を。

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 ●大卒者に激増する「傍老族」、富の偏在という歪んだ社会を象徴
 http://finance.sina.com.cn/xiaofei/shenghuo/20050222/10061373572.shtml

 前回、中国の大学で貧乏学生と金持ち学生の二極分化が進行していると紹介しましたが、これは金持ち学生の話です。

 ●蝶よ花よと育てられた「小皇帝」(一人っ子)世代
 ●親に経済的余裕がある
 ●潤沢な仕送りに頼って贅沢三昧の大学生活

 ●でも大学新卒者は就職難!

 ……という流れになれば、必ず出てきそうなものじゃないですか。ええ、果たせるかな出てきましたよ。ニートです。特に大都市圏で増えているようです。

 それでは記事をかいつまんで……と思ったのですが、内容が濃くなかなか読みごたえのある面白い記事だったので全訳してみました。例によって翻訳の精度は期待しないで下さい。

 元ネタは今日の『市場報』(2005/02/22)、これを新浪網が即日転載したものです。

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 ●大卒者に激増する「傍老族」、富の偏在という歪んだ社会を象徴
 (『市場報』2005/02/22)


 就業圧力の増大は数多くの富裕層の大学生を家でブラブラさせるようになった。挑戦することを恐れ、社会から脱落してしまうこの一群「傍老族」がいま、懸念されるようになりつつある。

 ■就職難と就職忌避

 旧正月が終わり、大学4年生による就職活動のピークがまた巡ってきた。ここ数年、大学卒業者数が増加の一途をたどるにつれ、就職難が多くの新卒者にとって頭を悩ませる問題となっている。だが多くの学生が就職難を嘆く一方で、仕事に就こうとしない卒業生の数が密やかに増えている。大学時代の専攻を深めようとする一部の学生を除けば、相当数の学生が家でブラブラすることを選び、就職しようとする意欲を持たずにいる。衣食住は全て親頼みだ。

 こうした一群の出現に少なからずの経済学者や社会学者が関心を持ち、この現象を社会的資源を浪費させ、同時に社会の負担を増加させるものだとみた。そして、この一群に対して「傍老族」(親に寄りかかる者たち)という呼び名が生まれた。

 就職して2年になる大卒者の話によると、彼女の在学当時の同級生の間でも仕事に就かないという現象が一般的で、卒業後2年を経てもなお無職のままだという。こうした同級生たちについてこの女性は、

「あれは仕事がみつからないんじゃなくて、みんな社会人になりたくないってこと。親の方も経済的に余裕があるから、急いで仕事に就く必要もないし。中には親に言われて何かの課程に参加したり、外国語や別の専門を学んでいる人もいるけど、これは充電みたいなものでしょ」

 同窓生の見方に比べて、親の気持ちは随分違うようだ。ある「傍老族」の母親は息子について心配で仕方がないといった様子で語る。

「うちの息子は卒業してから一日中ブラブラしているんですよ。いくつか仕事を試してみたんですけど、あれが不満だこれが不満だで。いまは毎日インターネットをするか長電話するか、それでなければ外に遊びに出かけてますよ。同じクラスの子たちが社会人になって1年ちょっと、みんな頑張っているのに……。本当に心配なんですけど、息子は一向に慌てる様子もなくて」

 ■就職浪人のケースも

 「傍老族」はここ数年増加する傾向にあり、特に北京や上海などの大都市ではこの現象が顕著になっている。いくつかの大学の就業指導センターにあたってみたところ、今年の新卒者のうち就職先を確保した学生は70%。残り30%の学生のうち、少なくとも1割の学生がしばらく就職活動をしない意向だという。

 しかし一部の大学の在学生たちは、現在大学側が発表している就業率はある程度水増しされたものだと証言している。学校側は新卒者の就職率には神経質になっており、就職先のない学生はは大学の意向で雇用契約(訳者注・形式だけ)を結んで、あとは家でゴロゴロしているというのだ。このケースも含めれば、「傍老族」が新卒者に占める割合はより高いものとなる。

 中国人民大学労働人事学院の2004年における新卒者約120名のうち、就職しなかった者は18名。このうち何人かは出国する予定(訳者注・留学など)だが、しばらく就職活動を行うつもりが全くない者も何人かいる。「何年か待てば仕事も探しやすくなる筈」というのが「傍老族」の一般的な考え方のようだ。

 だが雇用する側は、「傍老族」という特殊な一群について厳しい見方をしている。

「『傍老族』なんて要らないですよ」

 とは、某社の孫社長。会社側が求人に際して第一に敬遠するのが、新卒時に就職活動に力を入れない、自由で散漫なこの種の大卒者だという。

 北京地下鉄科学研究所の人事部門に勤める董氏は、

「そういう卒業生は就職活動に対する積極さに欠けていて、就職しても楽ばかりしたがって苦労を嫌う」

 と話す。大学4年生は早くから就職に備えておくべきで、充電期間なんて言っている人は自分に自信がないだけ、というのが董氏の見方だ。また、ある程度働いたら留学する計画で、腰かけのつもりで就職しようとする者もいるが、そういう人を採用すれば、会社に人的コスト面での損失をもたらすだろう、とも指摘している。

 ■背景には富の偏在という歪んだ経済成長

 「傍老族」とて、いつまでも親に頼っていられる訳ではない。北京市朝陽区人材交流センターの陳氏は、数年後にはこの一群がいくつかに枝分かれするだろうと予測する。一部の「傍老族」は留学に出され、あるいは親の力で就職する。そのどちらでもない者は、長期間社会から離れてしまっているため、仕事を探そうにも思うような就職先は見つからないだろう、というものだ。

 少なからずの学者は、「傍老族」という現象が出現した主な原因は、収入格差が広がるばかりの、富が偏在するという歪んだ成長にあるとみている。恵まれた家に育った若者は働かなくても衣食住に不安を感じることがなく、しかも小さいころから贅沢三昧で育てられ、それに慣れてしまっている。就職したとしてもその収入では従来通りの消費生活を維持するには足りない。それならいっそ、ということで親のスネをかじり続ける。これについて中国社会科学院社会学研究所の樊平・研究員は、

「『傍老族』はたいてい経済的条件のいい家庭に育っているから、両親の稼ぎに頼っても衣食に困らない生活を続けることができる。社会の中で一部の人の富が急速に成長し、その家庭あるいは家族のライフスタイルに影響を与えるまでになっている。『傍老族』現象はそれを示すものだ」

 と指摘。「こういう人たちは仕事に就くか、就かないでいるかを選択する機会、条件そして資産がある」とした。

 一方で別の見方をする専門家もいる。「就職しない大学生」という現象には就職難と大学側の学生募集枠拡大という背景もあるので、大袈裟に騒ぐべきではない、というものだ。

 中国人民大学労働人事学院の易定紅・副教授は、「傍老族」の出現とその層の拡大はごく正常な現象だとする。一般に有名校の学生は仕事条件に対する期待感と要求が高めで、特に本科生の募集枠が拡大されて以降、就職市場における求人数が新卒者の需要に追い付かなくなっている。このため、恵まれた家庭に育った学生が仕事に就かないケースも増えているのだという。

 ではもし働かないままの生活を続けていく「傍老族」が出ればどうなるのだろうか?樊研究員の見方は次のようなものだ。

「もし家庭の経済的状況が変化するか、子供の躾に対する親の考え方に変化が起きれば、『傍老族』も自分から、あるいはやむを得ず、社会での競争や生存するための環境に適応しようとするようになる」

 樊研究員はまた、そのことが社会の不安定要因を増やすことにはならないが、そういう家庭では価値観についての考え方の違いが際立ち、激しくぶつかり合うようなこともあるだろうとの考えを示した。

 http://finance.sina.com.cn/xiaofei/shenghuo/20050222/10061373572.shtml

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 とうとうニートまで出てきました。記事の指摘する通り、富の偏在、拡大する一方の貧富の差が最大の背景でしょう。大学の募集枠拡大に求人数が追い付かず、構造的就職難を生んでいるのも原因、という指摘もあり、色々考えさせられます。

 ひとつだけ記事に不足を言うとしたら、数字があまり出てこないところでしょうか。可処分所得がどのくらいの家庭になると「傍老族」を養えるのか、そのあたりへのアプローチが欲しかったところです。……でもまあ新現象を取り上げた記事ですから贅沢を言うのはやめて、経済学者・社会学者の研究発表を待つことにしましょう。

「傍老族」が就職すればたぶんパラサイト・シングルになりそうですね。いま風の言葉を使えば「傍老打工仔」てな感じでしょうか。「打工仔」は広東語ですけど、「新華網」あたりでも普通に使われているので北京語に定着したようです(ああ嘆かわしい)。

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 それにしてもニートが出現するのですから驚きですね。中国も豊かになったものです。ごく一部だけは。


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 ここ数日、香港・台湾メディアは「台海問題」で大賑わいです。ええ、例の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で日米の「共通戦略目標」に台湾海峡問題が盛り込まれたという一件。賑わうに値する大ネタではあります。

 ただ香港と台湾はそれぞれ伝統的なスタイルを反映して騒ぎ方が異なっています。香港は中国同様に反日基調、台湾は歓迎ムード中心、といったところでしょうか。

 中国はまだ脊髄反射の段階で、例えば孔泉・外交部報道局長のコメントや日米に反発する新華社電などを国内各メディアが使い回しています。

 使い回すといってもあくまでも脊髄反射の記事ですから、この問題についてどういう姿勢で臨むか、その点で党上層部の腰が定まったという印象はまだありません。このニュース、チナヲチの観点からはもうちょっと時間を置いて眺めてみたいところです。

 という訳で、今回は時節に背を向けて一見悠長な、しかしやはり見逃すことのできない話題です。

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 標題の「格差」とは貧富の差のことで、当ブログでも取り上げたことのある問題です(※1)。貧富の差といえば、まずは都市と農村との格差。一方で、都市の中でも収入に格差があり、それが基本的に拡大する傾向にあることは周知の通りです。

 で、その「貧富の差」が最近は大学にも持ち込まれているという話題……すでに旧聞に属するネタですが、『中国青年報』が取り上げています。

 ●貧富の差が直撃、揺れる「象牙の塔」
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2004-09/06/content_943964.htm

 これによると、

 ■学生同士の付き合いは経済条件で決まる。
 ■貧乏学生はクラブ活動になかなか参加できない。
 ■貧乏学生は自分を卑下するなど心理的な影響が出ている。

 ……とのこと。

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 それ以前の問題として触れておかなければならないのは、学費の一部が個人負担となったことで、貧困家庭にとって大学入学はいよいよ狭き門となっていることです。

 前にも書きましたが、秀才であっても経済的な理由で進学を諦めるケースが相当あるようです。ニュースとして記事になったものでいえば、進学させるために親が営利誘拐に走ったり、保険金を子供の学費に当てようと自殺を図ったり、村の俊才を何とか進学させようと村人たちがカンパ活動をやったり。

 ……ところが、幸いにして入学できたとしても、キャンパスでまたまた貧富の差に由来する壁が貧乏学生の前に立ちはだかるという訳です。

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 ■学生同士の付き合いは経済条件で決まる。

 要するに貧乏学生は貧乏学生同士、金持ち学生は金持ち同士で友達付き合いをするということです。上記の記事によると貧乏学生の毎月の生活費は100-150元。これに対し金持ち学生は毎月1000元以上の生活費を親から与えられます。

 携帯電話、PC、デジタルカメラといった金持ち学生の必須アイテムは、もちろん貧乏学生には全く無縁のものです。「可処分所得」がこれほど違えば、ライフスタイルに差が出ない方がむしろおかしいですね。女子大生ならば化粧品やファッションでも別世界ということになるでしょう。この壁を突き破って付き合ってみても、「購買力」の違いもさることながら、まず話が合わないのではないでしょうか。

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 ■貧乏学生はクラブ活動になかなか参加できない。

 「クラブ活動」の原文は「学生組織」、最近の大学を知らないのでこの訳語が適切かどうか自信がありませんが、同好会やサークルのようなものかと思います。

 貧乏学生がその種の活動に参加出来ないのもおカネの問題です。どんな内容の同好会ないしサークルであれ、付き合い上、お茶代ぐらいは必要になるでしょう。そういう最小限の必要経費すら捻出できないので、指をくわえて見ているしかないということになります。

 記事によると、いわゆる貧乏学生は内陸地区及び農村、または都市の低所得層の出身だそうです。金持ち学生はといえば、政府や金融機関の官僚や私営企業主を親に持つ学生が多いということです。

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 ■貧乏学生は自分を卑下するなど心理的な影響が出ている。

 同じ学生同士でこれほど差がついてしまうと、そうなるのも無理のないことでしょう。貧乏学生といっても実感としてのイメージが湧かないかも知れませんが、実例を挙げますと、

 ●交通費がないため旧正月に帰省できない大学生、7000人に
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/05/content_2549375.htm

 このほか、貧乏なためアルバイトで水商売をするしかない女子大生、生活費捻出のためアルバイトでシシカバブ(羊肉の串焼き)の屋台を出して奮闘する学生、そして食費を浮かすために残飯漁りをする女子大生のニュースもありました。

 一方で金持ち学生は自分のクレジットカードまで持っている優雅さで、むしろカード地獄が懸念されているくらいです。相部屋の学生寮を嫌って校外に部屋を借りて住んだり、そこで恋人と同棲したりというケースまであります。

 この差は一体何なのでしょう?

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 何だか学内で階級闘争が勃発しても不思議ではないように思います。

 今回はちょっと雑になってしまい申し訳ありません。このテーマはもう少し資料を揃えて、本腰を入れて取り組むつもりです。


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 【※1】貧富の差拡大を裏付け――浙江・北京レポート(2005/01/11)
     広東省では中流意識が台頭(2005-01-12)
     今年は失業問題が熱い!?(上)(2005-01-13)
     今年は失業問題が熱い!?(下)(2005-01-14)


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 前に引用したリンクを再利用しますが、反政府系ニュースサイト「大紀元」によると、9月中に29省・自治区でデモないし抗議活動が発生したということです。

 http://www.epochtimes.com/gb/4/10/27/n700739.htm

 それにつけても思うのは、天安門事件(六四)に象徴される1989年の民主化運動は、運動の主体があくまでも学生や一部の知識人で、市民はそれを応援・支援するというスタイルでした。
 しかし現今の中国社会において散発的に繰り返されるこうした運動の担い手は、失業者であったり、リストラの決まった工員であったり、政府に土地を強制収用された農民であったり、あるいは今回のような定年退職者であったりと、生活を背負う人々が行動に出ています。
 その点についていえば、社会状況は1988~1989年当時より遥かにに悪化していると言うことができるかと思います。(「安徽省の老人デモ詳報(下)」2004/10/26)

 何が言いたいかというと、学生は何をしているのか、ということです。

 失業者
 リストラを通告された工員
 政府に土地を強制収用された農民
 定年退職者
 ――こういう人たちかやむにやまれず立ち上がっているというのに……生活を背負っていない連中、危機感なさすぎです。
 それとも、普通に暮らしている分には、危機のカケラすら感じることができないのでしょうか。

 例えば1989年の民主化運動、あれは突発したものではなくて、その前年である1988年後半には政治・経済・社会の各面において、そういう運動が起きるための条件がほぼ揃っていました。
 そして1989年の胡耀邦死去を契機に、世相に最も敏感に反応した大学生が立ち上がった訳です。
 中国政府が天安門事件(六四)の後に強調しているように、運動が盛り上がっていく過程では、国外の民主化運動団体などからの関与は、実際あったと思います。ただ、そういう手合いの煽動だけでは、とてもあんな大規模な運動にはなりません。運動が発生し、大規模化するための条件が揃っていたために、かくなったと言うべきでしょう。

 15年前の話はこのくらいにして、いまの大学生、本当に何の動きもないのでしょうか。
 だとすれば、この世代を特徴づけるいくつかの点に加えて、江沢民の「反日教育」が効いている、ということになるのでしょう。

 いまの大学生、年齢でいえば18~23歳でしょう。
 ●一人っ子であり、蝶よ花よと育てられた「小皇帝」。
 ●天安門事件当時は3~8歳、つまり政治運動を全く経験していない。
 ●物心ついたときには、ひとつ前の世代と比べれば物質的に豊かな生活環境に囲まれていた。
 ●そして学生になったいまはインターネットがあり、情報統制は知っていてもそれほど痛切には感じていない。
 ――つまり社会の現状を肯定している連中が多い、ということです。

 これに加えて、物心ついたときには江沢民の反日教育がシステムとして教育の現場に導入されていますから、それをたっぷりと吸収して育った。純粋培養されたと言ってもいいでしょう。
 その反日教育ですが、日本と日本人への憎悪が高まるのは当然として、一方で、自分の属する社会への問題意識が麻痺させられることになります。もちろん江沢民はその両方の効果を狙っていた訳ですが、ここに来て、後者(社会への問題意識)の影響が深刻なように思います。

 お爺さんお婆さんが無許可デモに立ち上がらなければならないほど追い込まれているというのに……と思うのです。
 社会のニオイに一番敏感で、感受性も強い筈の世代が、こうなってしまっている。
 連中の反応を見るにつけ、中国はもうダメだなと思うのです。
 まあ、全部が全部そういう手合いという訳ではないでしょうけど。

 何はともあれ、大学生に目立った動きがないということに、歯がゆさを感じます。
 危機感が足りないとか感受性が鈍っている、というだけではないんです。
 例えば名門大学ですと、高級幹部の息子とかが学生の中にいて思わぬ情報が共有されたりします。
 あと全国から英才が集まっているので、故郷の家族や友人と連絡したりする中で、ごく自然な形で報道管制の網をくぐって各地の情報が集まってくる訳です。
 しかも建前として全寮制ですから、情報の伝播するスピードも速い。

 だからこそ世相にも敏感に反応して、学生運動という形で当局への異義申し立ての主役になることができるんです。
 あ、主役になることが「できた」、と言うべきですか。

 まあ大学の方も最近は商売優先になって……ああ「教育の産業化」と言わないと怒られますね(笑)。
 とにかくそのために入るのにも色々とカネがかかって、テストの点がいいだけじゃダメなんです。そのために笑えない事件も色々起きています。

 子供の学費を用意できないので自殺してその保険金で通わせようとする母親とか、やはり学費のために営利誘拐に走る父親とか……そういう事件記事が私の手元にあるのですが、リンクを張る気にもなりません。
 あと教育者の方にも賄賂を要求する奴がいますし。最近は南京の某大学で、党幹部を接待するために、女子学生の授業を休講にしてダンスの相手をさせた、なんてこともありましたね。

 ――何だか暗い話ばかりですね(笑)。


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